2009年 12月 30日
<過去記事・発表紹介>近世中国における知識人の文化趣味―海の向こうのキモオタたち―
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中国も都市文化が発展した明清時代になると、爛熟した文化生活が広く認められるようになります。そうした実態の一端について、これまで何度か扱ってきましたが、この時期のエリートたちの文化的風潮について少しまとめてみましょう。この時期は、元や明において知識人が弾圧され生活の資を娯楽作品著述に求めた伝統もあって、洗練された文化が花開いたのです。その下でどのような好みが受け入れられたのでしょうか。
・「女の子は水でできた体、男は泥でできた体。僕は女の子を見ると気分がすっきりするけれど、男を見ると臭くてむかむかする。」
十八世紀の恋愛小説「紅楼夢」の主人公が序盤で吐いた台詞です。実に天晴れです。詳細は、
を参照してください。女性的な容姿で学問を好まず優柔不断な性格であるこの主人公は、少女を至高の価値とし、一族の少女を中心とした「金陵十二釵」らと共同生活というハーレム状態。まさにうらやまけしからんというか、エロゲ主人公としか言いようのない姿ですね。
参考:
「ヘタレ力 in 日本史」
・「あのヒロインがいらっしゃる、二次元世界に逝ってくる。」
「紅楼夢」の熱狂的ファンを「紅迷」と呼びますが、その中にはメインヒロインである林黛玉の病死を悲しんで位牌を祭ったり、「彼女のいらっしゃる仙界(主要キャラたちの正体は仙人世界の住人であるという設定になっています)に行ってくる」といって姿をくらましたりした逝っちゃった人たちもいたそうです。物語中のヒロインに萌えて入れ込んだ挙句、二次元世界への飛翔を夢見たこの人物は、ある意味「漢の中の漢」と言えるのかもしれません。
これについても、
参考:
「『二次をつかむ男』~美女のフィギュアや絵を愛した前近代東洋人たちの話~」
・「俺の嫁が恥ずかしがってモニターからでてこないんですが、どうしたらよいでしょう。」
以前の記事で紹介しましたが、唐代末期の小説「聞奇録」ではある男が絵屏風に描かれた女性に惚れ込み、画工からその女を現実世界に呼び出す方法を教えられて実行した話があります。しかもこの男、科挙に合格したエリート様だというから驚きです。理想の女性が絵にかかれた女性だったりパソコンモニターの向こうだったり、古代ギリシアのピグマリオンを例に引くまでもなく昔も今も二次元に理想を求める困った人はいるものです。明清時代の話ではありませんが、唐末期は近世という説もありますし、上の話題と関連しているので入れてみました。
参考:
「偉大なるダメ人間シリーズ外伝その6 フィギュアを愛好した三国志の英雄」
「『二次をつかむ男』~美女のフィギュアや絵を愛した前近代東洋人たちの話~」
「メイドロボの精神史 前編」、「後編」
「二次元萌えは千年を超えて受け継ぐ大アジア民衆の大いなる伝統」
・「狐でも良い!それでもかわいい!」
日本と同様、中国でも昔から女に化けた狐に騙された被害の話が多く伝えられています。これらの話は最後には騙した狐が追い出されて終わるのですが、清代になると少し様子が変わってきます。従来の狐による被害報告な話も多いのですが、中には狐や花といった化身を人よりも純粋な存在と目し人間の男の側が別離を悲しんだり中には正体を知りつつ添い遂げたりする話も存在するようです。現代日本の娯楽文化にもロボットやら動物の化身やら宇宙人やら幽霊やらといった非人間ヒロインとの恋愛がよく登場したりしますが、中国都市文化も清代においてその境地に到達していたわけですね。あ。そういえば中国でも早くから天女やら幽霊やらと結ばれた恋愛物語はあったりするんですよね。
参考:
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html)
それ以外には…
「メイドロボの精神史 前編」、「後編」
「旧説 大人の浦島太郎物語 ~浦島太郎は亀とセックスしていた!!~ from『日本書紀』」
「人魚と恋愛する時のために考えてみる~異種婚姻?に関するリアルな一考察~」
・「こんなかわいい子が女の子なはずないじゃないですか。」
これも以前の記事で触れましたが、明清時代における士大夫の間では男色が流行していました。特に清代になると江南を中心に遊女よりも男娼の方がより重んじられる傾向が見られるようになります。名高い遊女ですら男娼の手助けがあってやっと得意先を繋ぎ止められたりなんて悲惨な話もあったようです。古代ギリシアよろしく知識人たちが男色のほうが女性への愛よりも素晴らしい事を証明するため色々と屁理屈こねたりもしており、本物の女性より女性的な男のほうが魅力的だと考える人がやたら多かったということですね。何しろ、上で紹介したように「男は泥でできた体」とか言ってた「紅楼夢」の主人公でさえ、私塾で美少年を見て「ウホッ!いい男…」とばかりに胸をときめかせたりしてますから。
参考:
