2019年の大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺』も、幻の1940年東京五輪をめぐるあれこれの話題に。
関連サイト:
「NHK大河ドラマ『いだてん 東京オリムピック噺』」(https://www.nhk.or.jp/idaten/r/)
そんな中、先週9月29日の放送で、役所広司さん演じる嘉納治五郎が、ストーリーから退場。治五郎は世間では柔道の父として知られますが、本作では日本のオリンピック史を引っ張ってきた人物としての側面が描かれてきました。
本作の治五郎は主人公ではありませんでしたが、主人公二人を年長者・指導的役割として引っ張る役回り。生物学的な父親ではないにせよ、「父親的役割」と称する事はできなくもないと思います。
とはいえ、本作の治五郎は重々しいばかりのキャラクターではありませんでした。無茶な大風呂敷を広げて周囲を振り回し、予想も付かない事を言い出して登場人物ばかりか視聴者をも驚かす。しかし、常人ではなしえぬ事を成し遂げて世間から一目置かれる傑物なのも、人として憎めない魅力があるのもまた否みようのない事実。そういった面白いキャラクターでした。それだけに、治五郎の退場は視聴者に大きな喪失感を与えるものとなりそうです。
なお、申し上げるまでもないですが、こうした八方破れっぷりはあくまで本ドラマ上の事で、史実の嘉納治五郎がどうだったかは存じませんよ。魅力溢れる偉人だったのは間違いないでしょうけど。
さて、近年の大河ドラマにおけるこうしたタイプの父親役といえば、2016年『真田丸』に登場した真田昌幸。演じていたのは草刈正雄さんでした。調べてみると、真田昌幸が物語から退場したのも9月25日の放送回。ほぼ同時期ですね。そういえばこの時も、視聴者として少なからぬ喪失感がありました。そして、退場を契機に物語が起承転結の「転」から「結」へと向かっていきました。『いだてん』も、そうなりそうな感が。
・大風呂敷を広げ、周囲を振り回す
・ただのほら吹きでなく、傑物なのも確か
・どこかコミカルで憎めない人間的魅力にもあふれる
・終盤近くまで物語を引っ張る
といった共通点が挙げられそうですね。これも一つの、大河ドラマ父親像のありようなのかもしれません。この二人だけでなく、2017年『おんな城主 直虎』における南渓和尚もこのタイプに近いと言えば近いのかも。あのドラマにおける和尚も、主人公たちを一族の長老ポジションから見守るお茶目な生臭坊主という役回りでしたから。まあ、物語を引っ張るというより背後で暗躍という感じだったり、主人公より長生きしたりと違いも結構ありましたけど。
思えば、従来の「大河ドラマにおける父親」と言えば、
こちらのサイト様にあるように「志を持ち、器量もあるが時を得ず夢を主人公に託す」重々しい役回りが主だった気がします。
関連記事:
「~ Literacy Bar ~」(https://ameblo.jp/zeppeki-man/)より
「『平清盛』総評&キャラクターベスト10」(https://ameblo.jp/zeppeki-man/entry-11355516608.html)
『独眼竜政宗』の伊達輝宗、『太平記』の足利貞氏に加え『平清盛』の平忠盛が例として挙げられています。
他には、
こちらにあるような「真面目で等身大な父親」というキャラも多いとのこと。
関連記事:
「~ Literacy Bar ~」(https://ameblo.jp/zeppeki-man/)より
「『八重の桜』総評&キャラクターベスト10(ネタバレ有)」(https://ameblo.jp/zeppeki-man/entry-11710132087.html)
『龍馬伝』坂本八平、『八重の桜』山本権八が例として挙げられています。『おんな城主 直虎』の井伊直盛もこの中に入れても良いかも。あと、『いだてん』でいえば金栗信彦、そして父でなく長兄ですが金栗実次も当てはまりそう。
あとは、『武田信玄』の武田信虎のような「ヒールとしての父親役」もありそう。超克の対象、これもまた物語における一つの典型的「父親」像。
「大河ドラマにおける主人公の父親的存在」一つとっても、色々なタイプがあるものですね。
※2019/10/6 誤字を修正、少し加筆。