2009年 04月 13日
鎌倉時代のハードエロノベル『我身にたどる姫君』2 ~レイプレイプレイプあの娘をレイプ?~
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今回は、13世紀のエロ小説『我身にたどる姫君』紹介の第二回。
この『我身にたどる姫君』は、第一回でヤンデレな皇女様の激烈な愛欲を紹介しつつ言ったように、エキセントリックなキャラクターや、苛烈にエロい情念・情景描写が魅力的な長編物語です。
で、この第二回では、この物語のエロシーンのうちから、激しく詳細に描写される第三巻のレイプシーンを紹介しようと思います。
(原文引用は徳光澄雄著『我身にたどる姫君全註解』有精堂より)
ところで物語文学に出てくる姫君は、その多くがほとんど何の意思も持たず、何が起きても憂鬱そうで常に悲しんでるって感じのキャラクターなんですが、
そんなのがヒロインでは、男が迫ればとりあえず泣き悲しんで、どんなふうに交わろうがレイプまがいになってしまい、
かといって
男を明確に拒否するほどの態度はおろか意思すら無いところに、迫ってくる男は優美な物語にふさわしい主人公補正のかかった超絶イケメンばっかりというわけで、
レイプまがい以上の本物のレイプシーンと言えるような深刻な事態も、ほぼ無いと言って良い状態です。
まあ、物語の、女が犯られるシーンなんてものは、読者が感情移入して、何にもしてないのに超絶イケメン with 富と権力(読者である私はこんな彼が大好き、つまり私の身代わりのヒロインも心の底とか最終的には彼のことが大好き)を魅了して狂わせて一方的に渇望される私って、世界でいちばんス・テ・キ(はぁと)な自己陶酔妄想に浸るためのダメ人間ツールですからね。
だからそれが、ただの和姦でもなく本物のレイプではなく、レイプの香りのする和姦になってしまうというのも、なかなか避けがたい一種の定石というものです。
ところが、物語文学史上に燦然と黒光りするこのハードエロ小説『我身にたどる姫君』では、本気で手折られまいとする女と、それを圧伏しようとする男の、二つの意思が火花を散らす、激しいレイプシーンが登場し、なかなか珍しい見所ある逸品となっております。
で、そのシーンに至る経緯について述べますと、
とある姫君に思いをよせた、二人の貴公子がいました。
一方は行動的な漁色家の二の宮。
他方は、その友人で真面目ぶったムッツリ君の大将(一回目で紹介した権中納言)。
まあ、物語文学上良くある対照的なキャラ設定の貴公子達です。
それが二の宮は姫君の侍女の中務の君の手引きを得て、姫君をさらってしまおうと計画、
大将はこれも姫君の侍女の侍従の手引きを得て、姫君の寝所への潜入を図っているという次第。
そして、
<訳>
……。大将は夜の静まり果てたのを見て、施錠されない戸を、そっと押し開けて侵入し、荒い風の音に紛れて寝床を囲む御帳の後ろに必死に身を縮めて隠れておられたが、まだ侍女達が起きていて動き回っているのではないかと聞き耳を立てておられた。すると奥の方の戸が、そっと開く気配がした。やはり人がいるか、まずいな、などと思っていたところ、たいへん優雅な姿の男が入ってきた。恋人がいたとは何て事だ、いや、あり得ぬことではないがと、一瞬、意外の事態に落胆を感じていたが、それが誰とも見分けることはできなかった。男は、灯火を扇ぎ消して、随分と馴れた顔をして御帳の内へと近寄っていく。ここで大将は、身を乗り出してしまいそうになりながら、くやしく眺めておられた。ところが、たちまちの内に男は女を無理矢理抱えて出てこようとする気配であって、女がうろたえる様が、哀れを誘う。おかしい、これはどういうことだと思ったが、とはいえ姿を現し問い質すわけにもいかず、動くこともならぬまま絶望するしかなくて、ただその場にたたずむと、女は酷くうろたえる様子ながら、強引に引きずり出そうにもそうは行かないかのようで、女が寝床から転げ落とされ引っ張り合いになっていた。二の宮が布団をつかんでいる以上、姫君はついには引きずり出されてしまう。姫君は、たいへん困惑し驚いていたが、日々色々と思うところがおありであったので、これは疑いなく大将だろうとお考えになったが、かの大将殿は当然これが自分だと知らずにやっているはずもない。大将を近づけて、声を聞かせて変に気を持たせたりなどしなければと、床に転がり落ちたまま、わなないている。
