2009年 11月 15日
ウタマロの国・日本~各地の春画は男根をどう描いてきたか~
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日本の春画は、男性の逸物がやたらと巨大に描かれている事で有名です。海外では春画に描かれた巨根を「ウタマロ」と呼び、日本人男性は全員巨根だと勘違いしたといいます。
勿論、現実に接して失望した事例は多かったでしょうが。また日本でも、こんな話があります。ある少女が美術史の勉強として家庭教師に春画を見せられ(本当に勉強目的で見せたのか勘ぐりたくなりますが)、男根とは足がもう一本あるような感じなのかと思い込みました。さて彼女が電車通学している時、前に立っている男性がコートの前を開いて逸物を手でしごき始めました。その大きさはコーラ瓶くらい(現実問題として十分に巨根ですね)で、男は自慢げに「どうですお嬢さん、ご感想は」と囁いてきます。彼女は春画のそれを頭に浮かべ思わず「随分小さいんですね」と無邪気に言い放ち、それを聞いた男はショックで体を震わせ逸物もしわしわと縮んでしまいました。少女はその様子がおかしくてクスクスと口に手を当てて笑ったので、痴漢はいたたまれなくなって人ごみを掻き分け他の車両に逃げ出してしまったそうで。えーと、何と言うか、春画Good Job。
春画に描かれた逸物の大きさを真面目に考えてみると、大腿の太さを15cmとして男根の長さは17-25cm、太さは8-13cm程度に相当するとか。凄いときは胴体と同じ太さだったりするようです。因みに現実世界における平均的西洋人男性の男根は勃起時に太さ4cmで長さ15.5cm。平常時の長さは10cm程度だとか。日本人の場合はもう少し小さくて勃起時の長さは11-12cmで平常時は7.5cmくらいだそうです。
日本人が春画で逸物を巨大に描いていたのはかなり早くからのようで、以前の記事で言及されたように鳥羽僧正と弟子が絵画表現について論争した際にエロ絵で逸物が実際にはありえないほどに巨大に描かれる事例が引き合いに出されています。実際、平安後期の「陽物比べ」絵巻では足と同じくらいの長さ・太さをした男根を持つ男達がその威容を比べあう様子が描かれているようです。このころから、既に我が国では男根を巨大に描くのが通例となっていたわけですね。
ここで、一つ疑問が沸き起こります。海外ではこの辺りの問題はどうだったのでしょうか?中国春宮画(エロ絵)は我が国や朝鮮半島の絵画に強い影響を与えたらしいのですが、男根描写に関してはその限りでないようです。というのは、中国春宮画に描かれた男根は常識的な大きさのものが殆どなのです。中国人も日本人同様に巨根志向なのは歴史上の逸話や「金瓶梅」「肉蒲団」「如意君伝」といった中国エロ小説からも明らかだというのに。中国人自身がその性風俗を歴史的に述べた本でも
などと日本春画における性器の誇張をわざわざ特筆しているくらいですから、中国や朝鮮半島にはこうした慣例はないと考えて大きな間違いはないでしょう。
イスラームについて次に見てみます。性愛書「匂える園」には男根の大きさを誇示する男達の挿絵が付けられていますが、いずれも常識的な範囲に収まっています。中には顔のと同じくらいの長さを誇るものもあって現実的にはかなりの巨根なんですが、日本の春画みたいなことはないようです。本文では中には32cmの男もあり最低で16cmないと男として相手にされないとか書いてあるんですけどね。
次は、西洋です。古代ギリシアやローマにおいては、パン神やプリアポス神の立像・絵画が著しい巨根で描写されているのが分かっています。しかしキリスト教が普及した後の時代における絵画では、話が変わってきます。鎧の男根を覆って保護するブラゲットは「鎧のいちばん肝心な部分」と呼ばれある程度誇張された大きさで描かれた肖像もありますが、やはり常識の範囲内といってよいようです。西洋でも、古代は別にして男根を誇張する場合でも日本春画のように極端な描写はしないようですね。古代ギリシアでは巨根を割りに卑しんでおり後世になると巨根を肯定的に見ていたらしいのを考えると不思議ですね。一方で、日本で単純に巨根を肯定していた訳でもなかったらしいですからそんなものなのかもしれません。
以上を考えると、絵において男根を極端に大きく描く慣習は、海外で皆無ではないものの日本独特といって差し支えない代物のようです。インドについては具体的資料がなくて分かりませんでしたが、ミニアチュールなどでは一般的にやはり常識的な大きさであるとのことです。日本起源・日本固有の文化、それは男根をやたらデカく描く事。ま、女性器もまた男根に見合うだけの巨大さで描かれている点には着目する必要がありますが。…何だかなあ。まあ、写実より理想を描くという傾向は日本だけのものではないようですが、日本で特に顕著だと言うことはできるように思います。やはり日本は古来よりオタクの国、そして実際の逸物がどうかはともかく脳内においてはウタマロの国というわけです。
【参考文献】
医者見立て江戸の好色 田野辺富蔵 河出文庫
江戸の性風俗 氏家幹人 講談社現代新書
