2017年 05月 17日
「連覇もしくはそれに準ずる成績」という観点から見る、歴代横綱昇進直前成績~3番手以下が混じっている事も~
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横綱昇進の基準は、「二場所連続優勝もしくはそれに準ずる成績」である。それは、相撲に興味のある方なら、聞いたことはおありかと思います。とはいえ、この原則、解釈に幅がありそうなのは否定できません。実際、時期によって厳しさに幅があったりします。
過去の昇進事例を調べて見た範囲では、横綱審議委員会成立以降あたりからは
・直前2場所で大関として25勝以上
・直前場所は12勝以上
というのが昇進原則として機能していた印象を持ちました。
今回は、冒頭の原則に改めて注目する形で、「優勝」か「準優勝」に着目しつつ横綱審議委員会成立後の横綱たちの昇進直前3場所の成績を見ていきます。
なお、この記事は以下のサイトを参照にしています。(優)は優勝、(同)は優勝同点、(準)は同点ではない二番手を意味します。
関連サイト:
「相撲レファレンス」(http://sumodb.sumogames.de/Default.aspx?l=j)
千代の山
昭和25年9月 11勝4敗
昭和26年1月 8勝7敗
同年5月 14勝1敗(優)
2場所前は8勝。もちろん、優勝でも準優勝でもありません。ただ、千代の山の場合、以前にもお話ししたかと存じますが特殊事情があります。この少し前に
昭和24年5月 12勝3敗
同年10月 13勝2敗(優)
昭和25年1月 12勝3敗(優)
と連覇を果たしているにもかかわらず大人の事情で昇進が見送られた埋め合わせと考えられるのです。なので、実質連覇での昇進に準じてよいかもしれません。
鏡里
昭和27年5月 11勝4敗
同年9月 12勝3敗(準) 優勝は栃錦 14勝1敗、鏡里は吉葉山と共に準優勝
昭和28年1月 14勝1敗(優)
準優勝・優勝というパターンですね。
吉葉山
昭和28年5月 14勝1敗(準) 優勝は時津山 15戦全勝
同年9月 11勝4敗 優勝は東富士 14勝1敗、準優勝は成山 12勝3敗
昭和29年1月 15戦全勝(優)
2場所前が、3番手集団の一人という成績。しかし安定した実力と合計の星数を評価されたものと思われます。
栃錦
昭和29年3月 9勝6敗
同年5月 14勝1敗(優)
同年9月 14勝1敗(優)
堂々たる、2場所連続優勝での昇進。もっとも、これ以前に
昭和28年1月 11勝4敗
同年3月 14勝1敗(優)
同年5月 13勝2敗 優勝は時津山 15戦全勝、準優勝は吉葉山 14勝1敗
という好成績で見送られたのは気の毒ではあります。
若乃花(初代)
昭和32年9月 11勝4敗
同年11月 12勝3敗(準) 優勝は玉乃海 15戦全勝、若乃花は栃錦と共に準優勝
昭和33年1月 13勝2敗(優)
準優勝・優勝のパターンです。これ以前に
昭和30年9月 10勝4敗1分 ※この時点では関脇
昭和31年1月 13勝2敗 優勝は鏡里 14勝1敗、鶴ヶ嶺が優勝同点。
同年3月 12勝3敗(同) 優勝は朝汐 12勝3敗、若ノ花(当時)は若羽黒と共に優勝同点。
という好成績で見送られた経験もあります。この時点では優勝経験がないのがネックだったのでしょうか?あるいは昭和31年1月が新大関場所なので急ぐこともないと見られたか。
朝潮
昭和33年11月 14勝1敗(優)
昭和34年1月 11勝4敗(準) 優勝は若乃花 14勝1敗
同年3月 13勝2敗(準) 優勝は栃錦 14勝1敗
