2011年 11月 07日
歴史を手がかりに「非婚」化の原因を考えてみる~異性不信、経済的自立、不安感~
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現在、男女ともに結婚しない傾向があるそうで。最近は、「結婚できない」ではなく「結婚したくない」、「未婚」ではなく「非婚」を志向する傾向が目立つようです。
それに関連して、ネット上でも様々な理由付けが述べられたりしていますが、今回はその中でも
を参考に、そこからいくつか意見を引用しながらそれに関連した歴史の話題に絡めて見ていきます。
・異性への不信感
個人的には、ネット上では一番目にする理由な気がします。上記スレッドでも
といった辛辣な意見が散見されます。実際のところこうした見解が適切なのかは分かりませんが、男性にそうした感覚が広がっているのだとすれば非婚の一因となりうる事は納得できます。しかし、こうした男性の女性への不信感は現代に特有のものでは必ずしもありません。
作家・海音寺潮五郎氏は、関東武士が大番で京に行った際に京女に財を吸い上げられた例が多いのを引き合いに出し、
と述べています。女も自分の生活や生命を守る必要があるのを考えるとこの評価はいささか酷な気がしますが、当時の女性に対しても「物質欲ばかり」という見方が成り立ちうるのは興味深いです。同時代の男性がこうした事例をどう感じていたかは明らかではありませんが、女性に対して負の印象を男性が感じる可能性があるのは現代に限った話ではないようですね。
他に、男性の女性への不信感として有名な事例として『論語』陽貨編があげられます。
人類史に残る聖人君子たる孔子先生ともあろうお方ですらこの愚痴っぷり。
更に西洋でも、十五世紀初頭頃に成立したとされるフランスの短編小説集『結婚十五の歓び』では、結婚に伴う十五の物語で女性の浪費・不倫などの悪徳やそれに振り回される男性を皮肉り、結婚生活を「地上最大の責め苦、苦悩、悲哀、不幸であり、四肢を断ち切る刑罰は別として、これに匹敵する苦痛は他にない」(新倉俊一訳『結婚十五の歓び』岩波文庫 9頁)とまで結論付けています。
以上を見ると、男性が女性への不満や不信感を抱いていたのはある程度普遍的な話だといえます。勿論、同様に女性の男性不信という要因も古来よりあったのでしょうが、手元に史料がなかったのでここでは省略します。そうすると、現代の非婚化を説明するにはこれ以外の要因がいりそうです。現代特有の事情があるとすれば、以前にMyが考察していたように恋愛・結婚は元来が大多数の男性にとって不利な構造になっており、皮肉にも男女平等が進むにつれてそれが表面化してしまったという面が挙げられるのかもしれません。
・結婚しなくても生きていけるようになった。
上記スレッドでは
といったコメントが見られますが、確かに、女性は社会進出により経済力を得、男性は家電の進歩やコンビニの普及などで一人でも生活に困らなくなった。独身でも生きていけるようになったため男女とも結婚をしなくなったという意見もしばしば目にします。これに関連する事例についても、歴史上から指摘する事が出来ます。
一般的に女性にとって、前近代が苛酷な環境である事が多かったのは知られています。中国も例外ではなく、1905年の台湾では20-25歳女性の自殺率が10万人あたり57-58人にのぼっています(因みに同時代の日本は23人で、スウェーデンは5人未満)。こうした中で、女性の中に結婚への忌避が起こったとしても不思議ではありません。
『両航秋雨盦随筆』によれば19世紀初頭の広州には未婚女性による「金蘭会」という団体があり、義姉妹関係を結んで結婚を拒否していたとか。彼女たちは形式的に結婚したとしても夫との同居を拒否し、義姉妹全員が結婚すると初めて夫の家に向かったそうです。周囲に強制的に嫁ぎ先へ連行されようとした場合は義姉妹が集団自殺する事で対抗していました。18世紀半ばの乾隆年間に記された『順徳県志』にも同様の記述がありますから、この時期までそうした風習が遡れるということでしょう。
