2010年 11月 23日
軍事史概説 戦略と戦術の東西文明五千年史
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はじめに
【一】本コンテンツの作成意図・性質
【二】本コンテンツからもう一歩先に進もうという方のために(ものぐさな方向け)
【三】若干の補足
【四】本文を読む前に
【五】軍事史概説 戦略と戦術の東西文明五千年史 目次 (本文へのリンク)
【一】本コンテンツの作成意図・性質
軍事史には、これから軍事史を学ぼうと思った時に手に取るに適した良い本がありません。これは軍事史分野に良い本が存在しないという意味ではなく、軍事史の良書は、豊富とまでは行かないまでも、それなりに満足できる数、世に流通しています。しかし、それらの良書は残念ながら、概して、軍事史を既に知っている人が読んだ場合の良書であって、これから知ろうとする人にとっては微妙というのが現状であったりします。そういった本は、あるいは入門用としては詳細に過ぎ、あるいは一部の時代しか扱っておらず、あるいは通史を謳いながら各時代についての視点や問題意識、叙述内容の均質化が図られていない、といった感じで、十分な全体像をあらかじめ持たずに読んだ場合、相互に不調和、下手をすれば矛盾する、錯綜した無数の断片的情報の混沌の中に、読者を落とし込んで混乱させてしまうという、問題を抱えているのです。その混沌の中で、読者は、ばらばらの断片をどう接合して良いか分からぬまま、延々と途方にくれるようなことにもなりかねません。少なくとも、私は、そうでした。
これは、いわば、軍事史を理解するための読書に、軍事史の理解が予備知識として求められ、これから知ろうと一歩を踏み出した人が、理不尽に軍事史理解から弾き出されている、とも言えるでしょう。もちろん、混乱したイメージの中でも、訳が分からないなりに読書を重ねていけば、やがて必要な軍事史理解にいつかは到達できるでしょうが、しかしそれは過度の苦労と言わざるを得ません。暫定的な全体理解をあらかじめ与えてくれる簡便な入門書があれば、このような過度の苦労を排除して、はるかに楽に、はるかに素早く、軍事史を理解していけるというのに。是非とも、そのような効率的な軍事史理解を可能にする、入門書が必要ではないでしょうか。
この『軍事史概説』は、残念ながら、入門「書」を名乗れる立場にはありませんが、以上のような問題意識で、作成されました。これから軍事史について知ろうとする方と、世に流布する軍事史書籍の間の、落差を埋める入門用文章として。もし昔の自分に会うことができたなら、今の自分から、昔の自分に与えてやりたい手引きの文章として。ですので、これから軍事史を知りたいという方は、この文章を読んで大雑把に軍事史の全体像を理解してから本を読めば、きっと、他の書籍を読む際の効率が向上させることができるでしょう。
ちなみにこの文章は、直接的には、大学時代のサークルの非軍事史マニアの友人や後輩達のために、コピー本として作成した文章ですが、ここに公開することで、少しでもそれ以外の方のお役にも立てれば、嬉しく思います。
(今回の公開に際しては、あまり量が多いのもブログ向きでないと思いますので、戦例は本文を省略します。)
なお、どこの馬の骨とも分からぬ人間がネット上に公開した文章など、信憑性が低過ぎて、とても頼りにできないと仰る方がいるかもしれませんが、なんだか、この文章を贈った友人が面白がって親しく教えを受けている中国史の研究者の先生に見せたところ、結構、高評価いただけたと言っていました。そういうわけで、一応、軽い歴史読み物としての及第点には達しているようですので、入門書程度になら、使ってくださって大丈夫だと思います。まあ、この高評価を受けたという事実を実証しようもない以上、こんなことを書いても、何ら信憑性はプラスされない、と言われればそれまでですが……。
