2014年 12月 20日
最初の動機は不純でもかまわない、大事なのはその後です~「黒田官兵衛、茶の湯に目覚める」の巻~
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2014年も残り少なくなりましたね。大河ドラマ『軍師官兵衛』も、いよいよ終わりのようで。という訳で、今回は黒田官兵衛に関連する話題を少し。
官兵衛は、御存じのとおり秀吉に仕え懐刀として活躍した智将です。当時、武将たちの間では茶の湯が流行していましたが、官兵衛は当初は茶には興味を持っていなかったそうです。何でも「主客無刀になり、狭き席にこぞり坐し、甚だ不用心なり」(会田雄次『敗者の条件』中公文庫 140頁)という理由だとか。乱世の武人らしいといえばらしい理由ですね。
ところが関東攻めを控えたある時期、主君・秀吉から茶の湯に招待されます。主命を拒むわけにもいかず、渋々と茶室に入った官兵衛ですが、中で待っていた秀吉は一向に茶を点てる様子もありません。結局、秀吉はその場で後北条氏攻めに関して官兵衛に様々な意見を聞き、長時間にわたり軍議をこらして終わりました。
秀吉曰く、「これ茶の湯の一徳である、お前とおれが密談したら人は疑惑を持つ。茶の湯といったら安心するだろうが」(同書 同頁)と。それを聞いた官兵衛は「臣今日茶の美を飲み覚え候」(同書 同頁)と大いに感嘆し、以後は千利休から熱心に茶の湯を学ぶようになったとか。
茶の湯を学ぶ理由としては、何だかなあ、と言いたくなる話ではあります。しかしその後、官兵衛は『茶湯定書』を著すなど茶の湯に一家言持つレベルにまで成長を遂げます。そして晩年には水屋(茶室の厨房のようなもの、と思ってください)に
と注意書きをして、「これは私一人の考えでなく利休の教えなのだから、ちゃんと守るように」と述べ、更に日常生活での心の持ちようにもこの心得は重要だといった教訓を付け加えています。不純なきっかけから始めた官兵衛の茶の湯でしたが、人間としての成長をも志すレベルにまで至ったと言えるようです。
誰かが何かを始める際、そのきっかけというか動機は気になる方も多いかと思います。その動機が、「金儲けに役立てたい」とか「異性にモテそう」とかいったいわば「不純」なものであった場合、一心に打ち込んでいる人の中には一言言いたくなるケースもあるかと。しかしながら、最初の動機がアレな場合でも、その後に面白さに目覚めて高みに至る場合だってあります。だから、ジャンルが何であれ、入って来る最初の動機に関しては基本的に寛大な目で見てやってください。その後にどれだけ精進するか、という事の方が評価するに当たっては大事ではないかと。今回はそういうお話。
【参考文献】
会田雄次『敗者の条件』中公文庫
井口海仙『茶道名言集』講談社学術文庫
関連記事:
「<言葉>茶人が残した人付き合いの心得~主人も客も、それぞれの価値観・人格に敬意と尊重を~」
「「昨日の敵は今日の友、敵の敵は味方」~「南朝の忠臣」として生きた「逆賊」の子孫たち~」
「不純」な動機で南朝につかざるをえなくなり、「忠臣」として生きる事になった人たちの話。
「戦後に活躍した「数寄者」たち~あの実業家も実は茶人だ~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「徳川期の茶の湯」(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/tokucha.html)
「続茶の湯 数寄者たち」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/1999/991029.html)
関連サイト:
「NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」」(http://www1.nhk.or.jp/kanbe/)
大河でも、利休が官兵衛に上記の教えを与えているシーンが確かあったように記憶します。
官兵衛は、御存じのとおり秀吉に仕え懐刀として活躍した智将です。当時、武将たちの間では茶の湯が流行していましたが、官兵衛は当初は茶には興味を持っていなかったそうです。何でも「主客無刀になり、狭き席にこぞり坐し、甚だ不用心なり」(会田雄次『敗者の条件』中公文庫 140頁)という理由だとか。乱世の武人らしいといえばらしい理由ですね。
ところが関東攻めを控えたある時期、主君・秀吉から茶の湯に招待されます。主命を拒むわけにもいかず、渋々と茶室に入った官兵衛ですが、中で待っていた秀吉は一向に茶を点てる様子もありません。結局、秀吉はその場で後北条氏攻めに関して官兵衛に様々な意見を聞き、長時間にわたり軍議をこらして終わりました。
秀吉曰く、「これ茶の湯の一徳である、お前とおれが密談したら人は疑惑を持つ。茶の湯といったら安心するだろうが」(同書 同頁)と。それを聞いた官兵衛は「臣今日茶の美を飲み覚え候」(同書 同頁)と大いに感嘆し、以後は千利休から熱心に茶の湯を学ぶようになったとか。
茶の湯を学ぶ理由としては、何だかなあ、と言いたくなる話ではあります。しかしその後、官兵衛は『茶湯定書』を著すなど茶の湯に一家言持つレベルにまで成長を遂げます。そして晩年には水屋(茶室の厨房のようなもの、と思ってください)に
一、茶碾き候こと、如何にも静かに回し、油断なく、滞らぬように碾き申すべきこと
一、茶碗以下垢つき申さず候ように、たびたび洗い申すべく候こと
一、茶の湯一柄杓汲みとり候わば、又水一柄杓差し候て、まどいおき申すべきこと。つかい捨のみ捨に仕間敷候こと
(井口海仙『茶道名言集』講談社学術文庫 124頁)
と注意書きをして、「これは私一人の考えでなく利休の教えなのだから、ちゃんと守るように」と述べ、更に日常生活での心の持ちようにもこの心得は重要だといった教訓を付け加えています。不純なきっかけから始めた官兵衛の茶の湯でしたが、人間としての成長をも志すレベルにまで至ったと言えるようです。
誰かが何かを始める際、そのきっかけというか動機は気になる方も多いかと思います。その動機が、「金儲けに役立てたい」とか「異性にモテそう」とかいったいわば「不純」なものであった場合、一心に打ち込んでいる人の中には一言言いたくなるケースもあるかと。しかしながら、最初の動機がアレな場合でも、その後に面白さに目覚めて高みに至る場合だってあります。だから、ジャンルが何であれ、入って来る最初の動機に関しては基本的に寛大な目で見てやってください。その後にどれだけ精進するか、という事の方が評価するに当たっては大事ではないかと。今回はそういうお話。
【参考文献】
会田雄次『敗者の条件』中公文庫
井口海仙『茶道名言集』講談社学術文庫
関連記事:
「<言葉>茶人が残した人付き合いの心得~主人も客も、それぞれの価値観・人格に敬意と尊重を~」
「「昨日の敵は今日の友、敵の敵は味方」~「南朝の忠臣」として生きた「逆賊」の子孫たち~」
「不純」な動機で南朝につかざるをえなくなり、「忠臣」として生きる事になった人たちの話。
「戦後に活躍した「数寄者」たち~あの実業家も実は茶人だ~」
歴史研究会・とらっしゅばすけっと関連発表:
「徳川期の茶の湯」(http://www.geocities.jp/trushbasket/data/nf/tokucha.html)
「続茶の湯 数寄者たち」(http://kurekiken.web.fc2.com/data/1999/991029.html)
関連サイト:
「NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」」(http://www1.nhk.or.jp/kanbe/)
大河でも、利休が官兵衛に上記の教えを与えているシーンが確かあったように記憶します。
by trushbasket
| 2014-12-20 19:35
| NF