広東・広西周辺の非漢族の間では一定期間別居する婚姻が一般的でした。また、彼らには未婚の娘が夜は集団で過ごし義姉妹関係を結ぶ風習がありました。養蚕業が発達し女性の経済的自立傾向もあった。こうした影響を受けたものと考えられ、彼女たちは「自梳女」(既婚女性と同様に髪を結い上げる事からこう呼ばれた)と称されるようになります。結婚せず子孫を残さない場合、中国では一般的に死後の祭祀が問題になりますが、彼女たちは共同で「姑婆山」に埋葬され生きている仲間が墓参するので死後の心配もありません。
1870年代には工場制機械工業が発達すると女工として就職する人も増え、経済的に余裕が生まれるにつれて結婚拒否の傾向も更に広がりました。また、貧しい家の女性を買い取って代わりに相手の男性へあてがう、死亡した男性と形だけ結婚するという形式も見られるようになります。そしてその後もメイドとして広州・香港・シンガポールへ出稼ぎに行く人も現れました。
この時期、生涯不婚を貫き宗教的救済を手にする女性を描いた経典「宝巻」が多く知識層女性に読まれたのもこうした傾向に拍車をかけたようです。その影響を受けた女性には結婚を強いられて自殺する例も多数あったとか。
非婚を貫くには、経済的な余裕や社会的圧力を撥ね退けたり孤独を避けるための人間的な繋がりが背景として必要だといえそうですね。
・将来への希望が持てない
上述のスレッドには
といったコメントもありますが、これは単に現時点で妻子を養えないというだけでなく、将来的にもそれが望めそうにないという不安感が背景にあります。何しろ、最近は日本の将来に関しては、経済的地盤沈下、所得格差の拡大、国際的地位の低下、技術的優位の喪失、国家的負債の増大と財政破綻危機など不安が声高に叫ばれ明るい見通しが語られる事が少ないように思います。社会が将来の見通しを示せず、人々も明るい未来を見出す事ができない状況が人々に子孫を残す事を萎縮させている面はあるかもしれません。子供に悲惨な未来しか与えてやれず、それ以前に養ってやれる保証がないと思うと子孫を残す事そのものを躊躇するのは自然な感情ですからね。少子高齢化も日本の重大な不安要素である事を考えると皮肉としか言いようがありませんが。
という訳で、ここでは歴史的に「将来への希望が持てない」事例として宗教的終末観が前提としてある状況を検討します。
初期キリスト教指導者の一人であるパウロはキリストが再臨し神による支配が到来する時期が近いと考えており、書簡でもしばしばそうした考えを述べていました(これは厳密には終末論とは異なるのでしょうが、少なくとも現在の人間世界の価値観が通用しなくなるという意味で「終末」に通じるものがあるとはいえるでしょう)。それを前提に、『コリント人への第一の手紙』では
としつつも
と結婚しない事を理想と明言。独身者に対しては
と述べており、結婚に関しては性欲処理のためやむを得ずという以上の価値を認めていません。現在の世界が終末を迎える時が近いと考えられる状況では、家庭を作り子孫を世界の新たな一員として迎え入れる事に意味を認めなくなることがありうるというのが分かります。
次に仏教を見てみましょう。末法思想(ブッダ死後一定年数がたつと仏教の教えが衰滅するという考え方)が社会不安もあいまって終末論的に受け取られた平安後期の日本では、『往生要集』に「三界の獄縛は一として楽むべきことなし」とあるように結婚どころか現世そのものを否定する文言が多々ありました。それどころか、往生伝の中には自殺によって往生しようとした記事も多く見られます。
『三外往生記』では土佐国金剛定寺の僧が西方浄土への往生を望んで薪を積みその中で念仏を唱えながら焼死し見聞した人々が感嘆した事例や、近江国三津浦に入水した聖や入道念覚が焼身した話が伝えられています。そして『本朝新修往生伝』は丹後国狐浜の行人が早く来世に行きたくて焼身したと伝えています。更に、『発心集』も書写山の僧が「ことなる妄念も起らず身に病もなきとき、この身すてんと」思って断食往生したという話や蓮花城という聖が同じような目的で桂川へ入水した話を記しています。
