2009年 08月 01日
中世最凶 魔性の男の娘物語『風に紅葉』 ~ある夫婦を尻穴とチンコで貪り尽くした男の娘の話~
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なんだか皆さん、女の姿をした男、いわゆる男の娘の話が好きなようですから、今回は、中世物語文学中、最凶の男の娘モノ『風に紅葉』を紹介。
これは主人公の男が、出先で魔性の男の娘に出会い、その娘を連れて返って家庭に波乱を巻き起こす話。
ただ、始める前に少し注意書き。
とりあえず、物語文学は人物が名前もってなくて役職を呼び名にするので、役職が変わるたびに呼び名が変わり、厄介なことこの上ないのです。そこで主人公は殿、主人公が拾った若君は元服の前後にかかわらず若君と呼んでおくことにします。
また原文引用は『中世王朝物語全集』笠間書院から
それでは最凶の男の娘の元へとどうぞ。
<訳>
松の下枝を洗う白波、入り海にかけて造られた釣殿は、まことに物寂しい。殿は、貴賓用の座席らしき所の御簾を巻き上げて、ぼんやりしておられたところ、先ほどの男が来て、奥の障子を開け、灯火を差し上げたその方向を見やると、この上なく可愛らしい小柄な女の子が居た。まこと思いも寄らない事態に、近くに寄って御覧になると、十一、二歳ほどの人が白い衣に長い感じの袴を着て、髪の裾が扇を広げたかのように美しく、容貌にここはと気になるような短所もなく、一々どこをとっても並ではない。その上、鏡に映る御自分の姿や、姉の宣燿殿女御などに似ている。「思いもよらないことだなあ」といって、殿がその子の御髪をかきやりなどしておられると、さっきの男が立ち去らず、畏まって申し上げるには、「これは、殿のお父上である関白殿下の御嫡子で、中納言殿と申された方が、亡き後にお遺し申された若君でいらっしゃいます。私の同腹の姉で兵衛督と申した者の娘は、中納言の君と言って、中納言殿のところにお仕えしていたのですが、中納言殿が御胤を遺して亡くなられ、その後、若君がお生まれになったのでございます。中納言殿の母君がご存命であれば報告いたしますところでした。ところが、御忌みの期間さえ過ぎないうちに、母君も先を争うかのようにお亡くなりになり、さらにまた、この若君を生み申し上げてまもなく、中納言の君も亡くなってしまいましたので、中納言の君の母親である者が、賤しい袖に宝玉を包むかのような気持ちで、お世話に精を出していたのでございますが、これも一昨年亡くなってしまいましたので、その後、私の身一つでお世話申し上げておりました。そして、事情が事情だと思いましたので、ずっと女の姿で過ごしていただいたのでございます。『どうにか良い機会があればなあ。この旨申し上げるのだが』と、御社でも祈っておりましたところ、このような機会を得ることが出来まして、それはもう嬉しくて」と言ってひたすら泣いていた。事情といい、この若君の可愛さなどといい、殿も涙を押し拭っていたが、若君自身も涙を浮かべ、恥じらっているかの様子で顔をそらしている。……。殿は「さすがに今更、中納言の子と言っても、疎遠な関係のような感じがしないでもないから、ただ父上の御子ということにして披露してやるからね。それでいいだろう」と言って、かき撫でながら、可愛らしいとお思いであるが、若君を育ててきたあの男も、たいへん嬉しいことだと眺めている。……
こうして感動の出会いを果たした、主人公と我らがお姫様、いえ男姫さまですが、なんとそれがいきなりエロな方向に……。
<訳>
特に思いをかき立てる事情がなくてさえ、稚児を見逃すことなどまずできない殿の御性格であるから、あとは「今日はもう疲れたから、さあ休むことにしようよ」と言って、若君をかき抱いて寝転がりなさる。殿が「これまで夜は誰と寝てたのかな」と仰るのに対し、若君が「尼上と寝ていたけど、亡くなったから一人で寝てるよ。顔の良くない人とは寝たくなんかないもん」と仰る声は、とても可愛らしい。その体は磨いたような手触りで、女の様子以上に素晴らしい。
……
<訳>
ひたすら二人で戯れあって過ごしておられたが、お供の民部卿が大げさな態度で、お車が参った旨申し上げたところ、殿はこの若君を女のような扱いでわきに引き寄せ、車にお乗せになる。ほどなく、引き船に乗りかえて綱を速く引かせ、夕方、都に到着なさった。
