統一球時代の成績をどう評価するか 2013年版~補正は要るのか要らないのか~
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こうしたボールの変更により、打撃成績が悪化したりせっかく優秀な投手成績を上げても正当に評価されなかったりといった問題が生じる事が懸念されます。また、それを抜きにしても「統一球」以前と比較するとどれくらいに相当するのかは単純に気になるところ。そこで、2011年・2012年の打撃成績・投手成績を2005-2010年のそれと比較するための簡易補正式作成を以前に試みた事がありました。
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2013年の使用球は直近二年と比較すると飛ぶのは確かなようですが、それでも2010年以前と比較するとまだ反発係数は低いと言う話も耳にしたりします。そこで、2013年のレギュラーシーズンも終わった事ですし、補正の必要があるか否かも含め補正式を検討してみたいと思います。なお、以前と同様に比較対照とするのは2005年から2010年までとします。
・本塁打数
セリーグ714本、パリーグ597本で合計1311本と過去二年と比較して明らかな改善傾向。それでも、05-10年の最小である1453本よりは少ない。こちらにあわせるなら1.11倍。あるいは、控えめな補正式としてパリーグの597本を、05-10年におけるリーグ本塁打最低値である632本塁打を下回らないよう本塁打数に1.06をかける。
・打率
セリーグチーム別最高打率は巨人の.262、最低は中日の.245。パリーグは最高がソフトバンクの.274で最低がオリックスの.256である。いずれも各リーグにおける05-10年間での最低打率を上回っており、打率の補正は不要と考える。
・防御率
セリーグのチーム別最優秀防御率は阪神の3.07、最悪は横浜DeNAの4.50。パリーグはチーム別最高がオリックスの3.31で最悪がロッテの3.77である。いずれの球団もチーム防御率では05-10年の間で最良の2.94は上回っており、補正は不要と考える。
・長打率
2013年の長打数は、セリーグ最高は巨人の1963で最低は阪神の1734であった。パリーグでは最高がソフトバンクの2010、最低が西武の1731である。いずれも05-10年間の最悪値である06年楽天の1625を上回っており補正は不要と考える。
本塁打は、やはりまだ05-10年と比較すると少なく補正を考慮する余地があるようです。どうやら、統一球導入以前と比べると反発係数がまだ低いというのは本当のようですね。こうした中でシーズン本塁打数の新記録を樹立したバレンティンは実に偉大だと言わざるを得ません。一方、他のファクターは、05-10年と比較しても変わりない数値に落ち着いており補正なしでも問題なさそうです。
以上から、2013年シーズンの補正式は
2013年 本塁打:×1.06~1.11 打率・防御率・出塁率:補正不要
というのが一応の答えになりそうです。出塁率・WHIPも打率が動かない以上は変わらないでしょうが、
DIPS:(13×被本塁打×(1.06~1.11)+3×(与四球+与死球-敬遠)-2×奪三振)÷投球回+3.12
となるでしょうか。
さて、2013年シーズンは投打においてそれぞれ新たな伝説が生まれました。すなわち、バレンティン外野手のシーズン本塁打数新記録となる60本塁打、田中将大投手のシーズン無敗での24勝。と言うわけで、この二人の日本プロ野球での成績を、当サイト流の補正を勝手に加えつつ見て生きたいと思います。まずは、バレンティン選手から。
バレンティン(東京ヤクルト)
11年 .228 31本塁打(本塁打王)→補正後.239 43-48本塁打
12年 .272 31本塁打(本塁打王)→補正後.283 46-51本塁打
13年 .330 60本塁打(本塁打王)→補正後.330 63-66本塁打
当初はパワーがある反面で荒っぽいイメージだったのが、徐々に日本に適応して確実性・パワーとも確実に伸ばしているのが良く分ります。次に、田中投手。
田中将大(東北楽天)
07年 11勝7敗 3.82
08年 9勝7敗1セーブ 3.49
09年 15勝6敗1セーブ 2.33
10年 11勝6敗 2.50
11年 19勝5敗 1.27(最優秀防御率)→補正後1.61
12年 10勝4敗 1.87→補正後2.56
13年 24勝1セーブ 1.27(最優秀防御率)
ちょっと一年後との波があるようにも見えますが、それでも全体としては加速度的な成長を遂げていた事が読み取れますね。「高卒ルーキーとしては凄い」レベルから「伝説の大投手」へとなった軌跡。良いものを見せてもらいました。
この二人の影に隠れていますが、今年はそれぞれの球団史上に残るレベルにまで成長した選手が少なからず見られた記念すべきシーズンだったという印象があります。これが球界の明るい未来へと繋がる事を祈ってやみません。
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※2013/10/16 記号を一部変更しました。