【二】本コンテンツからさらに一歩先に進もうという方のために(ものぐさな方向け)
『軍事史概説』は、以上のような意図の下作成されたため、事実を抽象化し、各地域時代の軍事組織の理念型を抽出し、理念型を連ねることで軍事史の流れを持った全体像を簡便軽快な形で提供するという書き方をしております。そのため、具体的な血肉を持った情報に欠けるところがあります。そういった具体的な情報は、人それぞれに好みのままに書籍の間をさまよいつつ、好きな書籍から摂取すれば良いものではありますが、ですが、もう少し詳細な知識を一通り、さまようことなく効率的に摂取したいという方もおられると思います。そこで、そういった方のための簡単な読書案内をしておこうと思います。
てっとり早く、ある程度の知識を得ようとするならば、
アーサー・フェリル著『戦争の起源』鈴木主税/石原正毅訳 河出書房新社
エイドリアン・ゴールズワーシー著『図説 古代ローマの戦い』遠藤利国訳 東洋書林
マイケル・ハワード著『ヨーロッパ史と戦争』奥村房夫/奥村大作訳 学陽書房
以上の三冊がおススメです。
この三冊で先史時代から近代まで西洋軍事史を一通り押さえることが可能です。
さらに以上三冊に加え、拙訳、オットー・ヒンツェ著『国家組織と軍隊組織』を参照して、社会発展と軍事的発展の関連性を通史的に理解すれば、一層有益かと思います。それほど長くない論文ですので。
【三】若干の補足
余談ながら、『軍事史概説』本文は、当ブログおよび当ブログの本体サイト分化成立以前に、当ブログ等の母体となった京都大学歴史研究会公式サイトに掲載してもらった文章の2005年コピー本版(その後は何度か細かな修正のみ行った)ですが、公開する範囲においては、同サイト掲載の旧版と本質的な差異はありませんので、旧版をお読みになった方がおられましたら、改めてお読みになる必要性はあまり高くないと思います。なお2005年度版の目次のみは同サイトに掲載されています。(「城塞攻防戦」、「補給戦」、は旧版にはない追加要素になります。)
【四】本文を読む前に
ところで、本編に入る前に一つだけ、理解しておいてほしいことがあります。それは、軍事活動の大半は地味な小競り合いであり、華々しい決戦にもとづく大規模な征服は例外的な異常事態に過ぎないということです。国家や民族の強力な興隆期、あるいは戦力差の圧倒的な勢力が隣接する場合などには、決戦が志向され、大征服が成し遂げられることも多いのですが、あくまでそれは例外で、利害を対立させつつも共存せざるを得ない諸勢力の、地味に日常的に続ける小競り合いこそが、人類の行ってきた戦闘行為のほとんどを占めています。この冊子では、決戦のための組織や決戦に勝利するための技巧、そして決戦そのものを、主な観察対象としていますが、それはこれらが社会の発展状況を良く反映し、歴史的な変遷をたどりやすいからであって、決戦が軍事活動の主流を占めているからではありません。
【五】目次
あまり量が多いのもブログ向きでないと思いますので、目次にある戦例は、目次のみとし、本文を省略します
西洋軍事史
陸軍編
◆【1/3】先史~古代
◆【2/3】中世~近世
◆【3/3】近代
先史時代
古代前期;文明と国家の誕生
古代中期;巨大帝国の時代
1.アッシリア 2.ペルシア 3.マケドニア 4.ローマ
古代後期;ローマ帝国の後退
中世;騎士の時代
近世前期;荒れ狂う傭兵団と歩兵の台頭
近世中期;軍制改革と火器
1.スイス傭兵と槍兵密集戦法 2.スペイン軍と火器の躍進 3.オランダとスウェーデンの軍制改革
