2010年 11月 14日
世界の中心で「おっぱい!おっぱい!」を叫ぶ~非西洋文化圏における乳の性的意味づけ~
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現代では日本を始めとする非西洋地域でも女性の乳に性的関心をもつのが当然になっています。しかし、一説によればそれは欧米化の影響によるもので前近代には必ずしも性的関心はなかったのだとか。まあ、少なくとも日本に関してはその説は当てはまらないであろうことは以前の記事で述べましたが、今回は更に日本やその他の地域に関する事実をいくつか検討していこうと思います。
・日本
近代でも女性達は炭鉱や工場などで上半身裸で労働する事は珍しくありませんでしたが、その際に若い女性は男性とは一緒には働かなかった。したがって、若い娘に関しては男性に乳を晒すのを忌避していた可能性が伺えます。十九世紀でも同様でありシーボルトは1826年に中津藩主の側室を診察する機会に恵まれましたがその際の経験を
と記しています。これは必ずしも高貴な女性だけではなかったようで明治期にドイツの産婦人科医ウェルニッヒも庶民の若い女性を診察する際に同様な経験をしています。以上から、授乳は別としても若い娘が乳を人に晒す事は憚られていたといえるようです。
春画で乳が余り関心をもって扱われない事は以前にも触れましたが、一方で情交を描いたものではないが性的な観点から描かれた「危な絵」(現在のいわゆる「15禁」のような、軽くエロい絵の事と考えてください)ではしばしば上半身をはだけて乳房を露出した海女や遊女が描かれています。ここからも、前近代から日本人は既に性的な意味で乳大好きだった事が明らかだと言えます。
・中国
第一子を産む前の若い女性は胸を露出しないよう定められており、服の上からも乳房が目立たないよう胴着で旨を押さえつけていたそうです。またエロ小説で女性の乳房に情欲を燃やしたり愛撫したりする場面は珍しくなく、また「金瓶梅」で
といった場面があるように愛撫の場面で乳が出てくる事も通例だったようです。
そして古来より小咄では必要がないにもかかわらず女性患者の乳を弄ぶ医者を扱った冗談がしばしば見られています。これらから、中国でも授乳を別にすると若い女性が乳を晒すものではないと考えられていた事が分かるのです。
・インド
バイガ族の男性は女性を見るときに真っ先に胸を評価し、それ以外の部分が醜くても構わないと考えていたとか。ちなみに丸く張り大きすぎず小さすぎない乳がよいそうです。ビハールに住むサンダル族やムンダー族の若い女性は胸をサリーで隠す一方で中高年女性は特に拘らないとか。
更に、文化人類学的に女性も乳を晒しているとされることが多い人々についても見てみましょう。古代ゲルマン人は女性も乳を普段から晒していると考えられがちですが、実際には通常は乳房を覆い隠しており不倫を働いた女性への刑罰として乳の露出が行われたとか。ここから、彼らの間では乳を晒す事は恥辱であると考えられていた事が分かります。
アラスカのイヌイットでも若い女性は乳を隠すのが通例で男性の前では衣服で覆っているそうですし、タヒチでも若い女性に関しては人前で胸を晒さないのが決まりだったとか。ただしタヒチの場合は族長や高貴な客人の前では胸を露出する習慣があったそうですから、そこから西洋人の間に誤解が広まった可能性があります。ミクロネシアでは上半身裸であるにも関わらず、親族や親しい男性の前では胸を覆わなければならないとされていたそうです。また、ニューアイルランド島のパラ族は乳房の成長が始まると布切れや花輪で覆うようになりますし、モザンビークのアチュアボ族やアセナ族などは思春期を迎えた女性は「乳房は小刻みに震えるので、男がそれを見ると欲望で燃える」という理由から胸の上に布や縄を巻く習慣になっているそうです。他にも、ルソン島東部のニグリート族やアフリカ東南部のヌダイ族・ローデシアのカランガ族なども若い未婚女性は胸を隠す事が知られています。案外、「実は若い女性の胸は露出しない」民族は多いのですね。
加えると、女性も上半身裸である人々の間でも、乳に性的関心が向けられないわけではなかったようです。ニューギニアのザンビア族の男性は女性の露な胸を見たり触れたりする事を「きわめて刺激的」だと考えており「恋人の乳の事を考えると勃起してしまう」と答えた若い男性もいたとか。シオラレオネのメンデ族も乳に触れたり愛撫するのを好んだそうですし、西アフリカのヨルバ族の間では女性の胸をあからさまに見るのは無作法とみなされていました。そしてヴァージニア州のアルゴンキン語族の若い女性は男の前では手を胸に当てて隠しているとか。