こうした話が数多く美談として掲載されている事自体が往生伝著者たちの厭世自殺への肯定的な感覚を感じますし、往生伝にはそうした自殺者の出る際に人々が感激して集まり少しでもあやかろうと拝みこそすれ決して止めなかった事が描かれており、民衆レベルにもそうした空気があった事が分かります。その結果、中には悲惨な事例もありました。例えば、上述の土佐国金剛定寺の際には翌日に近所の子供が遊びで真似をして焼死。また蓮華城が後に幽霊になったという伝承があることから、歴史家・平泉澄は多数の見物人が有難がって拝むため直前に命が惜しくなっても引っ込みがつかなかったのではないかと推測しています。
平泉はこうした自殺流行の背景には「たえぬ光はこの世にはない」と考え「無価値なる現世現在の人間生活を棄てて、一向にかの弥陀の浄土に急がうとあせる」傾向があった(平泉澄著『中世に於ける精神生活』錦正社 358頁)と分析していますが、このように時代状況への悲観が極限に達すると現世否定が極まり自殺肯定にまで至る事がありうる事が分かります。
末法思想が流行した時期の日本における結婚への考え方そのものは分かりませんでしたが、現世を、そして生きること自体を否定する位ですから、ましてや結婚して子孫を残す事に意味を見出さない人が多数出たであろう事は想像に難くありません。
以上、現在の日本で結婚したがらない人が多い理由を考察して見ました。上述したそれぞれの要因が複雑に絡み合って現在の状況を生み出しているのだと思います。まあ、結婚に関する箴言を見る限り古来から結婚は良し悪しは別にして厄介ごとだと考えられていたようですし、以前の記事で考察されたようにいつの時代でも一定割合で結婚を拒否する人が出てはいましたので、結婚しなくてもよい条件が整えばそれが表面化し、結婚を躊躇させる要因が加わるとそれに拍車がかかるのは何の不思議もないし、どうしようもない事だといえそうです。彼らを無理に結婚させようとあがくよりも、非婚化を受け入れた上でどうするかを考えた方が建設的かもしれません。
【参考文献】
日本史探訪8南北朝と室町文化 角川文庫
論語 金谷治訳注 岩波文庫
結婚十五の歓び 新倉俊一訳 岩波文庫
異人と市 境界の中国古代史 相田準著 研文出版
新約聖書 フランシスコ会 聖書研究書訳注 中央出版社
中世に於ける精神生活 平泉澄著 錦正社
日本大百科全書 小学館
関連記事:
「結婚に関する歴史の一真理 ~モテない男は悟りを開く~ 歴史上に見る「結婚しなくても平気になった人々」」
「スイーツ(笑)断罪 1330 ~リアル女はノー・センキュー 僕はフィクションに恋をする~ 徒然草の恋愛論」
「東洋の武人は草食系?~女性に淡白な武将たち~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
偉大なるダメ人間シリーズその1 キルケゴール
偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン
関連サイト:
「痛いニュース(ノ∀`) 」(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/)より
「「結婚、面倒くさい」 結婚したくない症候群の男性が急増」
(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1146872.html)
「名言集.com」(http://www.meigensyu.com/)より
「結婚」(http://www.meigensyu.com/tags/view/1109/page1.html)
偉人の中にも、結婚を嫌がったり結婚によって難儀したりした人は少なからずいました。興味のある方は社会評論社『ダメ人間の世界史』より「タレス ディオゲネス ヘラクレイトス 社会参加は断固拒否、政治も結婚も真っ平ごめん、哲学という名の妄想に全てを捧げた頭でっかちな人々の話」「ソクラテス 寝ても起きても夢を見てフワフワ過ごした71年、妻の怒りも何のその、死ぬまで貫くニート道」「ベリサリウス 史上最も無様に妻の尻に敷かれた英雄 ~女王様の足にマゾ奴隷として口づけを~」「楊堅 嫁が恐くて家出して、職務放棄を臣下に叱られたヘタレ皇帝」「戚継光 あらゆる外敵に打ち勝った勇将も、内では異常な恐妻家、妻が恐くて逆らえず仕方ないから部下に八つ当たり」「ナポレオン ネルソン 英仏代表天才軍人は、浪費癖あるクズ女に惚れた弱みで貢ぎに貢いだ英仏代表ヘボ男」「リンカーン マナーも神も全て無視、無作法・無頓着な野人豪傑大統領」「キルケゴール 史上最狂のメイドオタク。空前絶後のキモさで世間のみんなの笑いもの。」を、『ダメ人間の日本史』より「吉田兼好 女など心に浮かぶ虚像で十分 ~700年前の二次元大好きキモオタのリアル女弾劾の声を聞け~」「三島由紀夫 シスコン、マザコン、少年愛、マッチョ志向 ダメ勲章山盛りな大作家 ~右翼だけどディズニーランド好き~」を御参照いただければ幸いです。