「中国史における男色」以外には…
「偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン」(当ブログ内に移転しました)
(http://trushnote.exblog.jp/14529128/)
…流石はギリシア人。
「古今東西の萌える人々 ~17世紀のイラン人と現代日本人の少年愛を中心に~」
イスラーム世界も大概だったみたいです。
「こんな可愛い子が女の子のはずがない ~千年の昔に発見された萌えの真理~ 古典文学の男の娘を題材に」
「『オンナノコになりたい』?男たち~日本女装史概説~」
「中世最凶 魔性の男の娘物語『風に紅葉』 ~ある夫婦を尻穴とチンコで貪り尽くした男の娘の話~」
我が国だって負けていません。
「男色の対象年齢を日本史をもとに考える ~男の娘の華の命をどこまで延ばすか菊の露~」
花の命は短くて。
以上より、近世中国の知識人も、その趣味はといえばキモオタと同レベルであったといえます。文化が爛熟するところ、志向するところは同じなのかもしれません。では皆様、よいお年を。
【参考文献】
中国性愛文化 劉達臨著 鈴木博訳 青土社
中国近世の性愛 呉存存 鈴木博訳 青土社
週刊朝日百科 世界の文学108 紅楼夢・金瓶梅・儒林外史・聊斎志異… 朝日新聞社
中国艶本大全 土屋英明 文春新書
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「中国民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020607.html)
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html)
「日本民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html)
「エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html)
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html)
我が国の王朝貴族も相当なものでした。
「偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン」(当ブログ内に移転しました)
(http://trushnote.exblog.jp/14529128/)
リンクを変更(2010年12月8日)
・「女の子は水でできた体、男は泥でできた体。僕は女の子を見ると気分がすっきりするけれど、男を見ると臭くてむかむかする。」
十八世紀の恋愛小説「紅楼夢」の主人公が序盤で吐いた台詞です。実に天晴れです。詳細は、
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html)
を参照してください。女性的な容姿で学問を好まず優柔不断な性格であるこの主人公は、少女を至高の価値とし、一族の少女を中心とした「金陵十二釵」らと共同生活というハーレム状態。まさにうらやまけしからんというか、エロゲ主人公としか言いようのない姿ですね。
参考:
「ヘタレ力 in 日本史」
・「あのヒロインがいらっしゃる、二次元世界に逝ってくる。」
「紅楼夢」の熱狂的ファンを「紅迷」と呼びますが、その中にはメインヒロインである林黛玉の病死を悲しんで位牌を祭ったり、「彼女のいらっしゃる仙界(主要キャラたちの正体は仙人世界の住人であるという設定になっています)に行ってくる」といって姿をくらましたりした逝っちゃった人たちもいたそうです。物語中のヒロインに萌えて入れ込んだ挙句、二次元世界への飛翔を夢見たこの人物は、ある意味「漢の中の漢」と言えるのかもしれません。
これについても、
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―」が詳しいです。
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html)
参考:
「『二次をつかむ男』~美女のフィギュアや絵を愛した前近代東洋人たちの話~」
・「俺の嫁が恥ずかしがってモニターからでてこないんですが、どうしたらよいでしょう。」
以前の記事で紹介しましたが、唐代末期の小説「聞奇録」ではある男が絵屏風に描かれた女性に惚れ込み、画工からその女を現実世界に呼び出す方法を教えられて実行した話があります。しかもこの男、科挙に合格したエリート様だというから驚きです。理想の女性が絵にかかれた女性だったりパソコンモニターの向こうだったり、古代ギリシアのピグマリオンを例に引くまでもなく昔も今も二次元に理想を求める困った人はいるものです。明清時代の話ではありませんが、唐末期は近世という説もありますし、上の話題と関連しているので入れてみました。
参考:
