2011年 12月 07日
<雑記>野球ファン漫画から考える、女性ファンの増加について
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『ナポレオン 覇道進撃』や『ドリフターズ』、『それでも町は廻っている』等を目当てに漫画雑誌「ヤングキングアワーズ」を購入しているのですが、それに掲載されている『球場ラヴァーズ』という作品が結構面白いです。石田敦子先生の作品で、いじめにあっていた際に勇気付けてくれた「赤い帽子の人」を探している女子高生・松田実央がその縁でプロ野球チーム・広島カープ応援席でOL・基町勝子(30代半ば)やアニメーター・下仁谷みなみ(20代後半)と知り合いカープ応援に魅せられていく物語です。年齢層・職業・性格もバラバラな三人の女性はいずれも実生活で結構重い背景を背負っているようですが、野球応援で元気を貰い明日を生きる糧にしつつ精神的な成長もしていく模様が少女漫画風の可愛らしい絵柄で描かれています。球団創設以来密接に地域に根付き、原石から根気強く選手を育成する事で戦ってきた歴史を持つカープならではの話という気がします。
ところで、プロ野球ファンを主人公とした漫画といえば、大昔に『なにがなんでも阪神ファン』という作品を呼んだ覚えがあります。こちらは押川雲太(現・押川雲太朗)先生の作品で1991年に連載開始した敏腕市役所職員である主人公「政」が、夜には甲子園でプロ野球チーム・阪神タイガースの応援に熱を上げる話。『球場ラヴァーズ』の主人公達が女性陣であるのに比べ、こちらはいかにもなオッサン風の連中ばかり(余談ながら主人公は確か年齢的には下仁谷さんに近かったはずなのに外見は基町姐さんより年上に見えました)。彼らは別に実生活での深刻な問題は描かれていませんが、考えてみればこの時期の阪神ファンが球場外でまで問題を抱えていたら眼も当てられないのかも。何しろ、1991年の阪神の低迷ぶりはそれはそれは酷いもので、ダントツの最下位(6位)。どのくらいダントツかと申しますと、5位の横浜大洋ホエールズがあと1勝していれば勝率五割、すなわち危うく阪神がリーグの借金独り占めという事態が起こりかねなかったという体たらくだったのです。敗戦数や勝率の低さ自体ではまだこの時より下の記録があるわけですが、この年の阪神は一人負けっぷりが半端じゃありませんでした。
上記リンク先を御覧いただければ明らかですが、暗黒時代に生きる阪神ファンの自虐と諦観に溢れたやり取りが売りの一品でした。翌92年は予想外にも優勝争いしたため、作品の雰囲気も少し変わったようですが。
ところで、両作品を見比べると、だいぶ様子が違います。現在は『球場ラヴァーズ』を持ち出すまでもなく野球場に女性の姿が多く見られるのは珍しくないのですが、『なにがなんでも阪神ファン』ではオッサンが目立ってるところからすると90年代初頭にはまだまだ女性は珍しかったのでしょうか?何しろ、昔は野球場といえば荒っぽい話も多々あった場所だそうですし。有名な逸話を挙げると、
といった感じだったそうです。それを思うと、『球場ラヴァーズ』で女性だけで三人組が野球観戦に出かけるという設定には時代の変遷を感じるべきところなのかもしれません。
では、プロ野球に女性ファンが増加したのがいつ頃からなのか。それについては、井上章一氏の著作『阪神タイガースの正体』がよくまとまっていましたので、該当部分を少しまとめてみます。
昭和初期から東京六大学野球は女性の間でも人気を博すようになっていましたが、プロ野球は開始した1930年代にはイメージが良くなく「婦人デー」を設けてもほとんど女性客が来ない状況だったとか。そのため数少ない女性常連客を詩人・西条八十が『洲崎野球場風景』で「あれこそここのジャンヌ・ダルク」(井上章一『阪神タイガースの正体』太田出版 251頁)などと大げさに持ち上げる有様でした。
戦後に入って1950年代後半になると、大学野球のスターであった長嶋らが入団し女性の関心もプロに向き始めたようで58年の『娯楽よみうり』には
といった記事が掲載されたとか。しかし59年でも雑誌『タイガース』に「女だてらに、野球なんか好きだなんて」(同書 251頁)と家族に言われた女性ファンの投書がありましたから、まだまだ珍しかったと言ってよさそうです。それが1980年の『週刊現代』によれば70年ごろは百人中五人程度だった女性客が十年で十人中二人にまで増えたそうで、84年『週刊明星』に至っては「今や野球の応援団席は男でなく、完全に女の世界。特に巨人と阪神に女の子ファンの姿が目立ちます。」(同書 252頁)と断言。となると『なにがなんでも阪神ファン』が連載開始した1991年の時点では既に女性ファンが多くなっていたはずなんですけど、暗黒時代で寂れてただけでしょうかね…。
