2011年 04月 03日
異性装に対する態度について~日本はトランスジェンダーにとってのパラダイス?~
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日本は他の先進国と比べて法的な権利保護が遅れているとよく言われます。実際、例を挙げると性的少数者の権利に関する法整備が遅れているのは否めないらしいです。では、日本が西洋と比較して少数者への対応が全て劣っているかといえば、そうでもなく寧ろ日本人が胸を晴れる分野も存在してはいるようです。一般社会レベルでの異性装者への対応がそれにあたります。
『女装と日本人』著者・三橋順子氏によればアメリカ人の女装者がある時に
と述べたそうですし、韓国の女装者もこれに同調し
としみじみと語ったとか。何でも、アメリカでは女装者が安全に歩けるエリアは限られており、保守的な地域では異性装者であるというだけの理由で殺害されるヘイト・クライムも珍しくなかったそうです。韓国でも見知らぬ男性にいきなり殴られ「この不孝者め!男のくせに女の格好などして、親や先祖に対して恥ずかしくないのか!」(同書 21頁)と言われたりするとか(90年代末の話だそうなので現在は状況が変わっているのかもしれませんが)。
一方、日本のレストラン、旅館・ホテル、化粧品店等では女装男子相手の際は(男性と分かっていても)基本的に「女性」扱いして接客する事が多いとか。一般人にもこうした意識はある程度行き渡っているようで、三橋氏も屋台で忘れ物をした際に店主から「男のお姐ちゃん」と呼び止められたことがあるそうです。オタク世界で使われる「男の娘」という呼称に通じるものがありますね。
もちろん、日本でも異性装者や同性愛者に対する差別がないわけではありません。それでも、社会的に割合として寛容な意識が広く存在しているとはいえるようです。そもそも彼らに強い拒絶感を持つ人は、基本的に近寄らないのでトラブルにはほとんどならないのだとか。因みに、日本よりも寛容な国にはタイがあり、女装者に対して「前世が女性だったのだから」という見方で受け入れているようです。
考えてみれば、日本は以前の記事で述べたように歴史的に女装・男装といった異性装を問題視していない国でした。一方、西洋はキリスト教の影響で異性装・同性愛が禁圧されてきた歴史がありました。具体的に言うと、『旧約聖書』「申命記」第22章5節に異性装を禁じる文言があります。ちなみに同性愛に関しては「レビ記」第20章13節、去勢については「申命記」第23章1節に禁忌と記されており、これらが論拠として取り締まりが行われ、現在でも上述した問題が起こる原因の一つになっているようです。まあ、実際には西洋でも女装を好む貴人がいたり、女装男子による売春があったり幼少の男子に女性服を着せると無事に育つという俗信があったりするのは日本と変わりなかったようですが。それでも、ジャンヌ・ダルクが異端とみなされた理由に男装があった事からも分かるように、宗教的には異性装は強いタブーであったのは間違いないようです。同性愛や半陰陽者が16-18世紀のフランスで火炙りにされた実例もあったようですから、異性装者に対しても同様であったと見るべきでしょう。
以上のように、日本は歴史的な経緯から、西洋と比較して異性装者や同性愛者に対し民間の意識レベルでは寛容であると言えるようで、これは誇って良いのではないかと(近代に入ってからは、欧米化を目指した関係かややおかしくなった面があるのは否定できませんが)。日本人は異分子への対応が基本的に不得手である印象がありますので、その分こうした元来持っている寛容さは今後も大事にしていきたいものだと思います。
【参考文献】
女装と日本人 三橋順子 講談社現代新書(今回、基本的に本書を参考にしています)
日本大百科全書 小学館
ジャンヌ・ダルク 村松剛 中公新書
関連記事:
「同性愛は一般的にどう見られてきたか~日本の伝統的同性愛観について~」
「「オンナノコになりたい」?男たち~日本女装史概説~」
「<言葉> 自由な社会の基本ルール 」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「日本民衆文化史」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html)
「西洋民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021108.html)
「中世の教会と異端」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021018a.html)
今回取り上げた日本や西洋の女装者については、社会評論社『ダメ人間の世界史』『ダメ人間の日本史』でも取り上げていますので、よろしければそちらもご参照ください。
(「後水尾天皇 徳川家光 江戸時代の政治体制を固めた朝廷と幕府の女装の最高指導者たち ~女装者の魂の共鳴で朝幕融和天下泰平~」収録)
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当ブログ内紹介記事
(「デオン 王弟フィリップ オイゲン公子 誰よりも男らしい戦士たちの女らしい私生活を見よ ~ブルボン朝フランスが生んだ男の娘戦士たち~」収録、今回は中国には触れませんでしたが「何晏 自然回帰の大思想家の自然に反した快楽追求の日々 ~女装癖と麻薬と~」も収録)