そして、都では主人公は男姫さまを御機嫌であちこち連れ回し見せびらかして回ります。
<訳>
……。……殿はいつまでもいつまでもこの若君から手を離すことさえない状態で、「こんな子を手に入れてきたよ」と言って、妻の一品宮に報告なさる。「女を連れてきたと思って、心配しているのかな」などと妙な感じに殿が尋ね申し上げなさるので、なるほど、よく見れば男性的と見える顔つきであるのも、なんだか変な感じだと一品宮は苦笑なさっておられるが、それが美しい御様子なので、殿はまずは近寄って、細やかに語らっておられる。
……
……。殿が姉である宣燿殿女御の所へと、「娘ができたんですが、衣裳を一揃いくれませんか」と申し上げなさると、女郎花の襲に紅の御単衣、二藍の御小袿を差し上げてこられたので、殿は若君をこれに着せ替え申して、関白殿の所へも紹介に連れて行かれる。
……弁という人を乳母に付けて、「夜もその人と休むんだよ」と殿が仰ったところ、若君が伏し目になって、「殿の側じゃないなら、一人で寂しく寝るもん」と仰る心苦しさに、結局、「しょうがないなあ、それならそうしようね」といって、一品宮と供寝するお側にまで連れ込んでおられる。……
<訳>
……。……殿は宣燿殿女御の所へと若君をお連れして、御覧に入れた。その後様子の可愛らしさを、この女御もたいへん愛しておられる。若君は幼心にも、女御の御様子が、日頃人より優れて美しく慕わしいと拝見していた一品宮以上に、一層眩しくおられるのを、じっと拝見申し上げなさるが、殿はこれをおもしろくお思いで、近寄って、「あっちの一品宮のと比べて、こっちの人をどう思う」と尋ねると、若君はにっこり笑って、「一品宮も良い感じだけど、こっちの人には誰も勝てそうにないね。殿に似てるのは、さすがに姉弟だね」とおっしゃる。……殿は「この子はまだお歯黒を付けてないんですが、せっかくだから姉上御自身で付けてやってくれませんか。ちょっと出かけてくるけど、戻ってくるまで、お前はここにいるんだよ」など、こまごまと言い置いて、お出かけになったが、若君がただもう女のようで、まことに可愛らしく、いじってみたくなる様子なので、眉のお手入れなどを、女御御自身の手でなさっていると、若君は女御のお手を舐め回してくる。女御は「そんな悪さをするなら、もうやってあげませんよ」といって、侍女の大納言の君にあとをやらせようとなさったのだが、若君は「じゃあ、もういらない。自分でやってくれないなら、泣いちゃうよ」と言って、大納言の君の手を押しのけなさる。女御は「慣れないことすると、疲れるわね」といって横になられるが、若君は「じゃあ、ボクも寝る」と言って、女御の御衣を引き開けてお側に入りこんでお休みになる。「一品宮の傍にいるときも、こんなことしてるんじゃないでしょうね」と女御が仰ると、「殿がいないときは、こうやって寝るの」と若君は仰る。大納言の君が、「それでは殿がいないときは、どこでお休みになっているのですか」とお尋ね申し上げると、若君は「殿は、一品宮とボクの真ん中に入って寝るよ。あっち向いたらボクが恨むから、ボクのほう向いて寝るんだ」などと仰るので、人々は笑っている。
<訳>
若君も疲れて、お休みになった頃、殿はお帰りになる。……。殿はもう若君を放って置くことなど出来ず、「さあお歯黒をつけた口を見せておくれ。さっきよりもまた少し綺麗になったよ。どこにいても時間が経てば、『待っているだろうな』なんて、気に掛かってしょうがないんだが、これこそ二人の絆というものだね。……」……などと、溺愛の御様子で、若君を連れてお帰りになった。
それからそれから少し時が経ち、男の娘は元服することになり、男の姿になるのですが、それでも主人公ベッタリな生活が続きます。
<訳>
年が明けて、正月に辞職した関白殿の若君と称する人が現れて、元服なさった。……。この若君を婿に迎えた女君はそれより二つほど年上で、女盛りの御様子だが、若君は妻ができてもなお内大臣になった殿のお側を、夜も離れたがらず過ごしておられたが、これに対して殿は「今は元服して男の姿になってる以上、どうにも都合が悪く、人目についてしまうよ。あの女の所にでも寝に行きなさい」と、なだめすかし申し上げている。
