各都道府県を代表する力士を選んでみる
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北海道:
戦後に多数の横綱を輩出した地域です。千代の山・吉葉山・大鵬・北の富士・北の湖・千代の富士・北勝海・大乃国といった豪華な顔ぶれ。中でも大鵬・北の湖・千代の富士は長らく王者として君臨した大横綱で、北の富士も優勝10回を誇る強豪。一人を選ぶとしたら優勝回数32回の大鵬でしょうか?
青森:
ここも多くの横綱を生んでいます。鏡里・初代若乃花・栃ノ海・二代目若乃花・隆の里・旭富士。栃若時代の主役を演じ、優勝10回を記録した初代若乃花を選んでおきましょう。横綱若乃花・貴乃花兄弟の伯父で「土俵の鬼」と呼ばれたのは有名ですね。引退後は二子山部屋を創立して二代目若乃花・隆の里の二横綱、貴ノ花・若嶋津ら多くの力士を育て、理事長も勤めています。
秋田:
横綱照国を輩出。戦中・戦後に活躍した横綱で、「桜色の音楽」と称されるリズミカルな寄り身で知られています。当時としては驚異的なスピード出世を誇り23歳の若さで横綱昇進を果たしましたが、一方で優勝運がなく初優勝は昭和二十五年(1950)秋まで待たされました。
山形:
横綱柏戸の故郷。怪我もあって大鵬と共に柏鵬時代を彩りました。馬力のある相撲で人気を博しましたが、怪我にも泣かされた力士でした。
岩手:
大阪相撲が生んだ最後の横綱宮城山がいます。岩手生まれなのに「宮城」山なのは故郷が仙台藩の所領だったからだとか。東京相撲と合併した後、二度の優勝を飾り意地を見せています。
宮城:
一時は大横綱太刀山と並び称されて期待され、江戸の大横綱「谷風」の名を継ぐという噂すら流れた大関駒ヶ嶽を輩出。参考までに、対象とする以前の時代では横綱(称号としては存在しましたが地位としては確立前)・大砲を生んでいます。
福島:
横綱・大関は現時点ではいませんが名関脇が四人。時津山・初代栃東・玉乃島・信夫山。初代栃東は、強豪大関として知られた二代目栃東の師匠で父親に当たります。信夫山はもろ差しの名手として知られました。玉乃島は大関清国の甥だそうです。一人選ぶとしたら悩むところですが、優勝経験に敬意を表して時津山・初代栃東をまず代表候補とし、二人のうち全勝優勝をした時津山をとりあえず選んでおきましょう。
群馬:
こちらも琴錦・栃赤城と名関脇が二人。平幕優勝二回を達成した琴錦を選ぶこととします。
栃木:
大正の強豪横綱栃木山の故郷です。横綱栃錦の師匠としても知られています。力量を保ったまま引退し、引退六年後のトーナメントで並み居る現役強豪を破って優勝したという逸話は有名です。
茨城:
常陸山・男女ノ川と二人横綱を生んでいます。明治期における角界隆盛を担い「角聖」とまで呼ばれた実績を考えて常陸山を選びます。
埼玉:
関脇若秩父の故郷です。19歳の若さで小結になって話題を呼びました。土俵に塩を派手に撒くため子供達から人気があったとか。
※2021/1/24加筆。関脇大栄翔が2021年1月場所で平幕優勝を経験。優勝経験に敬意を表してこちらを代表にしても良いかも。
千葉:
横綱鳳を輩出。更に大阪横綱である若嶋も生んでいます。一人を選ぶなら東京相撲相手にも引けを取らなかったという若嶋でしょうか?悩ましいところです。大阪相撲を除外するなら鳳ですね。技能派の美男力士で人気がありましたが、横綱昇進後は苦戦を余儀なくされました。
東京:
横綱だけで東富士・栃錦・貴乃花・三代目若乃花。やはり豪華です。実績を考慮して貴乃花でしょうか。横綱初代若乃花の甥にして大関貴ノ花の子、三代目若乃花の弟というまさにサラブレッド。優勝22回を誇る平成の大横綱です。
神奈川:
横綱武蔵山の故郷。大関昇進前の怪我で苦戦を余儀なくされた悲劇の横綱でした。
新潟:
