2009年 01月 18日
千年の昔に書かれたちょっとエッチなロリっ娘メイド・ノベル ~ロリは日本の宿業である~ 『落窪物語』
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平安中期、10世紀末に成立した物語に『落窪物語』というものがあります。
この物語、一応、中納言と皇族の女君の間に生まれた美しい姫君が主人公の物語で、
母親を失った姫君が、中納言がちょっと耄碌しかかってるのにつけこんだ継母によって、酷使され虐待されつづけるというものなのですが、
継母は、邸の中の落ち窪み低まった部屋に姫君を押し込めて、姫君に「落窪の君」という呼び名を与えます。
で、窪とは女性器という意味も持っていますから、この呼び名、自分の邸に落ち窪んだ部屋があることを知り、またそもそも耄碌しかかっている中納言には、どうってこと無く聞こえる一方、他人が聞けば、「マンコ姫」と聞こえるという素敵ネームだったりします。「落」まで付いてるから「サゲマン姫」や「臭マンコ姫」くらいかもしれませんが。それとも位置的に落として「ケツマンコ姫」?
まあ語呂の問題で「マンコ姫」でいいや。
ということで、この物語はいわば『マンコ姫』というナイスタイトルを持ってるわけでして、なんだか古典作品のくせに、かなり低俗な風味が漂っているわけですが、それもそのはず、実はこれ、そもそもが大衆小説だったりします。
どういうことかと言いますと、この物語は、貴族の姫君なんかを対象読者とはしておらず、貴族の屋敷に仕える下仕えの女達を対象とした娯楽作品だったのだとか。
というわけで、今回は、この平安大衆小説『マンコ姫』をネタに、我が国の娯楽文化の特質について、考えてみようかと思います。(『落窪物語』原文の引用は『新編 日本古典文学全集』小学館)
で、ここまで姫君が姫君がと語ってきておいてアレなんですが、実はこの物語、マンコ姫が主人公という体裁を取りながらも、ほとんどこの姫、空気同然。
自分の娘たちの裁縫仕事を彼女一人にドカドカ押しつけて注文ばかり厳しく五月蠅い継母に、その上わずかばかりの彼女の持ち物を借りるだの修理してやるだのと称してことごとく取り上げてしまう継母に、この姫君は、ひたすら唯々諾々と服従し、メソメソ、ナヨナヨ、ヘラヘラと、心中で怒りや憎しみを燃やすことにすら思い至らない有様です。
彼女のみすぼらしい様子を見て、それでも何もしてくれない父親に対しても、そして悪の元凶である継母に対してさえも、思いやりを向けるばかりで……。
それにしても、憎むべきを憎めず、軽蔑すべきを軽蔑できぬというのは、いったい人間としていかがなものでしょう。
それは優しいとは言いません、馬鹿と言うのです。
戦えとはいいません。無力な姫君に家族全てを敵に回して戦えとはいいません。
ですが、正当な怒りくらいは感じるべきです、人間なら。
思わず、記憶の奥底でどこかの誰かが叫びます。
微妙に万能青年のハヤテ君が両親に押しつけられた借金を肩代わりしてもらうかわりにお金持ちの屋敷の執事になって活躍する、漫画『ハヤテのごとく!』では、両親にいいようにこき使われ、宝物を取り上げられ、それでも両親を信じて不幸の中でヘラヘラしている幼き日のハヤテに、ヒロインの一人「アーたん」こと「アテネ」(超常の力によってゆっくりとしか年取らない頭脳の方は大人びてしまったスーパー幼女)は、彼の目を覚まさせよう、彼を不幸から救い出そうと、こう言って叱りつけたのでした。
