2009年 02月 15日
HENTAIとヘタレが咲き乱れる日本の文学的至宝・物語文学案内 「2/2 鎌倉編」上 注目作は超ラノベ
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鎌倉時代には、平安時代の物語を倣うべき古典として物語が製作されたが、これを擬古物語と呼ぶ。鎌倉時代物語とも。
『源氏物語』や『狭衣物語』といった当時傑作とされた作品の模倣、再現に熱心で、武士の時代となって無力化した貴族の過去を回想し盛時に憧れる精神が色濃く、独創性に乏しいなどと評価される。
また、鎌倉物語全般の傾向としては、筋書きを描き出すのに終始して、描写に厚みの足りないきらいがあることも指摘される。
とはいえ、様々に趣向を凝らして多彩な物語を展開した点は注目されている。
14世紀頃から台頭した平易で単純素朴な大衆向け文芸『御伽草子』に、しだいに取って代わられてしまう。
この「2/2 鎌倉編」では三回に分けて作品の内容を紹介するが、「上」における個人的な注目作は
■『松浦宮物語』■『有明の別』■『とりかへばや物語』
■『松浦宮物語』
平安最末期あるいは鎌倉初期の物語。歌人にして優れた古典学者であった藤原定家の若き日の創作と考えられている。成立年は不明だが、文治(1185~1190)から建久(1190~1199)初期と推測される。
『源氏物語』以後源氏の模倣作が多い中、あえて舞台を奈良時代以前に設定して、少しばかりひねくれて見せた野心作。また『保元物語』や『平治物語』『平家物語』といった合戦記が世間に流布しない時期に、早くも戦闘を大々的に取り込んだ点でも野心的。源平合戦の風聞でも耳にして、オトコノコの血が騒いだか?
内容は、弁の少将の橘氏忠が、中国に渡って恋と冒険の日々を過ごし、帰国するという話。
日本で神奈備の皇女(かんなびのみこ)への想いを育んでいた氏忠は、この初恋を実らせることができぬまま、遣唐副使として中国に渡る。
そこで、彼は、皇帝の妹で仙女の華陽公主(かようのみこ)に琴の秘儀を学んで恋に落ちるが、華陽公主は魔法の水晶玉を形見に急死。
また彼の中国滞在中、中国皇帝が死亡、剛勇の武将の宇文会の策動もあって中国は動乱に陥るが、彼は、都を追われた新帝と母后を助けて武将として戦いに参加、帝国軍は母后の知略と、彼の武勇によって、圧倒的戦力の反乱軍に立ち向かっていくことになる。帝国軍は母后の策略によって反乱軍の主力を山の迫る海岸に包囲殲滅、その際、氏忠は住吉明神の加護による分身の術で宇文会を倒す。氏忠はさらに武勲を重ねて救国の英雄となり、母后とも結ばれることとなった。これは実は、母后が、やがて阿修羅の生まれ変わりである宇文会によって生じるであろう中国動乱を沈めるため、天界から転生した天女で、彼はそれを助けて戦うよう天帝に命じられた天童であったという前世の縁の故であった。
母后の賢明な統治により国家再建が成った後、氏忠は帰国することにするが、母后は別れに際して彼に自分の姿の映る魔法の鏡を与える。
帰国後、彼は魔法の水晶玉を使って華陽公主を蘇らせて結ばれるが、その一方で鏡を見て母后のことを忍び、公主の嫉妬を受ける。また神奈備皇女は、渡唐による彼の心変わりを寂しく思った。彼のあちこちフラフラ、ヘタレな恋の物思いは尽きない。
オトコノコ向け浜松中納言物語、うつほ物語風味、狭衣物語仕立といった感じ。
だが過去の物語に倣った擬古物語などと呼ぶよりも、我々は今やもっとこの作品の呼び名にふさわしい一つの単語を持っている。
ヒロイン、転生、ファンタジー、バトル、ハーレム→ラノベ、ラノベ、ラノベ。
■『有明の別』
『有明けの別れ』や『有明のわかれ』とも書く。また『在明の別』とも。1150年代~1200年頃に成立と推測される。文治三年(1187)~1200年頃に絞り込む推測もある。