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それに関連して、ネット上でも様々な理由付けが述べられたりしていますが、今回はその中でも
「痛いニュース(ノ∀`) 」(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/)より
「結婚できない30代男…オタク的趣味に金使い、セックスはフーゾク、収入低く」(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/908593.html)
を参考に、そこからいくつか意見を引用しながらそれに関連した歴史の話題に絡めて見ていきます。
・異性への不信感
個人的には、ネット上では一番目にする理由な気がします。上記スレッドでも
68 名前:名無しさん@七周年[] 投稿日:2007/01/28(日) 12:30:12 ID:SAE00WbH0
まあ、劣化するばかりの嫁や金食い虫の子供を飼っても、
意味がないって事を多くの男が気づいたって事だろ。
88 名前:名無しさん@七周年[sage] 投稿日:2007/01/28(日) 12:32:22 ID:EQ/qNnur0
普通に今の高飛車な女なんかと結婚したくない
と内心思ってる男が殆どなんだよ
まぁ、言わないけどな
といった辛辣な意見が散見されます。実際のところこうした見解が適切なのかは分かりませんが、男性にそうした感覚が広がっているのだとすれば非婚の一因となりうる事は納得できます。しかし、こうした男性の女性への不信感は現代に特有のものでは必ずしもありません。
作家・海音寺潮五郎氏は、関東武士が大番で京に行った際に京女に財を吸い上げられた例が多いのを引き合いに出し、
義経の郎党の佐藤忠信の話など、昔の京女の本質をよく語っています。忠信は吉野の山奥で、討っ手の軍勢が押し寄せてきた時、義経を逃がしたあと、義経の鎧を着て、義経と名乗って奮戦した末に、谷に飛び込んで自殺したようによそおいました。そして山を逃れ、京に上って、言いかわした女が五条のあたりに住んでいるので、そこへ行ったところ、女にはもう新しい男ができていて、忠信を訴人したので、忠信は捕らえられて処刑されたのです。
つまり、当時の京女には本当の愛情はなく、物質欲ばかりだったのです。
(『日本史探訪8南北朝と室町文化』角川文庫 46-47頁)
と述べています。女も自分の生活や生命を守る必要があるのを考えるとこの評価はいささか酷な気がしますが、当時の女性に対しても「物質欲ばかり」という見方が成り立ちうるのは興味深いです。同時代の男性がこうした事例をどう感じていたかは明らかではありませんが、女性に対して負の印象を男性が感じる可能性があるのは現代に限った話ではないようですね。
他に、男性の女性への不信感として有名な事例として『論語』陽貨編があげられます。
子曰、唯女子與小人、爲難養也、近之則不孫、遠之則怨、
子の曰わく、唯だ女子と小人とは養ない難しと為す。これを近づくれば則ち不孫なり。これを遠ざくれば則ち怨む。
(いずれも金谷治訳注『論語』岩波文庫 250頁)
【意訳】孔子先生は仰った。「女性と小人物とは扱いにくいものだ。親切にすればつけあがるし、粗略にすれば恨まれる。」
人類史に残る聖人君子たる孔子先生ともあろうお方ですらこの愚痴っぷり。
更に西洋でも、十五世紀初頭頃に成立したとされるフランスの短編小説集『結婚十五の歓び』では、結婚に伴う十五の物語で女性の浪費・不倫などの悪徳やそれに振り回される男性を皮肉り、結婚生活を「地上最大の責め苦、苦悩、悲哀、不幸であり、四肢を断ち切る刑罰は別として、これに匹敵する苦痛は他にない」(新倉俊一訳『結婚十五の歓び』岩波文庫 9頁)とまで結論付けています。