その内、主人公は聖人のお告げを受けて、大きな禍を避けるため、しばらく仏教の修行に出て行くことになるのですが、それでも二人の仲は引き裂けない。
かいがいしく使える様は、まさに主人公の嫁(オトコ)。
ところが、そんな風に過ごすうち、主人公が変なこと言い出します。
<訳>
……。……若君は、いつも、ひたすら殿のお側を離れなさらない。若君は殿が真夜中の勤行をする際にはその身の回りのお世話までなさって、どこともなく仮眠しており、勤行が終わると、そこから殿のお側へ一緒になって夜を明かしておられるのだが、殿は、一品宮の独り寝を、たいへん気の毒にお思いになって、「いいこと思いついた。お前が、子供の頃みたいに、あいつの寝床に入り込んで寝れば良い」と仰ったところ、若君は「むちゃくちゃだよ」と聞き入れようとしないのを、とても真剣に、あれこれ仰って、そういう一品宮のところへ行かせたところ、……。……何もなしに済むはずもない。これは逃れられない運命だったのだろう。
<訳>
一品宮はまして、情けないとも辛いとも言いようもない。「殿は、ただひたすらに、私のことを嫌い追いやろうとのお考えなのだ」とお考えになっての恨めしさは、悔しく悲しくて、起きて出てくることさえなさらない。涙に暮れて、臥せっておられるが、殿はそこへとお入りになって、……。……
「気にするなどっちが犯るも変わりないあいつは俺の分身なんだよ
さりげなくしてなさいよ。でないと人に怪しまれかねないからね」など、……慰め申し上げたけれど、一品宮は思い沈んで、返事もなさらない。
<訳>
若君は、尋常でなく心乱れて、どこへもお出かけにもならず、ご自分の部屋でぼんやりしておられたが、殿がお呼びになったところ、これがひどくお泣きになっておられたのが明らかな顔つきなので、……。
<訳>
その後も、こういった密通を邪魔するはずの立場の殿がむしろ協力して、何度も絶えることなく続く若君との御仲を、一品宮は、情けなく悲しいことと思い悩んでいて、……殿は、これをたいへん寂しく、困ったこととお思いである。若君の様子も、例の如くであって、……殿はあれもこれも心苦しくやるせなく、さすがに苦笑しておられる。……
こうして心痛の日々を過ごし気分の晴れることのないまま、つまり主人公の家に幸福な落ち着いた日々が再び訪れることのないまま、一品宮は病死してしまいます。
たぶん、主人公があんまり無茶苦茶するせいで、心の方から病んでいったのでしょうね。
そして主人公は悲しみの余り、ちょっとした奇行に走ります。
<訳>
殿は絵を描くことに優れていたので、あまりの恋しさに一品宮の御面影を写してお描きになり、あれこれ描いて慰めになさっておられたが、その中で特に向かい合って過ごしているかのように思える絵を、本尊となさって、阿弥陀仏に並べて、夜の御帳にお掛けになっている。……
で、主人公は、結局、引きこもってしまうんですが、
たとえ二次元を崇めるキモい人間になろうと、引きこもりになろうと、
若君は主人公のことを慕い続け、主人公も若君を愛し続けます。
二人は身を寄せ合って、一品宮の死後の寂しい世界に耐えて……。
ってゆーか二人でベッタリしすぎる余り、自分と相手の区別が曖昧になって、あいつのチンコは俺のチンコ同然とか主人公がわけ分からんこと言い出したせいで、悲劇が展開していった気がするので、この期に及んでまだそれかって感がないでもないですが……。
<訳>
世の中では五節などと言って、舞い戯れる日であるが、……。殿御自身はお住まいに引きこもって、希望が叶ったとお考えになり、またもや勤行を始めなさった。……
ぼんやりと思いに耽っておられる暁方に、……。若君が、宴が果てるのが遅すぎるのを不満に思いながら、こちらへお出ましになって、……。
「……
真夜中の勤行は終しまいなんでしょう。なら、もう休もうよ」と言って、まとわりついて行かれると、殿は、一緒に横になられて、歌を詠まれる。
「引きこもり一人寂しく寝る俺もお前だけには訪ねて欲しいよ
……」……
ということで、男の娘の魔性によって崩壊した家庭の悲劇。
