2017年 07月 05日
葉っぱを水指の蓋にして~夏を涼しい気分にするための工夫 in 茶の湯~
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すっかり蒸し暑くなりましたね。寝苦しくて大変、という人も多いのではないでしょうか。
さて、この季節。エアコンという便利なものがなかった時代の人々が、様々な工夫をしていたのは御存じの方も多いかと思います。といっても、「涼しくする」というより「涼しげに見せる工夫」という方向のものがどうしてもメインになるのは致し方ないこと。茶の湯の世界も、夏を「涼しい気分に」という趣向は色々あるそうです。
一例を挙げると、庭に水を多めに撒いたり、簾を水で少し湿らせたり。また、火を客に感じさせないよう小さめの釜を用いたり、水を連想させる道具を茶席で使うなどの工夫もされるようです。
そうした趣向の中に、葉蓋というのがあります。季節の植物の葉を水指(※注1)の蓋として用いる事で、緑陰を連想させ視覚的に涼しげな印象を与えるものです。
この葉蓋、近代初期の裏千家家元・玄々斎がに由来するそうです。七夕の茶会で、自身の好みである末広籠の花入にある受筒(※2)を水指に転用し、梶の葉を蓋代わりにしたのだとか。ちなみに当時、七夕に歌を梶の葉七枚に書いて手向ける風習がありました。それにちなんだものと思われます。
近代を乗り切るため様々な新機軸を打ち出した玄々斎らしい逸話ですね。
※1 水指:茶を点てる際に、釜に注いだり茶碗をすすいだりするのに用いる水を入れる器のこと。
※2 末広籠:入口が広がった籠。受筒とは、籠の花入の一部で、水や花を注ぐための筒。玄々斎がこの時用いた受筒は、檜を曲げて筒にし黒塗にしたものだそうです。
この葉蓋、梶の葉以外にも桐・蓮・里芋なども用いられます。ただし、イチジクなど汁を出す葉や、毒素・悪臭のある葉は避けるべきだとされています。表を上向きに、葉の柄が手前が来るように置きます。水指は、受筒以外にも小ぶりの陶磁器などでも良いそうです。薄茶点前のみで用いられる趣向です。
この葉蓋の上にあえて水滴を散らして、葉の上の露に見立てた趣向も見た事があります。葉に朝露がびっしり落ちて涼しげな光景は、「露深し」という夏の季語として俳句でも用いられるそうですね。これも、少しでも涼しい気分にするための工夫といえましょう。
葉蓋の他にも、涼しさを演出する趣向はあります。例えば、たっぷり水をいれた茶碗の中に茶巾を仕組み、手前の途中で茶巾を絞りたたむのを客にみせる「洗い茶巾」というのもあるそうで。
茶の湯における、夏の暑さをしのぐ工夫も、調べてみると色々面白いものです。
…少しでも涼しそうな話題をして暑さから僕自身も気をそらそう。そう思って、こんな話をしてみました。
【参考文献】
芳野宗春『日本の歳時としきたりを楽しむ 茶の湯の宗匠が教える和暮らしの手引き』PHP
千宗室『裏千家茶道のおしえ』日本放送出版協会
『NHK 趣味どきっ! 茶の湯 裏千家茶の湯を楽しむ』NHKテキスト
川島宗敏『茶の湯質問室』淡交社
桑田忠親『新修茶道全集第1巻』春秋社
浜本宗俊『裏千家茶道教本 茶道の基礎』淡交新社
広瀬拙斎『寸法録』茶道月報出版部
『大辞泉』小学館
『美術人名辞典』思文閣
辻明子、安部元気『増補版 いちばんわかりやすい俳句歳時記』主婦の友社
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by trushbasket
| 2017-07-05 20:07
| NF








