<読書案内>呉座勇一『陰謀の日本中世史』
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勝負というものは、双方が多くの過ちを犯し、より過ちが少ない方が勝利するのである。(同書 307頁)
事件によって最大の利益を得た者が真犯人である(同書 314頁)
「この考え方をつきつめると、最大の利益を得るのは事件解決によって感謝や報酬・名声を得る探偵という事になる。」
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2018年 04月 05日
室町ブームの契機となった一冊と言えば、無論『応仁の乱』。その著者である呉座勇一先生が新たに世に問うて歴史界隈に話題を呼んでいる一冊が『陰謀の日本中世史』(角川新書)です。 日本史における色々な出来事には、様々な謎があるとされています。そしてそうした出来事の影に、黒幕がいたのかいなかったのか、いたとすれば誰だったのか。その手の議論をしたり見聞きした覚えは、日本史愛好者であればあるかと思います。本書は、日本史におけるそうした話題について。学術的研究家の視点から、アカデミックな最新の学説も交えながら論じていく一冊です。扱う時代は、保元の乱から関ケ原合戦まで。いわゆる、「武士による合戦の時代」という事になります。南北朝についても結構ページを割いてくれているのが、個人的には嬉しい限り。 題名からわかる通り、日本史における「陰謀論」すなわち「特定の個人ないし組織があらかじめ仕組んだ筋書き通りに歴史が進行したという考え方」(呉座勇一『陰謀の日本中世史』角川新書 308頁)に鋭く切り込み、批判を加えていくのがパターンです。 大先輩にあたる研究者にも容赦なく、批判すべきと判断した所はピシリと論じているあたりは、読んでいて明快。むろん、批判対象となる研究者や説に対しても、一方的に攻撃するだけでなく賞賛すべきところにもしっかり言及しています。 個人的には、 勝負というものは、双方が多くの過ちを犯し、より過ちが少ない方が勝利するのである。(同書 307頁) という一言には大いに頷かされました。歴史上の事件ともなると、不特定多数がかかわる訳で、それだけに不確定要素の塊といえます。たとえどれほどの賢者であっても、何もかもが思惑通りには進まない訳で。否、賢者であるがゆえにかえって愚者の思考回路や判断基準が想定・理解できない事だってあるでしょうし。誰もが、一寸先が闇の中を少しでもましな選択肢を求めて懸命にもがいていた。そういう視点を忘れないようにしたいものです。 余談ながら。本書でも言及されていた 事件によって最大の利益を得た者が真犯人である(同書 314頁) という視点について。確かに大事な観点ですし、ミステリでよく用いられる考え方でもあります。ただ、ふと思い出したのですが。 「この考え方をつきつめると、最大の利益を得るのは事件解決によって感謝や報酬・名声を得る探偵という事になる。」 そんな話もどこかで見聞した覚えもあります。むろん、だからといって、探偵が真犯人という訳ではないのは改めて申し上げるまでもない事ですよね。歴史だけでなく、ミステリ小説を見る上でも、上記の理論は過信しない方がよい、という事なのかもしれません。 【参考文献】 呉座勇一『陰謀の日本中世史』角川新書 ※2018/4/11 引用元表示の部分を修正
by trushbasket
| 2018-04-05 20:45
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