以上を見ると、男性が女性への不満や不信感を抱いていたのはある程度普遍的な話だといえます。勿論、同様に女性の男性不信という要因も古来よりあったのでしょうが、手元に史料がなかったのでここでは省略します。そうすると、現代の非婚化を説明するにはこれ以外の要因がいりそうです。現代特有の事情があるとすれば、以前にMyが考察していたように恋愛・結婚は元来が大多数の男性にとって不利な構造になっており、皮肉にも男女平等が進むにつれてそれが表面化してしまったという面が挙げられるのかもしれません。
・結婚しなくても生きていけるようになった。
上記スレッドでは
222 名前:名無しさん@七周年[] 投稿日:2007/01/28(日) 12:45:11 ID:oyepnkFL0
男で1人暮らしでも、食事、洗濯に困らなくなり、女は昔よりも
社会進出が進んで自分で稼げるようになったら、お互い結婚する
メリットが少なくなるのはごく自然だ。
といったコメントが見られますが、確かに、女性は社会進出により経済力を得、男性は家電の進歩やコンビニの普及などで一人でも生活に困らなくなった。独身でも生きていけるようになったため男女とも結婚をしなくなったという意見もしばしば目にします。これに関連する事例についても、歴史上から指摘する事が出来ます。
一般的に女性にとって、前近代が苛酷な環境である事が多かったのは知られています。中国も例外ではなく、1905年の台湾では20-25歳女性の自殺率が10万人あたり57-58人にのぼっています(因みに同時代の日本は23人で、スウェーデンは5人未満)。こうした中で、女性の中に結婚への忌避が起こったとしても不思議ではありません。
『両航秋雨盦随筆』によれば19世紀初頭の広州には未婚女性による「金蘭会」という団体があり、義姉妹関係を結んで結婚を拒否していたとか。彼女たちは形式的に結婚したとしても夫との同居を拒否し、義姉妹全員が結婚すると初めて夫の家に向かったそうです。周囲に強制的に嫁ぎ先へ連行されようとした場合は義姉妹が集団自殺する事で対抗していました。18世紀半ばの乾隆年間に記された『順徳県志』にも同様の記述がありますから、この時期までそうした風習が遡れるということでしょう。
広東・広西周辺の非漢族の間では一定期間別居する婚姻が一般的でした。また、彼らには未婚の娘が夜は集団で過ごし義姉妹関係を結ぶ風習がありました。養蚕業が発達し女性の経済的自立傾向もあった。こうした影響を受けたものと考えられ、彼女たちは「自梳女」(既婚女性と同様に髪を結い上げる事からこう呼ばれた)と称されるようになります。結婚せず子孫を残さない場合、中国では一般的に死後の祭祀が問題になりますが、彼女たちは共同で「姑婆山」に埋葬され生きている仲間が墓参するので死後の心配もありません。
1870年代には工場制機械工業が発達すると女工として就職する人も増え、経済的に余裕が生まれるにつれて結婚拒否の傾向も更に広がりました。また、貧しい家の女性を買い取って代わりに相手の男性へあてがう、死亡した男性と形だけ結婚するという形式も見られるようになります。そしてその後もメイドとして広州・香港・シンガポールへ出稼ぎに行く人も現れました。
この時期、生涯不婚を貫き宗教的救済を手にする女性を描いた経典「宝巻」が多く知識層女性に読まれたのもこうした傾向に拍車をかけたようです。その影響を受けた女性には結婚を強いられて自殺する例も多数あったとか。
非婚を貫くには、経済的な余裕や社会的圧力を撥ね退けたり孤独を避けるための人間的な繋がりが背景として必要だといえそうですね。
・将来への希望が持てない
上述のスレッドには
143 名前:名無しさん@七周年[] 投稿日:2007/01/28(日) 12:38:15 ID:FsaBb9x70
これだけ先行き不安な状況で結婚なんかしてられるかボゲェ
アホ政治家の現実みてない政策に振り回されて税金あげられ福利厚生は剥ぎ取られて
不安だらけで
んな余裕ねぇよ
151 名前:名無しさん@七周年[] 投稿日:2007/01/28(日) 12:39:16 ID:+nasc+M5O
そりゃ25~35歳は就職氷河期、ロストジェネレーションだもの