死んだ一品の宮はともかく男二人は割と幸せそうですが。
参考資料
『中世王朝物語全集 15 風に紅葉 むぐら』中西健治/常磐井和子校訂・訳 笠間書院
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偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン(当ブログ内に移転しました)
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日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
リンクを変更(2010年12月8日)
これは主人公の男が、出先で魔性の男の娘に出会い、その娘を連れて返って家庭に波乱を巻き起こす話。
ただ、始める前に少し注意書き。
とりあえず、物語文学は人物が名前もってなくて役職を呼び名にするので、役職が変わるたびに呼び名が変わり、厄介なことこの上ないのです。そこで主人公は殿、主人公が拾った若君は元服の前後にかかわらず若君と呼んでおくことにします。
また原文引用は『中世王朝物語全集』笠間書院から
それでは最凶の男の娘の元へとどうぞ。
「松の下枝をあらふ白波」、入海に造りかけたる釣殿、まことに心すごし。公卿の座とおぼしき所の御簾捲き上げて、ながめおはするに、ありつる男、奥の障子を開けて、御殿油参らせたる方を見やり給へば、限りなううつくしげなる女のささやかなるぞゐたる。いとおぼえなくて、近く寄りて見給へば、十一、二ばかりなる人の白き衣に袴長やかに着て、髪の裾は扇を広げたらんやうにをかしげにて、かたちもここはとおぼゆるところなく、一つづつうつくしなどもなのめならず。さるは、わが御鏡の影、女御などにぞおぼえきこえたる。「おぼえなきわざかな」とて、御髪かきやりなどし給ふに、この男、立ち去らず、かしこまりゐて申すやう、「これは、殿下の御嫡子、中納言殿と聞こえさせ給ひし、御後にとどめおき奉らせ給へる若君になんおはします。なにがしが一腹の姉に、兵衛督と申し侍りけるが女、中納言の君とて、かの御方に候ひ侍りしが、御なごりをとどめて亡せ給ひて後に、生まれ給へるになんおはします。中納言殿の母上、おはせましかば申し侍りなまし。御忌みだに過ぎぬほどに、競ひ隠れ給ひしに、また、この君生みきこえて、ほどなくそれも亡せ侍りにしかば、母にて侍りしが、ほどなき袖に玉を包みたらん心地にて、もていたつききこえしも、一昨年亡せ侍りにし後は、ただなにがしが身一つにもてあつかひ奉りてなん。ことのさまもと思ひ給へて、ただ女房の御さまにてなんあらせ奉る。『いかなるたよりもがな。このよし奏し侍らん』と、御社にても祈誓し申し侍りつるに、かかることを待ちつけ奉りて、喜びながらなん」とて、うち泣く。ことのさまといひ、この君のあはれげさなどに、君も涙おしのごひ給ふ。みづからも涙を浮けて、はづかしげに思ひてそばみたり。……。「中納言のと言へば、なほ隔たりたるに、ただ殿の御子となん披露すべき。さ心得て」とて、かき撫でつつ、うつくしとおぼしたるを、いみじううれしと見ゐたり。……
<訳>
松の下枝を洗う白波、入り海にかけて造られた釣殿は、まことに物寂しい。殿は、貴賓用の座席らしき所の御簾を巻き上げて、ぼんやりしておられたところ、先ほどの男が来て、奥の障子を開け、灯火を差し上げたその方向を見やると、この上なく可愛らしい小柄な女の子が居た。まこと思いも寄らない事態に、近くに寄って御覧になると、十一、二歳ほどの人が白い衣に長い感じの袴を着て、髪の裾が扇を広げたかのように美しく、容貌にここはと気になるような短所もなく、一々どこをとっても並ではない。その上、鏡に映る御自分の姿や、姉の宣燿殿女御などに似ている。「思いもよらないことだなあ」といって、殿がその子の御髪をかきやりなどしておられると、さっきの男が立ち去らず、畏まって申し上げるには、「これは、殿のお父上である関白殿下の御嫡子で、中納言殿と申された方が、亡き後にお遺し申された若君でいらっしゃいます。