2010年 02月 15日
清少納言がスイーツ(笑)な上にヲタである件
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清少納言の有名な随筆『枕草子』が、なんだかとってもスイーツ(笑)で人間として終わっていることを、以前紹介しましたが、実は『枕草子』は真反対の方向にも人間として終わっていたりします。
今日は、そっちの方の終わりっぷりを紹介してみましょう。
どういうことかと言いますと、
まず、スイーツ(笑)とは、商業的陰謀に乗せられて軽薄な恋愛趣味と女性的嗜好を過剰に身につけしまった女性を揶揄するインターネット上の慣用語なのですが、おそらく、そのようなスイーツ(笑)の対極にあって、スイーツ(笑)と嫌悪しあっている人種として、いわゆるオタクを上げることが出来るでしょう。
で、オタクは、敢えて偏見混じりで大ざっぱに言えば、家にこもって漫画とかアニメとかゲームとか、そこに出てくるキャラクターとか、虚構の世界に没入し愛情注いでいる人たち。そういうわけでなんで、せっせとお出かけして恋愛なる性欲処理に興じているスイーツ(笑)&お供の盛りの付いた男たちと、オタクを比べると、なるほど彼女彼らは、外と内、現実と虚構という、ある意味、対極の趣味志向の持ち主。
相互理解を欠いて敵対関係にあるのも不思議ではありません。
ところが、日本で最も高名なスイーツ(笑)、いわばスイーツ(笑)のクイーンである清少納言は、スイーツ(笑)であるのみならず、それと対立衝突しそうなオタク趣味まで兼ね備えた人物、しかも特濃な人でもあったのです。
それが分かるのは、まずは『枕草子』、返る年の二月二十余日の段。
ここで清少納言は、仲間の女性達との間で、激しくキャラ萌え論争を展開しています。
彼女は『宇津保物語』に登場する仲忠というキャラが超お気に入りなのですが、その仲忠、幼少期は貧窮の中、大木の空洞を住居に野人ライフを送らざるを得なかったキャラクター。涼というライバルキャラを支持する人たちに、その点をあげつらわれ、清少納言が仲忠ファンの先頭に立って、それに激しく食ってかかるという構図です。
<訳>
皇妃様の御前に人々が大勢集まって、帝付きの侍女の方々もいらっしゃり、物語の善し悪し、気にくわないところなどを、品定めしたり、けなしたりしていた。涼や仲忠などのキャラクターのことも、皇妃様まで混じって、優劣をコメントなさったのであった。「まずはこれについてどうお考えなのか。さっさとお答え願いましょうか。仲忠の子供時代の生い立ちの卑しさは皇妃様も強調しておられますけど」などと言う者がいるので、「それが何か。(涼なんて仲忠さまと合奏して)琴の音で天人を降臨させるだけが見どころの、全然大したことないキャラじゃない。涼には(仲忠さまがしたみたいに)帝の御娘を手に入れることなんてできないでしょ」と言い返せば、仲忠派は勢いを得て、「そうよそうよ」などと言い、……
……この有り様。
清少納言は日本史を代表する女性文学者の一人で、その仲間たちも宮廷の文芸サロンに出入りする選ばれた人たちのはず。
それが、キャラクターを論じるに、物語の要素としてのキャラクター描写の妙を語るとかではなくて、キャラクターの生い立ちが卑しいの何のと、文芸っぽさの低い次元で、激烈な一大キャラ萌え論争。
こいつら、文芸に携わる者としての自覚が微塵も感じられません。
どう見ても、オタク。それ以外には見えません。
しかも、清少納言は、その中でも重度で、論争の最前線で萌えキャラの名誉をかけて、主人の皇妃の意見への反逆の先頭に立つ始末……。
そんなにキャラ萌えに必死になるなよ……。文学者なんだから、作品論じるならもっとやり方があるだろう?
それに、お前、一応、スイーツ(笑)じゃないか。
スイーツ(笑)なら、フィクションに没入するにしても、萌えキャラとか論じるより、お安い感傷的なストーリーをリアルで勉強になるとか吠えてみたり、そこに出てくるヒロインに感情移入して、このヒロインは自分みたいとか言って、過剰な自己評価と自己陶酔に浸ったりしてるほうがお似合いだって。
ちなみに清少納言、
鳥の郭公が好きで、郭公についてとやかく言う段が結構あるようなんですが、その中の一つ、
賀茂へ詣る道にの段で、わけの分からんことをほざきだします。
<訳>
仲忠さまの子供時代の生い立ちをけなして言う人と、「郭公は鶯に劣る」と言う人こそ、憎たらしくてむかつくものだ。
その無茶な話のくっつけ方はいかがなものか。
鳥を云々してる時に、なんでいきなり物語のキャラクターの好き嫌いの話が混じってくる?