自分の明日のオマンマの心配しなきゃいけないのに結婚なんてとんでもない
といったコメントもありますが、これは単に現時点で妻子を養えないというだけでなく、将来的にもそれが望めそうにないという不安感が背景にあります。何しろ、最近は日本の将来に関しては、経済的地盤沈下、所得格差の拡大、国際的地位の低下、技術的優位の喪失、国家的負債の増大と財政破綻危機など不安が声高に叫ばれ明るい見通しが語られる事が少ないように思います。社会が将来の見通しを示せず、人々も明るい未来を見出す事ができない状況が人々に子孫を残す事を萎縮させている面はあるかもしれません。子供に悲惨な未来しか与えてやれず、それ以前に養ってやれる保証がないと思うと子孫を残す事そのものを躊躇するのは自然な感情ですからね。少子高齢化も日本の重大な不安要素である事を考えると皮肉としか言いようがありませんが。
という訳で、ここでは歴史的に「将来への希望が持てない」事例として宗教的終末観が前提としてある状況を検討します。
初期キリスト教指導者の一人であるパウロはキリストが再臨し神による支配が到来する時期が近いと考えており、書簡でもしばしばそうした考えを述べていました(これは厳密には終末論とは異なるのでしょうが、少なくとも現在の人間世界の価値観が通用しなくなるという意味で「終末」に通じるものがあるとはいえるでしょう)。それを前提に、『コリント人への第一の手紙』では
男は女に触れないほうがよいのです。しかし、みだらな行ないを避けるために、男はそれぞれ自分の妻を持ち、女はそれぞれ自分の夫をもつがよい。
としつつも
わたしとしては、皆が皆、わたしのようであればよいと思っています。
と結婚しない事を理想と明言。独身者に対しては
わたしのように今のままでいるほうがよい。しかし、もし自分を制することができなければ、結婚しなさい。結婚するほうが欲情に身を焦がすよりはよいからです。
(いずれも『新約聖書』フランシスコ会 聖書研究会訳注 中央出版社 594頁)
と述べており、結婚に関しては性欲処理のためやむを得ずという以上の価値を認めていません。現在の世界が終末を迎える時が近いと考えられる状況では、家庭を作り子孫を世界の新たな一員として迎え入れる事に意味を認めなくなることがありうるというのが分かります。
次に仏教を見てみましょう。末法思想(ブッダ死後一定年数がたつと仏教の教えが衰滅するという考え方)が社会不安もあいまって終末論的に受け取られた平安後期の日本では、『往生要集』に「三界の獄縛は一として楽むべきことなし」とあるように結婚どころか現世そのものを否定する文言が多々ありました。それどころか、往生伝の中には自殺によって往生しようとした記事も多く見られます。
『三外往生記』では土佐国金剛定寺の僧が西方浄土への往生を望んで薪を積みその中で念仏を唱えながら焼死し見聞した人々が感嘆した事例や、近江国三津浦に入水した聖や入道念覚が焼身した話が伝えられています。そして『本朝新修往生伝』は丹後国狐浜の行人が早く来世に行きたくて焼身したと伝えています。更に、『発心集』も書写山の僧が「ことなる妄念も起らず身に病もなきとき、この身すてんと」思って断食往生したという話や蓮花城という聖が同じような目的で桂川へ入水した話を記しています。
こうした話が数多く美談として掲載されている事自体が往生伝著者たちの厭世自殺への肯定的な感覚を感じますし、往生伝にはそうした自殺者の出る際に人々が感激して集まり少しでもあやかろうと拝みこそすれ決して止めなかった事が描かれており、民衆レベルにもそうした空気があった事が分かります。その結果、中には悲惨な事例もありました。例えば、上述の土佐国金剛定寺の際には翌日に近所の子供が遊びで真似をして焼死。また蓮華城が後に幽霊になったという伝承があることから、歴史家・平泉澄は多数の見物人が有難がって拝むため直前に命が惜しくなっても引っ込みがつかなかったのではないかと推測しています。
平泉はこうした自殺流行の背景には「たえぬ光はこの世にはない」と考え「無価値なる現世現在の人間生活を棄てて、一向にかの弥陀の浄土に急がうとあせる」傾向があった(平泉澄著『中世に於ける精神生活』錦正社 358頁)と分析していますが、このように時代状況への悲観が極限に達すると現世否定が極まり自殺肯定にまで至る事がありうる事が分かります。