近世後期;中央集権国家と傭兵常備軍の完成
近代の萌芽;フランス革命と国民軍
近代前期;飛躍する産業力と巨大化する戦争
近代後期;肥大化する戦争と機械化軍隊
◆海軍編
古代~中世;地中海と櫂船の時代
近世;火力と海軍
近代;工業技術の飛躍と海軍
◆空軍編
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
機動力を活かした古代戦車戦術 カデシュの戦い(前1285年)
大兵力と騎兵の機動力を活かした古代ペルシア帝国軍の包囲戦法 クナクサの戦い(前401年)
古代ギリシアにおける重装歩兵衝突戦の発展形態 レウクトラの戦い(前371年)
マケドニア軍における重装歩兵と騎兵の連携 カイロネイアの戦い(前338年)
アレクサンドロス大王の突破・半包囲戦法 イッソスの戦い(前333年)
ハンニバルの包囲戦法 カンナエの戦い(前216年)
ローマ軍盛期の戦術 ザマの戦い(前202年)
ローマ軍衰退期の騎兵戦術 ダラの戦い(530年)
中世騎士の戦闘 ブーヴィーヌの戦い(1214年)
近世初期の歩兵復興期の戦闘 クレーシーの戦い(1346年)
スイス歩兵の戦闘 ムルテンの戦い(1476年)
スペイン軍による小火器の活用 チェリニョーラの戦い(1503年)
近世軍制改革による火力中心の戦闘法の確立 ブライテンフェルトの戦い(1631年)
フリードリヒ大王の迂回戦法 ロイテンの戦い(1757年)
ナポレオンの大規模戦略と戦場における突破戦法 アウステルリッツの戦い(1805年)
戦略的に構築されたモルトケの包囲戦法 ケーニヒグレーツの戦い(1866年)
近代戦車を活用した巨大包囲戦 西方電撃戦(1940年)
櫂船による海戦 レパントの海戦(1571年)
帆船による海戦 トラファルガル海戦(1805年)
装甲蒸気艦の海戦 日本海海戦(1905年)
空母による海戦 ミッドウェー海戦(1942年)
◆城塞攻防戦
◆補給戦
前近代の補給戦
古代の軍隊と補給
中世の軍隊と補給
近世の軍隊と補給
近代の軍隊と補給
◆性欲処理
古代の軍隊の性欲処理
中世の軍隊の性欲処理
近世の軍隊の性欲処理
近代の軍隊の性欲処理
インド前近代軍事史
◆陸軍編
先史時代
古代前期;都市と部族の軍隊
1.インダス文明の軍隊 2.アーリア人の軍隊
古代中期;古代国家の軍隊
1.群雄割拠の時代 2.統一帝国
古代後期;国家の衰退
1.異民族の流入 2.豪族の成長
中世;豪族の時代
近世前期;騎兵の時代
近世中期;火器の導入
近世後期;イギリスの侵略
◆水軍編
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
古代インドの軍隊の戦闘 ヒュダスペス河畔の戦い(前326年)
近世イスラーム勢力の騎兵戦術 タラーインの戦い(1192年)
ムガル帝国による火器の活用 パーニーパットの戦い(1526年)
中国前近代軍事史
◆陸軍編
先史時代
古代前期;部族の軍隊
古代中期;古代国家の軍隊
1.群雄割拠の時代 2.統一と対外防衛
古代後期;豪族の成長と異民族の流入
中世;異民族支配の時代
1.重騎兵の時代 2.軽騎兵の時代
近世前期;歩兵の時代
近世中期;火器の導入
近世後期;騎兵の勝利
◆水軍編
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
古代戦車戦 城濮の戦い(前632年)
戦国諸雄の大衆歩兵軍による巨大戦闘と騎兵の登場 長平の戦い(前260年)
大兵力と騎兵を活かした前漢の対匈奴戦 漠北の戦い(前119年)
古代末期の豪族軍の歩兵戦闘と騎兵突撃戦術 界橋の戦い(191年)
中世前期の重騎兵戦術 渭曲の戦い(537年)