神の啓示によって生まれた大臣家の兄妹が主人公。この兄妹は実体は大臣の息子(神の啓示で息子として育てられてきた男装の女)が一人だけで、表向き兄妹だと称しているだけであった。彼(彼女)は隠身の術を使って夜な夜な貴族達の寝所を覗き見て、ヤリチン男の身勝手さやスイーツの軽薄さを知り、男女関係の不実な醜悪さに激しい嫌悪を感じる。とはいえ、不実な色恋にふける貴族の男女がろくでもないのは確かだが、超常の力を授かりながらそれを覗きに使うだけの、出歯亀野郎、もとい出歯亀女郎も大概ろくでもないわけで、この主人公、ろくでなしにふさわしく、自分も男として、女である正体を相手に隠してだましつつ、せっせと色恋に乗り出したりする。
で、こんな感じに過ごすうちに、男主人公(女)は、継父の子を身ごもって苦悩する姫君を連れ帰って嫁に迎え、子供を産ませて自分の家系を繋ぐことに成功する。ところが、男でも良いって感じに迫ってきた帝に女であることを見破られたので、男主人公は急死したことにして、その妹と称して、彼改め彼女は皇妃となる。
その後、彼女は、彼女の兄(実は彼女が中の人)が遺した彼女の甥っ子ということになっている男、すなわち彼女が自分の息子として愛情を注いだ人物(でも実は他所から孕んだ姫君を連れてきて産ませてそのまま育てた子だから息子じゃない)に、想いを寄せられたりする。
男女入れ替わりその他の内容もさることながら、文章表現においても『とりかへばや』と強く類似する箇所が多く、両者の相互関係は根深いと言われる。
■『とりかへばや物語』
現存するのは鎌倉初期の物語の『今とりかへばや』で、平安末期の物語『古とりかへばや』を改作したもの。現存本は、1170~1200年頃に成立し、1196年以降1200年頃までの数年間に絞り込めると考える見解もある。
ある貴族の家において、天狗の仕業で、男の子のような活発な性格の女の子と女の子のような引っ込み思案な性格の男の子が生まれてしまう。顔はそっくり。そして、父親の二人をとりかえたい(とりかへばや)との願いも空しく、二人はそれぞれ若君(実は女)と姫君(実は男)と呼ばれて、そのまま成長した。彼(彼女)&彼女(彼)は、やがて、それぞれ役人(中身女)と女官(中身男)として出仕するが、男君(女)は嫁を迎えるし、女君(男)はお仕えしていた女皇太子を、早くも出仕を記した文の次の文で、あっさり犯っちゃってるしで、本気でこいつら、入れ替わりライフを守り続けるつもりがあるのか疑わしいって状態に瞬く間に陥る。
それでも女君(男)はなぜだか特に問題なく女官としての日々を過ごし、一方、男君(女)の周りからやっかいな方向へ話は転回していく。男君(女)の色好みな同僚が、結婚生活がしっくりいかない男君(女)の妻を寝取りながら、さすがに思うままに逢い引きすることもならず悶々とし、その上この同僚、女君(男)に応えようもないチョッカイかけて巧いことかわされ、こちらの恋にもうじうじ悶々、いろいろ劣情が貯まりに貯まって、なんだかどちらのヒロイン(一方は男)ともゆかりのある男君(女)にムラムラ来て、男でも良いって感じにのし掛かっていったところ、なんと女だラッキーって展開で、犯ってしまう。
そして孕んだ男君(女)は、同僚に連れられ隠れ家に身を隠して女として出産に備えるが、わりと宮中なんかで色々面倒見て貰ってお兄ちゃん(お姉ちゃん)への愛情深まっていた女君(男)は、お兄ちゃん(お姉ちゃん)の失踪とそれを聞いた父君の昏倒という危機的事態に、意外にも雄々しく突然立ち上がる。ってゆーか、電光石火の腰使いで女皇太子相手に自重のないちんこを速攻ねじ込んでいた男性性豊かな人物なので、実は意外でも何でもないのだが、とにかくあっさり男姿に戻って、女君(女)の探索の旅に出発。そして、女君(女)を探しだした男君(男)は、今更元に戻れないし出産も済んだ以上は多情で頼りない同僚の世話になるのもあれだと悩み、出家を云々しだした女君(女)に、世を捨てたら親が可愛そうだし、このまま入れ替わろうと、サックリ提案。以後二人は女官(女)と役人(男)として栄達していく。天狗の業も尽きたらしい。なお同僚は事態が理解できず、探りを入れてもはぐらかされ、一人呆然。
それにしても、一方の主人公のオトコの娘は、激しい人見知りで女の子なインドア遊びの日々を過ごした幼少期はともかく、成長してからは、いちいちの決断と行動が素早くためらいなく、全く後悔したり思い悩んだりすることなく進んでいき、入れ替わり後なんか何の悩みもなく犯りたい放題だったりするのですが、この辺り、たぶん、ウジウジ苦悩してみせるばかりが能の多くの物語の男君より、よっっっっぽど男らしい。男の体に入った女というよりは、男の体に入った男、女装癖ありとでもいうべきキャラです。
