泉鏡花『愛と婚姻』を読んで~恋愛のみに頼っていては、それは婚姻率は下がります~
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「青空文庫」(http://www.aozora.gr.jp/)より
「泉鏡花 愛と婚姻」(http://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/1040_20511.html)
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2016年 10月 27日
どうも、松原左京です。『童貞の世界史』を執筆した身としては、現在日本の非婚化などの問題に触れるのも一興かと思います。
関連サイト: 鏡花いわく、「結婚を以て愛の大成したるものとなすは、大(おほい)なるあやまり」だそうで。何でも、結婚というのは「子孫なからざるべからず」という理由から、「愛のためにせずして社会のためにす」るものだとか。 考えてみれば、恋愛がもたらす結果は、社会にとって喜ばしいものばかりではありません。社会と衝突した結果、「情死、駈落(かけおち)、勘当(かんだう)」といった結末が珍しくないのはその証左といえます。なるほど、恋愛を無条件で賞賛する事は確かにできなさそうですね。 一方、恋愛とつながらない旧来の結婚を手放しで評価する事もまたできません。事実、鏡花もそうした結婚については社会にとっては確かに目出度いが、新夫婦は「懊悩(あうなう)不快なるあまたの繋累(けいるゐ)に束縛されむとす」る気の毒な犠牲者だと述べ、国のために命を捧げる人びとに対するのと同様に、社会は結婚する人々の犠牲に感謝すべき、とまで述べていたりします。なお、ここまで括弧内引用はこの『愛と婚姻』からのものです。 この『愛と婚姻』、明治期に書かれた随筆ではありますが、現代の視点からも考えさせられるものがあると思います。以前にも述べたかもしれませんが、私自身は、恋愛も結婚もすべての人がする必要はなく、したい人がすればよいとは思います。ただ、次世代確保や社会存続という視点から非婚化・少子化を懸念する声が高くなるのも理解できます。そこで、以下ではあえて婚姻率向上を目指すのを前提として考えてみたいと思います。 まず読み取れる事は、「恋愛結婚を前提とした現在の社会は、歴史的には寧ろ異例なのかもしれない」という事。思えば、上述したとおり、恋愛の結果が周囲の人々にとっても喜ばしいとは限らない訳です。恋愛よりも、家同士の調整による結婚が主であったのは、十分な理由がある事でした。その是非は別として。ただ、家の影響力が低下した現代なら、恋愛の結果による周囲へのマイナスという問題はかなり小さくなってはいるでしょう。それでも、一時の熱情から結婚したが時間経過と共に情が冷めて破局した、という話もあるようですから、恋愛結婚を無条件で評価する事は現在でもできないようです。 また、そもそもの問題として、自由な社会の下では、誰もが恋愛・性愛をするとは限りません。何らかの理由でできない人、必要としない人も一定数出ます。人々を結婚させる事で次世代の数を確保したいのであれば、人びとの自助努力に任せていてはいけないでしょう。とはいえ結婚・恋愛しない人たちを叱咤激励するだけでは敬遠・反発を招いて逆効果になりかねません。社会が「結婚願望はあるが、実現に至っていない」人々に対し大いにお膳立てをするくらいでないといけないのかも。 次に読み取るべき点は、「結婚は、社会を維持する必要から周囲の圧力によって行われるもので、本人たちにとっては必ずしも喜びとは限らない」という事。 それを無視して無理強いするのは人道的に問題があると思われます。結婚する事が当人たちの幸せにつながるような社会にしていく事、人々に結婚する事の分かりやすいメリットを提示する事が重要でしょう。むろん、鏡花の時代に比べると、遙かに改善はしているでしょうけど。 ただし、そうした方向で最善を尽くしたとしても、何らかの理由でどうしても結婚を拒む人も一定数出ると予測されます。それは、仕方ないものとして諦める他ないでしょうね。 中には、「決まったパートナーはいるが結婚という形はとりたくない」という人もあるでしょう。結婚という形式のマイナス面を重視したものであるとすると、彼らを無下にするのも問題かと思います。次世代確保という側面から考えると、彼らの存在も感謝とともに受け入れるべきでしょう。必ずしも結婚という形を取る必要がないようにする方向で、何らかのケアを行うべきかと思います。 まあ、方々で既に言われている事ばかりではありますが、温故知新ということで。
by trushbasket
| 2016-10-27 00:31
| 松原左京
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