【参考文献】
球場ラヴァーズ1-3 石田敦子 少年画報社
あの頃こんな球場があった 佐野正幸 草思社
昭和レトロスタヂアム消えた球場物語 坂田哲彦 ミリオン出版
阪神タイガースの正体 井上章一 太田出版
猛虎大鑑1936-2002 ベースボール・マガジン社
関連記事:
「本が出ました:世界史の戦うヒロイン大集結、燃える世界史スーパーヒロイン本『世界各国女傑列伝』」
「「木鶏」」
「過去のお騒がせ横綱たち」
スポーツやら女性やらの話題ということで。
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「日本民衆文化史」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/2002/021206.html)
関連サイト:
「少年画報社」(http://www.shonengahosha.jp/)より
「球場ラヴァーズ」
(http://www.shonengahosha.jp/comics/index.php?c1=204002)
「メテオ・ストライクス!」(http://meteorsan.blog107.fc2.com/)より
「漫画『球場ラヴァーズ』と、ファン気質の違い」(http://meteorsan.blog107.fc2.com/blog-entry-162.html)
上記両作の雰囲気の違いは、両球団ファンの気質の違いに起因するのかも。
両作品とも、それぞれの贔屓球団が弱体化した時代が舞台という共通点があります。暗黒時代や敗戦つながりで社会評論社『敗戦処理首脳列伝』、女性つながり(ジャンヌ・ダルク云々なんて話も出てきましたし)で同社『世界各国女傑列伝』を、御興味のある方は御参照頂けますと幸いです。
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ところで、プロ野球ファンを主人公とした漫画といえば、大昔に『なにがなんでも阪神ファン』という作品を呼んだ覚えがあります。こちらは押川雲太(現・押川雲太朗)先生の作品で1991年に連載開始した敏腕市役所職員である主人公「政」が、夜には甲子園でプロ野球チーム・阪神タイガースの応援に熱を上げる話。『球場ラヴァーズ』の主人公達が女性陣であるのに比べ、こちらはいかにもなオッサン風の連中ばかり(余談ながら主人公は確か年齢的には下仁谷さんに近かったはずなのに外見は基町姐さんより年上に見えました)。彼らは別に実生活での深刻な問題は描かれていませんが、考えてみればこの時期の阪神ファンが球場外でまで問題を抱えていたら眼も当てられないのかも。何しろ、1991年の阪神の低迷ぶりはそれはそれは酷いもので、ダントツの最下位(6位)。どのくらいダントツかと申しますと、5位の横浜大洋ホエールズがあと1勝していれば勝率五割、すなわち危うく阪神がリーグの借金独り占めという事態が起こりかねなかったという体たらくだったのです。敗戦数や勝率の低さ自体ではまだこの時より下の記録があるわけですが、この年の阪神は一人負けっぷりが半端じゃありませんでした。
関連サイト:
「めたもるゆきにゃー」(http://yukinyan.net/)より
「「なにがなんでも阪神ファン」(押川雲太・アクションコミックス)」
(http://yukinyan.sakura.ne.jp/archive/20011028000229.php)
上記リンク先を御覧いただければ明らかですが、暗黒時代に生きる阪神ファンの自虐と諦観に溢れたやり取りが売りの一品でした。翌92年は予想外にも優勝争いしたため、作品の雰囲気も少し変わったようですが。
ところで、両作品を見比べると、だいぶ様子が違います。現在は『球場ラヴァーズ』を持ち出すまでもなく野球場に女性の姿が多く見られるのは珍しくないのですが、『なにがなんでも阪神ファン』ではオッサンが目立ってるところからすると90年代初頭にはまだまだ女性は珍しかったのでしょうか?何しろ、昔は野球場といえば荒っぽい話も多々あった場所だそうですし。有名な逸話を挙げると、
・1950年代にビジターチームが試合引き伸ばしをして日没試合不成立に持ち込んだ際にホームゲームのファンが激昂して乱入し選手が監禁状態になって警官300人が動員された