唐の軽騎兵戦術 虎牢の戦い(621年)
宋の歩兵防御戦闘 順昌攻防戦(1140年)
明の火器戦闘と清の騎兵戦術 サルフの戦い(1619年)
日本前近代軍事史
◆陸軍編
先史時代
古代前期;農村共同体の軍隊
古代中期;古代国家の軍隊
1.統一政権の形成と外征 2.古代帝国の軍隊
古代後期;台頭する地方豪族と私兵団
中世;騎馬戦士の時代
1.戦士階層の成立 2.軍事政権の形成
近世前期;動乱と歩兵台頭の時代
1.動乱の幕開け 2.動乱の激化
近世中期;歩兵の組織化
1.地方安定政権の軍隊 2.統一期の軍隊
近世後期;太平の世
◆水軍編
先史時代~中世;丸木船の時代
近世;戦闘用艦艇の出現
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
古代歩兵戦の実態 板櫃河の戦い(740年)
中世武士の陣地戦 一ノ谷の戦い(1184年)
近世初頭の歩兵の台頭 天王寺の戦い(1333年)
近世の歩兵組織と火器の活用 長篠の戦い(1575年)
古代水軍の戦い 白村江の戦い(663年)
中世武士の水上組織戦 壇ノ浦の戦い(1185年)
近世期における水軍への火器の導入 第二次木津川口海戦(1578年)
遊牧国家の軍隊
◆遊牧国家の歴史と戦法
遊牧国家の歴史
遊牧国家の戦法
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
遊牧騎馬軍の包囲・騎射戦法 カルラエの戦い(前53年)
以上
関連記事(4月20日加筆)
どれほど兵は神速を尊ぶか? ~歴史的に行軍速度を探求し戦争術評価の尺度とする試み~
戦争史における兵力について ~軍事史の巨人ハンス・デルブリュックの著作から~
諸君 私は戦争が好きだ ~高らかに謳う文学的戦闘者エルンスト・ユンガー紹介~
とらっしゅのーと軍事史図書室(オススメ軍事史記事の解説と記事へのリンク集)
【一】本コンテンツの作成意図・性質
【二】本コンテンツからもう一歩先に進もうという方のために(ものぐさな方向け)
【三】若干の補足
【四】本文を読む前に
【五】軍事史概説 戦略と戦術の東西文明五千年史 目次 (本文へのリンク)
【一】本コンテンツの作成意図・性質
軍事史には、これから軍事史を学ぼうと思った時に手に取るに適した良い本がありません。これは軍事史分野に良い本が存在しないという意味ではなく、軍事史の良書は、豊富とまでは行かないまでも、それなりに満足できる数、世に流通しています。しかし、それらの良書は残念ながら、概して、軍事史を既に知っている人が読んだ場合の良書であって、これから知ろうとする人にとっては微妙というのが現状であったりします。そういった本は、あるいは入門用としては詳細に過ぎ、あるいは一部の時代しか扱っておらず、あるいは通史を謳いながら各時代についての視点や問題意識、叙述内容の均質化が図られていない、といった感じで、十分な全体像をあらかじめ持たずに読んだ場合、相互に不調和、下手をすれば矛盾する、錯綜した無数の断片的情報の混沌の中に、読者を落とし込んで混乱させてしまうという、問題を抱えているのです。その混沌の中で、読者は、ばらばらの断片をどう接合して良いか分からぬまま、延々と途方にくれるようなことにもなりかねません。少なくとも、私は、そうでした。
これは、いわば、軍事史を理解するための読書に、軍事史の理解が予備知識として求められ、これから知ろうと一歩を踏み出した人が、理不尽に軍事史理解から弾き出されている、とも言えるでしょう。もちろん、混乱したイメージの中でも、訳が分からないなりに読書を重ねていけば、やがて必要な軍事史理解にいつかは到達できるでしょうが、しかしそれは過度の苦労と言わざるを得ません。暫定的な全体理解をあらかじめ与えてくれる簡便な入門書があれば、このような過度の苦労を排除して、はるかに楽に、はるかに素早く、軍事史を理解していけるというのに。是非とも、そのような効率的な軍事史理解を可能にする、入門書が必要ではないでしょうか。
