<読書案内>『南朝研究の最前線』
|
本書は以前にご紹介した『信長研究の最前線』『秀吉研究の最前線』と同じシリーズにあたります。これまで、歴史的敗者という事もあって史料が少なかったり軽んじられたりだった南朝。しかし、その歴史的意義や機構、主要人物に関する新事実などが近年になって数多く見出されつつあるようです。
建武政権は、現実から乖離した歴史のあだ花だったのか?
建武政権と従来の朝廷との連続性は?
建武政権における足利氏は、実際のところはどんな存在だったのか?
建武政権と足利政権の意外な連続性とは?
建武政権を実務的に支えたのはどのような人々だったのか?
南朝の統治機構や実務的な人材に関してどの程度判明しているのか?
後醍醐天皇の人材登用は、本当に型破りだったのか?
上記のようなトピックスを通じて、「懸命に現実へ対処しようとしていた」という側面から建武政権を前向きに評価する視点も盛り込まれています。
他にも、新田氏は足利一門の一部だった?とか、楠木氏の出自に関する最新の説は?とか、北畠親房の思想とはどのようなものだったのか?とか、人物レベルでも見過ごせない話題が盛りだくさん。
更に、征西将軍府や後南朝、そして近代の皇国史観の意外な多様性など多種多様な論題が取り扱われています。南朝に留まらず、南北朝時代に興味のある人にとっては、手にとって損はない一冊です。本書で紹介された書などを通じて、もっと南北朝について学んでいくきっかけにしたいものです。