二の宮は、簡単にさらって逃げられると思っておられたところ、取るに足りない女の身とはいえ、それでも無抵抗なわけではないから、思うようには行かなくて、そこから次へと進めぬままに、腹立ち恨みに煮えたぎっておられた。そもそも二の宮は、かつて姫君に迫った音羽の里で、保護者の尼君に憎らしくも邪魔をされ、それさえ未だに繰り返し繰り返し糸を巻くかのように何度も悔しく感じて続けているのであるから、なお無理に押し迫って来そうないきり立った様子であり、姫君はつくづく辛く悲しむ気配で、とはいえ女でありながら、心の底には強い芯の通った方で、そうそう容易い相手ではなかった。姫君は、どうしようもなく狼狽えていたところから、見事心を静めて、冷たく軽蔑しておられるご様子だが、二の宮はそれならさらなる力ずくで引きずり出してもぎとって行こうと、それで人が来てもやむを得ないとばかりに、こちらの近い戸口から出ていこうとして、女も尋常でない狼狽えであったが、それでもなかなかそこへと出て行くことはできなかった。狭い扉を出て行くときに暴れて音をさせたりしないように開けておき、どうしようもなくしておいて、来たときとは違うその戸口から、女を抱えて渡り廊下の方へ出ていくようである。大将を手引きした侍女の侍従は、目を背けて寝ころんで考え事をしていたところ、男が慎重に忍び込んできて、これをどうして別人と思うだろう。ただ大将であると思い込んで、気を利かせ、そっと隅のほうに寄って寝ころんでいたが、引きずり落とされた姫君が、侍従の着物の裾が手に触れたところで、それをたいへん強く掴んだため、あれこれ引っ張り合う様子が、さすがに見過ごせない様子に伝わってきたので、自分が手引きした大将にしてはあり得ないほどの乱暴な行動なので、ふと近寄ってきた。そして、かつて音羽で姫君に迫った二の宮であると感じ取り、たいそう危険に感じたので、恥じらいをも捨てて一心不乱にその手にとりついた。荒くれた男といっても、女ながら必死につかみ取れば、どうして引き離すことができるだろう。これに対し二の宮は、かつて邪魔した尼君よりも激しく憎いとお感じになったが、侍従は、さらに引っ張り合いの間に転がり入り込んで、荒ぶる鬼のようにしがみついてくるので、どうしようもなくなって、……。……(中略)……。二の宮を手引きした中務の君は、自分だけは知らぬ存ぜぬと空寝を決め込んでいたところ、御帳のうしろの大変騒がしい風の音に、体も冷えてきたということで、渡り廊下の方から出て行かれたのかと思ったのだが、まだ間近で荒れているご様子で、どういうことか不審ではあったが、ひたすら知らぬ存ぜぬを貫くのみと、布団を頭まで引きかぶっていた。二の宮は、危険を脱したと、姫君がわななきながらもうれしく思ったかいもなく、なお高ぶっていて、さらにいきり立って来るやもしれず、まだお帰りにならずにいるのを、姫君は注意しなくてはと辛い思いで見ていたが、人の心も感じ取れず、何を言われても理解できない昔のような愚かな身というわけではない以上、ここは人を呼んで刺激するより巧く騙してやり過ごそうと、思い巡らし偽りを申し上げる。長い夜ももはや甲斐無く、暗闇を名とする暗部山ですら闇を保てぬ夜明けが近づいてきていたが、姫君はしだいに甚だ心惑って、全てを申し上げる前にむせび泣かれ、これに続いた侍従のほうも、夜の明け行くのに気づかぬほどに錯乱していたのだが、実は空に夜明けの月が残っているのが不体裁なほどの明るい時刻になっていたから、侍従が大層に約束しておいて、ひたすら「旦那様。この通りもうこれからは思いのままでございますから、どうか今日の所は」と、仏にものを申し上げるかのような態度で、手をすり媚びを示して騙しの意図で従順な言葉を申し上げたところ、二の宮はそれを慰めとして人目を忍んで出て行かれたのであった。
というわけで、以上、レイプレイプ騒いだ割に、実はレイプ未遂のシーンでした。
レイプ未遂とまで言えるのかどうかも厳密に考えれば怪しい感じで、まだレイプの準備段階だから言い過ぎとか突っ込まれそうな気もしますが、
セックス目的の暴力沙汰で言い逃れの余地なく悪質な大暴れですから、
レイプでもレイプでなくても、大差ないってことで。
だいたい、これほど詳細で具体的でいかにもリアリティに溢れてそうな迫真の暴力描写は、それがセックス目当てである以上は、たとえ未遂でも、あるい準備でも、そこらの無理矢理セックスシーンより、よっぽどレイプと言うに値する気がしないでもないでしょう?