横綱羽黒山を輩出。双葉山の弟弟子としてスピード出世、戦後間もなくの土俵を盛り上げた強豪横綱です。アキレス腱断裂からも立ち直り、昭和二十七年(1952)春に全勝優勝をしています。
長野:
関脇高登の故郷です。玉錦・清水川・武蔵山・男女ノ川といった錚々たる面子と並んで期待を受けましたが、怪我のため大関ならず。引退後は大関松登を育てています。
※2018/7/23加筆。2018年7月場所で優勝した関脇御嶽海を代表としても良いかも。今後に飛躍する可能性もありますし。
山梨:
関脇富士櫻を輩出。激しい突っ張りとぶちかましから「突貫小僧」と呼ばれました。同様なタイプであった関脇麒麟児との対決は常に激しい突っ張りあいとなり、昭和天皇は二人の対決を喜ばれたそうです。ちなみに平幕優勝経験者の小結富士錦も山梨出身。彼もやはり激しいぶちかましを身上とする押し相撲の力士でした。
静岡:
昭和初期に角界改革を訴えて多数の力士が出奔・独立した「春秋園事件」。その主導者であった関脇天竜を輩出しています。インテリで美男力士だった事もあり人気がありました。
愛知:
北の富士と共に北玉時代を築き将来を嘱望されながらも夭折した横綱玉の海の故郷。なお、大阪横綱大錦大五郎も愛知出身です。
岐阜:
関脇羽島山の故郷です。終戦直前に入幕、戦後しばらくの土俵を盛り上げた一人。恵まれた体格と重い腰、怪力から大関を期待されましたが膝を痛め果たせませんでした。
富山:
常陸山と共に明治の土俵を盛り上げた横綱梅ヶ谷、大正の大横綱太刀山を輩出。「一突き半」で相手を倒してしまう事から「四十五日」と称され43連勝で敗れた翌日から56連勝を果たした強豪である太刀山を選んでおきます。
石川:
初の学生出身横綱である輪島の故郷。「黄金の左」から放つ下手投げを武器として北の湖と共に輪湖時代を演出、優勝14回を記録した強豪です。
福井:
小結大徹の故郷です。初土俵から75場所で入幕を果たした遅咲きの桜。つり・寄りを武器として飄々とした相撲振りを見せ、結構な人気があったそうです。
滋賀:
関脇蔵間の故郷。懐が深く将来を嘱望されましたが、早期に引退。タレントとして人気を博しましたが夭折しました。
三重:
三重ノ海・双羽黒と二人の横綱を輩出。横綱としての実績を考えると三重ノ海でしょうね。一度は大関から陥落するという試練も乗り越え、31歳で横綱に昇進。横綱在位は短いものの存在感を見せ付けた力士でした。引退後は武蔵川部屋を創設して横綱武蔵丸や大関武双山・出島・雅山らを育て理事長にもなっています。
奈良:
昭和前期に活躍した関脇笠置山の故郷。双葉山打倒に燃え、出羽海部屋における参謀役でしたが自身はついに双葉山に勝つ事は叶いませんでした。早稲田大学を出た当時としては珍しいインテリ力士で、現役時代から相撲評論・小説・随筆の執筆に手を染めていたそうです。
京都:
東前頭1枚目の若天龍が現時点では出世頭。模範的な立会いで知られ、小柄ながらも正攻法の相撲を取る力士だったとか。
大阪:
大正の横綱大錦卯一郎を輩出しています。天王寺中学校卒業のインテリで、入門希望の手紙をローマ字で書いたという逸話が残っています。入幕からわずか6場所で横綱になる強豪振りを発揮しましたが、協会と力士の間の対立事件を充分に仲介できなかった責任を取る形で自ら廃業しています。
和歌山:
関脇栃乃和歌の故郷。現在の春日野親方です。
兵庫:
大阪横綱である大木戸を輩出。大阪横綱以外では大関稀勢の里が現時点では出世頭。横綱白鵬の大型連勝を二度にわたって止めた力士である事は改めて申し上げるまでも無いでしょう。今回も綱とりはならずだったようですが、何度でも上を目指し挑戦してほしいものです。
※2014/1/27 稀勢の里は出生は兵庫らしいですが、出身地としているのは茨城県だそうです。
岡山:
横綱常ノ花の故郷。華やかな相撲振りで大正・昭和初期に活躍し、優勝10回を記録した名横綱です。引退後は理事長も歴任しています。
