旧説 浦島太郎物語 ~浦島太郎に亀は出てこない~ from 万葉集
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浦島太郎について、
浦島太郎こと浦島子(うらのしまこ)が亀とセックスしていたという
意外な真実を紹介しましたが、
旧説 大人の浦島太郎物語 ~浦島太郎は亀とセックスしていた!!~ from『日本書紀』
浦島太郎の物語には、他にも知られていない意外な真実が存在します。
実は最古の浦島太郎物語は『日本書紀』以外に『万葉集』にも記されていて、そこでは、現在我々の知る物語とも『日本書紀』とも異なる、
物語が語られているのです。
今日はそれを紹介いたしましょう。
以前に『日本書紀』の物語を紹介した時にも少し触れましたが、
万葉集によれば
浦島太郎は、我々が通常想像しているように亀を助けてその飼い主の女とセックスしたわけではなく、『日本書紀』が記すように亀が変化した女とセックスしたわけでもなく、海神の娘とくっつきます。
なんと、そこには亀の姿は全くありません。
浦島太郎の物語はその原点における一類型として、重要アイテムの亀無しに、話が進むパターンが存在するのです。
…… 水江の 浦島子が 鰹釣り 鯛釣り誇り 七日まで 家にも来ずて 海界を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向かひ 相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り ……
(『新編 日本古典文学全集 萬葉集 2』 小学館 414、415頁)
<訳>
…… 水の江の 浦島太郎が 鰹釣り 鯛釣り図に乗り 七日間 家にも帰らず 海原の 果て越え漕ぎ行き 海神の 娘とたまたま 巡り会い 漕ぎ着け近寄り 語り合い 思いが成って 結婚し 常世に行って ……
ということで漁の途中で海の果てを越えてしまい、海神の娘を見かけて意気投合、結婚して永遠の国で暮らしたという話でした。
ところで万葉集には、一般的なイメージの中で亀と双璧を成す浦島太郎物語の重要アイテム、玉手箱が出てきますが、玉手箱のからむ話のオチは箱を開けて煙を浦島太郎が老人になった、という我々の知る話とは微妙に異なります。
すなわち
……玉櫛笥 少し開くに 白雲の 箱より出でて 常世辺に たなびきぬれば 立ち走り 叫び袖振り 臥いまろび 足ずりしつつ たちまちに 心消失せぬ 若かりし 肌も皺みぬ 黒かりし 髪も白けぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて 後遂に 命死にける 水江の 浦島子が 家所見ゆ
(『新編 日本古典文学全集 萬葉集 2』 小学館 416頁)
<訳>
…… 玉手箱 少し開くと 白雲が 箱から上り 常世へと たなびき去るので 立って追い 叫び袖振り のたうって 地団駄踏んで たちまちに 意識は飛んで 若かった 肌は皺寄り 黒かった 髪は白髪に あげくには 呼吸も止まり 最後には 死んでしまった 水の江の 浦島太郎の 住まいの跡地
老人になったではなく老人になってそのまま死んだ
わけですね。
なお玉手箱開けたら死ぬのは、霊魂を体の外に出して不死身を得る外魂という術で、永遠の国で数百年不老不死を保っていたのに、箱が開いたことで術が解けてしまうかららしいです。
別に永遠の国で数年暮らしている間に現世で流れた数百年の時間が箱に閉じこめられてたわけではないらしい。
参考資料
『新編 日本古典文学全集 日本書紀2』小学館
『新編 日本古典文学全集 萬葉集2』小学館
『スーパー・ニッポニカ Professional』小学館
『日本史大事典』平凡社
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