この時ハヤテの両親を全否定するアーたんとなおも両親を信じるハヤテとは、喧嘩別れすることになるのですが、ここまでにアーたんに身体的に鍛えられていたハヤテは、さらに成長とともに、両親がクズであることを理解できるだけの判断力を身につけ、少年漫画の主人公が張れるくらいの、心身共にたくましい青年になりましたとさ。
で、まるでハヤテのごとくに腐れた両親によって酷使され搾取され優しさを喰い物にされている我らがマンコ姫にも、救いの手をさしのべるアーたんが必要だと思うのですが、
この優しすぎる姫君の側にも彼女の優しさ美しさに心を寄せ、彼女を救おうと元気に利発に立ち回る、一人の女の子の姿が。
それこそ忠誠心あふれる姫君の侍女「あこぎ」。
この物語の実質的な真ヒロイン。
対象読者である下仕えの女達に感情移入させるべく投入された、下仕えの夢と理想のつまった、スーパー・メイドな女の子。
「髪が長くて美しい(髪長くをかしげ)」、「子供っぽいけどかわいらしい(いわけなきものからをかしければ)」と表現され、
作中で恋人の帯刀惟成に「お前はいかにもお子様だなあ(あな童げや)」と笑われる、
ロングヘアーのキュートなロリっ娘。
そのロリぃな愛らしさは例の継母が、家族総出の寺詣で(マンコ姫除く)の際に、あえて「子供っぽい装束を着せて(いときなくさうぞかせて)」連れて行こうとするほどです。
年齢は、具体的には書かれていませんが、巻が進んで「あこぎ、お前、一人前の大人の侍女になれよ。判断力はもう一人前のようだし。(あこぎ、おとなになりね。いと心およずけためり)」とか言われているのを見ると、大人になっても良い頃ですから、貴族女性なら裳着して成年する年齢である12、3歳頃ということになるでしょうか。
ああ、利口で可愛い、ロリっ娘メイドが真ヒロイン……。
さすが我らのご先祖様の作品だ。
平安大衆小説は、なかなか良く分かっているじゃないか。
しかし、我らがロリっ娘ヒロインの名前が、「あこぎ」なんてのはいかがなものでしょう。現代人的には響きが微妙です。この名前は、三重の地名の阿漕浦から来ているとも言いますが、あつかましいを意味する「あこぎ」も阿漕浦が由来ですから、由来とされる地名に遡っても響きの悪さはぬぐえません。
別の説として「あこぎ」はあこぎみ(我子君)=アコちゃんの意味とも言いますから、そっちの方が良いですね。
ロリっ娘メイド・アコちゃん、ここに誕生。
ところがここで、少しばかり不都合が。
なんと困ったことに『落窪物語』には、継母の使う女の童(ロリっ娘メイド)として「あこ君(アコちゃん)」が存在します。
となると「あこぎみ」より「あこぎ」は少し短くなってるから、こころもち音の響きを縮める感じで……、
そうだ、この娘のことも「アーたん」と呼ぼう。
というわけで、『落窪物語』真ヒロイン、スーパーメイドろりっ娘アーたん、ここに爆誕。
でこのロリっ娘メイドのアーたんですが、読者たる下働きの女達の理想と夢を背に受けて、縦横無尽に作中随一の大活躍をします。
既に軽く触れたように、この娘には、まだ大人じゃないくせに帯刀惟成という恋人がいる、それどころか恋人は既に夫なのですが、彼女は夫と語らい、夫が乳母子として仕えている主君の、右近の少将道頼という権門の貴公子が、姫君のことを知り姫君の元へ通ってくるよう手引きを行います。そして、オンボロ落窪部屋での姫君の秘かな結婚生活が少しでもまともな物になるよう、あの手この手で、色々な物資その他の諸事万端を工面、めでたく、姫君は貴公子の心をがっちり掌握できました。
ところが、憎い姫君がまんまと名門の貴公子ゲットして、継母としては大変不愉快。そこで継母は、姫君を物置に監禁、そこに親族のエロジジイをけしかけて、レイプさせようとします。
しかしこの危機もアーたんが機転を働かせて巧く乗り切り、その後、道頼が扉を壊して監禁された姫君を盗みだし、姫君救出、大成功。
