2018年 05月 18日
<言葉>『薫風自南来』~天候も心も、なかなかそうはいきませんが…~
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何だかんだしているうちに、五月も半ばを過ぎましたね。初夏らしく暑さを感じる日もあったりなかったり。茶の湯の世界でも、五月からが風炉、すなわち夏仕様なんだとか。
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という訳で、今回は茶席などに縁深い禅語の中から、五月っぽいものを一つご紹介します。すなわち、
薫風自南来
(有馬頼底著『やさしくわかる茶席の禅語』世界文化社 135頁)
というもの。「くんぷう みなみよりきたる」と読むのだそうです。『東坡集』にある言葉で、後に「殿閣生微涼」という句が続いて対になっています。元来は、唐の書家・柳公権による句なんだそうです。「香りの良い風が南から吹いてくると、立派な建物の中が少し涼しくさわやかになる」といった意味だとか。
唐の文宗皇帝が
人皆苦炎熱
我愛夏日長
<超意訳>
人は皆、暑さを苦にしているけれど
私は夏の日が長い時期が好きである
という詩句を詠んだ際、柳公権が上記の「薫風自南来 殿閣生微涼」を続けて付けたのだそうです。なお、これが『東坡集』に収載されているのは、北宋時代に蘇軾がここへ更に
一為居所移
苦楽永相忘
願言均此施
清陰分四方
<超意訳>
陛下は宮殿の中にいて民と離れたところにいるので
暑さに苦しむ民の心を御存じ有りません。
お願いですから、民にも同様に施し、
室内の涼しさをあちこちに分けていただけませんか。
という句を追加し、一般庶民の苦への思いやりをもってほしいと諷したためだとか。
さて。下記のサイトを参照する限り、禅の世界では「無心な、さっぱりした涼やかな心境」をも意味する事があるという解釈をする向きもあるようで。
関連サイト:
「茶席の禅語選」(https://zengo.sk46.com/index.html)より
「薫風自南來」(https://zengo.sk46.com/data/kunpujinan.html)
何でも、大慧宗杲という宋の傑僧が、この語句を聞いて悟りを開いたと言われており、禅でこの語句が重んじられるのはそのせいでしょうか。残念ながら僕は全く悟れていないので、詳しいことはよく分からないのですが。
まあ、実際の所、五月とはいえ涼やかで過ごしやすい日々ばかりではないですよね。蒸し暑かったり、逆に天候不順で寒さが戻ってきたり。そして、心の中はといえば、無心どころではなかったり。
それでも、文字面だけでも爽やかさをちょっと感じてみたい。そう思って、この言葉に触れてみました。
【参考文献】
有馬頼底著『やさしくわかる茶席の禅語』世界文化社
英朝編『禅林句集』文光堂
永井如瓶子『庭訓往來諸抄大成』明治書院
『能勢朝次著作集 第七巻 連歌研究』思文閣出版
西部文淨『茶席の禪語』其中堂
『日本大百科全書』小学館
by trushbasket
| 2018-05-18 19:06
| NF