広島:
横綱安芸ノ海を輩出。双葉山の連勝を69で止めた力士として有名ですね。
鳥取:
横綱琴櫻の故郷。頭から突進する押し相撲を武器に32歳で横綱昇進を果たした努力の人でした。引退後は大関琴風や関脇琴錦・琴ヶ梅・琴ノ若ら多くの人気力士を育てています。
島根:
隠岐の海を輩出。平成26年1月現在で最高位は小結です。今後に期待ですね。
山口:
大関魁傑を生んでいます。一度は大関陥落しながらも陥落直後10勝による復帰を経ずに再度の大関昇進を果たした不屈の力士でした。引退後は放駒部屋を創立して横綱大乃国を育て、理事長も歴任しています。
香川:
「南海の黒豹」と呼ばれ、内掛けの名手として知られた大関琴ヶ濱を輩出。
徳島:
大正に活躍した小結東雲の故郷。26歳で入門し33歳で入幕、36歳で小結になった晩成型の力士だったそうです。
愛媛:
横綱前田山を輩出。双葉山時代には闘志溢れる名大関として活躍し、現役晩年に横綱に昇進しました。引退後は初の外国人関取であるハワイ出身の関脇高見山を育て、大相撲の国際化に貢献しています。
高知:
横綱玉錦の故郷です。双葉山台頭前における土俵の王者でしたが現役中に病死。師匠としても弱小だった二所ノ関部屋を大部屋に育てる力量を見せています。その弟子たちが分家独立して成功した事もあり、二所ノ関一門は戦後の角界で大いに繁栄。相撲人気に大きな貢献をしました。
福岡:
魁皇・九州山と二人の大関を生んでいます。優勝経験等の実績を考えて魁皇を選出。長く土俵を勤め、通産白星記録1047勝を達成した事で有名ですね。怪力で知られた名大関でした。
※2017年1月28日加筆。琴奨菊も福岡県出身の大関ですね。2017年1月場所で大関陥落が決定してしまいましたが、まだまだ頑張ってほしいものです。
佐賀:
大関佐賀ノ花を輩出。鋭い寄り身を武器に小結時代に優勝を経験しています。大横綱大鵬の師匠として知られています。
長崎:
横綱佐田の山の故郷です。突き押しを武器に大鵬・柏戸を相手に善戦、横綱に上り詰めた努力の人でした。引退後は理事長も勤めています。
大分:
大横綱双葉山を生んだ地です。前人未到の69連勝を果たしただけでなく、模範的な相撲振りから理想の力士像として後世まで仰がれている人物。引退後には時津風部屋を創立して横綱鏡里や大関大内山・豊山を始め多くの力士を育て、理事長も勤めています。
熊本:
大関栃光を輩出。稽古熱心な真面目人間で「ベコ(牛)」とあだ名された名力士でした。
※2020/10/19加筆。2020年9月場所、関脇正代が13勝2敗で初優勝。場所後に大関昇進しました。活躍次第では、彼が新たな熊本代表になるかも。要注目かと。
宮崎:
関脇金城の故郷。北の湖・二代目若乃花・麒麟児らと共に期待され、彼も一時期に栃光を名乗りました。
鹿児島:
二代目西の海・三代目西の海・朝潮と三人の横綱を生んでいます。優勝回数等を考えて朝潮を選出。脊椎分離症に悩まされ当初の期待ほどの成績は残せませんでしたが、逞しい風貌で人気を誇り栃若時代を盛り上げました。大阪場所に強い事でも有名でした。
沖縄:
現時点では、西前頭1枚目の琉王が出世頭です。初の沖縄出身幕内力士で、沖縄本土復帰の日に白星を上げ喝采を浴びたという逸話もあります。
※海外:
海外出身の横綱は曙・武蔵丸・朝青龍・白鵬・日馬富士。この中では現時点では白鵬が筆頭でしょうか。
今後、各都道府県はどのような力士を輩出するのでしょうか。ひょっとすると、先輩たちの最高位を塗り替える強豪がでるかも。その辺りも相撲を楽しむ上で興味深い視点かもしれません。
【参考文献】
大相撲力士名鑑平成二十六年版 亰須利敏・水野尚文編 共同通信社
横綱歴代69人 ベースボール・マガジン社
相撲評論家之頁(http://tsubotaa.la.coocan.jp/)