菱川師宣版『小倉百人一首』を表記してみる~くずし字、変体仮名相手に奮闘を試みました~
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2017年 01月 28日
国立国会図書館が、パブリック・ドメインとして菱川師宣画の『小倉百人一首』を公開しています。しかし、恥ずかしながら僕は判読に苦しみました。くずし字・変体仮名が多数用いられていたためです。 御存じの方もおられるかと思いますが、昔のひらがなは現在用いられているものだけではありません。同じ音でも、別の漢字由来で数種類あったりしました。それらがどういった基準で使い分けられていたか、という点にも興味はあるのですが、残念ながら見た範囲ではそれについてはわかりませんでした。 さて、今回は本書に掲載された百人一首の歌を万葉仮名風に漢字・仮名交じりで書き出してみました。ひらがな(特に変体仮名)部分がどの漢字由来か知る参考になればと思います。ただし、僕も試行錯誤しながらでしたので、読み取り間違いもあるかもしれません。その際は御教示いただけると幸い。 なお、同じ文字の繰返しを意味する「〱」の記号で表記された部分も多々ありましたが、それは万葉仮名風に表記し直しています。なお、万葉仮名風表記の下にあるひらがな混じりの表記は、『小倉百人一首』(日吉堂 明治三十八年 こちらもパブリック・ドメイン)から引用しています。旧字体は新字体に直しています。 『第六版 新訂国語総覧』(京都書房)にある百人一首も参照しましたが、同じ百人一首でも版によって、細かい表記の違いは色々あるようですね。一例を挙げると菱川師宣版で「武」「無」は「む」とよみますが、日吉堂版では「ん」になっているなど。 天智天皇 秋乃田乃 可利本乃庵能 苫越安良三 和可古呂毛手波 露尓奴礼川川 秋の田の 刈穂の庵の 苫をあらみ 我(わが)衣手は 露にぬれつつ 持統天皇 春過天 夏幾尓介良之 白妙乃 己呂毛保春天不 安末乃加久山 春過ぎて 夏来にけらし しろたへの 衣ほすてふ 天のかぐ山 柿本人丸 阿之曳乃 山止利乃尾乃 志多利於能 奈加奈加之夜越 独可毛祢無 足曳の 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝ん 山邊赤人 田子能宇良仁 宇知出天天 見礼盤 白妙乃 不之乃堂可年耳 雪波不利川川 田子の浦に 打出て見れば しろたへの 富士の高根に 雪は降りつつ 猿丸大夫 奥山耳 毛美知踏分 鳴鹿乃 己恵幾久時楚 秋盤可那之幾 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声きくときぞ 秋はかなしき 中納言家持 鵲乃 和多世流波之耳 遠久霜能 志呂幾越見礼者 夜曽更耳計留 かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける 安陪仲麿 天原 不利左計見礼盤 春日那留 美可左乃山耳 出之月可毛 天の原 ふりさけ見(みれ)ば 春日なる 三笠の山に 出し月かも 喜撰法師(※「喜」の字は七を三つ) 和可庵者 都乃堂川三 志可曽春無 与越宇知山登 人者以不奈利 我庵は 都のたつみ 鹿ぞすむ 世をうぢ山と 人はいふなり 小野小町 花乃色波 宇川利仁介利那 以多川良尓 和可身与尓婦留 詠世之満尓 花の色は うつりにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせし間に 蝉丸 古礼也己乃 行毛帰留毛 別手八 志累毛之良奴毛 安不坂乃関 是や此の 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも あふ坂のせき 参議篁 和田乃原 八十嶋可計天 漕出奴止 人尓波徒計与 海士能徒利不年 和田の原 やそ島かけて 漕出(こぎいで)ぬと 人には告げよ 天(あま)のつりふね 僧正遍照 天津風 雲能加与比地 吹止知与 遠登免乃寸可多 志波之登登女无 天津風 雲の通ひ路 吹(ふき)とぢよ 乙女の姿 暫しとどめむ 陽成院 筑波祢乃 三祢与利落留 三那乃川 恋曽徒毛里天 淵止那利奴留 筑波嶺の みねより落(おつ)る みなの川 こひぞつもりて 淵となりぬる 河原左大臣 美知能久乃 忍不毛知春利 誰遊部尓 美多礼曽女尓之 我奈良那久仁 陸奥の 信夫(しのぶ)もぢずり 誰故に 乱れそめにし 我ならなくに 光孝天皇 君可太女 春能野耳出天 