直前2場所は、優勝・優勝同点ともなく計25勝にも届いていません。ただし、一応は3場所連続で優勝もしくは準優勝である事、3場所で安定している事が評価されたものでしょうか?1月が準優勝だったのは、正直、意外でした。
柏戸
昭和36年5月 10勝5敗
同年7月 11勝4敗 優勝は大鵬 13勝2敗、準優勝は朝潮 12勝3敗
同年9月 12勝3敗(同) 優勝は大鵬 12勝3敗
直前が優勝同点とはいえ、これだけを見ると余りに甘い昇進です。ライバル大鵬との同時昇進で話題作りをした可能性が伺えます。もっとも、これ以前に
昭和35年11月 11勝4敗
昭和36年1月 13勝2敗(優)
同年3月 12勝3敗(準) 優勝は朝潮 13勝2敗、柏戸は大鵬と共に準優勝
という好成績で昇進が見送られた推移があり、その埋め合わせと見る事は可能です。
大鵬
昭和36年5月 11勝4敗(準) 優勝は佐田の山 12勝3敗、大鵬は北葉山・羽黒花と共に準優勝。
同年7月 13勝2敗(優)
同年9月 12勝3敗(優)
と堂々たる2場所連続優勝。なおこの後、昭和37年1月まで4場所連続優勝。準優勝も視野に入れると、昭和36年3月から昭和37年3月まで7場所連続で「優勝か準優勝」だったことに。
栃ノ海
昭和38年9月 11勝4敗
同年11月 14勝1敗(優)
昭和39年1月 13勝2敗 優勝は大鵬 15戦全勝、準優勝は清国 14勝1敗
直前場所に、3番手の成績。しかし星数を評価されたものでしょうね。
佐田の山
昭和39年7月 8勝7敗
同年9月 13勝2敗(準) 優勝は大鵬 14勝1敗
同年11月 13勝2敗(準) 優勝は大鵬 14勝1敗
昭和40年1月 13勝2敗(優)
3場所連続の13勝という安定した成績で、準優勝・優勝パターンでの昇進です。11月時点で計26勝ですが、ここでは見送られています。その前が8勝どまりで、なおかつ連続準優勝なのが物足りないと見られたのでしょうか。
玉の海
昭和44年9月 13勝2敗(優)
同年11月 10勝5敗 優勝は北の富士 13勝2敗、準優勝は麒麟児・龍虎の11勝4敗
昭和45年1月 13勝2敗(同) 優勝は北の富士 13勝2敗
これだけ見ると、直前2場所25勝にも達せず、2場所前が3番手以下の甘い昇進に見えます。しかし、以前に
昭和43年1月 12勝3敗(準) 優勝は佐田の山 13勝2敗
同年3月 12勝3敗(準) 優勝は若浪 13勝2敗、玉乃島(後、玉の海)は豊山と共に準優勝
同年5月 13勝2敗(優)
という好成績にもかかわらず昇進を見送られた経緯があり、その埋め合わせと見る事も可能です。ライバル北の富士と同時昇進になるよう配慮された、というのもあるでしょうけど。昇進後は強豪横綱ぶりを見せつけた玉の海ですが、病で急逝したのは惜しまれます。
北の富士
昭和44年7月 9勝6敗
同年9月 12勝3敗(準) 優勝は玉乃島(のち玉の海) 13勝2敗
同年11月 13勝2敗(優)
昭和45年1月 13勝2敗(優)
堂々たる2場所連続優勝での優勝です。昭和44年11月時点で準優勝・優勝、計25勝にもかかわらず昇進されなかったのは、それまでが3場所連続9勝6敗だったのでもう1場所見たものでしょうか。
琴櫻
昭和47年9月 9勝6敗
同年11月 14勝1敗(優)
昭和48年1月 14勝1敗(優)
長らく大関で苦戦もしましたが、2場所連続優勝で昇進です。
輪島
昭和47年11月 11勝4敗(準) 優勝は琴櫻 14勝1敗
昭和48年1月 11勝4敗(準) 優勝は琴櫻 14勝1敗
同年3月 13勝2敗(準) 優勝は北の富士 14勝1敗
同年5月 15戦全勝(優)
準優勝・優勝のパターンですね。大関時代の4場所すべて準優勝か優勝なのは見事です。
北の湖
昭和49年3月 10勝5敗