以上から考えると、女性の乳に性的な意味合いがあるとされているのは割と全世界的な事と見て差し支えなさそうです。結論。古今東西、(程度の差はあるとはいえ)どこの国でも男はみんなおっぱい大好き(性的な意味で)。世界中の男達が声をそろえて「おっぱい!おっぱい!」叫べば、男どもの心が一つになって世界は平和になるんじゃないか、そんな錯覚にすら陥りそうになる話ですね。
【参考文献】
文明化の過程の神話Ⅳ挑発する肉体 H.P.デュル 藤代幸一、津島拓也訳 法政大学出版局
日本大百科全書 小学館
関連記事:
「乳をこよなく愛した人々の話 in 西洋史」
「ロリコン神、乳を語る」
ロリコンはロリコン式に乳を愛好している、という話。
「「おっぱい!おっぱい!」~日本人と乳について通史的に考える~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html)
「ジュブナイルポルノの歴史に関する覚え書きとささやかな考現学」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/mito/juvenile.html)
「西欧中世における恋愛、性の諸相」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/051209.html)
関連サイト:
「ジョルジュ長岡まとめサイト」(http://georgenagaoka.hp.infoseek.co.jp/)
おっぱい!おっぱい!
「駄文にゅうす」(http://ariel.s8.xrea.com/)より
「胸に関するえとせとら ~モニターのむこうから街角まで~」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2004_11.htm#10)
「胸に関するえとせとら だっしゅ!」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2006_02.htm#28)
「大きくても小さくても、おっぱいは正義! ~胸に関するえとせとら その3~」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2007_07.htm#20070701)
「天は乳の上に乳を造らず、乳の下に乳を造らず ~胸に関するえとせとら その4~」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2008_07.htm#20080716)
・日本
近代でも女性達は炭鉱や工場などで上半身裸で労働する事は珍しくありませんでしたが、その際に若い女性は男性とは一緒には働かなかった。したがって、若い娘に関しては男性に乳を晒すのを忌避していた可能性が伺えます。十九世紀でも同様でありシーボルトは1826年に中津藩主の側室を診察する機会に恵まれましたがその際の経験を
「私は名誉なことに、こうした女性たちの中でもっとも高貴な女性を診察する事になった。右の乳房にしこりがあったためだが、人びとは胸を露出して診察させるのを躊躇した。しかし私は、医師としてヨーロッパでのやり方で診察する許しをえねばならない、と説明した。」
(H.P.デュル『挑発する肉体』 法政大学出版局 290頁)
と記しています。これは必ずしも高貴な女性だけではなかったようで明治期にドイツの産婦人科医ウェルニッヒも庶民の若い女性を診察する際に同様な経験をしています。以上から、授乳は別としても若い娘が乳を人に晒す事は憚られていたといえるようです。
春画で乳が余り関心をもって扱われない事は以前にも触れましたが、一方で情交を描いたものではないが性的な観点から描かれた「危な絵」(現在のいわゆる「15禁」のような、軽くエロい絵の事と考えてください)ではしばしば上半身をはだけて乳房を露出した海女や遊女が描かれています。ここからも、前近代から日本人は既に性的な意味で乳大好きだった事が明らかだと言えます。
・中国
第一子を産む前の若い女性は胸を露出しないよう定められており、服の上からも乳房が目立たないよう胴着で旨を押さえつけていたそうです。またエロ小説で女性の乳房に情欲を燃やしたり愛撫したりする場面は珍しくなく、また「金瓶梅」で
「西門慶は彼女の胸を撫で回した。彼女は絹の肌着を開いて豊かな乳房をあらわにした。西門慶は手と、そして唇で乳房に優しく触れた。」(同書 286頁より引用)
といった場面があるように愛撫の場面で乳が出てくる事も通例だったようです。
そして古来より小咄では必要がないにもかかわらず女性患者の乳を弄ぶ医者を扱った冗談がしばしば見られています。これらから、中国でも授乳を別にすると若い女性が乳を晒すものではないと考えられていた事が分かるのです。
・インド
バイガ族の男性は女性を見るときに真っ先に胸を評価し、それ以外の部分が醜くても構わないと考えていたとか。ちなみに丸く張り大きすぎず小さすぎない乳がよいそうです。ビハールに住むサンダル族やムンダー族の若い女性は胸をサリーで隠す一方で中高年女性は特に拘らないとか。
