19世紀のメイドオタク哲学者キルケゴールの熱烈メイドさん萌え語りに世間の人はどう反応したか
|
19世紀デンマークの哲学者キルケゴールは、重度のメイドオタクです。
彼は『誘惑者の日記』という著作において、日本語訳の文庫版で7頁にも及ぶ巨大な分量を費やし(桝田啓三郎訳 ちくま学芸文庫 233~239頁)、メイドさんがとうとかこうとか、訳の分からん語りを披露してくれているのですが、その主張の核心となる一文を抜き出せば
一般に、女中風情に興味はないという男があるなら、それで損をするのは、女中さんたちよりも、むしろそういう男なのだ。
(同書 233、234頁)
そして、その主張内容を要約してまとめるならば、
メイドに興味がない男は人生損してる。デンマーク軍よりメイドは偉い。軍隊鍛える暇があったら、メイドの調教する方がお国のため。ぼくが国王や議員なら軍隊なんかほっぽり出してメイドの調教に励む。ふつうの女性が着るような服装は却下で、メイド服が必須。メイド文化にどっぷりつかればデンマークの少年少女の未来も明るい。メイドキングダム・デンマークの到来は、それほど大胆な考えではなく、十分に予見できること。そうすればデンマークは黄金時代。生きてそんな時代にめぐりあって、一日中メイドを視姦してたいなあ。メイドキングダム・デンマークを祈ることこそ愛国的。とりあえず日曜日にはメイドを視姦しに出かけよう。
といった感じ(過去のネット上の発表[当ブログ内に移転]と社会評論社『ダメ人間の世界史』[リンク先Amazon]に掲載した文章を抜粋して再々掲載)。
まあ7頁なんて長大な文章ですから、語りの内容はこれだけには留まらず、
メイドさんの肌の色つや質感、背丈に肉づき骨格服装、メイドさんナンパ計画等々、
もっともっといっぱいキモイことを延々長々語ってくれてるんですが、それについては、置いておいて、
そのキモいと言うか痛いと言うか逝ってしまった素敵文章、デンマークの世間の人はそれを見てどう感じたのか、今日はそれを取り上げてみたいと思います。
これについては、『誘惑者の日記』の訳者の桝田啓三郎氏が訳書に付けた「解説」で、当時のデンマークの雑誌『Den Frisindede』の編集者ローセンホフの論評を紹介してくれているので、その論評を長くなり過ぎないよう適当に省けそうなところは省略しつつ見ていきたいのですが、
その論評、敢えて、メイドさんを云々した挿話を二、三のアフォリズムとともに掲げた上、そこにこのように付け加えて言ったそうです。
……この書は高度に興味をそそり、読んだものを利用することを心得た非常に博学な著者のものであることを証明している。著者の所見はきわめて適切、明敏である。その情緒は無尽蔵である──その機智のたわむれ、その過剰なまでの象徴、比喩および洒落の駆使、日常生活ならびに芸術におけるほとんどあらゆる注目すべきことがらについての独特な見方が、一種わざとらしくドイツ的な表現方法を『むやみにふりまわす』ことをあまりさせないですんだのではないかとしか、われわれには思われない。
──出版自由協会の道徳会長をうながして著者を追放し、道徳的衛生警察に作品を没収させ、この未知の著者の像を火あぶりの刑に処するよう願い出たい気になるほどだ、しかし次の瞬間にはこの本を読む者が、読んで損をしたなどとはおそらく思わないことを、きっと認めることだろう。……
この著者がその偉大な才能を、その学識を、鋭い観察力を、そしてその再現の才能をどれほど濫用しているか──われわれは今はそれを決定しようとは思わない。われわれとしては、かなり平穏な時代にあることだから、恐れることなく、そして遠慮なく、この不思議な作品について率直な意見を述べるべきであろう。──ヘーゲルも、ギリシア語やラテン語を好む学者たちも、健全な人間悟性が或るものをその正しい名で呼ぶことを、悪く思うことはあるまい。
ここに証拠として報告した挿話は、第一部にある『誘惑者の日記』という一篇から取ったものである。われわれがこの断片を選んだのは、それを最善のものと見なすからではなく、それがそれだけでまとまった小さい一全体をなしているからである。 編者
(同書 525、526頁)
この文章、私には、何を言ってるのかどうにも分かりにくく、言わんとするところを正確に読みとれている自信は全く無いのですが、こう言ってるように聞こえます。
メイドさんとか我々一般人からすれば、取り上げるに相応しい文章とは思えないが、都合良くまとまってるので、敢えてそこをネタにコメントしてやる。
こんな事を勢いづいて語りまくる作者は変態。
頭でっかちのオタきめぇ、死ね。
でもまあ、オタも見世物の珍獣としては面白いよ。
気のせいでしょうか?
参考資料
セーレン・キルケゴール著『誘惑者の日記』桝田啓三郎訳 ちくま学芸文庫
山田昌弘/麓直浩著『ダメ人間の世界史』社会評論社
関連記事
もっともっとメイドさんとキルケゴール 続・偉大なるダメ人間シリーズその1
メイドさんって素敵だね?―偉人以外の一般人とメイドさん―
メイドからウェイトレスへ ~メイド服の生き残り大作戦~ あるいは100年前のメイド喫茶の話
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
偉大なるダメ人間シリーズその1 キルケゴール(当ブログ内に移転)
http://trushnote.exblog.jp/14529065/
引きこもりニート列伝その25 キルケゴール
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/neet25.html
メイドさんネタとか変態哲学者ネタも色々収録
合わせてこちらもどうぞ。
リンクを変更(2010年12月7日)