いや、むしろ、無理にでもそんな気になれ。
ということで、嘘・大げさ・紛らわしいなタイトル&紹介文については、どうぞ勘弁してください。
レイプレイプ書きたかっただけなんです。
第一回「~狂乱するヤンデレ皇女の苛烈な愛欲の日々~」はこちら
第三回「~百合ん百合んな姫巫女の嫉妬渦巻くレズハーレム~」はこちら
4月29日 原文引用部の欠落を補充
参考資料
徳光澄雄著『我身にたどる姫君全註解』有精堂
『新編 日本古典文学全集』小学館
『中世王朝物語全集』笠間書院
『体系 物語文学史』三谷栄一編 有精堂出版
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
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れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
物語と「かいまみ」
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kaimami.html
西欧中世における恋愛、性の諸相
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/051209.html
この『我身にたどる姫君』は、第一回でヤンデレな皇女様の激烈な愛欲を紹介しつつ言ったように、エキセントリックなキャラクターや、苛烈にエロい情念・情景描写が魅力的な長編物語です。
で、この第二回では、この物語のエロシーンのうちから、激しく詳細に描写される第三巻のレイプシーンを紹介しようと思います。
(原文引用は徳光澄雄著『我身にたどる姫君全註解』有精堂より)
ところで物語文学に出てくる姫君は、その多くがほとんど何の意思も持たず、何が起きても憂鬱そうで常に悲しんでるって感じのキャラクターなんですが、
そんなのがヒロインでは、男が迫ればとりあえず泣き悲しんで、どんなふうに交わろうがレイプまがいになってしまい、
かといって
男を明確に拒否するほどの態度はおろか意思すら無いところに、迫ってくる男は優美な物語にふさわしい主人公補正のかかった超絶イケメンばっかりというわけで、
レイプまがい以上の本物のレイプシーンと言えるような深刻な事態も、ほぼ無いと言って良い状態です。
まあ、物語の、女が犯られるシーンなんてものは、読者が感情移入して、何にもしてないのに超絶イケメン with 富と権力(読者である私はこんな彼が大好き、つまり私の身代わりのヒロインも心の底とか最終的には彼のことが大好き)を魅了して狂わせて一方的に渇望される私って、世界でいちばんス・テ・キ(はぁと)な自己陶酔妄想に浸るためのダメ人間ツールですからね。
だからそれが、ただの和姦でもなく本物のレイプではなく、レイプの香りのする和姦になってしまうというのも、なかなか避けがたい一種の定石というものです。
ところが、物語文学史上に燦然と黒光りするこのハードエロ小説『我身にたどる姫君』では、本気で手折られまいとする女と、それを圧伏しようとする男の、二つの意思が火花を散らす、激しいレイプシーンが登場し、なかなか珍しい見所ある逸品となっております。
で、そのシーンに至る経緯について述べますと、
とある姫君に思いをよせた、二人の貴公子がいました。
一方は行動的な漁色家の二の宮。
他方は、その友人で真面目ぶったムッツリ君の大将(一回目で紹介した権中納言)。
まあ、物語文学上良くある対照的なキャラ設定の貴公子達です。
それが二の宮は姫君の侍女の中務の君の手引きを得て、姫君をさらってしまおうと計画、
大将はこれも姫君の侍女の侍従の手引きを得て、姫君の寝所への潜入を図っているという次第。
そして、