同年5月 13勝2敗(優)
同年7月 13勝2敗(同) 優勝は輪島 13勝2敗
優勝・優勝同点のパターンで、大関を3場所で突破し史上最年少横綱をつかみ取りました。
若乃花(二代目)
昭和52年11月 10勝5敗
昭和53年1月 13勝2敗(準) 優勝は北の湖 15戦全勝
同年3月 13勝2敗(同) 優勝は北の湖 13勝2敗
同年5月 14勝1敗(同) 優勝は北の湖 14勝1敗
3場所連続で13勝以上という安定感を示し、2場所連続優勝同点での昇進です。3月時点で昇進が見送られたのは、なぜでしょうか。
三重ノ海
昭和54年3月 10勝5敗
同年5月 13勝2敗(準) 優勝は若乃花 14勝1敗、三重ノ海は北の湖と共に準優勝
同年7月 14勝1敗(同) 優勝は輪島 14勝1敗
準優勝・優勝同点でのパターンです。
千代の富士
昭和56年3月 11勝4敗(準) 優勝は北の湖 13勝2敗
同年5月 13勝2敗(準) 優勝は北の湖 14勝1敗
同年7月 14勝1敗(優)
準優勝・優勝でのパターンです。
隆の里
昭和58年1月 11勝4敗
同年3月 12勝3敗(準) 優勝は千代の富士 15戦全勝、隆の里は朝潮・北天祐と共に準優勝
同年5月 13勝2敗(準) 優勝は北天祐 14勝1敗、隆の里は若島津と共に準優勝
同年7月 14勝1敗(優)
準優勝・優勝でのパターンです。5月時点で2場所連続準優勝、計25勝ですがこの時は見送られています。3場所前が優勝でなければ、直前2場所に同点以上が1回は入っていないと厳しいのでしょうか。
双羽黒
昭和61年3月 10勝5敗
同年5月 12勝3敗(準) 優勝は千代の富士 13勝2敗
同年7月 14勝1敗(同) 優勝は千代の富士 14勝1敗
準優勝・優勝同点でのパターンです。それまでに優勝経験がないのが気になる以外は、直前成績は他の横綱と比べても別に遜色ないですね。
北勝海
昭和62年1月 11勝4敗
同年3月 12勝3敗(優)
同年5月 13勝2敗(準) 優勝は大乃国 15戦全勝
優勝・準優勝でのパターンです。
大乃国
昭和62年3月 9勝6敗
同年5月 15戦全勝(優)
同年7月 12勝3敗(準) 優勝は千代の富士 14勝1敗
同年9月 13勝2敗(準) 優勝は北勝海 14勝1敗
2場所連続準優勝での昇進。7月時点で優勝・準優勝、計27勝にもかかわらず見送られたのは、それ以前1年ほど不安定だったためでしょうか。
旭富士から日馬富士までは、全員連覇での昇進である事は御存じの方も多いかと思いますので省略。
鶴竜
平成25年11月 9勝6敗
平成26年1月 14勝1敗(同) 優勝は白鵬 14勝1敗
同年3月 14勝1敗(優)
優勝同点、優勝のパターンです。
稀勢の里
平成28年9月 10勝5敗
同年11月 12勝3敗(準) 優勝は鶴竜 14勝1敗
平成29年1月 14勝1敗(優)
準優勝、優勝のパターンです。
なお、以前にも申し上げたかと思いますが、昇進基準が今の感覚に近くなったのは双葉山以降のように思います。そこで、双葉山以降の横綱審議委員会成立以前における横綱についてもついでに見ておきましょう。
双葉山
昭和11年5月 11戦全勝(優) ※この時点では関脇
昭和12年1月 11戦全勝(優)
同年5月 13戦全勝(優)
前人未到の69連勝の只中に、大関を無敗のまま2場所で突破。堂々たる2場所連続優勝です。
羽黒山
昭和15年5月 7勝5敗3休
昭和16年1月 14勝1敗(同) 優勝は双葉山 14勝1敗
同年5月 14勝1敗(優)
優勝同点、優勝のパターンです。なお、当時は優勝決定戦がなく、優勝同点者が複数いた際は番付が上の力士が優勝とされました。
安芸ノ海