この『軍事史概説』は、残念ながら、入門「書」を名乗れる立場にはありませんが、以上のような問題意識で、作成されました。これから軍事史について知ろうとする方と、世に流布する軍事史書籍の間の、落差を埋める入門用文章として。もし昔の自分に会うことができたなら、今の自分から、昔の自分に与えてやりたい手引きの文章として。ですので、これから軍事史を知りたいという方は、この文章を読んで大雑把に軍事史の全体像を理解してから本を読めば、きっと、他の書籍を読む際の効率が向上させることができるでしょう。
ちなみにこの文章は、直接的には、大学時代のサークルの非軍事史マニアの友人や後輩達のために、コピー本として作成した文章ですが、ここに公開することで、少しでもそれ以外の方のお役にも立てれば、嬉しく思います。
(今回の公開に際しては、あまり量が多いのもブログ向きでないと思いますので、戦例は本文を省略します。)
なお、どこの馬の骨とも分からぬ人間がネット上に公開した文章など、信憑性が低過ぎて、とても頼りにできないと仰る方がいるかもしれませんが、なんだか、この文章を贈った友人が面白がって親しく教えを受けている中国史の研究者の先生に見せたところ、結構、高評価いただけたと言っていました。そういうわけで、一応、軽い歴史読み物としての及第点には達しているようですので、入門書程度になら、使ってくださって大丈夫だと思います。まあ、この高評価を受けたという事実を実証しようもない以上、こんなことを書いても、何ら信憑性はプラスされない、と言われればそれまでですが……。
【二】本コンテンツからさらに一歩先に進もうという方のために(ものぐさな方向け)
『軍事史概説』は、以上のような意図の下作成されたため、事実を抽象化し、各地域時代の軍事組織の理念型を抽出し、理念型を連ねることで軍事史の流れを持った全体像を簡便軽快な形で提供するという書き方をしております。そのため、具体的な血肉を持った情報に欠けるところがあります。そういった具体的な情報は、人それぞれに好みのままに書籍の間をさまよいつつ、好きな書籍から摂取すれば良いものではありますが、ですが、もう少し詳細な知識を一通り、さまようことなく効率的に摂取したいという方もおられると思います。そこで、そういった方のための簡単な読書案内をしておこうと思います。
てっとり早く、ある程度の知識を得ようとするならば、
アーサー・フェリル著『戦争の起源』鈴木主税/石原正毅訳 河出書房新社
エイドリアン・ゴールズワーシー著『図説 古代ローマの戦い』遠藤利国訳 東洋書林
マイケル・ハワード著『ヨーロッパ史と戦争』奥村房夫/奥村大作訳 学陽書房
以上の三冊がおススメです。
この三冊で先史時代から近代まで西洋軍事史を一通り押さえることが可能です。
さらに以上三冊に加え、拙訳、オットー・ヒンツェ著『国家組織と軍隊組織』を参照して、社会発展と軍事的発展の関連性を通史的に理解すれば、一層有益かと思います。それほど長くない論文ですので。
【三】若干の補足
余談ながら、『軍事史概説』本文は、当ブログおよび当ブログの本体サイト分化成立以前に、当ブログ等の母体となった京都大学歴史研究会公式サイトに掲載してもらった文章の2005年コピー本版(その後は何度か細かな修正のみ行った)ですが、公開する範囲においては、同サイト掲載の旧版と本質的な差異はありませんので、旧版をお読みになった方がおられましたら、改めてお読みになる必要性はあまり高くないと思います。なお2005年度版の目次のみは同サイトに掲載されています。(「城塞攻防戦」、「補給戦」、は旧版にはない追加要素になります。)
