2013年 10月 05日
若年層を結婚させるため、昔の日本人がとっていた試み~血縁・地縁の力は偉大でした~
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現在、日本で急速に「非婚」化が進んでいるのは御存知の方も多いかと存じます。少し古いデータですが、2010年には30歳台前半男性の未婚率が47.3%、同年代女性の未婚率は34.5%だったとか。
結婚するか独身を通すかは個人の価値観によるものではありますが、次世代を確保しなければならない社会としては問題でしょう。こうした中で、長らく続いてきた家系が断絶してしまうと懸念する人もいるようです。以前ほどではないとは言え、まだ「家」意識が地域によっては残存しているでしょうし。
さて、家の断絶を防いだり地域を担う次世代を残すため、昔の日本人は色々苦心をしていたようです。
平安期における貴族は、男女とも成人の儀式をすませると同時に婚姻を行う事が多かったと言います。中でも皇子が元服(男子の成人式)を迎えた際には有力貴族の娘を相手に選んで共に寝かせる習慣があり「副臥(そいぶし)」と呼んでいました。有名な事例としては、『源氏物語』で主人公・光源氏が元服と同時に左大臣の娘(彼女は「葵の上」と通称されます)を正妻に迎えた話が挙げられるでしょう。史実上の例から言えば、村上天皇の第四皇子為平親王が元服した際は源高明の娘が、また寛和二年(988)三条天皇が元服した際に藤原兼家(道長の父)の娘・綏子が副臥に上がっています。
では、武士の世界はどうだったか。『吾妻鏡』によれば建久五年(1194)に北条泰時が元服した際、源頼朝は三浦介義澄にその孫を泰時に娶わせるよう言い含めたとあります。実際に嫁いだのはしばらくたって後のようですが、上級武士の世界も京都の貴族に準じて考えて大きな問題はなさそうですね。
流石に皆が成人と同時に婚姻するわけではないようですが、性経験のない若者に成人と共に経験を積ませる事はより広く行われていたようです。琉球ではヨカルビト(士族階級)の間では、十二支が一回りした数え十三歳で元服式をあげその夜に父親が子を「辻」(遊里)へ帯同して遊女を買わせる風習があったとか。庶民レベルで成人と同時に性生活デビューする事例は多々ありました。各地方では明治・大正まで若者組・若衆仲間と呼ばれる団体が町村単位で作られていましたが、これらの団体では成人した新入りが遊女を買う事が通例になっていたものも多いとか。佐渡島では若者連に加入するに当って霊峰・金北山に登り夷港で白緒の草履を買う風習がありましたが、この際に夷港で遊女を買う事も慣例になっていたそうです。奈良県の大峯参りに始めて参加する男子も同様で、先輩に女郎買いを教わって「精進あげ」をする事で初めて一人前の男とみなされていたといいます。以前の記事でも上流階級や庶民の間で新成人に行われていた性的な実習教育の話がありますので興味のある方は御参照ください。
家の血統を絶やさないため、共同体の次世代を確保するため、血縁・地縁を総動員して若い世代に相手を見つけたり性的な手ほどきをしたりしていたんですね。今の日本で非婚化が進んでいる背景には、以前に述べた諸要因だけでなくこうした世話を焼き圧力をかける親類縁者・地域共同体の影響が小さくなっているのも大きいのかも。社会全体が高揚感に溢れていた高度成長期・バブル時代まではともかく、閉塞感が漂う1990年代以降となると特に。かくして、結婚どころか性生活デビューもできず非モテをこじらせてしまう事例も多々生じているのが現状でしょうか。人間には良くも悪くも適応力があり、異性や性愛抜きの環境に長らくおかれるとそれに慣れて何とも思わなくなるものらしいですし。日本人にはセックスレスになりやすい素養がある可能性があるのも考えると、厳しい環境ですな。
血縁・地縁の力が弱まり彼らによって「教育」やお膳立てをされることもなく、「自学自習」に任されてきたにしては、30台前半で半分強が結婚している。そう考えると現代若年層は案外善戦しているのかもしれない、という考えすら頭をよぎるのですがどんなもんなんでしょうね。
【参考文献】
民俗民芸叢書18婚姻の民俗学 大間知篤三著 岩崎美術社
関連記事:
「貴人への性教育について」
「殿様の 家名断絶 防ぐため 夜も御奉仕 ああメイドさん~御殿女中裏マニュアル「秘事作法」~」
「大人と子供の境界はどの辺り?~性的な意味、社会的な意味で~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「『ダメ人間の世界史&日本史』ブログ版(試し読み用)(03) 鬼謀の草食ロリコン参謀 モルトケ」
「エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/2004/050311.html)
結婚という一大イベントを迎えるためにいろいろ苦労したり迎えられなかったりした偉人たちもいました。興味のある方は、社会評論社『ダメ人間の世界史』『ダメ人間の日本史』を御参照ください。
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関連サイト:
「社会実情データ図録」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/index.html)より
「未婚率の推移」(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1540.html)
結婚するか独身を通すかは個人の価値観によるものではありますが、次世代を確保しなければならない社会としては問題でしょう。こうした中で、長らく続いてきた家系が断絶してしまうと懸念する人もいるようです。以前ほどではないとは言え、まだ「家」意識が地域によっては残存しているでしょうし。
さて、家の断絶を防いだり地域を担う次世代を残すため、昔の日本人は色々苦心をしていたようです。
平安期における貴族は、男女とも成人の儀式をすませると同時に婚姻を行う事が多かったと言います。中でも皇子が元服(男子の成人式)を迎えた際には有力貴族の娘を相手に選んで共に寝かせる習慣があり「副臥(そいぶし)」と呼んでいました。有名な事例としては、『源氏物語』で主人公・光源氏が元服と同時に左大臣の娘(彼女は「葵の上」と通称されます)を正妻に迎えた話が挙げられるでしょう。史実上の例から言えば、村上天皇の第四皇子為平親王が元服した際は源高明の娘が、また寛和二年(988)三条天皇が元服した際に藤原兼家(道長の父)の娘・綏子が副臥に上がっています。
では、武士の世界はどうだったか。『吾妻鏡』によれば建久五年(1194)に北条泰時が元服した際、源頼朝は三浦介義澄にその孫を泰時に娶わせるよう言い含めたとあります。実際に嫁いだのはしばらくたって後のようですが、上級武士の世界も京都の貴族に準じて考えて大きな問題はなさそうですね。
流石に皆が成人と同時に婚姻するわけではないようですが、性経験のない若者に成人と共に経験を積ませる事はより広く行われていたようです。琉球ではヨカルビト(士族階級)の間では、十二支が一回りした数え十三歳で元服式をあげその夜に父親が子を「辻」(遊里)へ帯同して遊女を買わせる風習があったとか。庶民レベルで成人と同時に性生活デビューする事例は多々ありました。各地方では明治・大正まで若者組・若衆仲間と呼ばれる団体が町村単位で作られていましたが、これらの団体では成人した新入りが遊女を買う事が通例になっていたものも多いとか。佐渡島では若者連に加入するに当って霊峰・金北山に登り夷港で白緒の草履を買う風習がありましたが、この際に夷港で遊女を買う事も慣例になっていたそうです。奈良県の大峯参りに始めて参加する男子も同様で、先輩に女郎買いを教わって「精進あげ」をする事で初めて一人前の男とみなされていたといいます。以前の記事でも上流階級や庶民の間で新成人に行われていた性的な実習教育の話がありますので興味のある方は御参照ください。
家の血統を絶やさないため、共同体の次世代を確保するため、血縁・地縁を総動員して若い世代に相手を見つけたり性的な手ほどきをしたりしていたんですね。今の日本で非婚化が進んでいる背景には、以前に述べた諸要因だけでなくこうした世話を焼き圧力をかける親類縁者・地域共同体の影響が小さくなっているのも大きいのかも。社会全体が高揚感に溢れていた高度成長期・バブル時代まではともかく、閉塞感が漂う1990年代以降となると特に。かくして、結婚どころか性生活デビューもできず非モテをこじらせてしまう事例も多々生じているのが現状でしょうか。人間には良くも悪くも適応力があり、異性や性愛抜きの環境に長らくおかれるとそれに慣れて何とも思わなくなるものらしいですし。日本人にはセックスレスになりやすい素養がある可能性があるのも考えると、厳しい環境ですな。
血縁・地縁の力が弱まり彼らによって「教育」やお膳立てをされることもなく、「自学自習」に任されてきたにしては、30台前半で半分強が結婚している。そう考えると現代若年層は案外善戦しているのかもしれない、という考えすら頭をよぎるのですがどんなもんなんでしょうね。
【参考文献】
民俗民芸叢書18婚姻の民俗学 大間知篤三著 岩崎美術社
関連記事:
「貴人への性教育について」
「殿様の 家名断絶 防ぐため 夜も御奉仕 ああメイドさん~御殿女中裏マニュアル「秘事作法」~」
「大人と子供の境界はどの辺り?~性的な意味、社会的な意味で~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「『ダメ人間の世界史&日本史』ブログ版(試し読み用)(03) 鬼謀の草食ロリコン参謀 モルトケ」
「エロゲーを中心とする恋愛ゲームの歴史に関するごく簡単なメモ」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/2004/050311.html)
結婚という一大イベントを迎えるためにいろいろ苦労したり迎えられなかったりした偉人たちもいました。興味のある方は、社会評論社『ダメ人間の世界史』『ダメ人間の日本史』を御参照ください。
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by trushbasket
| 2013-10-05 22:21
| NF