更に、文化人類学的に女性も乳を晒しているとされることが多い人々についても見てみましょう。古代ゲルマン人は女性も乳を普段から晒していると考えられがちですが、実際には通常は乳房を覆い隠しており不倫を働いた女性への刑罰として乳の露出が行われたとか。ここから、彼らの間では乳を晒す事は恥辱であると考えられていた事が分かります。
アラスカのイヌイットでも若い女性は乳を隠すのが通例で男性の前では衣服で覆っているそうですし、タヒチでも若い女性に関しては人前で胸を晒さないのが決まりだったとか。ただしタヒチの場合は族長や高貴な客人の前では胸を露出する習慣があったそうですから、そこから西洋人の間に誤解が広まった可能性があります。ミクロネシアでは上半身裸であるにも関わらず、親族や親しい男性の前では胸を覆わなければならないとされていたそうです。また、ニューアイルランド島のパラ族は乳房の成長が始まると布切れや花輪で覆うようになりますし、モザンビークのアチュアボ族やアセナ族などは思春期を迎えた女性は「乳房は小刻みに震えるので、男がそれを見ると欲望で燃える」という理由から胸の上に布や縄を巻く習慣になっているそうです。他にも、ルソン島東部のニグリート族やアフリカ東南部のヌダイ族・ローデシアのカランガ族なども若い未婚女性は胸を隠す事が知られています。案外、「実は若い女性の胸は露出しない」民族は多いのですね。
加えると、女性も上半身裸である人々の間でも、乳に性的関心が向けられないわけではなかったようです。ニューギニアのザンビア族の男性は女性の露な胸を見たり触れたりする事を「きわめて刺激的」だと考えており「恋人の乳の事を考えると勃起してしまう」と答えた若い男性もいたとか。シオラレオネのメンデ族も乳に触れたり愛撫するのを好んだそうですし、西アフリカのヨルバ族の間では女性の胸をあからさまに見るのは無作法とみなされていました。そしてヴァージニア州のアルゴンキン語族の若い女性は男の前では手を胸に当てて隠しているとか。
以上から考えると、女性の乳に性的な意味合いがあるとされているのは割と全世界的な事と見て差し支えなさそうです。結論。古今東西、(程度の差はあるとはいえ)どこの国でも男はみんなおっぱい大好き(性的な意味で)。世界中の男達が声をそろえて「おっぱい!おっぱい!」叫べば、男どもの心が一つになって世界は平和になるんじゃないか、そんな錯覚にすら陥りそうになる話ですね。
【参考文献】
文明化の過程の神話Ⅳ挑発する肉体 H.P.デュル 藤代幸一、津島拓也訳 法政大学出版局
日本大百科全書 小学館
関連記事:
「乳をこよなく愛した人々の話 in 西洋史」
「ロリコン神、乳を語る」
ロリコンはロリコン式に乳を愛好している、という話。
「「おっぱい!おっぱい!」~日本人と乳について通史的に考える~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/s2004/050311.html)
「ジュブナイルポルノの歴史に関する覚え書きとささやかな考現学」
(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/mito/juvenile.html)
「西欧中世における恋愛、性の諸相」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2005/051209.html)
関連サイト:
「ジョルジュ長岡まとめサイト」(http://georgenagaoka.hp.infoseek.co.jp/)
おっぱい!おっぱい!
「駄文にゅうす」(http://ariel.s8.xrea.com/)より
「胸に関するえとせとら ~モニターのむこうから街角まで~」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2004_11.htm#10)
「胸に関するえとせとら だっしゅ!」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2006_02.htm#28)
「大きくても小さくても、おっぱいは正義! ~胸に関するえとせとら その3~」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2007_07.htm#20070701)
「天は乳の上に乳を造らず、乳の下に乳を造らず ~胸に関するえとせとら その4~」
(http://ariel.s8.xrea.com/news/2008_07.htm#20080716)
by trushbasket
| 2010-11-14 21:50
| NF