ところで、『無名草子』という中世の物語論の書によれば、『古とりかえばや』は「もの恐ろし」い内容で、女主人公が男装のまま「もとどりゆるがして子生みたる」シーンや「いと汚し」と評すしかない月経の話とかがあったそうで、個人的には、そっちのヤバい話の方が読みたかった気がしないでもない。
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■『艶詞』
『艶詞』という題名の作品としては鎌倉初期の藤原隆房の歌集が知られているが、それとは別の本であり、両者に特別な関連は全くない。
平安末期か鎌倉初期の王朝文学マニアの作との推測がある。鎌倉以降のものとも。
妻を持つ男と夫を持つ女が、互いに惹かれ会うが、このような不倫関係では思うように合うこともならず、二人は苦悶する。やがて二人の関係は世間に知られ、二人は悲しみに沈む。
逢えない二人は涙の日々を送り、男は、早く来世に生まれ変わり二人一緒に暮らしたいのに迎えに来てくれない仏が恨めしい、七夕伝説の恋人でも年に一度は会っているのに自分たちは何時逢えるとも知れず、この世に神も仏もないのかなどと悩み世を恨む。
その後、二人は逢う機会を得て、仏の加護だ、生きていれば逢う機会はあるなどと、来世を望んだことを悔やんだが、やがて男は病にかかり、それを女に知らすこともできず死亡。
男の死を知った女も重病となり、薄れ行く意識の中で、自分を待つ男の姿を思い浮かべながら死亡。
■『山路の露』
平安末から鎌倉初期の成立と考える説もあるが、おそらくは鎌倉時代後期以降の成立。
『源氏物語』の続編として書かれた、二次創作作品。
参考資料
『新編 日本古典文学全集』小学館
『中世王朝物語全集』笠間書院
『体系物語文学史 第三巻 物語文学の系譜 I 平安物語』三谷榮一編 有精堂出版
『体系 物語文学史 第四巻 物語文学の系譜II 鎌倉物語1』三谷栄一編 有精堂出版
『体系 物語文学史 第五巻 物語文学の系譜III 鎌倉物語2』三谷栄一編 有精堂出版
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
大槻脩著『在明の別』桜楓社
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
書き忘れた参考資料を追加(3月15日)
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鎌倉時代には、平安時代の物語を倣うべき古典として物語が製作されたが、これを擬古物語と呼ぶ。鎌倉時代物語とも。
『源氏物語』や『狭衣物語』といった当時傑作とされた作品の模倣、再現に熱心で、武士の時代となって無力化した貴族の過去を回想し盛時に憧れる精神が色濃く、独創性に乏しいなどと評価される。
また、鎌倉物語全般の傾向としては、筋書きを描き出すのに終始して、描写に厚みの足りないきらいがあることも指摘される。
とはいえ、様々に趣向を凝らして多彩な物語を展開した点は注目されている。
14世紀頃から台頭した平易で単純素朴な大衆向け文芸『御伽草子』に、しだいに取って代わられてしまう。
この「2/2 鎌倉編」では三回に分けて作品の内容を紹介するが、「上」における個人的な注目作は
■『松浦宮物語』■『有明の別』■『とりかへばや物語』
■『松浦宮物語』
平安最末期あるいは鎌倉初期の物語。歌人にして優れた古典学者であった藤原定家の若き日の創作と考えられている。成立年は不明だが、文治(1185~1190)から建久(1190~1199)初期と推測される。
『源氏物語』以後源氏の模倣作が多い中、あえて舞台を奈良時代以前に設定して、少しばかりひねくれて見せた野心作。また『保元物語』や『平治物語』『平家物語』といった合戦記が世間に流布しない時期に、早くも戦闘を大々的に取り込んだ点でも野心的。源平合戦の風聞でも耳にして、オトコノコの血が騒いだか?
