2016年 01月 23日
人は、欠点すらも使いよう?~津軽の殿様は考えた、酒癖悪い家臣も発想転換でホレこの通り~
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欠点のない人間はいない。これはしばしばいわれる事です。一方、長所も短所も表裏一体、ともよく言われます。ならば、欠点も考えようでは、活用次第ではうまく利用できるのでしょうか?森鴎外の作品である『渋江抽斎』に、そうした疑問に関する興味深い事例が登場するので、ここでご紹介しようかと思います。
弘前藩・津軽家の隠居・信順(のぶゆき)は戸沢惟清という家臣を側近としておいていました。惟清は
といった有為の人材でしたが、見過ごせない欠点があったのです。すなわち、
というものでした。要は、普段は人格・力量を兼ね備えた立派な人なんだけど、酒が入ると人格が変わり、デカい態度で周囲を困らせる残念な人間になってしまうという訳ですね。通常ならただの欠点として扱って終わりになるところですが、主君・信順の考えは一味違ったようです。ただ困ってばかりいないで、うまく使ってやれ。そう思ったのでしょうか。通常は惟清に禁酒を命じていたのですが、
という話が伝えられています。面倒な交渉事に臨ませる際、あえて惟清のこうした酒癖を利用した訳ですね。もっともこれ、弘前藩にとっては頭の痛い話だったかも。というのは、この信順という殿様、いわくつきだったのです。藩政には余り熱心でない反面で浪費家であり、それを徳川政権から咎められて早くから隠居させられたという経歴がありました。上記引用部分でも、必要経費がなくなると藩当局に交渉して金を出させていた事が読み取れます。で、その際に強硬な交渉をすべく惟清(酩酊バージョン)が重用された、という訳です。
まあともかく、目に余る欠点をも、考え一つでうまく利用した点に関しては、信順は見事な人材活用術を駆使したと褒められてもよいでしょう。短所としか思われない部分も長所に変えられないか工夫する、というのは人を用いる上で心がけたい事ではあります。…まあ、無条件でできる事ではないでしょうし、限界はあるかも知れませんけど。この惟清さんにしても、酔っても主命第一な忠義者なのは変わらない、普段は禁酒を守れる、という二点があって初めて酩酊バージョンも活用できた訳ですからね。
【参考文献】
『日本人名大辞典』講談社
『大辞林』三省堂
「青空文庫」(http://www.aozora.gr.jp/)より
「森鴎外 渋江抽斎」(http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/2058_19628.html)
関連記事:
「文豪・森鴎外が語る、幕末大名の名君っぽい逸話~庶民生活をこっそり視察、家臣のミスにも鷹揚~」
「後西天皇の茶席での心得~人の上に立つものが心すべきこと~」
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欠点がありつつも有為の人材として歴史に名を残した人々については、社会評論社『ダメ人間の世界史』『ダメ人間の日本史』に色々と事例があったりします。興味のある方は御参照下さい。
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弘前藩・津軽家の隠居・信順(のぶゆき)は戸沢惟清という家臣を側近としておいていました。惟清は
才幹あり気概ある人で、恭謙にして抑損し、些(ちと)の学問さえあった。
といった有為の人材でしたが、見過ごせない欠点があったのです。すなわち、
然るに酒を被(こうぶ)るときは剛愎(ごうふく)にして人を凌(しの)いだ。
というものでした。要は、普段は人格・力量を兼ね備えた立派な人なんだけど、酒が入ると人格が変わり、デカい態度で周囲を困らせる残念な人間になってしまうという訳ですね。通常ならただの欠点として扱って終わりになるところですが、主君・信順の考えは一味違ったようです。ただ困ってばかりいないで、うまく使ってやれ。そう思ったのでしょうか。通常は惟清に禁酒を命じていたのですが、
用帑(ようど)匱(とぼ)しきに至るごとに、これに酒を飲ましめ、命を当局に伝えさせた。戸沢は当局の一諾を得ないでは帰らなかったそうである。
(上記も含め引用部は「青空文庫」の「森鴎外 渋江抽斎」より)
という話が伝えられています。面倒な交渉事に臨ませる際、あえて惟清のこうした酒癖を利用した訳ですね。もっともこれ、弘前藩にとっては頭の痛い話だったかも。というのは、この信順という殿様、いわくつきだったのです。藩政には余り熱心でない反面で浪費家であり、それを徳川政権から咎められて早くから隠居させられたという経歴がありました。上記引用部分でも、必要経費がなくなると藩当局に交渉して金を出させていた事が読み取れます。で、その際に強硬な交渉をすべく惟清(酩酊バージョン)が重用された、という訳です。
まあともかく、目に余る欠点をも、考え一つでうまく利用した点に関しては、信順は見事な人材活用術を駆使したと褒められてもよいでしょう。短所としか思われない部分も長所に変えられないか工夫する、というのは人を用いる上で心がけたい事ではあります。…まあ、無条件でできる事ではないでしょうし、限界はあるかも知れませんけど。この惟清さんにしても、酔っても主命第一な忠義者なのは変わらない、普段は禁酒を守れる、という二点があって初めて酩酊バージョンも活用できた訳ですからね。
【参考文献】
『日本人名大辞典』講談社
『大辞林』三省堂
「青空文庫」(http://www.aozora.gr.jp/)より
「森鴎外 渋江抽斎」(http://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/2058_19628.html)
関連記事:
「文豪・森鴎外が語る、幕末大名の名君っぽい逸話~庶民生活をこっそり視察、家臣のミスにも鷹揚~」
「後西天皇の茶席での心得~人の上に立つものが心すべきこと~」
「君主はうかつな物言いはできない、という話~偉い人の言葉が与える影響は甚大~」
欠点がありつつも有為の人材として歴史に名を残した人々については、社会評論社『ダメ人間の世界史』『ダメ人間の日本史』に色々と事例があったりします。興味のある方は御参照下さい。
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by trushbasket
| 2016-01-23 11:12
| NF