私の同腹の姉で兵衛督と申した者の娘は、中納言の君と言って、中納言殿のところにお仕えしていたのですが、中納言殿が御胤を遺して亡くなられ、その後、若君がお生まれになったのでございます。中納言殿の母君がご存命であれば報告いたしますところでした。ところが、御忌みの期間さえ過ぎないうちに、母君も先を争うかのようにお亡くなりになり、さらにまた、この若君を生み申し上げてまもなく、中納言の君も亡くなってしまいましたので、中納言の君の母親である者が、賤しい袖に宝玉を包むかのような気持ちで、お世話に精を出していたのでございますが、これも一昨年亡くなってしまいましたので、その後、私の身一つでお世話申し上げておりました。そして、事情が事情だと思いましたので、ずっと女の姿で過ごしていただいたのでございます。『どうにか良い機会があればなあ。この旨申し上げるのだが』と、御社でも祈っておりましたところ、このような機会を得ることが出来まして、それはもう嬉しくて」と言ってひたすら泣いていた。事情といい、この若君の可愛さなどといい、殿も涙を押し拭っていたが、若君自身も涙を浮かべ、恥じらっているかの様子で顔をそらしている。……。殿は「さすがに今更、中納言の子と言っても、疎遠な関係のような感じがしないでもないから、ただ父上の御子ということにして披露してやるからね。それでいいだろう」と言って、かき撫でながら、可愛らしいとお思いであるが、若君を育ててきたあの男も、たいへん嬉しいことだと眺めている。……
こうして感動の出会いを果たした、主人公と我らがお姫様、いえ男姫さまですが、なんとそれがいきなりエロな方向に……。
さらでだに、稚児をば見すぐしがたうおぼしたる御心地に、「苦しきに、いざ休まん」とて、かき抱きて臥し給へば、うとく恐ろしげも思はず、うち笑みて、かいつきて寝給へり。「夜は誰とか寝給ふ」とのたまえば、「尼上とこそ寝しかど、その後は一人こそ。顔のよからぬ人とは寝たくもなき」とのたまふ声、いとうつくしげなり。身なりなど磨けるやうなる手ざはり、女のさまよりもをかしげなり。
……
<訳>
特に思いをかき立てる事情がなくてさえ、稚児を見逃すことなどまずできない殿の御性格であるから、あとは「今日はもう疲れたから、さあ休むことにしようよ」と言って、若君をかき抱いて寝転がりなさる。殿が「これまで夜は誰と寝てたのかな」と仰るのに対し、若君が「尼上と寝ていたけど、亡くなったから一人で寝てるよ。顔の良くない人とは寝たくなんかないもん」と仰る声は、とても可愛らしい。その体は磨いたような手触りで、女の様子以上に素晴らしい。
……
ことごとなく戯れおはするに、民部卿ことごとしげにて、お車参らせたるよし聞こゆれば、出で給ふにも、この君をば女のやうにひきそばめて、乗せきこえ給ふ。ほどなく綱手はやく曳かせて、夕つ方都に着き給ひぬ。
<訳>
ひたすら二人で戯れあって過ごしておられたが、お供の民部卿が大げさな態度で、お車が参った旨申し上げたところ、殿はこの若君を女のような扱いでわきに引き寄せ、車にお乗せになる。ほどなく、引き船に乗りかえて綱を速く引かせ、夕方、都に到着なさった。
そして、都では主人公は男姫さまを御機嫌であちこち連れ回し見せびらかして回ります。
……。……この人をいつしか手も放ち給はで、「かかる人をなんまうけて侍る」とて、見せきこえ給ふ。「女とて、御心やおく」と聞こえ給ふに、げによく見れば、男子がらと見ゆる顔つきなるも、あやしとほほ笑ませ給へるも、をかしげなる御さまなれば、まづさし寄りて、こまやかに語らひきこえ給ふ。
……
……。女御の御方へ、「娘をまうけて侍り。御装ひ、一領」と聞こえ給へれば、女郎花に、紅の御単衣、二藍の御小袿奉り給へるを、着せ替へ奉りて、殿の御方へ率て奉り給へり。……。弁といふ人を御乳母につけて、「夜もそれと寝給へよ」とおほせらるれば、伏し目になりて、「御そばならずは、ただ一人寝ん」とのたまふ心苦しさに、また、「さらば、いざ」とて、宮の御そばへも具しきこえ給ふ。……
<訳>
……。……殿はいつまでもいつまでもこの若君から手を離すことさえない状態で、「こんな子を手に入れてきたよ」と言って、妻の一品宮に報告なさる。「女を連れてきたと思って、心配しているのかな」などと妙な感じに殿が尋ね申し上げなさるので、なるほど、よく見れば男性的と見える顔つきであるのも、なんだか変な感じだと一品宮は苦笑なさっておられるが、それが美しい御様子なので、殿はまずは近寄って、細やかに語らっておられる。
