<2010年を振り返る>匿名機密漏洩の今昔
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関連サイト:
「尖閣映像流出事件まとめwiki」(http://w.livedoor.jp/senkaku_youtube_/#)
「はてなブックマークニュース」(http://b.hatena.ne.jp/articles)より
「Wikileaks(ウィキリークス)とは――米軍機密もネットで公開」
(http://b.hatena.ne.jp/articles/201011/2003)
いずれも、インターネット上で、告発者の匿名性が高い(ただし完全ではなく個人特定は不可能ではない)状態で広く閲覧できる状況によって引き起こされた現象といえるでしょう。
歴史を振り返ってみると、面白い事にある程度類似した現象があります。平安末期ごろから徳川期まで、匿名の作者によって世相を風刺する書き込みが河原など人通りの多い場所に晒される「落書」という現象がしばしば見られるようになりました。その中には事件や合戦の情報伝達が早い事から内部の人間が作成に関与したのではないかと思わせるものもあります(当事者の宣伝も少なからず含まれていたでしょう)。特に徳川中期以降には徳川政権が極秘としていた政争の詳細まで通じている歌も少なからず見られ、書院番・御用人など政権内部の人間による内部告発の作品もあると推測されています。
インターネットほど広く人々が見られるものではありませんが、匿名で人通りの多い場所に掲示され口伝えで広まる事で情報が広がったといえます。
とらっしゅばすけっと関連発表:
「「落書」を通史的に考える」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/rakusho.html)
そういえば、落書などを主に担っていると考えられたのが「京童」と呼ばれる存在ですが、大人社会から逸脱した存在というイメージを一般にもたれている辺り、現在のネット住人に近いといえなくもないかもしれません。
とらっしゅばすけっと関連発表:
「童形と神性」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/warawa.html)
ともあれ、インターネット時代になって、落書と同様な「広域な不特定多数の人間」が「匿名性を持って」参加でき「国家の制御が余り及ばない」という条件が再び整った事で、こうした内部告発によって機密が広範囲に通知されるという現象が起こってきたんでしょうね。そういう意味で、こうした出来事も見方によっては「先祖返り」という側面もあるのかもしれません。
【参考文献】
落書日本史 紀田順一郎著 三一新書
落首文芸史 井上隆 高文堂書店