2018年 06月 13日
<読書案内>青木ハヤト『高機動無職ニーテンベルグ』
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今回は漫画作品を取り上げようと思います。お題は青木ハヤト先生による『高機動無職ニーテンベルグ』(KADOKAWA)。設定の妙に対して久々に大笑いした一品です。『機動戦士ガンダム』シリーズをはじめとするロボットアニメ、SFもの(※1)を始めとする先考作品群のオマージュ要素満載の、ギャグ作品。
※1 いわゆる「ファーストガンダム」や「Ζガンダム」、「ガンダムSEED」シリーズ、更に『銀河英雄伝説』などの影響が散見されます。
時は労働歴108年。世界は、行き過ぎて非人道的なレベルに到達した労働至上主義に牛耳られていました。その代表と言える存在が「社畜」と称される人々による過激な労働至上主義的軍事組織「強制就職(デスマーチ)軍」。それに対抗すべく、働きたくない人々は「無職同盟(リガ・ジョブレス)」なる抵抗組織を結成し抗戦。両軍は人型ロボット兵器WM(ワークマン)を主力として戦いを繰り広げていました。
そんな中、引きこもりであった主人公・不働遊(17歳)は無職罪により強制就職軍に連行されるところを無職同盟に救出されパイロットとして迎え入れられます。彼は、進歩した新人類「N.E.E.T.」(※2)であり、新型WM「ニーテンベルグ」を操縦できる数少ない人間だというのです。かくして、働かないですむ未来を手に入れるべく、遊の戦いが始まる…。そんな物語です。何といいますか、設定からして突っ込みどころ満載です。
※2 New Evolution Exceed Typeの略だそうです。
その一方、絵柄も美麗と言って良いし、メカのデザインも実に本格的。本格的なロボット漫画らしさがあふれています。しかしながら、台詞回しがなんともはや(最上級の褒め言葉)。絵柄との組み合わせが、実にシュールです。第一話から例を挙げるなら、シリアスっぽい戦闘シーンで
「働かずに食べるメシはうまいかっ!! N.E.E.T.ッ!!」「美味しいですよ!!」
「た… たかが働く事がそんなに嫌かぁ………っ!?」「戦うさ!!働くくらいなら!!」
といった具合のやりとりが敵味方でなされる始末。確かに、働くのが嫌なのは理解にできるにせよ、戦闘に身を捧げるくらいなら働く方がまだいくらか楽に思えてしまうのは、僕だけではないかも。その辺りは人それぞれなのかもですが。更に人物やメカの名称も労働やら無職やらに絡んだ単語にちなんだもので、これもまたクスリと笑える要因になっています。
この手のロボット戦闘ものでは、主人公が結構な問題児である事も多いのですが、本作もご多分に漏れずです。主人公・遊は「働かない」という信念が強固で、作中でも味方にすら「クズ」呼ばわりされることもある始末。しかしながら、その一点に目をつぶれば、敵方たる「社畜」にも良い人間もいれば悪い人間もいるという事は認識できていたり、意外に良識的なのが面白いところ。特に、「強化社畜」である幼い少女二人に関しては、結構正論を吐いていたりします。この辺りは、宿敵である「閃光のワーカー・ホリック」にも少なからず当てはまる事です。彼自身は筋金入りの労働依存状態ではありますが、誰もがそうなれるわけではない事はわきまえていたり、人生は他人から押し付けられるのでなく自分で選択するものだという考えは持っていたり、基本的に紳士だったり。こちらも、労働至上主義に染まっている一点以外は、作中では常識人の部類のようです。
思えば、我々の現実世界も「ブラック企業」だの「過労死」だのといった話題が注目を浴びているところで、本作はそうした社会状況への風刺という性格もひょっとするとあるのかも。…考えすぎかもですが。主人公陣営が無職サイドなのも納得がいきます。…まあ、主人公のように働かない方面へ頑ななのも、それはそれで問題なんでしょうけれど。
下手をすると出落ちに終わりかねない設定ですが、きちんとストーリーは進んでおり(※)、山あり谷あり見せ場ありの内容になってます。そして何より評価できる点としては、単行本五冊でちゃんと完結している事。戦いの落としどころは順当だと思いますし、主人公のその後についても「まあ、そうだろうなあ…」と感じるものが。
※3 人によっては突っ込みどころも多いでしょうが。
何も考えずおバカな作品として楽しむもよし、現在の労働状況への諷喩を読み取ってみてもよし。第1話は現在でもネットで無料閲覧できますから、興味のある方は一見の価値はあるかも。
by trushbasket
| 2018-06-13 19:50
| NF








