2019年 03月 10日
童貞云々より大事なこと、それは「まさしく人間らしい人間」であること
|
どうも、松原左京です。ご無沙汰しています。これまで、
人の才や器は人体の一局所の特殊な摩擦経験の有無によって決まるものではない
独りで生きて何が悪い
という事を繰り返しこの場をお借りして申し上げてきました。
実際、童貞云々よりもっと大事なことがあると思います。それは、「まさしく人間らしい人間」である事。まあ、言われなくても、我々は人間に決まっている訳ですが。どういう事なのか。以下、追々お話して参りましょう。
日本の民話の中には、「狼の眉毛」を題材にしたものがあります。その概要は、以下の通り。
とある男が思い詰め、かくなる上は生きている甲斐もないと、自ら狼に食われて果てようと山に入ります。しかしながら狼は男を襲おうとしません。狼の一頭が言うには、「お前は本当の人間だから食わない」とのこと。そして、その狼から眉毛を一本もらって男は人里に帰ったのです。狼の眉毛を通じて他人を見ると、ヒト以外の動物に見えたのだとか。狼からすれば、同じ人間でも間違いなく人間に見える人と、他の動物に見える人とがあったという訳ですね。主人公は、前者だったので取って食われる事はなかった。そういう事なのでしょう。
とある男が思い詰め、かくなる上は生きている甲斐もないと、自ら狼に食われて果てようと山に入ります。しかしながら狼は男を襲おうとしません。狼の一頭が言うには、「お前は本当の人間だから食わない」とのこと。そして、その狼から眉毛を一本もらって男は人里に帰ったのです。狼の眉毛を通じて他人を見ると、ヒト以外の動物に見えたのだとか。狼からすれば、同じ人間でも間違いなく人間に見える人と、他の動物に見える人とがあったという訳ですね。主人公は、前者だったので取って食われる事はなかった。そういう事なのでしょう。
この話、柳田国男の本によれば奈良県南部の伝承だそうですが、『まんが日本昔ばなし』のデータベースでによれば広島県に同様な話があるそうで。
関連サイト:
「まんが日本昔ばなし~データベース~」(http://nihon.syoukoukai.com/)より
「No.0831 狼のまゆ毛」(http://nihon.syoukoukai.com/modules/stories/index.php?lid=831)
狼に神秘の力を人々が認めていた事がこうした逸話に繋がったという分析もありますが、今回の本題ではありませんのでこのくらいで。
では。人間である筈なのに条件によっては人間に見えない、というのはどういう事なのか。ここでふと思い出すのが、とある成人向けマンガのこの台詞。
ニセ者といえば人間だれしもニセ者である……。(劇画ふくしま政美『女犯坊 怒根鉄槌編』滝沢解原作 太田出版 500頁)
人間の一生とは 真の自己を見つけて歩く旅のようなものだ 自己を見出して初めてホンモノになれるのさ(同書 501頁)
肉欲を始めとする煩悩に振り回される人間は、自己を見失った「ニセ者」の最たるものらしいです。…やはり童貞かどうかにこだわっているうちは、厳しいという事でしょうね。
狼の眉毛を介するとヒト以外に見える人間と、ここで「ニセ者」呼ばわりされる人間とは重なるものが何となくありそうな。根拠はありませんけど。とはいえ、この言葉だけ見ていると、何だか少し前に流行った「自分探し」っぽくもあります。
余談ながら。この『女犯坊』なるマンガ、一風独特の画風や作風のため一部に熱狂的な愛好者を有する作品ですが、内容に突っ込みどころやエログロが満載だったりするので、万人に勧められるものとは言い難いのは否めません。興味のある方は、自己責任にて。
さて。数々の傑作ショートショート小説を残した星新一の作品に、示唆に富むものがあります。その作品が言うことには。
もしも、心中で自らが人間である事を常に肝に銘じ、人間たるもの如何に生きるべきかをたゆまず考え学び実行するような者であれば。それならば、姿形がどうであれ人間といえるのではないか。
なるほどと思わされますね。「狼の眉毛」を通じても人間に見えるのは、そうした人物かもしれません。自己を見出した「ホンモノ」と言えるのは、そうした人々かもしれません。真実の自己を探す場所は、すなわち自らの心の中。
仏教の教えには、生きとし生けるものに仏への素質があるという考えがあるそうです。仏だけでなく、人間もあるいはそうなのでしょうか?ならば、運慶が木の中に埋まっている仁王を掘り出すかのように、我々も心の中に埋まっている「人間」を掘り出すような生き方をしたいものです。童貞云々は、それに比べると確かに些細な問題に思えます。
ああ、言うまでもないことでしょうけど。誰かが「人間の中の人間」かどうかを判別するのは、いわば神仏の領域。私たち人間が他人に向けて行ってはならぬものだと思います。
それにしても。私自身は、狼の眉毛を通じてみたら、何に見えるのか。知ってみたいような、知るのが怖いような。
参考文献:
『柳田国男全集5』筑摩書房
菱川晶子『狼の民俗学』東京大学出版会
劇画ふくしま政美『女犯坊 怒根鉄槌編』滝沢解原作 太田出版
星新一『マイ国家』新潮文庫
『大辞泉』小学館
「青空文庫」(https://www.aozora.gr.jp/)より
「夏目漱石 夢十夜」(https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html)
『柳田国男全集5』筑摩書房
菱川晶子『狼の民俗学』東京大学出版会
劇画ふくしま政美『女犯坊 怒根鉄槌編』滝沢解原作 太田出版
星新一『マイ国家』新潮文庫
『大辞泉』小学館
「青空文庫」(https://www.aozora.gr.jp/)より
「夏目漱石 夢十夜」(https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html)
関連記事:
「童貞」関連の苦しみを、個人レベルで折り合いを付けるには~他人からの承認でなく自分自身を支えに~
<言葉>「喫茶去」~肩の力を抜いて、身の回りを大事に~
人気サラリーマン漫画、独身・結婚を語る~形は二の次、要は幸せかどうかだ~
「童貞」関連の苦しみを、個人レベルで折り合いを付けるには~他人からの承認でなく自分自身を支えに~
<言葉>「喫茶去」~肩の力を抜いて、身の回りを大事に~
人気サラリーマン漫画、独身・結婚を語る~形は二の次、要は幸せかどうかだ~
※2019/3/11 少し加筆しました。
by trushbasket
| 2019-03-10 16:11
| 松原左京









Amazon :