ヴィクトリア朝イギリスのhentaiたち~紳士はエロ本や鞭打ちがお好き~
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当時、工業化の発展に伴ってポルノ文学も商業化されていきました。それまでは、知識階級や貴族の所有物だったのです。しかしそれにつれて当然、当局からの禁制も厳しくなりました。小説はもちろん『夜のロンドン』『ロンドン放蕩生活』といった夜のガイドブックも対象となります。ここまでならわかるのですが、更に不品行(自慰など)を告発する書物も取り締まられたと言いますから面白いものです。何でも、読者は不品行に対する情報を求めるためこうした書を手にとったかららしいのです。書物も、著者の意図通りに消費されるとは限らない一例ですね。そういえば、我が国でも学校教材がエロい意味に読めるという事例がありましたた。
近代日本の学校では男子学生を中心に同性愛が盛んだったのは何度か申し上げたと思いますが、この時期のイギリスも事情は同じようなものでした。それについて、
同性愛の現実に栄えた稀な場所としては、大学とパブリック・スクールが挙げられる。パブリック・スクールでは、一部の教師やチューター[個人教師]のあいだにもそれが見られ、さらにそれを奨励した。しかしそれでもやはり、オックスフォードやケンブリッジの学生や教授の社会は、非常にちっぽけなマイノリティにすぎず、きわめて若い男性だけのものだった。ギリシアの作家、とりわけ男同士の、あるいは少年との愛を賛美していたプラトンを読むことによって、当事者たちは罪責感をぬぐうことができた。(リベール・ミュッシャンブレ著『オルガスムの歴史』山本規雄訳 作品社 299頁)
との証言もあります。
学校教育と言えば、この時代に「イギリスの悪癖」として知られたものに鞭打ちがあります。当時、鞭打ちはイートン校を始めとするパブリック・スクールで、体罰として用いられていました。それと関係があるかどうかは不明ですが、同時代のイギリスに尻を鞭で撃たれる事に性的快感を覚える者が多かったのは事実のようです。何しろ、1838年のロンドンには鞭打ちを専門とする売春宿が20あったとされるのですから。
この時代以外におけるイギリスのhentai事情については、まだまだよく存じ上げません。機会があれば、調査しご報告したいと思います。こうした面からのわが国との比較対象も、決して無駄ではないでしょうから。
【参考文献】
オルガスムの歴史 リベール・ミュッシャンブレ著 山本規雄訳 作品社
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エロ本がまだ偉くてエロい人たちのみのものだった時代の話。
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「西欧中世における恋愛、性の諸相」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/2005/051209.html)
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