2016年 09月 21日
反出生主義と童貞偉人~「人間、生まれない方が幸せ」という考えもあるようです~
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どうも、松原左京です。今回も、『童貞の世界史』に関連した話題をご紹介していきたいと思います。
「反出生主義」(antinatalism)という考え方があるのを、御存じでしょうか。人(あるいは他の生物種も含め)の出生に対し、否定的な見方をする思想の事です。有名な主張者としてデイヴィッド・ベネターがおり、「子の幸せを思うなら、子を持つべきではない」「人は、生まれてこない方が生まれるより幸福だ」といった言葉を残しているそうです。哲学者ショーペンハウアーや作家エミール・シオランも反出生主義的な考えの持ち主として知られています。さらに、古代ギリシアにも似たような考え方はあったのだとか。
それにしてもこの反出生主義、なんとも現世否定的な考え方に思えます。とはいえ、私自身はこの思想に与すわけではありませんが、それでも全く分からない訳でもありません。考えてみれば、子は親の手によって、子自身の都合を斟酌する事なく誕生させられている訳ですからね。当然と言えば当然ですが。生まれる前に「お前はこの世界へ生れて来るかどうか、よく考へた上で返事をしろ。」(芥川龍之介『河童』より)なんて問いかける訳にいきませんし、子もこれに返答し納得づくで生まれる事もできません。そのような形で生まれた子が、もし生きている事に幸せを見いだせなかったとすれば…。そう仮定すると、こうした意見が出るのも理解はできる気がします。「同意なく、一方的に親の都合で生まれさせられる」という点に、納得できない不条理さを感じた結果として、反出生主義のような考えが出るのかもしれませんね。
さて、この反出生主義、内容からすると生涯純潔とも相性が良さそうに思えます。事実、『童貞の世界史』で取り上げた童貞偉人の中にも、類似した考え方を開陳した人物は少なくとも二人いました。マニ教開祖のマーニー、そして近代オーストリアの思想家オットー・ヴァイニンガー。彼らは考え方は異なる点も多いです。しかし、性愛・生殖に否定的で、「人類が子孫を残さなくなれば肉体的には滅亡しても霊魂は救済される」ともとれる思想を披露した点で共通しているといえそうです。
参考文献:
「青空文庫」(http://www.aozora.gr.jp/)より
Todd K. Shackelford, Ranald D. Hansen, The Evolution of Morality, Springer
David Newman, Families, A Sociological Perspective: Sociology, Social institutions, Cram101 Textbook Reviews
by trushbasket
| 2016-09-21 19:18
| 松原左京










