童貞が神聖視された一例をもう一つ~食糧の扱いと性的潔癖~
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性的道徳の破壊は自然の運行を妨げ、とくに土地の実りを衰弱せしめると信じられている
穀物が外にひろげられてある間、すべての汚れた人間は細心の注意をもってそこから遠ざけられる。
子供の生まれたときに木片の摩擦によって新火をその家におこす習慣があり、これは童貞の若者によってなされねばならないとされているのでさる。ところで、童貞を失ったあとで偽ってこの神聖な役目を引き受けた者は、天寿を全うすることができず、かならず夭折すると信じられているからである。
穀倉にはいる者は誰でもまず履き物をぬがねばならず、性的に清潔でなければならないとされている。もし不潔な者がそこにはいれば、穀物がその祝福された力を失うばかりでなく、彼自身も病気になるといわれている。
今回取り上げた事例のどこまでが、正確な事実を記録したものであるか。それは、恥ずかしながら私には分かりません。ただ、性的な潔癖が、食糧の扱いという神聖な仕事において求められる傾向が一部地域にはある、少なくともそう外部から観察されたというのは信じてよいのではないかと。「童貞」が時に神聖視される、というのはやはり地域を問わないもののようです。
J・G・フレーザー 永橋卓介訳『悪魔の弁護人』グーテンベルク21
『日本大百科全書』小学館
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