戦乙女の大問題 ~軍隊という男の園に紛れ込もうとした女性兵士はいかにして周囲の目を欺いたか~
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それが、今回はそんな慣例(?)を破って、女性の男装を扱います。
お題は女性戦士。
軍隊における女性戦士は、いかにして男性の群れに紛れ込んだか。
女性戦士というと、ある種のファンタジー的存在と考えている人がいるかもしれませんが、
実は、女性の戦闘参加というのはそんなに珍しいものではなかったりします。
まず、優れた軍事的才幹を示したり見事な軍功を残した女性でさえ、歴史を見ればいくらでも見つかります。あるいは家族の率いた指揮権を受け継ぎ、あるいは愛する男に付いて従軍し、あるいは愛国の熱情に駆られて武器を取り、あるいは革命の熱気に煽られて蜂起し、多くの女性が世界史上の様々な戦場で見事な活躍をしています。一般によく知られたジャンヌ・ダルクなど、この種の人物と言って良いでしょう(その種の人物の代表に掲げるべき傑出した人材かどうか甚だ怪しいですが)。
ところが、そんな特異な武力や特異な魅力を持ったチートな人物、歴史的ヒロインでなくとも、ある意味平凡たる人間でしかなくとも、女性は割りと普通に兵士として陸海の軍隊に紛れ込んでいたりします。
あるいは愛する男に付いていくため、あるいは愛国心から、あるいは貧困のために。
そして、ヒロインとしてある種特権的ポジションを得たチートな人なんかは別として、平々凡々たる女性戦士は、軍隊や戦場に留まるためには、どうにか上手く立場を偽造して男性戦士として周囲にとけ込まねばなりません。
そのためには、
兵舎や船室の混雑密集といったプライバシーもくそもない生活環境および、身体的特徴の露出の機会の多い男性的生活文化の下において、男との体の違いが、非常な難題として立ちふさがってくるわけです。
何と言いますか、祭りの遊びでコスプレするだけならともかく、異性のふりして生活し続けるという観点では、男装は非常にハードルが高く、デブでもないのに乳があって、他の男のように裸になれないとか、チンコが無かったりとか、大問題。そして、前者は何やかんやと服を脱がない理由を付けてある程度誤魔化せるにしても、後者は、立ち小便が出来ないとかで、服着た程度では誤魔化しようもなさそうです。ちなみに、仲間連れだっての女遊びに混ざれずに怪しまれる恐れもあったりするとか。
そんな大問題、チンコの不在を誤魔化すために、女性兵士はどのような手段を使ったのでしょうか?
それは、近世ヨーロッパに関する研究によれば以下の通り。
この点にかんして私たちがもっているもっとも詳しい情報は、一七二一年に同じようなことを試みたドイツのカタリナ・リンゲンの場合についてである。彼女は、結婚生活においてさえ、男性としてとおすことに成功した。というのは、彼女は、「皮をかぶせた角──そこから排尿したのだが──」を利用し、「それを[ずっと]裸の体にくくり付けていた」からである。
(R.M.デッカー/L.C.ファン・ドゥ・ポル/P.パーク『兵士になった女性たち──近世ヨーロッパにおける異性装の伝統』大木昌訳 法政大学出版局 29頁)
女性戦士は、男装用の模造チンコを使っていたというわけなんですね。
参考資料
R.M.デッカー/L.C.ファン・ドゥ・ポル/P.パーク『兵士になった女性たち──近世ヨーロッパにおける異性装の伝統』大木昌訳 法政大学出版局
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今回の記事に直接関係ある文章ではないですが、女戦士というのはエロ作品の格好の題材ですから。
リンクを変更(2010年12月7日、16日)