和可奈摘 和可己呂毛手尓 雪波不利川川 君がため 春の野に出て 若菜つむ 我衣手に ゆきはふりつつ 中納言行平 立和可礼 以奈葉能山能 三年仁於不留 末川登之幾介波 今可部利己无 立別れ いなばの山の 峯に生ふる まつとしきかば 今帰りこん 在原業平朝臣 千早振 神代毛幾可須 龍田川 加羅久礼奈井尓 水久久類登波 千早振る 神代もきかず 立田川 から紅に 水くぐるとは 藤原敏行朝臣 住乃江乃 幾之仁与留浪 与留左部也 夢乃加与比地 人女与久良無 すみのえの 岸による浪(なみ) よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ 伊勢 難波可多 美之可幾阿之乃 婦之乃末毛 安波天己乃世遠 寸久之天与止也 難波がた 短き蘆の ふしのまも あはで此(この)世を 過してよとや 元良親王 侘奴連波 今八多於那之 難波奈留 美遠徒具之天毛 安波無止曽思不 わびぬれば 今はた同じ なにはなる みをつくしても あはんとぞ思ふ 素性法師 今来武登 以比之八可利仁 長月能 有明乃月遠 末知出川留哉 今来んと いひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出つるかな 文屋康秀 吹可良仁 秋能草木能 志本留礼盤 武遍山可世遠 嵐登以不良无 吹(ふく)からに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐と云ふらん 大江千里 月見礼盤 知知仁毛乃己曽 加奈之介礼 和可身悲止川乃 秋尓波安良祢止 月みれば 千々(ちぢ)に物こそ かなしけれ 我身ひとつの 秋にはあらねど 菅家 此堂比盤 奴左毛止利阿部春 手向山 毛美知能尓之幾 神乃末尓尓 此の度(たび)は ぬさも取あへず 手向山 紅葉のにしき 神のまにまに 三條右大臣 名尓之於波波 逢坂山能 左年可川良 人耳志良礼天 久類与之毛哉 名にしおはば 逢坂山の さねかつら 人に知られで くるよしもがな 貞信公 小倉山 三祢乃毛美知葉 心安良波 以末比止堂比乃 御幸末多奈无 小倉山 峯のもみぢ葉 心あらば 今一度(ひとたび)の みゆきまたなん 中納言兼輔 見可乃原 和幾天奈可流流 泉河 以川美幾登天可 恋之可留良无 みかの原 わきて流るる いづみ川 いつみきとてか 恋しかるらん 源宗之朝臣 山里波 冬楚佐比之左 増利介留 人女毛草毛 加連奴止於毛部波 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人めも草も かれぬと思へば 凡河内躬恒 心安天耳 於良波也於良无 初霜乃 遠起末止波世留 志良菊乃花 心あてに をらばやをらむ 初霜の 置(おき)まどはせる 白菊の花 壬生忠岑 有明乃 徒連那久美衣之 別与利 安可川起波可利 宇起物波奈之 有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり うきものはなし 坂上是則 朝保良遣 有明乃月止 美留迄尓 与之能能里耳 不礼留之良雪 朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに よしのの里に 降れる白雪 春道列樹 山河耳 風乃可計堂留 志可良三八 奈可礼毛安部奴 毛美知也介利 山川に 風のかけたる 柵(しがらみ)は 流れもあへぬ 紅葉なりけり 紀友則 久可多乃 日可利能止計幾 春乃日仁 志川古古呂那久 花乃知留良無 久方(ひさかた)の 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらん 藤原興風 誰遠可毛 志累人尓世无 高砂乃 松毛武可之乃 友那良奈久仁 誰をかも しる人にせん 高砂の 松も昔の 友ならなくに 紀貫之 人盤以左 心毛之良寸 古郷(?)盤 波奈曽武可之乃 香尓匂比介留 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂(に)ほひける 清原深養父 夏乃夜波 末多与比奈可良 明奴留遠 雲能以川己仁 月也止留良无 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月やどるらん 文屋朝康 志良露耳 風乃不幾之久 秋能能盤 徒良奴幾止女奴 玉曽散計留 白露に 風の吹(ふき)しく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける 右近 忘良類類 身遠波思波春 誓天之 人乃命(?)