……。大将は、夜の静まりはてぬるを聞きて、もとより鎖さぬ戸なれば、やをら押しあけて、風の音の荒きまぎれに、御帳の後にいみじうほそり居たまひぬるに、なほ人やうちみじろがんと聞きたまふ。奥の方を、いとやをら開くなり。さればよ、わづらはし、と思すに、男のいみじうなよびたるぞ入り来る。あなうたて、さば、かかる事もある世なりけりと、時の間にめづらかにあさましく思せど、その人と見え分かるべくもあらず。灯を扇ぎ消ちて、いと馴れ顔にぞ寄りぬる。我が身さへ飛び立ちぬべく、あさましうぞ見たまふ。すなはちかき抱きて出づる気配するに、女の思しまどへるさましるく、いとほしげなり。いなや、こはいかなる事ぞと思へど、我さし出で問ふべきにもあらねば、ただあきれたる心地して動かれぬに、ただここもとにぞ、女のいみじう思ひまどへるに、えしたたかにも出でぬにや、まろび落ちてひこしろふ。宮の御衾をとらへたまへりけるを、やがて引かれ出でにけり。いとあやしうも驚かれたまふべけれど、ただ世と共にいかにかとのみ思さるる御身なれば、疑ひなき大将と思すに、かの君はおのづから知らぬやうあらじ。われし声をだに聞かれずばと、床のしもにまろび落ちてわななきたまふ。
宮はよく逃げなむと思しつるも、さこそ言ふかひなき女の御身なれ、さ言ふばかりかいしなひてあらぬには、え思すままにもあらで、ここながらぞ、いみじきことを恨みつづけたまふ。音羽の里をうちはじめて、尼上のさばかり憎き倭文の苧環とりかへさぬくやしさを思しつる人は、押したちあさましき御気色を、うく心うく思しまどへる御気配、女といふ中にも、いみじう心ふかくつよき所おはする君にて、さしもあなづらべうもあらず。限りなく思しまどへるものから、さまよくしづめて、あさましとあはめたまへる御けはひの、いみじうめでたきを、え耐ふまじく引き動かしてもぎとらまほしきに、なほ人近かなるがわりなきにや、この戸口を出でなんとするを、女のすべてめづらかに心うしと思ひまどひたまへるに、え出でやらず。せばき枢を音せじと構ふるに、せんかたなければ、かき抱きて、渡殿ざまにたどり出づなり。侍従は、まして目もあはず思ひ臥し、たるに、男のいみじうしのび来るを、異人と思はんやは。ただそれと心得て、やをら隅によりて、まろびふしたる、衣の裾のさはるを、ひこしろひ落ちて、いとつようとらへたまへるに、とかく引き動かす気配、さすがにいとしるきを、我が御方に聞きなして、いとめづらかなれば、ふと寄り来ぬ。ありし宮なりけりと思ふに、いと恐ろしければ、恥ぢを捨ててただ御手にぞとりつきぬる、いみじき男と聞こゆれど、女のせちにとらへたらんには、いかが引き放ちたまはん。ありし尼上より殊にいみじき憎さを思せど、中にまろび寄りて、すべていみじき鬼のようにまつはれきこゆれば、せんかたなくて、……。……(中略)……。中務の君は、我だに知らぬさまにと空寝したれば、御帳のうしろいとさわがしかりつる風の音に、身のみ冷え居たるに、渡殿ざまにいでたまふにやと思ふを、またいとけ近かくいみじき御気配を、いかなればと心得ねど、ただいと空知らずをすばかりと、引きかづきたり。宮は、あさましかりつるを逃れぬと、うれしう思しわななきつるかひなう、いみじきに、ましていかなる御心惑ひかはあらん、まだも帰りおはせぬを、お心しらひにやとつらう思せど、なかなか今は、ありしばかりのもののなさけなく、よろづを聞き入れたまふまじき御身ならぬにや、人にだに知らせずをこつりやりてんとぞ、思し構ふる。ながき夜なれど、くらぶの山のかひなさは、ありしより殊に心のみまどひて、聞こえやりたまはずむせかへりたまふまぎれに、侍従は明け行くを知らぬばかり思ひまどへれば、げに有明けの月さへかたはなる夜のさまなれば、いみじきことを誓ひ置きて、侍従ぞただ「あが君や。のちはいかにも御心のままにを侍らん」と、仏にもの聞こゆるやうに、手をすりつつをこつりたてまつれば、これを慰めにてまぎれいでたまひぬる。
