2018年 07月 29日
北畠顕家を称える漢詩を鑑賞する~広瀬旭荘『阿部野』~
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南朝の名将といえば、誰を思い浮かべるでしょうか。楠木正成・正行親子に、新田義貞。それに加えて、北畠顕家も忘れることはできない存在です。名門貴族として生まれ、若くして劇的な戦果を挙げながら京奪回を目前に倒れた悲劇の名将。南朝を好んで題材にした日本漢詩でも、顕家を取り上げた作品がありました。という訳で今回取り上げるのは『阿部野』。
作者・広瀬旭荘(1807-1863)は徳川後期の儒者・漢学者。豊後日田出身。同じく漢学者として知られる広瀬淡窓は、兄にあたります。菅茶山らに学び、各地を歴遊して名士たちと交友をもった後に摂津池田に移住しています。その漢詩は、自由闊達な作風で知られるそうです。
では、作品をご紹介しましょう。
阿部野
興亡千古泣英雄
虎鬪龍爭夢已空
欲問南朝忠義墓
蕎花秋仆野田風
(『新釈漢文大系 日本漢詩 上』明治書院 389頁)
<読み下し>
興亡千古 英雄を泣かしむ
虎鬪龍爭 夢已に空し
問はんと欲す 南朝忠義の墓
蕎花 秋は仆る 野田の風
(同書 同頁)
<超意訳>
歴史の興亡は、とこしえに英雄に涙を流させるものだ。
竜虎相克つような豪傑同士の争いも、已に夢のように儚く消え去っている。
この阿倍野で南朝の忠臣・北畠顕家の墓を訪れようとしたところ、
蕎麦の花が野に吹く秋風に吹き倒されていた。
平仄は、下記の通り。○が平声、●が仄声。△は両方可。◎は平声で韻脚。なお、平仄についてはこちらを参照ください。韻脚は「雄、空、風」の上平声一東。
○○○●●○◎
●●○○●●◎
●●○○○●●
○○○●●○◎
なお、北畠顕家の墓所については、二説あるそうです。詳細はこちらを。
【参考文献】
『世界大百科事典』平凡社
『日本人名大辞典』講談社
『新釈漢文大系 日本漢詩 上』明治書院
『角川新字源改訂版』角川書店
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬舎ルネッサンス
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関連サイト:
「阿部野神社」(http://www.abenojinjya.com/)
顕家を祭神として祀っている神社です。
by trushbasket
| 2018-07-29 17:35
| NF