乃 於之久毛安留哉 忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の 惜しくもあるかな 参議等 浅茅生能 遠能能志乃原 忍不礼止 阿末利天奈止可 人乃恋之幾 浅ぢふの をのの篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき 平兼盛 忍不連止 色耳出尓介利 我恋八 毛乃也於毛不止 人乃登不末天 忍ぶれど 色に出(いで)にけり 我恋は 物や思ふと 人の問ふまで 壬生忠見 恋春天不 和可奈波末多起 立仁介利 人志連寸己曽 思日曽女之可 恋すてふ 我名はまだき たちにけり 人知れずこそ 思ひそめしが 清原元輔 契利幾奈 加多見尓袖遠 志本利川川 寸恵乃松山 浪己佐之登波 契りきな かたみに袖を しぼりつつ すゑの松山 波こさじとは 中納言淳忠 安比美天乃 後乃心尓 久良不礼盤 武可之盤物遠 於毛波左利気利 逢(あひ)見ての 後の心に くらぶれば 昔は物を 思はざりけり 中納言朝忠 阿不事乃 堂衣天之奈久波 中中尓 人遠毛見遠毛 宇良見左良満之 逢ふ事の 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし 謙徳公 哀登毛 以不部幾人盤 於毛本衣天 身乃以多川良尓 奈利奴部幾哉 哀(あは)れとも いふべき人は おもほへで 身のいたづらに なりぬべきかな 曽禰好忠 遊良乃止越 和多留舟人 可知遠多衣 行恵毛之良奴 恋乃道可奈 由良の戸を わたる舟人 梶をたえ ゆくえも知らぬ こひのみちかな 恵慶法師 八重葎 之遣連留宿乃 左比之幾仁 人己曽美衣年 秋盤来尓介利 八重葎(やへむぐら) しげれる宿の さびしさに 人こそ見えね 秋は来にけり 源重之 風遠以多見 岩宇川浪乃 遠乃礼乃三 久多計天物遠 思不頃可那 風をいたみ 岩うつ浪の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな 大中臣能宣朝臣 御垣守 衛士能堂久火能 夜波毛衣天 比留波幾衣川川 物遠己曽思部 御垣守(みかきもり) 衛士のたく火の 夜はもえて 昼は消えつつ 物をこそ思へ 藤原義孝 君可太女 於之可良佐之 命左部 奈可久毛可那止 思日奴留可奈 君がため 惜(をし)からざりし 命さへ ながくもがなと 思ひける哉(かな) 藤原実方朝臣 閑久登多仁 衣也盤伊吹能 左之毛草 佐之毛之良之奈 毛遊留思日遠 斯(かく)とだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを 藤原道信朝臣 明奴連波 久類類物止波 志利奈可良 奈遠宇良女之幾 朝保良遣哉 明(あけ)ぬれば 暮るるものとは しりながら 猶恨めしき 朝ぼらけかな 右大将道綱母 奈計起徒徒 悲止利奴留夜能 明留末八 以可耳久之幾 物止可波志累 歎きつつ 独りぬる夜の 明(あく)るまは いかに久しき ものとかは知る 儀同三司母 忘礼之乃 行末末天波 加多計連八 気不越可起利乃 命登毛哉 忘れじの 行末までは かたけれど 今日を限りの 命ともがな 大納言公任 瀧乃音波 多衣天久之久 成奴礼止 名己曽奈可連天 猶幾己衣介礼 瀧の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて 猶聞こえけれ 和泉式部 安羅佐良武 己乃世乃外乃 思日出仁 以末比止堂比乃 安不事毛可奈 有らざらん 此(この)世の外(ほか)の 思出(おもひで)に 今一たびの 逢ふこともがな 紫式部 免久利阿比天 美之也曽礼共 分奴末尓 雲加久礼尓之 夜半乃月哉 めぐり逢(あひ)て 見しやそれとも わかぬまに 雲かくれにし よはの月哉 大弐三位 有馬山 以奈乃佐佐原 風布計者 以天曽与人遠 和須連也八春留 有馬山 猪名のささ原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする 赤染衛門 屋寸良波天 祢奈末之物遠 左夜更天 加多不久末天乃 月遠見之可奈 やすらはで 寝なましものを 小夜更けて かたぶくまでの 月を見しかな 小式部内侍 大江山 以久能能道乃 登越介礼盤 末多布美毛見春 安末能波之多天 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天のはしだて 