<訳>
……。大将は夜の静まり果てたのを見て、施錠されない戸を、そっと押し開けて侵入し、荒い風の音に紛れて寝床を囲む御帳の後ろに必死に身を縮めて隠れておられたが、まだ侍女達が起きていて動き回っているのではないかと聞き耳を立てておられた。すると奥の方の戸が、そっと開く気配がした。やはり人がいるか、まずいな、などと思っていたところ、たいへん優雅な姿の男が入ってきた。恋人がいたとは何て事だ、いや、あり得ぬことではないがと、一瞬、意外の事態に落胆を感じていたが、それが誰とも見分けることはできなかった。男は、灯火を扇ぎ消して、随分と馴れた顔をして御帳の内へと近寄っていく。ここで大将は、身を乗り出してしまいそうになりながら、くやしく眺めておられた。ところが、たちまちの内に男は女を無理矢理抱えて出てこようとする気配であって、女がうろたえる様が、哀れを誘う。おかしい、これはどういうことだと思ったが、とはいえ姿を現し問い質すわけにもいかず、動くこともならぬまま絶望するしかなくて、ただその場にたたずむと、女は酷くうろたえる様子ながら、強引に引きずり出そうにもそうは行かないかのようで、女が寝床から転げ落とされ引っ張り合いになっていた。二の宮が布団をつかんでいる以上、姫君はついには引きずり出されてしまう。姫君は、たいへん困惑し驚いていたが、日々色々と思うところがおありであったので、これは疑いなく大将だろうとお考えになったが、かの大将殿は当然これが自分だと知らずにやっているはずもない。大将を近づけて、声を聞かせて変に気を持たせたりなどしなければと、床に転がり落ちたまま、わなないている。
二の宮は、簡単にさらって逃げられると思っておられたところ、取るに足りない女の身とはいえ、それでも無抵抗なわけではないから、思うようには行かなくて、そこから次へと進めぬままに、腹立ち恨みに煮えたぎっておられた。そもそも二の宮は、かつて姫君に迫った音羽の里で、保護者の尼君に憎らしくも邪魔をされ、それさえ未だに繰り返し繰り返し糸を巻くかのように何度も悔しく感じて続けているのであるから、なお無理に押し迫って来そうないきり立った様子であり、姫君はつくづく辛く悲しむ気配で、とはいえ女でありながら、心の底には強い芯の通った方で、そうそう容易い相手ではなかった。姫君は、どうしようもなく狼狽えていたところから、見事心を静めて、冷たく軽蔑しておられるご様子だが、二の宮はそれならさらなる力ずくで引きずり出してもぎとって行こうと、それで人が来てもやむを得ないとばかりに、こちらの近い戸口から出ていこうとして、女も尋常でない狼狽えであったが、それでもなかなかそこへと出て行くことはできなかった。狭い扉を出て行くときに暴れて音をさせたりしないように開けておき、どうしようもなくしておいて、来たときとは違うその戸口から、女を抱えて渡り廊下の方へ出ていくようである。大将を手引きした侍女の侍従は、目を背けて寝ころんで考え事をしていたところ、男が慎重に忍び込んできて、これをどうして別人と思うだろう。ただ大将であると思い込んで、気を利かせ、そっと隅のほうに寄って寝ころんでいたが、引きずり落とされた姫君が、侍従の着物の裾が手に触れたところで、それをたいへん強く掴んだため、あれこれ引っ張り合う様子が、さすがに見過ごせない様子に伝わってきたので、自分が手引きした大将にしてはあり得ないほどの乱暴な行動なので、ふと近寄ってきた。そして、かつて音羽で姫君に迫った二の宮であると感じ取り、たいそう危険に感じたので、恥じらいをも捨てて一心不乱にその手にとりついた。荒くれた男といっても、女ながら必死につかみ取れば、どうして引き離すことができるだろう。