2018年 11月 11日
兼好法師、反出生主義に近い考えを持つ?~「子孫なきに如かず」という考えは、一定数の支持があった可能性~
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どうも、松原左京です。以前、「反出生主義」なる思想がある事について少し触れました。いわば、「子のためを思うなら、むしろ子を作らない方が良い」といった思想です。
『童貞の世界史』にも、似たような考えを有していたと思しき人物が複数登場します。
さて。日本の古典的随筆として有名な作品に、『徒然草』というものがあります。その作者である兼好法師は、性愛・結婚に否定的な考えをしていたらしい。その事は、『徒然草』作中の随所に読み取れるようです。
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そんな兼好だけに、子孫を残す事にも否定的でした。第六段の冒頭では、このように述べられています。
わが身のやんごとなからんにも、まして、数ならざらんにも、子というものなくてありなん。(西尾実・安良岡康作校注『新訂徒然草』岩波文庫 24頁)
要するに、身分の高い低いにかかわらず、子がいないのが望ましい、と言っている訳ですね。そして子孫を残さないことを望んだ貴人として兼明親王・藤原信長・源有仁・藤原良房らが挙げられています。
兼明親王(914-987)は、醍醐天皇の皇子。一時期は源姓を賜り臣籍降下、左大臣にまでなりましたが後に再び皇籍復帰となっています。彼の栄達を妨げと感じた関白藤原兼通によるものだとか。多才で詩文にも長じ、作品には『菟裘賦』『池亭記』などがあります。
藤原信長(1022-1094)は関白・藤原教通の子、道長の孫にあたります。太政大臣にまで栄達しますが、関白位は叔父・頼通の系譜に継がれたため彼は関白になれませんでした。九条に屋敷を設けたことから九条太政大臣と呼ばれます。
源有仁(1103-1147)は後三条天皇の孫、輔仁親王の子。源姓を賜り臣籍降下し、左大臣に至っています。才知に優れ、鳥羽天皇は彼を皇太子にと考えたとも伝えられます。有職故実書『春玉秘抄』や日記『園槐記』などを残しています。
藤原良房(804-872)は、藤原北家の繁栄を決定的にした人物。清和天皇の外祖父として、臣下として初めて摂政になりました。ここで取り上げられたのは、後継者となる男子がおらず甥・基経を養子としたことによるものでしょうか。
こうしてみる限り、実際に彼らがそうした希望を持っていたというより、彼らに繁栄した末裔が存在しなかったことから逆算的に作り上げられた話の気もします。
藤原信長(1022-1094)は関白・藤原教通の子、道長の孫にあたります。太政大臣にまで栄達しますが、関白位は叔父・頼通の系譜に継がれたため彼は関白になれませんでした。九条に屋敷を設けたことから九条太政大臣と呼ばれます。
源有仁(1103-1147)は後三条天皇の孫、輔仁親王の子。源姓を賜り臣籍降下し、左大臣に至っています。才知に優れ、鳥羽天皇は彼を皇太子にと考えたとも伝えられます。有職故実書『春玉秘抄』や日記『園槐記』などを残しています。
藤原良房(804-872)は、藤原北家の繁栄を決定的にした人物。清和天皇の外祖父として、臣下として初めて摂政になりました。ここで取り上げられたのは、後継者となる男子がおらず甥・基経を養子としたことによるものでしょうか。
こうしてみる限り、実際に彼らがそうした希望を持っていたというより、彼らに繁栄した末裔が存在しなかったことから逆算的に作り上げられた話の気もします。
ここで興味深いのは。かの聖徳太子こと厩戸皇子も同様な例として挙げられている事です。伝説によれば、彼は自分の墳墓を作らせた際に
ここを切れ。かしこを断て。子孫あらせじと思ふなり(同書 25頁)
と述べたとされているそうです。しかもこれ、十世紀頃に成立したと見られる伝記『聖徳太子伝暦』で已に同様な内容が記されているのだとか。
これらの伝承が事実かどうかはともかく、一部の歴史上の貴人に事よせて「子孫は残さない方が良い」という考えが語られていた可能性を伺わせます。少なくとも一定数の人々の間で、そうした考え方が支持されていたのかもしれません。「子のため」かどうかまでは分からないので、「反出生主義」の範疇に入れていいかどうかは不明ですが。
なお。こうした考え方を支持し、書き残した兼好法師。彼が生涯童貞であったかどうかは、明らかでありません。また、政界の要人とも繋がりがあり、京郊外の保養地に別荘を持つような成功者だった彼がどうしてこのような考えになったかも、分かりません。想像するに、己の才知でのし上がったとおぼしき人だけに、華やかな世界の表も裏も知り抜く形になって色々と思うところがあったのかもしれません。
参考文献:
西尾実・安良岡康作校注『新訂徒然草』岩波文庫
小川剛生『兼好法師 徒然草に記されなかった真実』中公新書
『日本大百科全書』小学館
『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞出版
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by trushbasket
| 2018-11-11 12:05
| 松原左京









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