・60年前後にあるファンが二人いるエースピッチャーのうちの一人に声援を送っていたらタチの悪そうな中年男に「自分はもう一人のエースのファンだからそいつの名前は言うな、もう一度もう一人のエースの名前で言い直せ」とすごまれた
・野球賭博の常連が30人弱たむろしていて一斉検挙された
・野次を飛ばしたり物を投げ込む「騒ぎ屋」と呼ばれる人々があちこちの球場にいた
・70年代にもホームチームのファンが怒ってなだれ込み相手チームの選手が殴られたり機動隊が出たり
・解説者がホームチームに不利な解説をしたら観客に囲まれた
といった感じだったそうです。それを思うと、『球場ラヴァーズ』で女性だけで三人組が野球観戦に出かけるという設定には時代の変遷を感じるべきところなのかもしれません。
では、プロ野球に女性ファンが増加したのがいつ頃からなのか。それについては、井上章一氏の著作『阪神タイガースの正体』がよくまとまっていましたので、該当部分を少しまとめてみます。
昭和初期から東京六大学野球は女性の間でも人気を博すようになっていましたが、プロ野球は開始した1930年代にはイメージが良くなく「婦人デー」を設けてもほとんど女性客が来ない状況だったとか。そのため数少ない女性常連客を詩人・西条八十が『洲崎野球場風景』で「あれこそここのジャンヌ・ダルク」(井上章一『阪神タイガースの正体』太田出版 251頁)などと大げさに持ち上げる有様でした。
戦後に入って1950年代後半になると、大学野球のスターであった長嶋らが入団し女性の関心もプロに向き始めたようで58年の『娯楽よみうり』には
いままで大学野球しか見なかった立教ファン、早稲田ファンのお嬢さんが、プロも見るようになる……最近は年々家族づれが増えて、女性ファンが多くなっている(同書 256頁)
といった記事が掲載されたとか。しかし59年でも雑誌『タイガース』に「女だてらに、野球なんか好きだなんて」(同書 251頁)と家族に言われた女性ファンの投書がありましたから、まだまだ珍しかったと言ってよさそうです。それが1980年の『週刊現代』によれば70年ごろは百人中五人程度だった女性客が十年で十人中二人にまで増えたそうで、84年『週刊明星』に至っては「今や野球の応援団席は男でなく、完全に女の世界。特に巨人と阪神に女の子ファンの姿が目立ちます。」(同書 252頁)と断言。となると『なにがなんでも阪神ファン』が連載開始した1991年の時点では既に女性ファンが多くなっていたはずなんですけど、暗黒時代で寂れてただけでしょうかね…。
【参考文献】
球場ラヴァーズ1-3 石田敦子 少年画報社
あの頃こんな球場があった 佐野正幸 草思社
昭和レトロスタヂアム消えた球場物語 坂田哲彦 ミリオン出版
阪神タイガースの正体 井上章一 太田出版
猛虎大鑑1936-2002 ベースボール・マガジン社
関連記事:
「本が出ました:世界史の戦うヒロイン大集結、燃える世界史スーパーヒロイン本『世界各国女傑列伝』」
「「木鶏」」
「過去のお騒がせ横綱たち」
スポーツやら女性やらの話題ということで。
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「日本民衆文化史」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/2002/021206.html)
関連サイト:
「少年画報社」(http://www.shonengahosha.jp/)より
「球場ラヴァーズ」
(http://www.shonengahosha.jp/comics/index.php?c1=204002)
「メテオ・ストライクス!」(http://meteorsan.blog107.fc2.com/)より
「漫画『球場ラヴァーズ』と、ファン気質の違い」(http://meteorsan.blog107.fc2.com/blog-entry-162.html)
上記両作の雰囲気の違いは、両球団ファンの気質の違いに起因するのかも。
両作品とも、それぞれの贔屓球団が弱体化した時代が舞台という共通点があります。暗黒時代や敗戦つながりで社会評論社『敗戦処理首脳列伝』、女性つながり(ジャンヌ・ダルク云々なんて話も出てきましたし)で同社『世界各国女傑列伝』を、御興味のある方は御参照頂けますと幸いです。
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by trushbasket
| 2011-12-07 04:24
| NF








