2011年 01月 16日
スパゲティナポリタンはナポリタンたり得ているか? ~スパゲティナポリタンの歴史から考える~
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日本人が作るナポリタンを観たイタリア人「俺たちを侮辱してる!」【誤訳御免。】
http://japancool.sblo.jp/article/42442782.html
上記ページによると、なんだか、日本のケチャップまみれのスパゲティ、「ナポリタン」を見たイタリア人に、あんなものを「ナポリタン」と呼ぶのはイタリア人に対する侮辱であると怒っている人がいるらしいのです。ケチャップを使うところに怒り心頭。
パスタの本場イタリアではトマトケチャップはあまり利用しないそうなので、それを考えると、一見、怒れるイタリア人の主張は正当にも思えます。
ですが、
本当にそうなのでしょうか?
もう少し、深く突っ込んで、「ナポリタン」をナポリタン(ナポリ風)とよぶことの是非について、考えてみたいと思います。
まず日本の「ナポリタン」の歴史を見ますと、
横浜・山下町にあるホテルニューグランドの2代目総料理長入江茂忠氏が、二次大戦後間もなく、
スパゲッティにトマトケチャップをからめた進駐軍の軍用食にヒントを得て、トマトソーススパゲティ(ケチャップではない)を作り、
中世イタリアのナポリでスパゲッティが屋台で庶民に親しまれていた話を元に、スパゲッティナポリタンと命名したことがその発祥なのだそうです。
すなわち、
で、この発祥の経緯からすると、「ナポリタン」名乗りはいかにも不当、スパゲッティ・アメリカンとかスパゲッティ・マッカーサーと名乗るべき、そんな気がしないでもないですし、命名の由来からすれば、スパゲッティならなんでもナポリタンになってしまうじゃないかと思えなくもないです。
しかし実は、イタリア料理には、ナポリ風ソース(ナポリタン・ソース)、イタリア語ではサルサ・ナポレターナというものが存在するそうで、しかもこれは、近郊がトマトの一大生産地であったナポリで生まれたトマトソースのこと。
というわけで、トマトソーススパゲティとして生まれたナポリタンがナポリタン(ナポリ風)を名乗るのは、意図せざる結果かもしれませんが、割と正当だったりするわけですね。もっとも、この段階であれば、きっとイタリア人も「ナポリタン」名乗りをしても、怒りますまい。ケチャップじゃないので。
それが、この日本式ナポリ風パスタ「スパゲッティナポリタン」が、どうしてイタリア人の怒りを買うケチャップスパゲティに変化したのでしょう。その理由は
とのこと。
物のない中で、精一杯のナポリタン(ナポリ風=トマトソース)がケチャップナポリタンだったわけですね。
イタリア人が不満なのもまあ分からなくはないですが、元がトマトソーススパゲティであったことと、ケチャップ使用の止むにやまれぬ経緯を思えば、「ナポリタン」は侮辱とか言って怒るほどのもんでもないと思います。
だいたい、他の料理に目を転じれば、
「酸し」が語源といわれる寿司で酢を使わずにただの飯を使い、酸味もないのすしを名乗るsushiが、世界的には許容されていると聞きます。こんな押さえるべき要素を抑えていないひどい例と比べれば、トマトケチャップ・ナポリタンはナポリタン・ソース=トマト・ソースの再現として、とにもかくにもトマトは使ってあるわけで、最低限押さえるべきは押さえており、良くやっている方、むしろ褒められても良いのではないでしょうか。
そういえば、sushiとかを憂慮した日本人が、正しい日本食を世界に知らしめようとしたときには、外人さんが、酷くそれをバッシングしていた記憶がありますが、
その例に倣えば、
日本のトマトケチャップ「ナポリタン」問題については、
トマトケチャップ「ナポリタン」が擁護され、ナポリタン名乗りを批判する人間が非難されるのが、グローバルスタンダードのはず。
というわけで、イタリア人が日本の「ナポリタン」に怒るのは不当。
日本の「ナポリタン」は堂々とナポリタンを名乗り続ければ良いと思います。
参考資料
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
「スパゲッティの輸入」横浜税関(http://www.customs.go.jp/yokohama/toukei/topics/data/0902spaghetti.pdf)
関連記事
提督達の見たヘタリア ~イタリアは乞食、コソ泥、ごろつき、売女~
覇者の胃袋 ~粗食、偏食、暴飲暴食の帝王たち~
サツマイモ・ジャガイモ伝来記 および イモを広めた英雄たち
れきけん・とらっしゅばすけっと/京都大学歴史研究会関連発表
食卓越しの政治史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2007/070622.html
王朝貴族と食生活
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/eating.html
http://japancool.sblo.jp/article/42442782.html
上記ページによると、なんだか、日本のケチャップまみれのスパゲティ、「ナポリタン」を見たイタリア人に、あんなものを「ナポリタン」と呼ぶのはイタリア人に対する侮辱であると怒っている人がいるらしいのです。ケチャップを使うところに怒り心頭。
パスタの本場イタリアではトマトケチャップはあまり利用しないそうなので、それを考えると、一見、怒れるイタリア人の主張は正当にも思えます。
ですが、
本当にそうなのでしょうか?