……
……。殿が姉である宣燿殿女御の所へと、「娘ができたんですが、衣裳を一揃いくれませんか」と申し上げなさると、女郎花の襲に紅の御単衣、二藍の御小袿を差し上げてこられたので、殿は若君をこれに着せ替え申して、関白殿の所へも紹介に連れて行かれる。
……弁という人を乳母に付けて、「夜もその人と休むんだよ」と殿が仰ったところ、若君が伏し目になって、「殿の側じゃないなら、一人で寂しく寝るもん」と仰る心苦しさに、結局、「しょうがないなあ、それならそうしようね」といって、一品宮と供寝するお側にまで連れ込んでおられる。……
……。……女御の御方へ具しきこえて、御覧ぜさせ給ふ。御さまのうつくしさを、これもいみじう愛せさせ給ふ。幼心地にも、女御の御さまの日ごろ人にすぐれてうつくしうなつかしときこえつる宮よりも、なほ目もあやなるを、つくづくとまもりきこえ給ふを、大将、をかしとおぼして、さし寄りて、「あなたにおはすると、いづれかまさりて見奉る」とのたまへば、うち笑みて「それもよくおはすれど、これはなほたぐひなくこそ。君に似給へるは、同胞な」とのたまふ。……「歯黒めもまだしきに、ことさら御前にてつけさせ給へ。ただいま出でて帰らんまで、これに候へよ」など、こまかに語らひおき給ひて、出で給ひぬるに、ただ女のやうにて、まことにうつくしう、なぶらまほしければ、御眉つくりなどは、御手づからせさせ給へば、御手をばみなねぶりまはし給ふ。「かくさがなくは、いまはいろはじ」とて、大納言の君にせさせ給へば、「いまはさせじ。御手づからせずは泣かんぞ」とて、大納言の君の手をばへしのけ給ふ。「宮仕ひもしならはで、苦し」とて、うち臥させ給へば、「さは、われも寝ん」とて、御衣ひきやりて御そばに寝給ふ。「一品の宮の御そばにても、かくふるまふか」とのたまはすれば、「さて大将のおはせぬほどは、さてこそ寝れ」とのたまふ。大納言の君、「大将殿のさておはしますをりは、いづくにか御殿籠る」と聞こゆれば、「大将は、宮とわれとが中にこそ寝給へ。あち向き給へば恨むれば、こと向き給ふ」などのたまひゐたるを、人々笑ひきこゆ。
<訳>
……。……殿は宣燿殿女御の所へと若君をお連れして、御覧に入れた。その後様子の可愛らしさを、この女御もたいへん愛しておられる。若君は幼心にも、女御の御様子が、日頃人より優れて美しく慕わしいと拝見していた一品宮以上に、一層眩しくおられるのを、じっと拝見申し上げなさるが、殿はこれをおもしろくお思いで、近寄って、「あっちの一品宮のと比べて、こっちの人をどう思う」と尋ねると、若君はにっこり笑って、「一品宮も良い感じだけど、こっちの人には誰も勝てそうにないね。殿に似てるのは、さすがに姉弟だね」とおっしゃる。……殿は「この子はまだお歯黒を付けてないんですが、せっかくだから姉上御自身で付けてやってくれませんか。ちょっと出かけてくるけど、戻ってくるまで、お前はここにいるんだよ」など、こまごまと言い置いて、お出かけになったが、若君がただもう女のようで、まことに可愛らしく、いじってみたくなる様子なので、眉のお手入れなどを、女御御自身の手でなさっていると、若君は女御のお手を舐め回してくる。女御は「そんな悪さをするなら、もうやってあげませんよ」といって、侍女の大納言の君にあとをやらせようとなさったのだが、若君は「じゃあ、もういらない。自分でやってくれないなら、泣いちゃうよ」と言って、大納言の君の手を押しのけなさる。女御は「慣れないことすると、疲れるわね」といって横になられるが、若君は「じゃあ、ボクも寝る」と言って、女御の御衣を引き開けてお側に入りこんでお休みになる。「一品宮の傍にいるときも、こんなことしてるんじゃないでしょうね」と女御が仰ると、「殿がいないときは、こうやって寝るの」と若君は仰る。大納言の君が、「それでは殿がいないときは、どこでお休みになっているのですか」とお尋ね申し上げると、若君は「殿は、一品宮とボクの真ん中に入って寝るよ。あっち向いたらボクが恨むから、ボクのほう向いて寝るんだ」などと仰るので、人々は笑っている。
