起承転結・序破急から見る横山三国志~ストーリー配分の巧みさを再確認~
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2019年 08月 21日
歴史を扱った漫画作品には、人気作・傑作も数多くあります。その中には、単行本数十冊に及ぶ大長編となったものも珍しくありません。そうした作品の中で古典的存在といっていい一つが、横山光輝先生の『三国志』ではないでしょうか。単行本にすると六十冊分です。
横山光輝先生といえば無駄なくスピーディーに話を展開させるイメージがありますが、この『三国志』ではどうだったのでしょうか。単行本をベースに五の倍数の巻ごとに見ていきますと… <注意!以下は、「三国志」の内容に関するネタバレがあります。当ブログを御覧の皆様は、内容を御存じの方が多いとは想定していますが一応注意喚起させていただきます。以下は、それでも構わないという方のみ御覧下さい> 五巻 董卓追討軍:朝廷で専横・暴虐を極める董卓を討つべく、曹操が呼びかけ袁紹を盟主とした連合軍が発足。 十巻 徐州の謀略戦:陶賢から譲りを受け徐州の主となった劉備だが…。 十五巻 玄徳の秘計:呂布滅亡後も蜜月状態の曹操と劉備。しかしその影で、曹操の専横に反発する朝臣達が計画を進め…。 二十巻 凶馬と玄徳:官渡の戦いで勝利し最大勢力となった曹操。一方、荊州に落ち延びた劉備にも新たな人材の出会いが。 二十五巻 赤壁の前哨戦:曹操の大軍を破るべく策を巡らせる、呉の名将・周瑜。孔明による十万本の矢の逸話もこの巻。 三十巻 周瑜と竜鳳:周瑜は劉備軍との軋轢の末に憤死。一方、荊州を地盤とする劉備の下に、孔明と並び称される賢才・龐統が参陣する。 三十五巻 成都攻略戦:劉備軍は苦戦しながらも、蜀の地を攻略。 四十巻 漢中王劉備:曹操軍を撃破して漢中を手に入れた劉備は、王位を名乗る。荊州でも関羽が曹操軍を相手に奮戦。 四十五巻 劉備の死:義兄弟の復讐戦に敗北した劉備は、白帝城で崩御。孔明は南方で起きた反乱を鎮圧すべく遠征へ。 五十巻 孔明北伐行:魏を討ち漢王朝復興の悲願を果すべく、北方遠征を開始した孔明。 五十五巻 祁山夏の陣:孔明による三度目・四度目の北伐。 六十巻 蜀漢その後:孔明死後の蜀を描く。 といった具合です。半世紀程度の内容を描いていると考えると、この巻数でも十分にスピーディと言えるかも。 さて。ストーリーの内容をわけて評価する上で、「起承転結」「序破急」といった分類があります。スタートで話に引き込み、膨らませ、方向転回して興味を引いたうえで、まとめる。もしくは、話に引き込み、変化に富ませ、最後に軽快にまとめる。そんな風にメリハリをつける、という事でしょうか。 横山『三国志』を「起承転結」という観点からまとめると、 起:一~十五巻 漢王朝の天下が乱れ、群雄が台頭。劉備や曹操も、その中の一人として名を挙げていく。 承:十六~三十巻 宿命のライバルである劉備と曹操が対立関係に。曹操は最大勢力になるが頓挫、流浪していた劉備も発展の土台を築く。 転:三十一~四十五巻 劉備勢力は発展を続け曹操と対抗できるまでになるが、手痛い蹉跌。義兄弟を失い自らも敗れた劉備も失意の内に崩御。 結:四十六~六十巻 劉備死後、孔明を始めとする遺された人々による奮闘とその結末。 となりそう。「序破急」から見れば、 序:一~二十巻 漢王朝の天下が乱れ、群雄が台頭。その中で、曹操が抜け出す。一方で劉備は漢王朝復興を志し奮闘、やがて曹操と対立するが苦戦を余儀なくされている。 破:二十一~四十巻 在野の賢人・諸葛孔明との運命的な出会いを契機に、劉備の運は開け始める。荊州や益州を地盤として自らの国を築き、曹操の対抗馬に上り詰めた。 急:四十一~六十 しかし運命は急転し、義兄弟の相次ぐ悲運と敗北。劉備が建国した蜀漢は小勢力故の悲哀に苦しみ、やがて滅亡する。 という感じ。いずれにせよ、横山『三国志』は劉備一党の物語として描かれているというのがよく分かります。 それにしても。吉川英治の小説という「原作」があるからとはいえ、ストーリー展開に応じた分量配分の巧みさを改めて実感させられました。思えば、同じ横山光輝作品である『項羽と劉邦』や『史記』でも同様な思いに打たれた事があります。こうした側面からも、力量の高さを知る事ができるものなのですね。 【参考文献】 横山光輝『三国志』1-60 希望コミックス 『日本大百科全書』小学館 『大辞泉』小学館 関連記事: ※2019/8/22 誤字修正。
by trushbasket
| 2019-08-21 21:25
| NF
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