いくらなんでも四六時中、仲忠のことばっかり考えすぎだろ。
というわけで、清少納言の重度のキャラ萌えぶり、ご理解頂けましたでしょうか。
重度のスイーツ(笑)兼特濃のオタクとは、なかなか、恐れ入りますね。
でもまあ、実のところ、スイーツ(笑)とオタクは全く異なるように見えて、非常に近しい存在のような気もします
例えば、商業的陰謀に(喜んで)乗せられて、結構したたかに楽しんでいるところとか、強度の恋愛趣味の持ち主なところとか、かなり共通してますしね。違いと言えば、恋愛趣味の次元の数が三か二か。言い換えれば、恋愛趣味が「げんじつ」に向いているか「現実」に向いているかの差でしょうか。
その他、差異としては、一方が、大手マスコミを含めた大資本の商売相手であるために、社会的に過剰に擁護尊重され、他方が、比較的弱小資本の商売相手であるせいで、力ある庇護者を欠き、社会的に冷遇され公然と侮辱攻撃されている、それくらい。
そういうわけで、スイーツ(笑)趣味とオタク趣味が共存することは、思ったほど難しくないのかもしれません。
そう考えると、ひょっとするとではありますが、
実は、スイーツ(笑)とオタクって、
スイーツ(笑)を踊らせて商売の対象にしたい勢力が、オタクが自分たちに金を落とさない腹いせに、オタクに対する不当な蔑視攻撃を社会常識に仕立て上げるのを止めれば、
近しい趣味志向の者同士、歩み寄って、ある程度平和共存できる可能性が無いでもない、そんな気もしてきました。
まあ、他の資料の事例まで考慮に入れると、気のせいである可能性が高いですけど。
参考資料
『新編 日本古典文学全集 18 枕草子』小学館
森川嘉一郎著『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』幻冬舎
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ホントは恋せぬ平安貴族 ~恋などするのはバカばかり 賢者は恋より金を数える~ from 『うつほ物語』
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
今日は、そっちの方の終わりっぷりを紹介してみましょう。
どういうことかと言いますと、
まず、スイーツ(笑)とは、商業的陰謀に乗せられて軽薄な恋愛趣味と女性的嗜好を過剰に身につけしまった女性を揶揄するインターネット上の慣用語なのですが、おそらく、そのようなスイーツ(笑)の対極にあって、スイーツ(笑)と嫌悪しあっている人種として、いわゆるオタクを上げることが出来るでしょう。
で、オタクは、敢えて偏見混じりで大ざっぱに言えば、家にこもって漫画とかアニメとかゲームとか、そこに出てくるキャラクターとか、虚構の世界に没入し愛情注いでいる人たち。そういうわけでなんで、せっせとお出かけして恋愛なる性欲処理に興じているスイーツ(笑)&お供の盛りの付いた男たちと、オタクを比べると、なるほど彼女彼らは、外と内、現実と虚構という、ある意味、対極の趣味志向の持ち主。
相互理解を欠いて敵対関係にあるのも不思議ではありません。
ところが、日本で最も高名なスイーツ(笑)、いわばスイーツ(笑)のクイーンである清少納言は、スイーツ(笑)であるのみならず、それと対立衝突しそうなオタク趣味まで兼ね備えた人物、しかも特濃な人でもあったのです。
それが分かるのは、まずは『枕草子』、返る年の二月二十余日の段。
ここで清少納言は、仲間の女性達との間で、激しくキャラ萌え論争を展開しています。
彼女は『宇津保物語』に登場する仲忠というキャラが超お気に入りなのですが、その仲忠、幼少期は貧窮の中、大木の空洞を住居に野人ライフを送らざるを得なかったキャラクター。涼というライバルキャラを支持する人たちに、その点をあげつらわれ、清少納言が仲忠ファンの先頭に立って、それに激しく食ってかかるという構図です。
御前に人々いとおほく、上人など候ひて、物語のよきあしき、にくき所なんどを定め言ひそしる。涼、仲忠などが事、御前にもおとりまさりたるほどなど仰せられける。「まづこれはいかに。とくことわれ。仲忠が童生ひのあやしさをせちに仰せらるるぞ」など言へば、「何か。琴なども天人のおるばかり弾き出で、いとわるき人なり。帝の御むすめやは得たる」と言へば、仲忠が方人ども所を得て、「さればよ」など言ふに、……
(『新編 日本古典文学全集 18 枕草子』小学館 144頁)
<訳>
皇妃様の御前に人々が大勢集まって、帝付きの侍女の方々もいらっしゃり、物語の善し悪し、気にくわないところなどを、品定めしたり、けなしたりしていた。涼や仲忠などのキャラクターのことも、皇妃様まで混じって、優劣をコメントなさったのであった。「まずはこれについてどうお考えなのか。さっさとお答え願いましょうか。仲忠の子供時代の生い立ちの卑しさは皇妃様も強調しておられますけど」などと言う者がいるので、「それが何か。(涼なんて仲忠さまと合奏して)琴の音で天人を降臨させるだけが見どころの、全然大したことないキャラじゃない。涼には(仲忠さまがしたみたいに)帝の御娘を手に入れることなんてできないでしょ」と言い返せば、仲忠派は勢いを得て、「そうよそうよ」などと言い、……
