春分関連の短い記事を投下したのは、ついこの間のように思います。早いもので、もう春分の次に当たる清明の時期も過ぎようとしています。この清明の時期には、中国では野に出て草を摘み花を愛で、祖先の墓に参る風習があったとか。
さて。清明といえば、個人的に好きな漢詩があります。題はズバリ『清明』、作者は晩唐の詩人杜牧。
淸明 杜牧
淸明時節雨紛紛
路上行人欲斷魂
借問酒家何處有
牧童遙指杏花村
<読み下し>
清明の時節 雨紛紛
路上の行人 魂を断たんと欲す
借問す 酒家 何れの処にか有る
牧童 遥かに指さす 杏花の村
(詩・読み下し、ともに松浦友久、植木久行編訳 『杜牧詩選』岩波文庫 207頁)
<超意訳>
清明の時期に、降りしきる雨
道行く旅人は、気分が滅入ってしまう
お尋ねします、酒場はどちらに?
そう問うと、牛飼いの子供は遥か先の、杏が咲く村の方を指差した。
平仄は、下記の通りです。○が平声、●が仄声。△は両方可。◎は平声で韻脚。なお、平仄については
こちらを参照ください。韻脚は紛、魂、村の「上平声十三元」。
○○○●●○◎
●●○○●●◎
●●●○○●●
●○○●●○◎
実を言えば。この詩の初出は南宋時代の編纂詩集『分門纂類唐宋時賢千家詩選』だそうで。なので、本当に杜牧の手によるものかは疑問が呈されているそうです。でもまあ、作者が誰であれ、この詩の味わいは良いものだと思います。
【参考文献】
松浦友久、植木久行編訳 『杜牧詩選』岩波文庫
『角川新字源改訂版』角川書店
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬舎ルネッサンス
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