これに対し二の宮は、かつて邪魔した尼君よりも激しく憎いとお感じになったが、侍従は、さらに引っ張り合いの間に転がり入り込んで、荒ぶる鬼のようにしがみついてくるので、どうしようもなくなって、……。……(中略)……。二の宮を手引きした中務の君は、自分だけは知らぬ存ぜぬと空寝を決め込んでいたところ、御帳のうしろの大変騒がしい風の音に、体も冷えてきたということで、渡り廊下の方から出て行かれたのかと思ったのだが、まだ間近で荒れているご様子で、どういうことか不審ではあったが、ひたすら知らぬ存ぜぬを貫くのみと、布団を頭まで引きかぶっていた。二の宮は、危険を脱したと、姫君がわななきながらもうれしく思ったかいもなく、なお高ぶっていて、さらにいきり立って来るやもしれず、まだお帰りにならずにいるのを、姫君は注意しなくてはと辛い思いで見ていたが、人の心も感じ取れず、何を言われても理解できない昔のような愚かな身というわけではない以上、ここは人を呼んで刺激するより巧く騙してやり過ごそうと、思い巡らし偽りを申し上げる。長い夜ももはや甲斐無く、暗闇を名とする暗部山ですら闇を保てぬ夜明けが近づいてきていたが、姫君はしだいに甚だ心惑って、全てを申し上げる前にむせび泣かれ、これに続いた侍従のほうも、夜の明け行くのに気づかぬほどに錯乱していたのだが、実は空に夜明けの月が残っているのが不体裁なほどの明るい時刻になっていたから、侍従が大層に約束しておいて、ひたすら「旦那様。この通りもうこれからは思いのままでございますから、どうか今日の所は」と、仏にものを申し上げるかのような態度で、手をすり媚びを示して騙しの意図で従順な言葉を申し上げたところ、二の宮はそれを慰めとして人目を忍んで出て行かれたのであった。
というわけで、以上、レイプレイプ騒いだ割に、実はレイプ未遂のシーンでした。
レイプ未遂とまで言えるのかどうかも厳密に考えれば怪しい感じで、まだレイプの準備段階だから言い過ぎとか突っ込まれそうな気もしますが、
セックス目的の暴力沙汰で言い逃れの余地なく悪質な大暴れですから、
レイプでもレイプでなくても、大差ないってことで。
だいたい、これほど詳細で具体的でいかにもリアリティに溢れてそうな迫真の暴力描写は、それがセックス目当てである以上は、たとえ未遂でも、あるい準備でも、そこらの無理矢理セックスシーンより、よっぽどレイプと言うに値する気がしないでもないでしょう?
いや、むしろ、無理にでもそんな気になれ。
ということで、嘘・大げさ・紛らわしいなタイトル&紹介文については、どうぞ勘弁してください。
レイプレイプ書きたかっただけなんです。
第一回「~狂乱するヤンデレ皇女の苛烈な愛欲の日々~」はこちら
第三回「~百合ん百合んな姫巫女の嫉妬渦巻くレズハーレム~」はこちら
4月29日 原文引用部の欠落を補充
参考資料
徳光澄雄著『我身にたどる姫君全註解』有精堂
『新編 日本古典文学全集』小学館
『中世王朝物語全集』笠間書院
『体系 物語文学史』三谷栄一編 有精堂出版
中村真一郎著『色好みの構造-王朝文化の深層-』岩波新書
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貴公子たちの蛮行―因果の歴史が、また一ページ―
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
物語と「かいまみ」
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kaimami.html
西欧中世における恋愛、性の諸相
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/051209.html
by trushbasket
| 2009-04-13 01:03
| My(山田昌弘)