君も苦しくて、御殿籠り入りたるほどにぞ、大将は帰り参り給へる。……。この君をうちもおかず、「いで鉄漿つけたる口見ん。いま少しをかしげにこそ見ゆれ。いづくにてもひさしうなれば、『待ちやすらん』など、心に離れぬこそ、これぞほだしなるべき。……」……など、愛し入りて、具し帰り給ひぬ。
<訳>
若君も疲れて、お休みになった頃、殿はお帰りになる。……。殿はもう若君を放って置くことなど出来ず、「さあお歯黒をつけた口を見せておくれ。さっきよりもまた少し綺麗になったよ。どこにいても時間が経てば、『待っているだろうな』なんて、気に掛かってしょうがないんだが、これこそ二人の絆というものだね。……」……などと、溺愛の御様子で、若君を連れてお帰りになった。
それからそれから少し時が経ち、男の娘は元服することになり、男の姿になるのですが、それでも主人公ベッタリな生活が続きます。
年返りて、正月に前の殿の若君といふ人出でき給ひて、元服し給ふ。……。女君はいま二つばかりがこの上にて、盛りに見え給へど、男君はなほ内大臣の御そばを、夜も離れがたうまとはしきこえ給へど、「いまは御姿も便なく、人目もけしからず。さるべからむ人とこそ寝給はめ」と、をこつりやりきこえ給ふ。
<訳>
年が明けて、正月に辞職した関白殿の若君と称する人が現れて、元服なさった。……。この若君を婿に迎えた女君はそれより二つほど年上で、女盛りの御様子だが、若君は妻ができてもなお内大臣になった殿のお側を、夜も離れたがらず過ごしておられたが、これに対して殿は「今は元服して男の姿になってる以上、どうにも都合が悪く、人目についてしまうよ。あの女の所にでも寝に行きなさい」と、なだめすかし申し上げている。
その内、主人公は聖人のお告げを受けて、大きな禍を避けるため、しばらく仏教の修行に出て行くことになるのですが、それでも二人の仲は引き裂けない。
かいがいしく使える様は、まさに主人公の嫁(オトコ)。
ところが、そんな風に過ごすうち、主人公が変なこと言い出します。
……。……夜昼、ただ内大臣の御あたりを離れ給はず。後夜起きの御まかなひなどまでし給ひて、いづくともなくまろび臥しつつ、御行ひ果てては、やがてもろともに御そばにてのみ明かし給ふを、内大臣は、宮の御一人寝を、まめやかに心苦しうおぼして、「なにか苦しからん。童にてのままに、あの御そばに寝給へ」とのたまはすれど、「けしからず」と聞き入れ給はぬを、まめやかにまことしう、さまざまのたまひつつ、とかく導き給ふに、……。……さばかりあらむやは。これものがれざりける御契りにこそは。
<訳>
……。……若君は、いつも、ひたすら殿のお側を離れなさらない。若君は殿が真夜中の勤行をする際にはその身の回りのお世話までなさって、どこともなく仮眠しており、勤行が終わると、そこから殿のお側へ一緒になって夜を明かしておられるのだが、殿は、一品宮の独り寝を、たいへん気の毒にお思いになって、「いいこと思いついた。お前が、子供の頃みたいに、あいつの寝床に入り込んで寝れば良い」と仰ったところ、若君は「むちゃくちゃだよ」と聞き入れようとしないのを、とても真剣に、あれこれ仰って、そういう一品宮のところへ行かせたところ、……。……何もなしに済むはずもない。これは逃れられない運命だったのだろう。
女宮はまして、あさましういみじともおろかなり。「ただ一筋に、厭ひのけんの御はからひにこそは」とおぼす恨めしさも、ねたう心憂くて、起きも出でさせ給はず。涙にひちて臥し給へるに、大臣入りおはして、……。……
「おなじえにわが身をわくる松かげを波越すすゑと恨みざらなん
さりげなうておはしませ。人もあやしう思ひとがめぬべし」など、……、慰めきこえ給へ給へど、おぼし入りて、御いらへもし給はず。
<訳>
一品宮はまして、情けないとも辛いとも言いようもない。「殿は、ただひたすらに、私のことを嫌い追いやろうとのお考えなのだ」とお考えになっての恨めしさは、悔しく悲しくて、起きて出てくることさえなさらない。涙に暮れて、臥せっておられるが、殿はそこへとお入りになって、……。……
