F.E.Adcock 『ギリシア人とマケドニア人の戦争術』 山田昌弘訳 新装版 訳者解説・序・目次
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訳者解説
F.E.Adcock(1886-1968)の『The Greek and Macedonian Art of War』(1957)の日本語訳です。少し古い本ですが、今でも参照すべき文献として挙げられている良書であり、ごく少ない分量ながら時代はギリシア史の初めからヘレニズム時代までを含み、さらに陸戦のみならず海戦までも扱っており、入門書としては最適ではないかと思います。
外国語表記に際しては、アクセント記号などの文字に付する記号は省略します。
逐語訳ではありません。また訳者の英語力は相当低いため訳文の質はあまり保証できません。さらにギリシア語やラテン語、フランス語等が時折使われており、それらも、文章の理解に必要かつ訳者に可能な範囲で、日本語化しましたが、訳者はこのうちギリシア語は文字すら理解できませんし、他の言語も全く理解できないも同然なので、形の似た図形を探すような感覚で辞書を眺めながら、それっぽく見える一部の単語の意味を無理矢理つなげる以上のことはできておらず、この観点からも訳文の質は保証しかねます。正確さを求める方は原文に当たってください。
さらなる検索・学習の便宜を考え、一部で、人名や資料名、用語について、日本語化やカタカナ化をせずに、あるいは日本語化したものに元の表記を添える形で、元の英文の表現を残した箇所があります。
なお、この文章は他で公開したものをブログに移転したものであり、移転に際しては、ブログの字数制限に合わせて章を分割した箇所があります。
序
カリフォルニア大学のセイザー財団のおかげで行われることになった、これら講義では、ギリシア人とマケドニア人の実践していた戦争術を描写しようと試みている。武器や地勢や特定の戦闘に関する細かな事項について、著名な学者達が豊富な研究成果を挙げているが、ここではそれらを戦争術が行使される原因や戦争術の行使そのものを解説するのに必要な限りでしか扱わない。資料の扱いに関してはここでの主題にとって重大な意味のあるもののみを引用することにした。
この問題について学ぶ者は、H.DroysenとA.Bauerの先駆的な体系的著作や、Antike SchlachtfelderとHeerwesen und Kriegfuehrung der Griechen und Roemerに収められたJ.KromayerとG.Veithの諸論文、アレクサンドロスとヘレニズム時代に関してはとりわけWilliam Tarnの著作に、多くを負っている。また全体的な理解の点では、この講義に最も近い方法でこの問題を扱っているGeshichte der Kriegskunstにおいて、H.Delbrueckが示した理論にも多くを負っている。彼の結論の全てを受け入れることはできないが、彼の独創性と戦争術全体に関する現実的な理解から、私は大いに利益を受けている。
これらの講義を作成するに当たって、友人のG.T.Griffithとの議論からも大いに利益を得たが、彼はまた親切にもこの本の原稿を読んで、大いに貢献してくれた。本書には事実や理論に誤りが残っているかもしれないが、それは完全に私が責任を負わねばならない。脚注は主に古代の資料を示すためのものであるが、おかげをこうむった近代の研究者の理論に対してはしかるべき指摘をしてある。
また研究外では、バークレーにある古典学科の方々、とりわけ学科長代理のフォンテンローズ教授の暖かい励ましには大いに助けられた。W.H.アレクサンダー博士と大学出版会のH.A.スモール氏とセイザー講義の特別委員会は、この講義の出版に関するあらゆる問題について、非常に思いやりがある賢明な相談相手であったし、また出版会の職員の方々の配慮と技能にも当然最大限の感謝を捧げねばなるまい。
最後に、このセイザー講義が研究分野において持つ何らかの価値によって、快適な大学に滞在することのできた幸運に、多少なりと報恩できていれば喜ばしく思う。
F.E.A.
目次
1 都市国家の戦争
2 歩兵の発展
前半
後半
3 海戦
前半
後半
4 騎兵、象兵、攻城技術
前半
後半
5 大戦略の手段と目的
上
中
下
6 戦術指揮
前半
後半
付録:文献資料
以上
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