リチャード・レイン編著『定本浮世絵春画名品集成17 秘画絵巻【小柴垣草子】』河出書房新社
中国艶本大全 土屋英明 文春新書
中国性愛文化 劉達林著 鈴木博訳 青土社
ペニスの文化史 マルク・ボナール、ミシェル・シューマン 藤田真利子訳 作品社
江戸の春画 白倉敬彦 洋泉社
春画 片手で読む江戸の絵 タイモン・スクリーチ 高山宏訳 講談社選書メチエ
関連記事:
「極意・マンガの描き方 from 平安朝 ~見るべき要素を誇張せよ 具体的にはエロマンガではチンコをでかく~」
「世界は『男性』の大きさを歴史的にどう見ていたか」
「男のしるし、皇統の危機」、「訂正事項」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「日本民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html)
「中国民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020607.html)
「イスラム民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614b.html)
「インド民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614a.html)
「西洋民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021108.html)
関連サイト:
「エロ用語辞典サイト」(http://max-hit.net/ero_word/index.html)より
「ウタマロ(うたまろ)」(http://max-hit.net/ero_word/word/a-gyou/u/utamaro/index.html)
「宝画戯言(改)」(http://toriatama5.blog36.fc2.com/)より
「ウタマロの国」(http://toriatama5.blog36.fc2.com/blog-entry-898.html)
金山神社のかなまら祭り。海外ではウタマロ・フェスティバルとか呼ばれてるらしいです。
「浮世絵春画館」(http://www1.ocn.ne.jp/~matikado/frame7294.html)
18歳未満禁止。見る際は自己責任で。
「エロ用語辞典サイト」(http://max-hit.net/ero_word/index.html)より
「ウタマロ(うたまろ)」(http://max-hit.net/ero_word/word/a-gyou/u/utamaro/index.html)
勿論、現実に接して失望した事例は多かったでしょうが。また日本でも、こんな話があります。ある少女が美術史の勉強として家庭教師に春画を見せられ(本当に勉強目的で見せたのか勘ぐりたくなりますが)、男根とは足がもう一本あるような感じなのかと思い込みました。さて彼女が電車通学している時、前に立っている男性がコートの前を開いて逸物を手でしごき始めました。その大きさはコーラ瓶くらい(現実問題として十分に巨根ですね)で、男は自慢げに「どうですお嬢さん、ご感想は」と囁いてきます。彼女は春画のそれを頭に浮かべ思わず「随分小さいんですね」と無邪気に言い放ち、それを聞いた男はショックで体を震わせ逸物もしわしわと縮んでしまいました。少女はその様子がおかしくてクスクスと口に手を当てて笑ったので、痴漢はいたたまれなくなって人ごみを掻き分け他の車両に逃げ出してしまったそうで。えーと、何と言うか、春画Good Job。
春画に描かれた逸物の大きさを真面目に考えてみると、大腿の太さを15cmとして男根の長さは17-25cm、太さは8-13cm程度に相当するとか。凄いときは胴体と同じ太さだったりするようです。因みに現実世界における平均的西洋人男性の男根は勃起時に太さ4cmで長さ15.5cm。平常時の長さは10cm程度だとか。日本人の場合はもう少し小さくて勃起時の長さは11-12cmで平常時は7.5cmくらいだそうです。
日本人が春画で逸物を巨大に描いていたのはかなり早くからのようで、以前の記事で言及されたように鳥羽僧正と弟子が絵画表現について論争した際にエロ絵で逸物が実際にはありえないほどに巨大に描かれる事例が引き合いに出されています。実際、平安後期の「陽物比べ」絵巻では足と同じくらいの長さ・太さをした男根を持つ男達がその威容を比べあう様子が描かれているようです。このころから、既に我が国では男根を巨大に描くのが通例となっていたわけですね。
ここで、一つ疑問が沸き起こります。海外ではこの辺りの問題はどうだったのでしょうか?中国春宮画(エロ絵)は我が国や朝鮮半島の絵画に強い影響を与えたらしいのですが、男根描写に関してはその限りでないようです。というのは、中国春宮画に描かれた男根は常識的な大きさのものが殆どなのです。中国人も日本人同様に巨根志向なのは歴史上の逸話や「金瓶梅」「肉蒲団」「如意君伝」といった中国エロ小説からも明らかだというのに。中国人自身がその性風俗を歴史的に述べた本でも