「気にするなどっちが犯るも変わりないあいつは俺の分身なんだよ
さりげなくしてなさいよ。でないと人に怪しまれかねないからね」など、……慰め申し上げたけれど、一品宮は思い沈んで、返事もなさらない。
宰相の中将は、ひとかたならぬ心まよひに、いづくへもあくがれ給はず、わが御方にながめおはしけるを、呼びきこえ給へれば、これもいみじう泣き給へりける御顔のしるきを、……。
<訳>
若君は、尋常でなく心乱れて、どこへもお出かけにもならず、ご自分の部屋でぼんやりしておられたが、殿がお呼びになったところ、これがひどくお泣きになっておられたのが明らかな顔つきなので、……。
その後も、関守の御心あはせて、をりをり絶えぬ御仲らひを、宮は、口惜しく心憂きことにおぼし倦じて、……、大臣はいとものわびしう、すべなうおぼさる。男の御気色も、このことになりぬれば、……かたがた心苦しう詮もなく、さすがにほほ笑まれ給ふ。……
<訳>
その後も、こういった密通を邪魔するはずの立場の殿がむしろ協力して、何度も絶えることなく続く若君との御仲を、一品宮は、情けなく悲しいことと思い悩んでいて、……殿は、これをたいへん寂しく、困ったこととお思いである。若君の様子も、例の如くであって、……殿はあれもこれも心苦しくやるせなく、さすがに苦笑しておられる。……
こうして心痛の日々を過ごし気分の晴れることのないまま、つまり主人公の家に幸福な落ち着いた日々が再び訪れることのないまま、一品宮は病死してしまいます。
たぶん、主人公があんまり無茶苦茶するせいで、心の方から病んでいったのでしょうね。
そして主人公は悲しみの余り、ちょっとした奇行に走ります。
絵を描き給ふこと人に優れたれば、せめての恋しさに昔の御面影を写しつつ、とかく描きて慰み給ふに、ことにただむかひきこえたるやうなるを、本尊にし給ひて、阿弥陀仏に並べて、夜の御帳に懸け給へり。……
<訳>
殿は絵を描くことに優れていたので、あまりの恋しさに一品宮の御面影を写してお描きになり、あれこれ描いて慰めになさっておられたが、その中で特に向かい合って過ごしているかのように思える絵を、本尊となさって、阿弥陀仏に並べて、夜の御帳にお掛けになっている。……
で、主人公は、結局、引きこもってしまうんですが、
たとえ二次元を崇めるキモい人間になろうと、引きこもりになろうと、
若君は主人公のことを慕い続け、主人公も若君を愛し続けます。
二人は身を寄せ合って、一品宮の死後の寂しい世界に耐えて……。
ってゆーか二人でベッタリしすぎる余り、自分と相手の区別が曖昧になって、あいつのチンコは俺のチンコ同然とか主人公がわけ分からんこと言い出したせいで、悲劇が展開していった気がするので、この期に及んでまだそれかって感がないでもないですが……。
世の中には、五節など言ひて、舞ひそぼるるも、……。みづからは、閑居をしめたる御住まひ、いと思ふさまにおぼしつつ、いまぞまた加行はじめ給ふ。……
つくづくとながめおはする暁方、……。大将の君、果つるや遅きと、これへ出で給へれば、……。
「……
後夜の御行ひは果て侍りぬらん。御殿籠れかし」とて、まつはれゐ給へば、これももろともに臥し給ふ。
「袖かはす契りもいまは絶えはてぬかたしき衣君だにも訪へ
……」……
<訳>
世の中では五節などと言って、舞い戯れる日であるが、……。殿御自身はお住まいに引きこもって、希望が叶ったとお考えになり、またもや勤行を始めなさった。……
ぼんやりと思いに耽っておられる暁方に、……。若君が、宴が果てるのが遅すぎるのを不満に思いながら、こちらへお出ましになって、……。
「……
真夜中の勤行は終しまいなんでしょう。なら、もう休もうよ」と言って、まとわりついて行かれると、殿は、一緒に横になられて、歌を詠まれる。
「引きこもり一人寂しく寝る俺もお前だけには訪ねて欲しいよ
……」……
ということで、男の娘の魔性によって崩壊した家庭の悲劇。
死んだ一品の宮はともかく男二人は割と幸せそうですが。
参考資料
『中世王朝物語全集 15 風に紅葉 むぐら』中西健治/常磐井和子校訂・訳 笠間書院
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