<読書案内>『新訂 閑吟集』~一期は夢よ~
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くすむ人は見られぬ 夢の夢の夢の世を うつつ顔して(同書 62頁)
<超意訳>まじめくさった人なんて見ていられない。この世なんて夢の夢、その又夢のようなものなのに、現実をしったような顔してやがる。
何せうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ(同書 同頁)
<超意訳>何になろうか、まじめくさったって。人の一生は夢のような物だ、ただ好きなように過ごせ。
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2019年 07月 03日
室町時代に流行した歌謡に、小歌と呼ばれるジャンルがあります。比較的形式は自由だったらしく、様々なものが見られます。そうした小歌など室町時代の歌謡をまとめたのが『閑吟集』。岩波文庫から『新訂 閑吟集』(浅野建二校注)という形で出ています。手軽な文庫本で読めるというのは、実にありがたい話。
小歌を中心として編纂されたのは、真名序に「奏公宴慰下情者、夫唯小歌乎」(浅野建二校注『新訂 閑吟集』岩波文庫 17頁)とあるように上流階層にも好まれ庶民の心情も反映したバランス感覚がかわれたものでしょう。 切ない恋の心を詠んだものも多い一方、世の中や人生の儚さを主題にしたものもちらほら。漢詩や和歌の教養が窺われるものもあり、その意味でも興味深いです。個人的には、 くすむ人は見られぬ 夢の夢の夢の世を うつつ顔して(同書 62頁)
といったものが印象に残りました。一見すると不真面目そうな、享楽的な印象が有るかもしれません。しかし背後には「どうせ死んでしまうのですが」(中島義道『私の嫌いな10の人びと』新潮文庫 58頁)、「宇宙から見ればどうでもいい」(pha『持たない幸福論』幻冬舎文庫)といった諦念というか哀しみがあるように感じます。思えば、室町時代は戦乱や飢饉・疫病などで今日よりも遥かに「死」が身近だった時代。これも時代精神の反映でありましょう。 ところで。こうした精神は、今日でも有用性はありそうに思えます。無論、よりよい明日のため、よりよい人生のため、まじめに必死で取り組まねばならぬ場面は多くあります。しかしその傍らで、こうした考えを頭の片隅においておけば過度に煮詰まって追い詰められたり先鋭化して他人を無闇に傷つけたりするリスクは多少なりと減るんじゃないかな、と感じたりする次第。 閑話休題。室町時代を生きた人々の心情を知る上で、そしてしばし現実を忘れて風流の世界に遊ぶ上で、なかなか良い一冊だと思います。漢詩の一部っぽいのもあれば、和歌を改造したようなもの、いずれにもあてはまらないもの。彼らの表現の多様さや教養の幅を知る事も出来ます。もし図書館なり古書店なりで見かけたら、手に取ってみてはいかがかと思います。 【参考文献】 浅野建二校注『新訂 閑吟集』岩波文庫 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ 中島義道『私の嫌いな10の人びと』新潮文庫 pha『持たない幸福論』幻冬舎文庫 ※2019/7/7 一部加筆しました。
by trushbasket
| 2019-07-03 20:06
| NF
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