……この有り様。
清少納言は日本史を代表する女性文学者の一人で、その仲間たちも宮廷の文芸サロンに出入りする選ばれた人たちのはず。
それが、キャラクターを論じるに、物語の要素としてのキャラクター描写の妙を語るとかではなくて、キャラクターの生い立ちが卑しいの何のと、文芸っぽさの低い次元で、激烈な一大キャラ萌え論争。
こいつら、文芸に携わる者としての自覚が微塵も感じられません。
どう見ても、オタク。それ以外には見えません。
しかも、清少納言は、その中でも重度で、論争の最前線で萌えキャラの名誉をかけて、主人の皇妃の意見への反逆の先頭に立つ始末……。
そんなにキャラ萌えに必死になるなよ……。文学者なんだから、作品論じるならもっとやり方があるだろう?
それに、お前、一応、スイーツ(笑)じゃないか。
スイーツ(笑)なら、フィクションに没入するにしても、萌えキャラとか論じるより、お安い感傷的なストーリーをリアルで勉強になるとか吠えてみたり、そこに出てくるヒロインに感情移入して、このヒロインは自分みたいとか言って、過剰な自己評価と自己陶酔に浸ったりしてるほうがお似合いだって。
ちなみに清少納言、
鳥の郭公が好きで、郭公についてとやかく言う段が結構あるようなんですが、その中の一つ、
賀茂へ詣る道にの段で、わけの分からんことをほざきだします。
仲忠が童生ひ言いおとす人と、「郭公、鶯におとる」と言ふ人こそ、いとつらうにくけれ。
(同書 348、349頁)
<訳>
仲忠さまの子供時代の生い立ちをけなして言う人と、「郭公は鶯に劣る」と言う人こそ、憎たらしくてむかつくものだ。
その無茶な話のくっつけ方はいかがなものか。
鳥を云々してる時に、なんでいきなり物語のキャラクターの好き嫌いの話が混じってくる?
いくらなんでも四六時中、仲忠のことばっかり考えすぎだろ。
というわけで、清少納言の重度のキャラ萌えぶり、ご理解頂けましたでしょうか。
重度のスイーツ(笑)兼特濃のオタクとは、なかなか、恐れ入りますね。
でもまあ、実のところ、スイーツ(笑)とオタクは全く異なるように見えて、非常に近しい存在のような気もします
例えば、商業的陰謀に(喜んで)乗せられて、結構したたかに楽しんでいるところとか、強度の恋愛趣味の持ち主なところとか、かなり共通してますしね。違いと言えば、恋愛趣味の次元の数が三か二か。言い換えれば、恋愛趣味が「げんじつ」に向いているか「現実」に向いているかの差でしょうか。
その他、差異としては、一方が、大手マスコミを含めた大資本の商売相手であるために、社会的に過剰に擁護尊重され、他方が、比較的弱小資本の商売相手であるせいで、力ある庇護者を欠き、社会的に冷遇され公然と侮辱攻撃されている、それくらい。
そういうわけで、スイーツ(笑)趣味とオタク趣味が共存することは、思ったほど難しくないのかもしれません。
そう考えると、ひょっとするとではありますが、
実は、スイーツ(笑)とオタクって、
スイーツ(笑)を踊らせて商売の対象にしたい勢力が、オタクが自分たちに金を落とさない腹いせに、オタクに対する不当な蔑視攻撃を社会常識に仕立て上げるのを止めれば、
近しい趣味志向の者同士、歩み寄って、ある程度平和共存できる可能性が無いでもない、そんな気もしてきました。
まあ、他の資料の事例まで考慮に入れると、気のせいである可能性が高いですけど。
参考資料
『新編 日本古典文学全集 18 枕草子』小学館
森川嘉一郎著『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』幻冬舎
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物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―その2
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/genji.html
物語の消費形態について―いわゆるオタクを時間的・空間的に相対化する試み―
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/kouroumu.html
日本民衆文化史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html
by trushbasket
| 2010-02-15 02:02
| My(山田昌弘)