内容は、弁の少将の橘氏忠が、中国に渡って恋と冒険の日々を過ごし、帰国するという話。
日本で神奈備の皇女(かんなびのみこ)への想いを育んでいた氏忠は、この初恋を実らせることができぬまま、遣唐副使として中国に渡る。
そこで、彼は、皇帝の妹で仙女の華陽公主(かようのみこ)に琴の秘儀を学んで恋に落ちるが、華陽公主は魔法の水晶玉を形見に急死。
また彼の中国滞在中、中国皇帝が死亡、剛勇の武将の宇文会の策動もあって中国は動乱に陥るが、彼は、都を追われた新帝と母后を助けて武将として戦いに参加、帝国軍は母后の知略と、彼の武勇によって、圧倒的戦力の反乱軍に立ち向かっていくことになる。帝国軍は母后の策略によって反乱軍の主力を山の迫る海岸に包囲殲滅、その際、氏忠は住吉明神の加護による分身の術で宇文会を倒す。氏忠はさらに武勲を重ねて救国の英雄となり、母后とも結ばれることとなった。これは実は、母后が、やがて阿修羅の生まれ変わりである宇文会によって生じるであろう中国動乱を沈めるため、天界から転生した天女で、彼はそれを助けて戦うよう天帝に命じられた天童であったという前世の縁の故であった。
母后の賢明な統治により国家再建が成った後、氏忠は帰国することにするが、母后は別れに際して彼に自分の姿の映る魔法の鏡を与える。
帰国後、彼は魔法の水晶玉を使って華陽公主を蘇らせて結ばれるが、その一方で鏡を見て母后のことを忍び、公主の嫉妬を受ける。また神奈備皇女は、渡唐による彼の心変わりを寂しく思った。彼のあちこちフラフラ、ヘタレな恋の物思いは尽きない。
オトコノコ向け浜松中納言物語、うつほ物語風味、狭衣物語仕立といった感じ。
だが過去の物語に倣った擬古物語などと呼ぶよりも、我々は今やもっとこの作品の呼び名にふさわしい一つの単語を持っている。
ヒロイン、転生、ファンタジー、バトル、ハーレム→ラノベ、ラノベ、ラノベ。
■『有明の別』
『有明けの別れ』や『有明のわかれ』とも書く。また『在明の別』とも。1150年代~1200年頃に成立と推測される。文治三年(1187)~1200年頃に絞り込む推測もある。
神の啓示によって生まれた大臣家の兄妹が主人公。この兄妹は実体は大臣の息子(神の啓示で息子として育てられてきた男装の女)が一人だけで、表向き兄妹だと称しているだけであった。彼(彼女)は隠身の術を使って夜な夜な貴族達の寝所を覗き見て、ヤリチン男の身勝手さやスイーツの軽薄さを知り、男女関係の不実な醜悪さに激しい嫌悪を感じる。とはいえ、不実な色恋にふける貴族の男女がろくでもないのは確かだが、超常の力を授かりながらそれを覗きに使うだけの、出歯亀野郎、もとい出歯亀女郎も大概ろくでもないわけで、この主人公、ろくでなしにふさわしく、自分も男として、女である正体を相手に隠してだましつつ、せっせと色恋に乗り出したりする。
で、こんな感じに過ごすうちに、男主人公(女)は、継父の子を身ごもって苦悩する姫君を連れ帰って嫁に迎え、子供を産ませて自分の家系を繋ぐことに成功する。ところが、男でも良いって感じに迫ってきた帝に女であることを見破られたので、男主人公は急死したことにして、その妹と称して、彼改め彼女は皇妃となる。
その後、彼女は、彼女の兄(実は彼女が中の人)が遺した彼女の甥っ子ということになっている男、すなわち彼女が自分の息子として愛情を注いだ人物(でも実は他所から孕んだ姫君を連れてきて産ませてそのまま育てた子だから息子じゃない)に、想いを寄せられたりする。
男女入れ替わりその他の内容もさることながら、文章表現においても『とりかへばや』と強く類似する箇所が多く、両者の相互関係は根深いと言われる。
■『とりかへばや物語』
現存するのは鎌倉初期の物語の『今とりかへばや』で、平安末期の物語『古とりかへばや』を改作したもの。現存本は、1170~1200年頃に成立し、1196年以降1200年頃までの数年間に絞り込めると考える見解もある。
ある貴族の家において、天狗の仕業で、男の子のような活発な性格の女の子と女の子のような引っ込み思案な性格の男の子が生まれてしまう。顔はそっくり。そして、父親の二人をとりかえたい(とりかへばや)との願いも空しく、二人はそれぞれ若君(実は女)と姫君(実は男)と呼ばれて、そのまま成長した。彼(彼女)&彼女(彼)は、やがて、それぞれ役人(中身女)と女官(中身男)として出仕するが、男君(女)は嫁を迎えるし、女君(男)はお仕えしていた女皇太子を、早くも出仕を記した文の次の文で、あっさり犯っちゃってるしで、本気でこいつら、入れ替わりライフを守り続けるつもりがあるのか疑わしいって状態に瞬く間に陥る。