そしてアーたんは、姫君夫婦に仕えて、一人前の大人の侍女として働くことになるわけですが、割と攻撃的な彼女は、これまた割と攻撃的な殿の道頼と御機嫌でつるんで、姫君の止めるのも聞かず、中納言と継母一党への報復攻撃計画に乗り出します。
殿は、寺や祭りや、出かける先々で、中納言一家に妨害を加え、アーたんの手引きで中納言家の見所ある侍女はごっそり引き抜かれ、他にも色々、中納言と継母一党は、完膚無きまでに打ちのめされます。
そして十分に懲らしめた後は、中納言と継母含めて、姫君夫婦の繁栄のお陰を被って暮らしたとか。
それにしても、報復計画の爆走ぶりは、アーたんが殿の嫁じゃなくて良かったって感じです。もし殿とアーたんが夫婦だったら、たぶん勢い止まらずに、下手すれば話がきれいにオチずに節度を失い暴走していったことでしょう。
で、アーたんですが、話の最末尾で、彼女のその後の運命が最重要事項として語られており、なんでも「二百歳まで生ける」とか。
ですが、仮にも読者の感情移入の対象、読者の夢と理想の人生を送るべき立場にいるヒロインが、腰や足の痛みに苦しみながら百五十年もお婆ちゃんライフを送ったとは思えないので、きっとこれは、アーたんが、延々、老い知らず衰え知らずの永遠のロリっ娘として元気いっぱいに生き続けたってことに違いありません。
永遠のロリっ娘スーパーメイド・アーたん。
なんと素敵な話でしょうか。
ところで、この物語がかなり低俗な大衆娯楽小説であるということに既に少し触れたと思いますが、大衆が望む娯楽といえば、当然エロでございます。
で、一般に物語文学というものは、エロいことをするにはするのですが、直接的には語らず、男が部屋に忍び込み、女を抱きすくめて前世の宿縁だからとかずっとお世話するよとか、驚きわななき泣きすする女をなだめすかしてる内に朝が来て、おさわりしたり犯ったりは、
行間から読みとれ。
その奥ゆかしさが趣というものだ!!って感じのぼかしたエロ描写しかしないものなんですが、
ところが我らが『落窪物語』、大衆向け故、少しばかり直接的でえっちぃ感じ。
実は、道頼が姫君のところに忍び込んで初めて犯った日は、姫君はもちろんのこと、アーたんにも知らさず、帯刀&道頼の男コンビが不意打ちの形でアクションしかけてきたのですが、その際、帯刀は姫君の元からアーたんを連れだし、引き留めておく役割を担います。
その際、帯刀は嫁のアーたんを
「強引に連れ出して一緒に寝た(しひて率て行きて臥しぬ)」が、
少将が侵入した気配にアーたんが起き出そうとすると、それに対して、
「「もっと一緒に寝てようよ」と抱いて臥して……アーたんは姫君のことを思いやって腹を立てるも、身動きできないよう抱きかかえられて、何もできない(「……寝なむ」と抱きて臥し……いとほしくて腹立てど、動きもせず抱きこめられて、かひもなし)」、
そしてついには、アーたんを
「腹を立てる余裕すらなくなるよう、愛撫していった(……腹立たせもあへず、たばぶれしたり)」
とのこと。
抱きすくめてどうこう言うだけでなく、ペッティング(たはぶれ)まで行くところが、上品ぶった一般の物語を一歩抜け出た、大衆向けのHクオリティ。
というわけで、『落窪物語』は元気で賢いロリっ娘メイドのアーたんが、大冒険しつつ、しかも恋人に抱きかかえられ強引に体を弄られるちょっとエッチぃシーンまでありの、良い感じに俗物な素敵小説だったということです。
少女がメイドで、えっちくGO!
何時の世でも、人が娯楽に求める物は変わりませんね。
いや全く、ロリは日本の大衆娯楽の宿業というべきですよ。
千年前から、かわいいは 正義!
