2018年 09月 09日
足利尊氏・直義兄弟の生誕時伝説~「天下人」として、「源氏嫡流」としての権威付け~
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天下人ともなると、生まれたときからして違う。そんな伝説があるとかないとか聞きます。ネット上で拝見した限りでは、下記のような話が。
関連サイト:
「戦国ちょっといい話・悪い話」(http://iiwarui.blog90.fc2.com/)より
「三好長慶生前の立願」(http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-4830.html)
三好長慶生誕前の話
「駿河なる 富士の山にて 甲斐喰ひて」(http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-11477.html)
徳川秀忠生誕時の話
足利政権を生んだ足利尊氏・直義兄弟も、例外ではないようです。今川了俊『難太平記』は、二人の生誕時にこのような逸話があったと伝えています。
大御所初湯めしける時。山鳩二飛来て。一は左の御肩先にゐる。一は杓の柄に居けり。錦の小路殿御生湯の時は。山鳩二来て。御杓の柄と。湯桶のはたに居たりける。先代の世に憚て。其時は披露なかりける。当御代に御年ごろの人々にも申出にや。
(塙保己一編『群書類従 第拾四輯』経済雑誌社 697頁)
<超意訳>
大御所尊氏公が産湯を使われた際、山鳩が二羽飛んできて、一羽は尊氏公の左の御肩先に止まった。もう一羽は、産湯の柄杓の柄に止まった。錦小路殿直義公が産湯を使われた際は、山鳩が二羽飛んできて、やはり御柄杓の先、そしてもう一羽は湯桶のはたに止まった。先代である北条氏の世であったので憚って、リアルタイムでは公開しなかった。この頃になって、当時をしる人々が申し上げたものだろうか。
それにしても、二人セットというあたりが、いかにもこの兄弟らしいですね。
二人の生誕時に登場したという鳩は、勝利を呼ぶ鳥とされ、八幡神の使いとしてあがめられてきました。余談ながら、鎌倉名物「鳩サブレー」は、鶴岡八幡宮にちなんだものです。この逸話は、尊氏・直義兄弟が生誕時に源氏の氏神である八幡神から祝福された、という意味を持つと思われます。
これらの伝説は、無論、史実という訳ではないでしょう。こうした伝説が生まれた背景として、足利氏嫡流が置かれていた事情を考える必要があるそうです。確かに、尊氏らが生まれた時点で、足利氏は名門ではありました。しかし、「源氏の嫡流」と認識されていたかは、現在の研究では疑問視されています。また、尊氏らの足利氏嫡流は足利一族の中で突出した存在とは必ずしも言えなかったとか。
そうした中で、足利将軍家が特別な存在であった事を天下や一族に示し、権威付けするために生み出されたのがこうした「神話」なんでしょうね。
そうした中で、足利将軍家が特別な存在であった事を天下や一族に示し、権威付けするために生み出されたのがこうした「神話」なんでしょうね。
【参考文献】
塙保己一編『群書類従 第拾四輯』経済雑誌社
田廻良弘『千社探訪』パレード
清水克行『足利尊氏と関東』吉川弘文館
塙保己一編『群書類従 第拾四輯』経済雑誌社
田廻良弘『千社探訪』パレード
清水克行『足利尊氏と関東』吉川弘文館
関連サイト:
「芝蘭堂」(http://muromachi.movie.coocan.jp/)より
今回ご紹介した部分の現代語訳。ここによれば、山鳩が二羽なのは「八」の字をなすという事でしょうか?
※2018/9/12 誤字を修正。
by trushbasket
| 2018-09-09 14:06
| NF