末法思想が流行した時期の日本における結婚への考え方そのものは分かりませんでしたが、現世を、そして生きること自体を否定する位ですから、ましてや結婚して子孫を残す事に意味を見出さない人が多数出たであろう事は想像に難くありません。
以上、現在の日本で結婚したがらない人が多い理由を考察して見ました。上述したそれぞれの要因が複雑に絡み合って現在の状況を生み出しているのだと思います。まあ、結婚に関する箴言を見る限り古来から結婚は良し悪しは別にして厄介ごとだと考えられていたようですし、以前の記事で考察されたようにいつの時代でも一定割合で結婚を拒否する人が出てはいましたので、結婚しなくてもよい条件が整えばそれが表面化し、結婚を躊躇させる要因が加わるとそれに拍車がかかるのは何の不思議もないし、どうしようもない事だといえそうです。彼らを無理に結婚させようとあがくよりも、非婚化を受け入れた上でどうするかを考えた方が建設的かもしれません。
【参考文献】
日本史探訪8南北朝と室町文化 角川文庫
論語 金谷治訳注 岩波文庫
結婚十五の歓び 新倉俊一訳 岩波文庫
異人と市 境界の中国古代史 相田準著 研文出版
新約聖書 フランシスコ会 聖書研究書訳注 中央出版社
中世に於ける精神生活 平泉澄著 錦正社
日本大百科全書 小学館
関連記事:
「結婚に関する歴史の一真理 ~モテない男は悟りを開く~ 歴史上に見る「結婚しなくても平気になった人々」」
「スイーツ(笑)断罪 1330 ~リアル女はノー・センキュー 僕はフィクションに恋をする~ 徒然草の恋愛論」
「東洋の武人は草食系?~女性に淡白な武将たち~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
偉大なるダメ人間シリーズその1 キルケゴール
偉大なるダメ人間シリーズその8 プラトン
関連サイト:
「痛いニュース(ノ∀`) 」(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/)より
「「結婚、面倒くさい」 結婚したくない症候群の男性が急増」
(http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1146872.html)
「名言集.com」(http://www.meigensyu.com/)より
「結婚」(http://www.meigensyu.com/tags/view/1109/page1.html)
偉人の中にも、結婚を嫌がったり結婚によって難儀したりした人は少なからずいました。興味のある方は社会評論社『ダメ人間の世界史』より「タレス ディオゲネス ヘラクレイトス 社会参加は断固拒否、政治も結婚も真っ平ごめん、哲学という名の妄想に全てを捧げた頭でっかちな人々の話」「ソクラテス 寝ても起きても夢を見てフワフワ過ごした71年、妻の怒りも何のその、死ぬまで貫くニート道」「ベリサリウス 史上最も無様に妻の尻に敷かれた英雄 ~女王様の足にマゾ奴隷として口づけを~」「楊堅 嫁が恐くて家出して、職務放棄を臣下に叱られたヘタレ皇帝」「戚継光 あらゆる外敵に打ち勝った勇将も、内では異常な恐妻家、妻が恐くて逆らえず仕方ないから部下に八つ当たり」「ナポレオン ネルソン 英仏代表天才軍人は、浪費癖あるクズ女に惚れた弱みで貢ぎに貢いだ英仏代表ヘボ男」「リンカーン マナーも神も全て無視、無作法・無頓着な野人豪傑大統領」「キルケゴール 史上最狂のメイドオタク。空前絶後のキモさで世間のみんなの笑いもの。」を、『ダメ人間の日本史』より「吉田兼好 女など心に浮かぶ虚像で十分 ~700年前の二次元大好きキモオタのリアル女弾劾の声を聞け~」「三島由紀夫 シスコン、マザコン、少年愛、マッチョ志向 ダメ勲章山盛りな大作家 ~右翼だけどディズニーランド好き~」を御参照いただければ幸いです。
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by trushbasket
| 2011-11-07 00:49
| NF








