『童貞の世界史』落選者列伝 エドワード・ヒース~英国をEC加入させた宰相の、私生活はいかに?~
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エドワード・ヒースは大工の家庭に生まれ、奨学金でオックスフォード大学を卒業しました。1950年には保守党から下院議員となり、1955年に保守党下院院内総務、1959年に労相、1960年には国璽尚書、更に1963年には商相兼産業・貿易・地域開発相といった具合に要職・閣僚の地位を歴任。
当時、イギリスは大陸との関係強化を望み、ヨーロッパ経済共同体(EEC)への加盟を模索していました。そうした中で1961年、ヒースは加盟交渉の首席代表となり、イギリスの立場を代表して交渉にあたることとなります。1963年には加盟申請を行いましたが、この時はイギリスの立場強化を警戒するフランスの反対によって却下されています。しかし一方で、この際にヒースが示した交渉手腕は広く評価され、彼は「ミスター・ヨーロッパ」と呼ばれるようになったそうです。
こうした名声を背景にして、1965年には初の公選による保守党党首に就任。1970年には首相となりました。そして彼が在任中の1973年、イギリスはECCの後身であるヨーロッパ共同体(EC)への加盟を実現したのです。
ヒースは国内向けには庶民出身の保守党リーダーとして売り出し人気を集めようとしていたそうですが、そうしたイメージと裏腹に、労働問題や北アイルランド紛争には強硬姿勢を貫いていたとされます。
1974年、彼は総選挙で敗れ首相の座を退き、更に翌年には党首選でもマーガレット・サッチャーに敗れています。政界を引退したのは2001年でした。
さて、ヒースが英国の加盟を巡って奔走したECは、やがてヨーロッパ石炭鉄鋼共同体(ECSC)・ヨーロッパ原子力共同体(EURATOM)と共にマーストリヒト条約(1993)を経てEUの基盤となっていきました。今後、EUやイギリスがどうなっていくかは、まだまだ不透明ですね。
ヒースは生涯未婚で、同性愛者であるという噂されたものの確実な証拠はないのだそうです。彼に近い者の中には、「彼は政治と結婚したのだ」と述べるものもありました。また、ヒース本人も「結婚するには政治方面で忙しすぎた」と主張していたといわれます。当時のマスコミがヒースの性愛面での清潔さを評価しているのも考えると、噂の真偽がいずれであるにせよ、性愛方面への欲求が極めて淡泊だったのではないかと思われました。事実、彼を無性愛者であったと推測する向きもあったようですし。生涯童貞であった可能性もありそうだ、と一見思われました。
しかしながら、近年、ヒースが児童性的虐待をしていたという疑惑が報じられました。事実とすれば、とんでもない話ですね。真偽はまだ明らかでないようですが、そうした話題が出ている以上は、本書で取り上げるには相応しくないかもしれないと考えました。それに加え、執筆時点でイギリスとEUとの関係がどうなるか分からなかった事も関係して、取り扱いを見送りとした次第です。
参考文献:
John Campbell『Edward Heath: A Biography』Random House
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典 第2版』平凡社
「International Business Times」(http://www.ibtimes.com/)より
「Edward Heath: Britain’s Forgotten And Mysterious Prime Minister」(http://www.ibtimes.com/edward-heath-britains-forgotten-mysterious-prime-minister-1316889)
「The Guardian」(http://www.theguardian.com/uk)より
「Edward Heath: The Authorized Biography by Philip Ziegler」(http://www.theguardian.com/books/2010/jul/04/edward-heath-philip-ziegler-review)
「ハフィントンポスト」(http://www.huffingtonpost.jp/)より
「イギリスの故ヒース元首相に児童性的虐待疑惑」(http://www.huffingtonpost.jp/2015/08/04/ted-heath-child-sex-abuse-allegation_n_7931156.html)
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