<読書案内>加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』
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日本にいつ漢字が入ったのか。当初はどのような扱いだったのか。それを太古にさかのぼることから始まり、どのような理由でいつごろから漢籍・漢文が本格的に採用されるに至ったのかを説いていきます。
そして、漢文をどのような階層がどんな風に消化し使用していたか、近代まで概観した一冊です。まず思い浮かぶだけでも、漢文は、教養として日本文化成熟を助け、国際交流でも大きな便宜となりました。それに加え、一定の教養を有する実務階級が広範に育つのにも漢文教育が大きく貢献しており、それが近代化において見過ごせない助けになったとも言います。
日本の発展に、無視できない役割を果たした漢文教育。しかし、漢文がすたれた現代、過小評価されてしまうのは致し方ないことでしょう。かつて存在した「教養」の有していた力を再認識する上でも、一読に値するかと思います。