それでも女君(男)はなぜだか特に問題なく女官としての日々を過ごし、一方、男君(女)の周りからやっかいな方向へ話は転回していく。男君(女)の色好みな同僚が、結婚生活がしっくりいかない男君(女)の妻を寝取りながら、さすがに思うままに逢い引きすることもならず悶々とし、その上この同僚、女君(男)に応えようもないチョッカイかけて巧いことかわされ、こちらの恋にもうじうじ悶々、いろいろ劣情が貯まりに貯まって、なんだかどちらのヒロイン(一方は男)ともゆかりのある男君(女)にムラムラ来て、男でも良いって感じにのし掛かっていったところ、なんと女だラッキーって展開で、犯ってしまう。
そして孕んだ男君(女)は、同僚に連れられ隠れ家に身を隠して女として出産に備えるが、わりと宮中なんかで色々面倒見て貰ってお兄ちゃん(お姉ちゃん)への愛情深まっていた女君(男)は、お兄ちゃん(お姉ちゃん)の失踪とそれを聞いた父君の昏倒という危機的事態に、意外にも雄々しく突然立ち上がる。ってゆーか、電光石火の腰使いで女皇太子相手に自重のないちんこを速攻ねじ込んでいた男性性豊かな人物なので、実は意外でも何でもないのだが、とにかくあっさり男姿に戻って、女君(女)の探索の旅に出発。そして、女君(女)を探しだした男君(男)は、今更元に戻れないし出産も済んだ以上は多情で頼りない同僚の世話になるのもあれだと悩み、出家を云々しだした女君(女)に、世を捨てたら親が可愛そうだし、このまま入れ替わろうと、サックリ提案。以後二人は女官(女)と役人(男)として栄達していく。天狗の業も尽きたらしい。なお同僚は事態が理解できず、探りを入れてもはぐらかされ、一人呆然。
それにしても、一方の主人公のオトコの娘は、激しい人見知りで女の子なインドア遊びの日々を過ごした幼少期はともかく、成長してからは、いちいちの決断と行動が素早くためらいなく、全く後悔したり思い悩んだりすることなく進んでいき、入れ替わり後なんか何の悩みもなく犯りたい放題だったりするのですが、この辺り、たぶん、ウジウジ苦悩してみせるばかりが能の多くの物語の男君より、よっっっっぽど男らしい。男の体に入った女というよりは、男の体に入った男、女装癖ありとでもいうべきキャラです。
ところで、『無名草子』という中世の物語論の書によれば、『古とりかえばや』は「もの恐ろし」い内容で、女主人公が男装のまま「もとどりゆるがして子生みたる」シーンや「いと汚し」と評すしかない月経の話とかがあったそうで、個人的には、そっちのヤバい話の方が読みたかった気がしないでもない。
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『艶詞』という題名の作品としては鎌倉初期の藤原隆房の歌集が知られているが、それとは別の本であり、両者に特別な関連は全くない。
平安末期か鎌倉初期の王朝文学マニアの作との推測がある。鎌倉以降のものとも。
妻を持つ男と夫を持つ女が、互いに惹かれ会うが、このような不倫関係では思うように合うこともならず、二人は苦悶する。やがて二人の関係は世間に知られ、二人は悲しみに沈む。
逢えない二人は涙の日々を送り、男は、早く来世に生まれ変わり二人一緒に暮らしたいのに迎えに来てくれない仏が恨めしい、七夕伝説の恋人でも年に一度は会っているのに自分たちは何時逢えるとも知れず、この世に神も仏もないのかなどと悩み世を恨む。
その後、二人は逢う機会を得て、仏の加護だ、生きていれば逢う機会はあるなどと、来世を望んだことを悔やんだが、やがて男は病にかかり、それを女に知らすこともできず死亡。
男の死を知った女も重病となり、薄れ行く意識の中で、自分を待つ男の姿を思い浮かべながら死亡。
■『山路の露』
平安末から鎌倉初期の成立と考える説もあるが、おそらくは鎌倉時代後期以降の成立。
『源氏物語』の続編として書かれた、二次創作作品。
参考資料
『新編 日本古典文学全集』小学館
『中世王朝物語全集』笠間書院
『体系物語文学史 第三巻 物語文学の系譜 I 平安物語』三谷榮一編 有精堂出版
『体系 物語文学史 第四巻 物語文学の系譜II 鎌倉物語1』三谷栄一編 有精堂出版
『体系 物語文学史 第五巻 物語文学の系譜III 鎌倉物語2』三谷栄一編 有精堂出版
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
大槻脩著『在明の別』桜楓社
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by trushbasket
| 2009-02-15 00:16
| My(山田昌弘)