「偉大なるダメ人間シリーズ外伝その6 フィギュアを愛好した三国志の英雄」
「『二次をつかむ男』~美女のフィギュアや絵を愛した前近代東洋人たちの話~」
「メイドロボの精神史 前編」、「後編」
「二次元萌えは千年を超えて受け継ぐ大アジア民衆の大いなる伝統」
・「狐でも良い!それでもかわいい!」
日本と同様、中国でも昔から女に化けた狐に騙された被害の話が多く伝えられています。これらの話は最後には騙した狐が追い出されて終わるのですが、清代になると少し様子が変わってきます。従来の狐による被害報告な話も多いのですが、中には狐や花といった化身を人よりも純粋な存在と目し人間の男の側が別離を悲しんだり中には正体を知りつつ添い遂げたりする話も存在するようです。現代日本の娯楽文化にもロボットやら動物の化身やら宇宙人やら幽霊やらといった非人間ヒロインとの恋愛がよく登場したりしますが、中国都市文化も清代においてその境地に到達していたわけですね。あ。そういえば中国でも早くから天女やら幽霊やらと結ばれた恋愛物語はあったりするんですよね。
参考:
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html)
それ以外には…
「メイドロボの精神史 前編」、「後編」
「旧説 大人の浦島太郎物語 ~浦島太郎は亀とセックスしていた!!~ from『日本書紀』」
「人魚と恋愛する時のために考えてみる~異種婚姻?に関するリアルな一考察~」
・「こんなかわいい子が女の子なはずないじゃないですか。」
これも以前の記事で触れましたが、明清時代における士大夫の間では男色が流行していました。特に清代になると江南を中心に遊女よりも男娼の方がより重んじられる傾向が見られるようになります。名高い遊女ですら男娼の手助けがあってやっと得意先を繋ぎ止められたりなんて悲惨な話もあったようです。古代ギリシアよろしく知識人たちが男色のほうが女性への愛よりも素晴らしい事を証明するため色々と屁理屈こねたりもしており、本物の女性より女性的な男のほうが魅力的だと考える人がやたら多かったということですね。何しろ、上で紹介したように「男は泥でできた体」とか言ってた「紅楼夢」の主人公でさえ、私塾で美少年を見て「ウホッ!いい男…」とばかりに胸をときめかせたりしてますから。
参考:
「中国史における男色」以外には…
「偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン」(当ブログ内に移転しました)
(http://trushnote.exblog.jp/14529128/)
…流石はギリシア人。
「古今東西の萌える人々 ~17世紀のイラン人と現代日本人の少年愛を中心に~」
イスラーム世界も大概だったみたいです。
「こんな可愛い子が女の子のはずがない ~千年の昔に発見された萌えの真理~ 古典文学の男の娘を題材に」
「『オンナノコになりたい』?男たち~日本女装史概説~」
「中世最凶 魔性の男の娘物語『風に紅葉』 ~ある夫婦を尻穴とチンコで貪り尽くした男の娘の話~」
我が国だって負けていません。
「男色の対象年齢を日本史をもとに考える ~男の娘の華の命をどこまで延ばすか菊の露~」
花の命は短くて。
以上より、近世中国の知識人も、その趣味はといえばキモオタと同レベルであったといえます。文化が爛熟するところ、志向するところは同じなのかもしれません。では皆様、よいお年を。
【参考文献】
中国性愛文化 劉達臨著 鈴木博訳 青土社
中国近世の性愛 呉存存 鈴木博訳 青土社
週刊朝日百科 世界の文学108 紅楼夢・金瓶梅・儒林外史・聊斎志異… 朝日新聞社
中国艶本大全 土屋英明 文春新書
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「中国民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020607.html)
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html)
「日本民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html)
「エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html)
「物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html)
我が国の王朝貴族も相当なものでした。
「偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン」(当ブログ内に移転しました)
(http://trushnote.exblog.jp/14529128/)
リンクを変更(2010年12月8日)
by trushbasket
| 2009-12-30 22:35
| NF








