2018年 05月 13日
大河とか「明治維新150年」とかに便乗、「西郷どん」が残した漢詩を鑑賞してみる
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今年、2018年の大河ドラマは、『西郷どん(せごどん)』。
関連サイト:
「NHKオンライン」(https://www.nhk.or.jp/)より
「NHK大河ドラマ『西郷どん』」(https://www.nhk.or.jp/segodon/)
主人公・西郷隆盛は日本史上でも最も有名な英雄の一人と称して問題ない人物です。そして、幕末維新期の政治活動家の例に漏れず、漢籍・漢詩の素養がありました。今回は、そんな西郷の有名な漢詩を見てみようかと思います。奇しくも今年は明治維新150周年らしいですし、幕末維新期の漢詩を次回以降も気が向けば出すかもしれません。
さて、今回紹介するのは『偶成』。偶成とは、偶然出来た詩、という意味です。実際に偶然かどうかは、場合によるようですけれど。
偶成
幾歷辛酸志始堅
丈夫玉碎恥甎全
一家遺事人知否
不爲兒孫買美田
(『新釈漢文大系 日本漢詩 下』明治書院 489頁)
<読み下し>
幾たびか辛酸を歷て 志 始めて堅し
丈夫玉碎 甎全を恥づ
一家の遺事 人知るや否や
兒孫の爲に美田を買はず
(同書 同頁)
<超意訳>
何度も辛い思いをする事で、志ははじめて堅固になるものだ。
立派な男子たるもの、玉のように砕けるのをよしとする。瓦が形を保つように、身の安全を図ることは恥と考える。
私の家の遺訓を、人は知っているだろうか、どうだろう。
内容はといえば、子孫のために立派な田を買って蓄財し残すまねはしない、というものである。
結句にあたる「児孫の為に美田を買わず」の一説は、御存じの方も多いのではないかと思います。さて、平仄は、下記の通り。○が平声、●が仄声。△は両方可。◎は平声で韻脚。なお、平仄についてはこちらを参照ください。
●●○○●●◎
●○●●●○◎
●○△●○○●
●△○○●●◎
韻脚は、「堅、全、田」の「下平声一先」。以下、一応は語句の説明を。
・甎:瓦の事。
・遺事:遺訓。
・遺事:遺訓。
なお、西郷の自筆では上記の通りだそうですが、転句は一部には「一家遺事」でなく「我家遺法」となっているそうです。ちなみに、どちらでも上記平仄は変わりません。この詩は、伝わるところに拠れば、維新政府樹立後、一部の同士が奢侈に流れたのを憂えて詠じた作品だとか。盟友・大久保利通への書翰に出ているのだそうです。西郷の為人が出ているといいますか、西郷の為人に関するイメージに寄与した一作といいますか。
個人的には、公的な仕事で為すべき事をしていれば、少々は奢侈に流れようが別にかまわないと思うのですけどね。例えば井上馨は蓄財を好んでダーティなイメージを持たれている一方、古美術収集趣味によって文化財保護に結果として大きな貢献をなしたという一面もあるわけですし。
話が脇道にそれましたが。この『偶成』、西郷の潔癖な心情を遺憾なく表現した一品と言えるでしょう。冒頭でも少し触れましたが、世を憂い命を危険にさらし生きてきた幕末維新期の人物は、西郷に限らずこうした鮮烈な魂の叫びをしばしば漢詩で表現しています。漢籍の素養が一般化していた時代、という忘れがちな事実を改めて思い出させてくれる事象ですね。
【参考文献】
『新釈漢文大系 日本漢詩 下』明治書院
『角川新字源改訂版』角川書店
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬舎ルネッサンス
青柳恵介『やきものを探す旅 数寄者を訪ねる』双葉社
加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書
『新釈漢文大系 日本漢詩 下』明治書院
『角川新字源改訂版』角川書店
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬舎ルネッサンス
青柳恵介『やきものを探す旅 数寄者を訪ねる』双葉社
加藤徹『漢文の素養 誰が日本文化をつくったのか?』光文社新書
by trushbasket
| 2018-05-13 13:56
| NF