参考資料
『新編 日本古典文学全集 落窪物語 堤中納言物語』小学館
『王朝物語を学ぶ人のために』片桐洋一/増田繁夫/森一郎編 世界思想社
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
畑健二郎著 『ハヤテのごとく!』小学館
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日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
リンクを変更(2010年12月8日)
この物語、一応、中納言と皇族の女君の間に生まれた美しい姫君が主人公の物語で、
母親を失った姫君が、中納言がちょっと耄碌しかかってるのにつけこんだ継母によって、酷使され虐待されつづけるというものなのですが、
継母は、邸の中の落ち窪み低まった部屋に姫君を押し込めて、姫君に「落窪の君」という呼び名を与えます。
で、窪とは女性器という意味も持っていますから、この呼び名、自分の邸に落ち窪んだ部屋があることを知り、またそもそも耄碌しかかっている中納言には、どうってこと無く聞こえる一方、他人が聞けば、「マンコ姫」と聞こえるという素敵ネームだったりします。「落」まで付いてるから「サゲマン姫」や「臭マンコ姫」くらいかもしれませんが。それとも位置的に落として「ケツマンコ姫」?
まあ語呂の問題で「マンコ姫」でいいや。
ということで、この物語はいわば『マンコ姫』というナイスタイトルを持ってるわけでして、なんだか古典作品のくせに、かなり低俗な風味が漂っているわけですが、それもそのはず、実はこれ、そもそもが大衆小説だったりします。
どういうことかと言いますと、この物語は、貴族の姫君なんかを対象読者とはしておらず、貴族の屋敷に仕える下仕えの女達を対象とした娯楽作品だったのだとか。
というわけで、今回は、この平安大衆小説『マンコ姫』をネタに、我が国の娯楽文化の特質について、考えてみようかと思います。(『落窪物語』原文の引用は『新編 日本古典文学全集』小学館)
で、ここまで姫君が姫君がと語ってきておいてアレなんですが、実はこの物語、マンコ姫が主人公という体裁を取りながらも、ほとんどこの姫、空気同然。
自分の娘たちの裁縫仕事を彼女一人にドカドカ押しつけて注文ばかり厳しく五月蠅い継母に、その上わずかばかりの彼女の持ち物を借りるだの修理してやるだのと称してことごとく取り上げてしまう継母に、この姫君は、ひたすら唯々諾々と服従し、メソメソ、ナヨナヨ、ヘラヘラと、心中で怒りや憎しみを燃やすことにすら思い至らない有様です。
彼女のみすぼらしい様子を見て、それでも何もしてくれない父親に対しても、そして悪の元凶である継母に対してさえも、思いやりを向けるばかりで……。
それにしても、憎むべきを憎めず、軽蔑すべきを軽蔑できぬというのは、いったい人間としていかがなものでしょう。
それは優しいとは言いません、馬鹿と言うのです。
戦えとはいいません。無力な姫君に家族全てを敵に回して戦えとはいいません。
ですが、正当な怒りくらいは感じるべきです、人間なら。
思わず、記憶の奥底でどこかの誰かが叫びます。
よく聞け!!
お前の両親は
人間のクズだ!!
人の優しさを
喰いものにし!!!
不幸をまき散らす!!!
そんな奴らに
どれだけついていったところで!!
ボロボロになるまで
使われて!!
捨てられるだけだぞ!!
それが……!!
わからないのか!?
