どうも、松原左京です。今回は、非婚化・独身や結婚といった話題に関して、とある長寿漫画を題材にお話しようかと思います。
長年にわたりサラリーマンに愛されてきた漫画作品に、『総務部総務課山口六平太』というのがあります。大日自動車の総務部に勤務する主人公・山口六平太がその人望や人脈を駆使して、社内の様々なトラブルを解決していく話です。1986年から、2016年に作画の高井研一郎先生が逝去されるまでの長きにわたり連載されてきました。
何分連載期間が長いので、作品世界観や考え方はいささか昭和っぽく、時代に合わないと映る部分もあるかもしれません。それでも、弱さやダメさ加減も含めて人間に対し温かい目を注ぐ作風ですから、人生観などで現在からしても見るべきものは少なからぬように感じています。
作中、会社の大株主である金森老人の一人息子・浩介氏について、総務課内部で話題になった事がありました。40歳で独身だという事が、彼らの興味を惹いたようです。何でも、父・金森老人によれば、思春期の時点で「あまりにも女に興味がないようだった」(林律雄・作 高井研一郎・画『My First BIG SUPER 総務部総務課山口六平太 「婚カツマーチ!!」』小学館 582頁)とのこと。この際、一人の社員から女性恐怖症じゃないのかという意見が出たのに対し、ある女性社員が
また、すぐ決めつける。結婚しない男も女も大勢いるわよ(同書 503頁)
と諌めているのは印象的でした。なお、浩介氏本人によれば、結婚しないのは
そんな大した理由もないんだけどね(同書 597頁)
なんとなく(同書 600頁)
といったところなんだそうで。別の機会には、
結婚したくなったら勝手にするから、心配するなよ。
結婚なんてしなけりゃしないでそれもいいしさ。
(ともに同書 515頁)
とも父親に述べています。
おそらくは、彼の中では恋愛や結婚に関する優先順位が著しく低いのでしょうね。結婚や恋愛を殊更に拒んでいる訳ではないが、自ら積極的に求める気にもならない。その結果として生涯独り身になるなら、それはそれでよい。そういうスタンスなのだと思われます。父親である金森老人はそんな浩介氏の姿勢について、消極的に過ぎるといささか不満気。しかし、これに対し六平太は
好みも'なんとなく'ですからね。理屈じゃない。なんとなくって、決して消極的で優柔不断な言葉ではないと思いますよ。(同書 601頁)
と浩介氏の肩を持つ発言をしていました。結局、金森老人も息子のスタンスについては受け入れる結論に落ち着いたようです。
なお、『山口六平太』の作中人物が恋愛・結婚に消極的かといえば、むしろ逆。そもそも主人公・六平太と社長秘書とが穏やかに育む恋愛模様も、本作を語るに欠かせない話題ですしね。恋愛も結婚もすばらしい、でもだからといって、それをしなければいけないわけじゃない。そういう姿勢かと思います。作中の発言を借りれば、
そう、要するに形はどうだっていいのよ、問題は幸福になること。(同書 444頁)
という結論に落ち着きそうですね(※)。基本的に、頷ける面が多々あると思います。法や人としての道に外れた行いをしない限り堂々としていればよい、と私も考えますので。イスラームの一派であるババヤン派に伝わる
結婚する者は正しい、そして独身を守る者は清い(松原左京&山田昌弘『童貞の世界史』パブリブ 95頁)
という言葉が思い出されます。
※このセリフ自体は、別の事例で発せられたものですけれど。
いずれにせよ、悔いのない人生にしたいものです。それにあたって、六平太の言葉を借りるなら、
意地を張るな、見栄を張るな… 相手のせいにするな…(林律雄・作 高井研一郎・画『My First BIG SUPER 総務部総務課山口六平太 「婚カツマーチ!!」』小学館 686頁)
という事は心がけたいところですね。
参考文献:
林律雄・作 高井研一郎・画『My First BIG SUPER 総務部総務課山口六平太 「婚カツマーチ!!」』小学館
松原左京&山田昌弘『童貞の世界史』パブリブ
関連記事:
下の記事でも、『山口六平太』が話題に出されています。
※2017/8/23、8/26 少し手直ししました。