2018年 10月 14日
文人画の題材となる植物について~四愛、四君子、三友~
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東洋画のうち、知識人の手になる文人画ではしばしば植物が題材になります。彼らが好んだ植物はある程度パターンがあったようで、そうした題材をひとまとめにした呼称がいくつかあります。今回は、それについてごく簡単に。
・四愛:菊・蓮・梅・蘭
元の書家である虞集が『四愛題詠序』で「陶潜愛菊、周茂叔愛蘭、林逋愛梅、黄魯直愛蘭也」とよんだ事に由来します。我が国では足利時代以降に障壁画の題材として好まれるようになりました。
陶潜とは、東晋末・劉宋初の隠遁詩人である陶淵明(365-427)の事。代表作は『帰去来辞』『桃花源記』など。
周茂叔は、北宋の儒学者・周敦頤(1017-1073)の事です。茂叔は字で、号は濂渓。著作に『通書』『太極図説』があり、仏教・道教の要素を取り入れた宇宙論を作った事から宋学の祖とされています。余談ながら、徳川時代後期の学者・渋江抽斎は芝居を好み、友人たちからなる見物仲間は「周茂叔連」と号していたそうです。贅を好まず常に比較的安い席をとっていた事から「廉を愛する」(森鴎外『渋江抽斎』より)、つまり「レン」という音で「廉」と「蓮」をひっかけた駄洒落なんだとか。当時の日本知識人にとって、四愛が周知の事実だったことを表す逸話と言えるでしょう。
林逋(967 - 1028)は、北宋の隠遁詩人。字は君復で、和靖先生とも呼ばれます。鶴や梅を愛し、西湖の風景を好みました。こちらに彼に関する記事がありましたので興味のある方はどうぞ。
黄魯直は、北宋の詩人・黄庭堅(1045-1105)の事。魯直は字で、号は山谷です。蘇軾の門弟にあたり、書家としても優れました。その詩風は知的技巧を凝らしたもので、古詩の詩句を活用し新たな境地を作り出す手法も好んだそうです。彼のスタイルは大きな流行を呼び、彼に影響された詩人は江西派と呼ばれます。我が国でも、五山禅僧によって愛好されました。党派争いの影響で、政治的には不遇でした。
・四君子:蘭・竹・梅・菊
宋・元あたりから、これらが気品に満ちている事からこう呼ばれるようになったようです。特に水墨画の題材として好まれました。
・三友:松・竹・梅あるいは梅・水仙・竹
「歳寒三友」とも。厳しい寒さにも屈せず、色を変えず気品がある様子が士大夫など知識人に「かくありたい姿」として好まれました。なお、退廃した世の慰めとして「山水・琴酒・松竹」をこう称する事もあるようです。
【参考文献】
『日本大百科全書』小学館
『世界大百科事典』平凡社
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『大辞泉』小学館
『大辞林』三省堂
「青空文庫」(https://www.aozora.gr.jp/)より
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by trushbasket
| 2018-10-14 18:27
| NF