(『ハヤテのごとく!』畑健二郎著 小学館 185話)
微妙に万能青年のハヤテ君が両親に押しつけられた借金を肩代わりしてもらうかわりにお金持ちの屋敷の執事になって活躍する、漫画『ハヤテのごとく!』では、両親にいいようにこき使われ、宝物を取り上げられ、それでも両親を信じて不幸の中でヘラヘラしている幼き日のハヤテに、ヒロインの一人「アーたん」こと「アテネ」(超常の力によってゆっくりとしか年取らない頭脳の方は大人びてしまったスーパー幼女)は、彼の目を覚まさせよう、彼を不幸から救い出そうと、こう言って叱りつけたのでした。
この時ハヤテの両親を全否定するアーたんとなおも両親を信じるハヤテとは、喧嘩別れすることになるのですが、ここまでにアーたんに身体的に鍛えられていたハヤテは、さらに成長とともに、両親がクズであることを理解できるだけの判断力を身につけ、少年漫画の主人公が張れるくらいの、心身共にたくましい青年になりましたとさ。
で、まるでハヤテのごとくに腐れた両親によって酷使され搾取され優しさを喰い物にされている我らがマンコ姫にも、救いの手をさしのべるアーたんが必要だと思うのですが、
この優しすぎる姫君の側にも彼女の優しさ美しさに心を寄せ、彼女を救おうと元気に利発に立ち回る、一人の女の子の姿が。
それこそ忠誠心あふれる姫君の侍女「あこぎ」。
この物語の実質的な真ヒロイン。
対象読者である下仕えの女達に感情移入させるべく投入された、下仕えの夢と理想のつまった、スーパー・メイドな女の子。
「髪が長くて美しい(髪長くをかしげ)」、「子供っぽいけどかわいらしい(いわけなきものからをかしければ)」と表現され、
作中で恋人の帯刀惟成に「お前はいかにもお子様だなあ(あな童げや)」と笑われる、
ロングヘアーのキュートなロリっ娘。
そのロリぃな愛らしさは例の継母が、家族総出の寺詣で(マンコ姫除く)の際に、あえて「子供っぽい装束を着せて(いときなくさうぞかせて)」連れて行こうとするほどです。
年齢は、具体的には書かれていませんが、巻が進んで「あこぎ、お前、一人前の大人の侍女になれよ。判断力はもう一人前のようだし。(あこぎ、おとなになりね。いと心およずけためり)」とか言われているのを見ると、大人になっても良い頃ですから、貴族女性なら裳着して成年する年齢である12、3歳頃ということになるでしょうか。
ああ、利口で可愛い、ロリっ娘メイドが真ヒロイン……。
さすが我らのご先祖様の作品だ。
平安大衆小説は、なかなか良く分かっているじゃないか。
しかし、我らがロリっ娘ヒロインの名前が、「あこぎ」なんてのはいかがなものでしょう。現代人的には響きが微妙です。この名前は、三重の地名の阿漕浦から来ているとも言いますが、あつかましいを意味する「あこぎ」も阿漕浦が由来ですから、由来とされる地名に遡っても響きの悪さはぬぐえません。
別の説として「あこぎ」はあこぎみ(我子君)=アコちゃんの意味とも言いますから、そっちの方が良いですね。
ロリっ娘メイド・アコちゃん、ここに誕生。
ところがここで、少しばかり不都合が。
なんと困ったことに『落窪物語』には、継母の使う女の童(ロリっ娘メイド)として「あこ君(アコちゃん)」が存在します。
となると「あこぎみ」より「あこぎ」は少し短くなってるから、こころもち音の響きを縮める感じで……、
そうだ、この娘のことも「アーたん」と呼ぼう。
というわけで、『落窪物語』真ヒロイン、スーパーメイドろりっ娘アーたん、ここに爆誕。
でこのロリっ娘メイドのアーたんですが、読者たる下働きの女達の理想と夢を背に受けて、縦横無尽に作中随一の大活躍をします。
既に軽く触れたように、この娘には、まだ大人じゃないくせに帯刀惟成という恋人がいる、それどころか恋人は既に夫なのですが、彼女は夫と語らい、夫が乳母子として仕えている主君の、右近の少将道頼という権門の貴公子が、姫君のことを知り姫君の元へ通ってくるよう手引きを行います。そして、オンボロ落窪部屋での姫君の秘かな結婚生活が少しでもまともな物になるよう、あの手この手で、色々な物資その他の諸事万端を工面、めでたく、姫君は貴公子の心をがっちり掌握できました。
ところが、憎い姫君がまんまと名門の貴公子ゲットして、継母としては大変不愉快。そこで継母は、姫君を物置に監禁、そこに親族のエロジジイをけしかけて、レイプさせようとします。
しかしこの危機もアーたんが機転を働かせて巧く乗り切り、その後、道頼が扉を壊して監禁された姫君を盗みだし、姫君救出、大成功。
そしてアーたんは、姫君夫婦に仕えて、一人前の大人の侍女として働くことになるわけですが、割と攻撃的な彼女は、これまた割と攻撃的な殿の道頼と御機嫌でつるんで、姫君の止めるのも聞かず、中納言と継母一党への報復攻撃計画に乗り出します。