昭和16年5月 9勝6敗
昭和17年1月 13勝2敗(準) 優勝は双葉山 14勝1敗、安芸ノ海は羽黒山と共に準優勝
同年5月 13勝2敗(同) 優勝は双葉山 13勝2敗、安芸ノ海は照国と共に準優勝で場所後に横綱昇進
準優勝、優勝同点のパターンです。
照国
昭和16年5月 13勝2敗(準) ※この時点では関脇
優勝は羽黒山 14勝1敗、照国は双葉山・玉ノ海と共に準優勝で、場所後に大関昇進
昭和17年1月 12勝3敗 優勝は双葉山 14勝1敗、準優勝は羽黒山・安芸ノ海 13勝2敗
同年5月 13勝2敗(同) 優勝は双葉山 13勝2敗、照国は安芸ノ海と共に準優勝で場所後に横綱昇進
2場所前が3番手ですが、安定した実力を示している事、直前場所が同点である事、双葉山相手に善戦していた事も評価されたと思われます。
前田山
昭和20年11月 5勝5敗
昭和21年11月 11勝2敗(準) 優勝は羽黒山 13戦全勝
昭和22年6月 9勝1敗(同) 前田山は東富士・力道山と共に優勝同点。優勝決定戦を制した羽黒山が優勝(9勝1敗)
準優勝、優勝同点のパターンです。
東富士
昭和22年11月 6勝5敗
昭和23年5月 10勝1敗(優)
同年10月 10勝1敗(同) 優勝は増位山 10勝1敗
優勝、優勝同点のパターンです。
以上を分類すると、
2場所連続優勝:
双葉山、栃錦、大鵬、北の富士、琴櫻に加え、旭富士~日馬富士までの8人 計13人
※千代の山もこれに準ずるか 千代の山を加えると、実質14人?
優勝・優勝同点(もしくはその逆):
羽黒山、東富士、北の湖、鶴竜 計4人
優勝・準優勝(もしくはその逆):
鏡里、若乃花(初代)、佐田の山、輪島、千代の富士、隆の里、北勝海、稀勢の里 計8人
※柏戸、玉の海もこれに準ずるか 彼らを加えると、実質10人?
2場所連続優勝同点:
若乃花(二代目) 計1人
優勝同点・(同点でない)準優勝(もしくはその逆):
安芸ノ海、前田山、三重ノ海、双羽黒 計4人
2場所連続(同点でない)準優勝:
朝潮、大乃国 計2人
2場所のうちいずれかに3番手以下の成績あり:
照国、千代の山(※)、吉葉山、柏戸(※)、栃ノ海、玉の海(※) 計6人
※の横綱たちは、以前の好成績が見送られた埋め合わせである可能性 それを考慮すると実質3人?
さすがに、平成の一時期の影響もあってか2場所連続優勝での昇進が最多ですね。しかしそれだけでなく、優勝同点や同点でない準優勝など様々な成績が混じっていますね。中には、照国、千代の山、吉葉山、柏戸、栃ノ海、玉の海のように直前2場所のうちに3番手以下の成績が混じっているケースもあります。ただし、千代の山・柏戸・玉の海は以前の好成績の埋め合わせと見る事もできます。
なお、連続準優勝でも、「同点でない準優勝」を続けた場合は、2場所合計が25勝以上でも見送られる事が珍しくありません。「同点でない準優勝」を2場所続けて昇進した2人は、いずれも3場所前に優勝しています。やはり優勝同点は、「同点でない準優勝」と比べて高い評価になっていると見る事ができるようです。一方、安定した実力を示していれば、直前2場所のうちに3番手以下の成績が混じっていても昇進できた事例はあります。むろん、直前2場所のもう一方が優勝か優勝同点でないと厳しいですが。
「優勝もしくはそれに準ずる成績」という文言に注目しなおしてみた場合、横綱昇進に当たっては、やはり優勝や優勝同点の経験が重視されているのが分かりました。
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by trushbasket
| 2017-05-17 19:32
| NF