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『女装と日本人』著者・三橋順子氏によればアメリカ人の女装者がある時に
「夜の街を安全に歩ける。レストランに入っても追い出されない。ちゃんと応対してくれる。なんてすばらしい!日本は、トランスジェンダーにとってパラダイスだ。」
(三橋順子 『女装と日本人』講談社現代新書 20-21頁)
と述べたそうですし、韓国の女装者もこれに同調し
「日本はいいですね。安心して街を歩けるし、こういう仲間が集まれる店もあるし、ほんとうにパラダイスですよ。」(同書 21頁)
としみじみと語ったとか。何でも、アメリカでは女装者が安全に歩けるエリアは限られており、保守的な地域では異性装者であるというだけの理由で殺害されるヘイト・クライムも珍しくなかったそうです。韓国でも見知らぬ男性にいきなり殴られ「この不孝者め!男のくせに女の格好などして、親や先祖に対して恥ずかしくないのか!」(同書 21頁)と言われたりするとか(90年代末の話だそうなので現在は状況が変わっているのかもしれませんが)。
一方、日本のレストラン、旅館・ホテル、化粧品店等では女装男子相手の際は(男性と分かっていても)基本的に「女性」扱いして接客する事が多いとか。一般人にもこうした意識はある程度行き渡っているようで、三橋氏も屋台で忘れ物をした際に店主から「男のお姐ちゃん」と呼び止められたことがあるそうです。オタク世界で使われる「男の娘」という呼称に通じるものがありますね。
もちろん、日本でも異性装者や同性愛者に対する差別がないわけではありません。それでも、社会的に割合として寛容な意識が広く存在しているとはいえるようです。そもそも彼らに強い拒絶感を持つ人は、基本的に近寄らないのでトラブルにはほとんどならないのだとか。因みに、日本よりも寛容な国にはタイがあり、女装者に対して「前世が女性だったのだから」という見方で受け入れているようです。
考えてみれば、日本は以前の記事で述べたように歴史的に女装・男装といった異性装を問題視していない国でした。一方、西洋はキリスト教の影響で異性装・同性愛が禁圧されてきた歴史がありました。具体的に言うと、『旧約聖書』「申命記」第22章5節に異性装を禁じる文言があります。ちなみに同性愛に関しては「レビ記」第20章13節、去勢については「申命記」第23章1節に禁忌と記されており、これらが論拠として取り締まりが行われ、現在でも上述した問題が起こる原因の一つになっているようです。まあ、実際には西洋でも女装を好む貴人がいたり、女装男子による売春があったり幼少の男子に女性服を着せると無事に育つという俗信があったりするのは日本と変わりなかったようですが。それでも、ジャンヌ・ダルクが異端とみなされた理由に男装があった事からも分かるように、宗教的には異性装は強いタブーであったのは間違いないようです。同性愛や半陰陽者が16-18世紀のフランスで火炙りにされた実例もあったようですから、異性装者に対しても同様であったと見るべきでしょう。
以上のように、日本は歴史的な経緯から、西洋と比較して異性装者や同性愛者に対し民間の意識レベルでは寛容であると言えるようで、これは誇って良いのではないかと(近代に入ってからは、欧米化を目指した関係かややおかしくなった面があるのは否定できませんが)。日本人は異分子への対応が基本的に不得手である印象がありますので、その分こうした元来持っている寛容さは今後も大事にしていきたいものだと思います。
【参考文献】
女装と日本人 三橋順子 講談社現代新書(今回、基本的に本書を参考にしています)
日本大百科全書 小学館
ジャンヌ・ダルク 村松剛 中公新書
関連記事:
「同性愛は一般的にどう見られてきたか~日本の伝統的同性愛観について~」
「「オンナノコになりたい」?男たち~日本女装史概説~」
「<言葉> 自由な社会の基本ルール 」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「日本民衆文化史」
(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021206.html)
「西洋民衆文化史」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021108.html)
「中世の教会と異端」(http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/021018a.html)
今回取り上げた日本や西洋の女装者については、社会評論社『ダメ人間の世界史』『ダメ人間の日本史』でも取り上げていますので、よろしければそちらもご参照ください。
(「後水尾天皇 徳川家光 江戸時代の政治体制を固めた朝廷と幕府の女装の最高指導者たち ~女装者の魂の共鳴で朝幕融和天下泰平~」収録)
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当ブログ内紹介記事
(「デオン 王弟フィリップ オイゲン公子 誰よりも男らしい戦士たちの女らしい私生活を見よ ~ブルボン朝フランスが生んだ男の娘戦士たち~」収録、今回は中国には触れませんでしたが「何晏 自然回帰の大思想家の自然に反した快楽追求の日々 ~女装癖と麻薬と~」も収録)
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by trushbasket
| 2011-04-03 23:15
| NF