殿は、寺や祭りや、出かける先々で、中納言一家に妨害を加え、アーたんの手引きで中納言家の見所ある侍女はごっそり引き抜かれ、他にも色々、中納言と継母一党は、完膚無きまでに打ちのめされます。
そして十分に懲らしめた後は、中納言と継母含めて、姫君夫婦の繁栄のお陰を被って暮らしたとか。
それにしても、報復計画の爆走ぶりは、アーたんが殿の嫁じゃなくて良かったって感じです。もし殿とアーたんが夫婦だったら、たぶん勢い止まらずに、下手すれば話がきれいにオチずに節度を失い暴走していったことでしょう。
で、アーたんですが、話の最末尾で、彼女のその後の運命が最重要事項として語られており、なんでも「二百歳まで生ける」とか。
ですが、仮にも読者の感情移入の対象、読者の夢と理想の人生を送るべき立場にいるヒロインが、腰や足の痛みに苦しみながら百五十年もお婆ちゃんライフを送ったとは思えないので、きっとこれは、アーたんが、延々、老い知らず衰え知らずの永遠のロリっ娘として元気いっぱいに生き続けたってことに違いありません。
永遠のロリっ娘スーパーメイド・アーたん。
なんと素敵な話でしょうか。
ところで、この物語がかなり低俗な大衆娯楽小説であるということに既に少し触れたと思いますが、大衆が望む娯楽といえば、当然エロでございます。
で、一般に物語文学というものは、エロいことをするにはするのですが、直接的には語らず、男が部屋に忍び込み、女を抱きすくめて前世の宿縁だからとかずっとお世話するよとか、驚きわななき泣きすする女をなだめすかしてる内に朝が来て、おさわりしたり犯ったりは、
行間から読みとれ。
その奥ゆかしさが趣というものだ!!って感じのぼかしたエロ描写しかしないものなんですが、
ところが我らが『落窪物語』、大衆向け故、少しばかり直接的でえっちぃ感じ。
実は、道頼が姫君のところに忍び込んで初めて犯った日は、姫君はもちろんのこと、アーたんにも知らさず、帯刀&道頼の男コンビが不意打ちの形でアクションしかけてきたのですが、その際、帯刀は姫君の元からアーたんを連れだし、引き留めておく役割を担います。
その際、帯刀は嫁のアーたんを
「強引に連れ出して一緒に寝た(しひて率て行きて臥しぬ)」が、
少将が侵入した気配にアーたんが起き出そうとすると、それに対して、
「「もっと一緒に寝てようよ」と抱いて臥して……アーたんは姫君のことを思いやって腹を立てるも、身動きできないよう抱きかかえられて、何もできない(「……寝なむ」と抱きて臥し……いとほしくて腹立てど、動きもせず抱きこめられて、かひもなし)」、
そしてついには、アーたんを
「腹を立てる余裕すらなくなるよう、愛撫していった(……腹立たせもあへず、たばぶれしたり)」
とのこと。
抱きすくめてどうこう言うだけでなく、ペッティング(たはぶれ)まで行くところが、上品ぶった一般の物語を一歩抜け出た、大衆向けのHクオリティ。
というわけで、『落窪物語』は元気で賢いロリっ娘メイドのアーたんが、大冒険しつつ、しかも恋人に抱きかかえられ強引に体を弄られるちょっとエッチぃシーンまでありの、良い感じに俗物な素敵小説だったということです。
少女がメイドで、えっちくGO!
何時の世でも、人が娯楽に求める物は変わりませんね。
いや全く、ロリは日本の大衆娯楽の宿業というべきですよ。
千年前から、かわいいは 正義!
参考資料
『新編 日本古典文学全集 落窪物語 堤中納言物語』小学館
『王朝物語を学ぶ人のために』片桐洋一/増田繁夫/森一郎編 世界思想社
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
畑健二郎著 『ハヤテのごとく!』小学館
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物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
偉大なるダメ人間シリーズその1 キルケゴール(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529065/
偉大なるダメ人間シリーズその3 モルトケ(当ブログ内に移転しました)
http://trushnote.exblog.jp/14529098/
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
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by trushbasket
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