伊勢大輔 以尓之遍乃 奈良能都能 八重桜 気不九重耳 匂比奴留哉 (※「奈良」はひらがな表記であった) 古(いにし)への 奈良の都の 八重桜 今日(けふ)九重に 匂(にほ)ひぬるかな 清少納言 夜遠己女天 鳥乃曽良祢者 八可留共 与尓阿不左可乃 関盤遊留左之 夜を籠(こめ)て 鳥のそら音は はかるとも よにあふ坂の 関はゆるさじ 左京大夫道雅 今盤堂堂 思日絶那無 止八可利遠 人徒天那良天 以不与之毛可奈 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふ由(よし)もがな 権中納言定頼 朝保良希 宇良乃川霧 堂衣堂衣尓 阿良波連和多留 瀬瀬乃細代木 朝ぼらけ 宇治の川霧 絶えだえに あらはれ渡る 瀬々の網代木 相模 宇良美侘 保左奴袖堂尓 安留物遠 恋耳久知那無 名己曽於之介礼 恨み詫び ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜(をし)けれ 前大僧正行尊 諸登毛仁 哀止於毛部 山左久良 者那与利外耳 志類人毛奈之 諸共(もろとも)に あはれと思へ 山桜 花より外(ほか)に 知る人もなし 周防内侍 春乃夜能 夢八可利那留 手枕尓 加比那久太太无 名己曽於之介礼 春の夜の 夢ばかりなる 手枕(たまくら)に 甲斐(かひ)なく立たむ 名こそ惜けれ 三條院 古古路耳毛 安良天己乃世仁 奈可良部八 恋之加留部起 夜半乃月哉 心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき よはの月かな 能因法師 阿良之吹 見武呂能山乃 毛美知葉八 龍田乃川乃 錦奈利介利 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 立田の川の 錦なりけり 良暹法師 佐比之左尓 宿越立出天 奈可武連八 以徒久毛於那之 秋乃遊不久礼 淋しさに 宿を立出(たちい)て ながむれば いづくも同じ 秋の夕ぐれ 大納言経信 遊不左連波 門田乃以奈葉 遠止川連天 阿之乃末呂也耳 秋風曽婦久 夕されば かど田の稲葉 おとづれて あしのまろ屋に 秋風ぞ吹く 祐子内親王家紀伊 音耳幾久 太可之乃濱乃 安多浪盤 可計之也袖乃 奴連毛己曽春礼 音に聞く たかし(高師)の浜の あだ浪は かけじや袖の ぬれもこそすれ 前中納言匡房 高砂乃 尾乃部乃桜 佐幾尓介利 外山乃閑須見 堂堂寸毛安良奈无 高砂の 尾上(をのへ)の桜 咲きにけり 外山の霞 たたずもあらなむ 源俊頼朝臣 宇可利計留 人遠者川世能 山於呂之 波遣之可礼登波 以乃良奴物遠 憂かりける 人をはつせ(初瀬)の 山おろし はげしかれとは 祈らぬものを 藤原基俊 契利遠起之 左勢毛可露遠 命尓天 安八礼己止之能 秋毛以奴女利 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり 法性寺入道前関白太政大臣 和田乃原 古起出天見礼盤 久方乃 雲井耳満可不 奥津之良浪 和田の原 こぎ出(いで)てみれば 久方の 雲井にまがふ 沖津白なみ 崇徳院 瀬遠波也三 岩耳世可流流 瀧川乃 和連天毛寸恵耳 安波無止曽思不 瀬をはやみ 岩にせかるる 瀧川の われても末に あはんとぞ思ふ 源兼昌 安者知嶋 可与不千鳥能 鳴己恵尓 以久夜祢覚奴 須磨乃関守 淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に いく夜寝ざめぬ すまの関守 左京大夫顕輔 秋風耳 堂那比久雲能 絶万与利 毛礼以川留月乃 影乃左也計左 秋風に たな引く雲の 絶間より もれ出(いづ)る月の 影のさやけさ 待賢門院堀河 奈可可羅無 心毛之良須 久呂可三能 美多礼天計左波 物遠己曽思部 永(なが)からむ 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ思へ 後徳大寺左大臣 郭公 鳴川留可多遠 奈可武連八 堂堂有明乃 月曽乃己礼留 ※「郭公」と書いて「ホトトギス」とよむ様子。 