【四】本文を読む前に
ところで、本編に入る前に一つだけ、理解しておいてほしいことがあります。それは、軍事活動の大半は地味な小競り合いであり、華々しい決戦にもとづく大規模な征服は例外的な異常事態に過ぎないということです。国家や民族の強力な興隆期、あるいは戦力差の圧倒的な勢力が隣接する場合などには、決戦が志向され、大征服が成し遂げられることも多いのですが、あくまでそれは例外で、利害を対立させつつも共存せざるを得ない諸勢力の、地味に日常的に続ける小競り合いこそが、人類の行ってきた戦闘行為のほとんどを占めています。この冊子では、決戦のための組織や決戦に勝利するための技巧、そして決戦そのものを、主な観察対象としていますが、それはこれらが社会の発展状況を良く反映し、歴史的な変遷をたどりやすいからであって、決戦が軍事活動の主流を占めているからではありません。
【五】目次
あまり量が多いのもブログ向きでないと思いますので、目次にある戦例は、目次のみとし、本文を省略します
西洋軍事史
陸軍編
◆【1/3】先史~古代
◆【2/3】中世~近世
◆【3/3】近代
先史時代
古代前期;文明と国家の誕生
古代中期;巨大帝国の時代
1.アッシリア 2.ペルシア 3.マケドニア 4.ローマ
古代後期;ローマ帝国の後退
中世;騎士の時代
近世前期;荒れ狂う傭兵団と歩兵の台頭
近世中期;軍制改革と火器
1.スイス傭兵と槍兵密集戦法 2.スペイン軍と火器の躍進 3.オランダとスウェーデンの軍制改革
近世後期;中央集権国家と傭兵常備軍の完成
近代の萌芽;フランス革命と国民軍
近代前期;飛躍する産業力と巨大化する戦争
近代後期;肥大化する戦争と機械化軍隊
◆海軍編
古代~中世;地中海と櫂船の時代
近世;火力と海軍
近代;工業技術の飛躍と海軍
◆空軍編
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
機動力を活かした古代戦車戦術 カデシュの戦い(前1285年)
大兵力と騎兵の機動力を活かした古代ペルシア帝国軍の包囲戦法 クナクサの戦い(前401年)
古代ギリシアにおける重装歩兵衝突戦の発展形態 レウクトラの戦い(前371年)
マケドニア軍における重装歩兵と騎兵の連携 カイロネイアの戦い(前338年)
アレクサンドロス大王の突破・半包囲戦法 イッソスの戦い(前333年)
ハンニバルの包囲戦法 カンナエの戦い(前216年)
ローマ軍盛期の戦術 ザマの戦い(前202年)
ローマ軍衰退期の騎兵戦術 ダラの戦い(530年)
中世騎士の戦闘 ブーヴィーヌの戦い(1214年)
近世初期の歩兵復興期の戦闘 クレーシーの戦い(1346年)
スイス歩兵の戦闘 ムルテンの戦い(1476年)
スペイン軍による小火器の活用 チェリニョーラの戦い(1503年)
近世軍制改革による火力中心の戦闘法の確立 ブライテンフェルトの戦い(1631年)
フリードリヒ大王の迂回戦法 ロイテンの戦い(1757年)
ナポレオンの大規模戦略と戦場における突破戦法 アウステルリッツの戦い(1805年)
戦略的に構築されたモルトケの包囲戦法 ケーニヒグレーツの戦い(1866年)
近代戦車を活用した巨大包囲戦 西方電撃戦(1940年)
櫂船による海戦 レパントの海戦(1571年)
帆船による海戦 トラファルガル海戦(1805年)
装甲蒸気艦の海戦 日本海海戦(1905年)
空母による海戦 ミッドウェー海戦(1942年)
◆城塞攻防戦
◆補給戦
前近代の補給戦