少なからぬ「浮世絵」の風格は明代の春宮画に似ているところが非常に多いが、性行為を描いた「浮世絵」の筆使いは柔和かつ流暢で、想像力に富み、ときには性器を特に誇張しているものもある。(「中国性愛文化」P622)
などと日本春画における性器の誇張をわざわざ特筆しているくらいですから、中国や朝鮮半島にはこうした慣例はないと考えて大きな間違いはないでしょう。
イスラームについて次に見てみます。性愛書「匂える園」には男根の大きさを誇示する男達の挿絵が付けられていますが、いずれも常識的な範囲に収まっています。中には顔のと同じくらいの長さを誇るものもあって現実的にはかなりの巨根なんですが、日本の春画みたいなことはないようです。本文では中には32cmの男もあり最低で16cmないと男として相手にされないとか書いてあるんですけどね。
次は、西洋です。古代ギリシアやローマにおいては、パン神やプリアポス神の立像・絵画が著しい巨根で描写されているのが分かっています。しかしキリスト教が普及した後の時代における絵画では、話が変わってきます。鎧の男根を覆って保護するブラゲットは「鎧のいちばん肝心な部分」と呼ばれある程度誇張された大きさで描かれた肖像もありますが、やはり常識の範囲内といってよいようです。西洋でも、古代は別にして男根を誇張する場合でも日本春画のように極端な描写はしないようですね。古代ギリシアでは巨根を割りに卑しんでおり後世になると巨根を肯定的に見ていたらしいのを考えると不思議ですね。一方で、日本で単純に巨根を肯定していた訳でもなかったらしいですからそんなものなのかもしれません。
以上を考えると、絵において男根を極端に大きく描く慣習は、海外で皆無ではないものの日本独特といって差し支えない代物のようです。インドについては具体的資料がなくて分かりませんでしたが、ミニアチュールなどでは一般的にやはり常識的な大きさであるとのことです。日本起源・日本固有の文化、それは男根をやたらデカく描く事。ま、女性器もまた男根に見合うだけの巨大さで描かれている点には着目する必要がありますが。…何だかなあ。まあ、写実より理想を描くという傾向は日本だけのものではないようですが、日本で特に顕著だと言うことはできるように思います。やはり日本は古来よりオタクの国、そして実際の逸物がどうかはともかく脳内においてはウタマロの国というわけです。
【参考文献】
医者見立て江戸の好色 田野辺富蔵 河出文庫
江戸の性風俗 氏家幹人 講談社現代新書
リチャード・レイン編著『定本浮世絵春画名品集成17 秘画絵巻【小柴垣草子】』河出書房新社
中国艶本大全 土屋英明 文春新書
中国性愛文化 劉達林著 鈴木博訳 青土社
ペニスの文化史 マルク・ボナール、ミシェル・シューマン 藤田真利子訳 作品社
江戸の春画 白倉敬彦 洋泉社
春画 片手で読む江戸の絵 タイモン・スクリーチ 高山宏訳 講談社選書メチエ
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「極意・マンガの描き方 from 平安朝 ~見るべき要素を誇張せよ 具体的にはエロマンガではチンコをでかく~」
「世界は『男性』の大きさを歴史的にどう見ていたか」
「男のしるし、皇統の危機」、「訂正事項」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「日本民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html)
「中国民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020607.html)
「イスラム民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614b.html)
「インド民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020614a.html)
「西洋民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021108.html)
関連サイト:
「エロ用語辞典サイト」(http://max-hit.net/ero_word/index.html)より
「ウタマロ(うたまろ)」(http://max-hit.net/ero_word/word/a-gyou/u/utamaro/index.html)
「宝画戯言(改)」(http://toriatama5.blog36.fc2.com/)より
「ウタマロの国」(http://toriatama5.blog36.fc2.com/blog-entry-898.html)
金山神社のかなまら祭り。海外ではウタマロ・フェスティバルとか呼ばれてるらしいです。
「浮世絵春画館」(http://www1.ocn.ne.jp/~matikado/frame7294.html)
18歳未満禁止。見る際は自己責任で。
by trushbasket
| 2009-11-15 10:08
| NF