ほととぎす なきつる方を ながむれば ただ有明の 月ぞ残れる 道因法師 思日侘 佐天毛命波 安留物遠 宇幾耳堂部奴盤 涙奈利介利 思ひわび さても命は ある物を うきにたへぬは 涙なりけり 皇太后宮大夫俊成 世中与 道己曽奈計連 思日入 山乃奥耳毛 鹿曽鳴那留 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞなくなる 藤原清輔朝臣 奈可良部盤 又己乃頃也 忍波連无 宇之登見之世曽 今八恋之幾 永らへば また此頃(このごろ)や しのばれん うしと見し世ぞ 今は恋しき 俊恵法師 夜毛寸可羅 毛乃於毛不頃盤 明也良天 祢也乃比末佐部 徒連奈可利介利 夜もすがら 物思ふ比(ころ)は 明(あけ)やらで 閨の隙(ひま)さへ つれなかりけり 西行法師 奈計計登天 月也八物遠 思八春留 加古知可保奈留 我涙可奈 歎けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる 我涙かな 寂蓮法師 武良雨乃 露毛末多比奴 槇乃葉尓 霧多知乃本累 秋乃由不久礼 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧たちのぼる 秋の夕ぐれ 皇嘉門院別当 難波江乃 阿之乃可利年能 一夜遊部 美遠徒具之天也 恋和多留部幾 難波江の あしのかりねの ひとよ故 身をつくしてや 恋わたるべき 式子内親王 玉乃緒与 堂衣奈波絶祢 奈可良部八 忍不留事乃 与波利毛楚寸留 玉の緒よ 絶えなば絶えね 永らへば しのぶる事の よわりもぞする 殷冨門院大輔 見世波也奈 遠之満乃海人乃 袖多尓毛 奴礼尓楚奴連之 色波可波良寸 見せばやな 小島(をじま)のあまの 袖だにも 濡れにぞ塗れし 色は替(かは)らず 後京極摂政太政大臣 幾利幾利春 奈久也霜夜能 左武之呂尓 己呂毛加多之幾 独可毛祢無 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき 独りかもねん 二條院讃岐 我袖盤 志本比丹見衣奴 沖乃石能 人己曽之良祢 加波久満毛奈之 ※「袖」の部分は、「恋」と書いて脇に「袖」と注記されているようにも見えました。 我袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし 鎌倉右大臣 世中盤 常尓毛加毛奈 奈幾佐古久 海士乃遠不祢乃 川奈天可那之毛 世の中は 常にもかもな なぎさ漕ぐ 海士(あま)の小舟の 綱手かなしも 参議雅経 見与之野能 山乃秋風 小夜更天 布留佐登寒久 衣宇川那利 三吉野の 山の秋風 小夜ふけて ふる郷(さと)さむく 衣うつなり 前大僧正慈圓 於保希奈久 宇起世乃民尓 於本不哉 和可堂川杣耳 墨染乃袖 おほけなく 浮世の民に おほふかな 我たつ杣に 墨染の袖 入道前太政大臣 花佐曽不 嵐乃庭乃 雪那良天 不利行毛乃波 我身那利遣利 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは 我身なりけり 権中納言定家 来奴人遠 末川本能浦乃 遊不奈起尓 屋久也毛之保乃 身毛古可礼川川 来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに やくや藻塩の 身もこがれつつ 正三位家隆 風曽与久 奈羅乃小川乃 由不久礼盤 美曽幾楚夏乃 志類之奈利計留 風そよく ならの小川の 夕暮は みそぎぞ夏の しるしなりける 後鳥羽院 人毛於之 人毛宇良女之 安知幾奈久 与越於毛不遊部尓 物於毛不身波 人もをし 人も恨めし 味気なく 世を思ふ故に 物おもふ身は 順徳院 百敷也 婦留起軒端乃 忍不尓毛 奈越安末利安留 武可之那利介利 百敷(ももしき)や 古き軒端の しのぶにも 猶あまりある 昔なりけり 【参考文献】 菱川師宣画『小倉百人一首』通油町本問屋開板(延宝八年出版)(国立国会図書館デジタルライブラリーが公開) 『小倉百人一首』日吉堂 谷山繁・猪野謙二・村井康彦・本多伊平共著『第六版 新訂国語総覧』京都書房 『大辞泉』小学館 関連記事: 関連サイト: こちらも参照ください。 「変体仮名を調べる」(http://www.book-seishindo.jp/kana/index.html)より 「変体仮名を調べる 五十音順一覧」(http://www.book-seishindo.jp/kana/onjun_1.html#top) 「くずし字」アプリの他にこちらも参考にしました。 ※2017/1/31 中納言行平の歌を一部修正。
by trushbasket
| 2017-01-28 13:38
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