古代の軍隊と補給
中世の軍隊と補給
近世の軍隊と補給
近代の軍隊と補給
◆性欲処理
古代の軍隊の性欲処理
中世の軍隊の性欲処理
近世の軍隊の性欲処理
近代の軍隊の性欲処理
インド前近代軍事史
◆陸軍編
先史時代
古代前期;都市と部族の軍隊
1.インダス文明の軍隊 2.アーリア人の軍隊
古代中期;古代国家の軍隊
1.群雄割拠の時代 2.統一帝国
古代後期;国家の衰退
1.異民族の流入 2.豪族の成長
中世;豪族の時代
近世前期;騎兵の時代
近世中期;火器の導入
近世後期;イギリスの侵略
◆水軍編
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
古代インドの軍隊の戦闘 ヒュダスペス河畔の戦い(前326年)
近世イスラーム勢力の騎兵戦術 タラーインの戦い(1192年)
ムガル帝国による火器の活用 パーニーパットの戦い(1526年)
中国前近代軍事史
◆陸軍編
先史時代
古代前期;部族の軍隊
古代中期;古代国家の軍隊
1.群雄割拠の時代 2.統一と対外防衛
古代後期;豪族の成長と異民族の流入
中世;異民族支配の時代
1.重騎兵の時代 2.軽騎兵の時代
近世前期;歩兵の時代
近世中期;火器の導入
近世後期;騎兵の勝利
◆水軍編
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
古代戦車戦 城濮の戦い(前632年)
戦国諸雄の大衆歩兵軍による巨大戦闘と騎兵の登場 長平の戦い(前260年)
大兵力と騎兵を活かした前漢の対匈奴戦 漠北の戦い(前119年)
古代末期の豪族軍の歩兵戦闘と騎兵突撃戦術 界橋の戦い(191年)
中世前期の重騎兵戦術 渭曲の戦い(537年)
唐の軽騎兵戦術 虎牢の戦い(621年)
宋の歩兵防御戦闘 順昌攻防戦(1140年)
明の火器戦闘と清の騎兵戦術 サルフの戦い(1619年)
日本前近代軍事史
◆陸軍編
先史時代
古代前期;農村共同体の軍隊
古代中期;古代国家の軍隊
1.統一政権の形成と外征 2.古代帝国の軍隊
古代後期;台頭する地方豪族と私兵団
中世;騎馬戦士の時代
1.戦士階層の成立 2.軍事政権の形成
近世前期;動乱と歩兵台頭の時代
1.動乱の幕開け 2.動乱の激化
近世中期;歩兵の組織化
1.地方安定政権の軍隊 2.統一期の軍隊
近世後期;太平の世
◆水軍編
先史時代~中世;丸木船の時代
近世;戦闘用艦艇の出現
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
古代歩兵戦の実態 板櫃河の戦い(740年)
中世武士の陣地戦 一ノ谷の戦い(1184年)
近世初頭の歩兵の台頭 天王寺の戦い(1333年)
近世の歩兵組織と火器の活用 長篠の戦い(1575年)
古代水軍の戦い 白村江の戦い(663年)
中世武士の水上組織戦 壇ノ浦の戦い(1185年)
近世期における水軍への火器の導入 第二次木津川口海戦(1578年)
遊牧国家の軍隊
◆遊牧国家の歴史と戦法
遊牧国家の歴史
遊牧国家の戦法
戦例(分量削減のため本文省略して目次のみ)
遊牧騎馬軍の包囲・騎射戦法 カルラエの戦い(前53年)
以上
関連記事(4月20日加筆)
どれほど兵は神速を尊ぶか? ~歴史的に行軍速度を探求し戦争術評価の尺度とする試み~
戦争史における兵力について ~軍事史の巨人ハンス・デルブリュックの著作から~
諸君 私は戦争が好きだ ~高らかに謳う文学的戦闘者エルンスト・ユンガー紹介~
とらっしゅのーと軍事史図書室(オススメ軍事史記事の解説と記事へのリンク集)
by trushbasket
| 2010-11-23 00:49
| My(山田昌弘)