もう少し、深く突っ込んで、「ナポリタン」をナポリタン(ナポリ風)とよぶことの是非について、考えてみたいと思います。
まず日本の「ナポリタン」の歴史を見ますと、
横浜・山下町にあるホテルニューグランドの2代目総料理長入江茂忠氏が、二次大戦後間もなく、
スパゲッティにトマトケチャップをからめた進駐軍の軍用食にヒントを得て、トマトソーススパゲティ(ケチャップではない)を作り、
中世イタリアのナポリでスパゲッティが屋台で庶民に親しまれていた話を元に、スパゲッティナポリタンと命名したことがその発祥なのだそうです。
すなわち、
……入江茂忠(1912-1989)は、進駐軍が食べていたスパゲッティにトマトケチャップをからめた軍用食にヒントを得て、味気ないトマトケチャップは使わずに、刻んだニンニクにタマネギ、生トマト、トマトペーストを入れ、オリーブオイルを使った風味豊かなトマトソースを作りました。そして、ハム、マッシュルームを強火でよく炒め、スパゲッティを加え、トマトソースに合わせ、すりおろしたパルメザンチーズとパセリのみじん切りをたくさんふりかけました。
ナポリタンは英語で「ナポリ風」を意味しますが、スパゲッティナポリタンの名前の由来は、まさにイタリアのナポリにあります。中世のころ、スパゲッティは、イタリアのナポリにおいて、路上の屋台で売られていた庶民的な食べ物だったそうです。この話をもとに入江総料理長が、スパゲッティナポリタンと命名……
(『スパゲッティの輸入』横浜税関)
で、この発祥の経緯からすると、「ナポリタン」名乗りはいかにも不当、スパゲッティ・アメリカンとかスパゲッティ・マッカーサーと名乗るべき、そんな気がしないでもないですし、命名の由来からすれば、スパゲッティならなんでもナポリタンになってしまうじゃないかと思えなくもないです。
しかし実は、イタリア料理には、ナポリ風ソース(ナポリタン・ソース)、イタリア語ではサルサ・ナポレターナというものが存在するそうで、しかもこれは、近郊がトマトの一大生産地であったナポリで生まれたトマトソースのこと。
■ナポレターナ
napoletana イタリア語
ナポリ風ソースのこと。このことばはイタリアの都市ナポリの形容詞形で、「ナポリの」を意味する。したがって、本来ならこれに名詞salsa(ソース)をつけて初めて「ナポリ風ソース」という意味になる。ナポリ近郊はトマトの一大生産地で、サルサ・ナポレターナ、すなわちナポリタン・ソースもナポリで生まれた。トマトと肉をベースにするこのソースは、ボロニェーゼとともにイタリアのパスタ料理に欠かせない代表的なソースである。パスタ料理ばかりではなく、ナポリ風という名のついた料理には、ほとんどこのソースが用いられている。
(『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館)
というわけで、トマトソーススパゲティとして生まれたナポリタンがナポリタン(ナポリ風)を名乗るのは、意図せざる結果かもしれませんが、割と正当だったりするわけですね。もっとも、この段階であれば、きっとイタリア人も「ナポリタン」名乗りをしても、怒りますまい。ケチャップじゃないので。
それが、この日本式ナポリ風パスタ「スパゲッティナポリタン」が、どうしてイタリア人の怒りを買うケチャップスパゲティに変化したのでしょう。その理由は
その後、日本中にナポリタンが広がって行きますが、当時はトマトピューレの入手が難しかったことから、一般に広まる際にはトマトケチャップが利用されたようです。
(『スパゲッティの輸入』横浜税関)
とのこと。
物のない中で、精一杯のナポリタン(ナポリ風=トマトソース)がケチャップナポリタンだったわけですね。
イタリア人が不満なのもまあ分からなくはないですが、元がトマトソーススパゲティであったことと、ケチャップ使用の止むにやまれぬ経緯を思えば、「ナポリタン」は侮辱とか言って怒るほどのもんでもないと思います。
だいたい、他の料理に目を転じれば、
「酸し」が語源といわれる寿司で酢を使わずにただの飯を使い、酸味もないのすしを名乗るsushiが、世界的には許容されていると聞きます。こんな押さえるべき要素を抑えていないひどい例と比べれば、トマトケチャップ・ナポリタンはナポリタン・ソース=トマト・ソースの再現として、とにもかくにもトマトは使ってあるわけで、最低限押さえるべきは押さえており、良くやっている方、むしろ褒められても良いのではないでしょうか。
そういえば、sushiとかを憂慮した日本人が、正しい日本食を世界に知らしめようとしたときには、外人さんが、酷くそれをバッシングしていた記憶がありますが、
その例に倣えば、
日本のトマトケチャップ「ナポリタン」問題については、
トマトケチャップ「ナポリタン」が擁護され、ナポリタン名乗りを批判する人間が非難されるのが、グローバルスタンダードのはず。
というわけで、イタリア人が日本の「ナポリタン」に怒るのは不当。
日本の「ナポリタン」は堂々とナポリタンを名乗り続ければ良いと思います。
参考資料
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
「スパゲッティの輸入」横浜税関(http://www.customs.go.jp/yokohama/toukei/topics/data/0902spaghetti.pdf)
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食卓越しの政治史
http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2007/070622.html
王朝貴族と食生活
http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/eating.html
by trushbasket
| 2011-01-16 15:42
| My(山田昌弘)








