明智光秀の次は、朝倉義景の辞世を概観~こちらも、偈(げ)の形式~
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先週は、明智光秀の辞世とされる漢詩をご紹介しました。さて、光秀はかつて、越前に身を寄せた事があるとされています。当時、越前を統治していたのは戦国大名・朝倉義景。細川家に伝わる『綿考輯録』によれば、光秀は越前逗留時、義景から五百貫を与えられていたという記述があるとか。どこまで事実を反映した記述か存じませんが、今年の大河ドラマでもその辺りが描かれそうな。今から気になるところです。
この朝倉義景、ご存知の方も多いでしょうが、やがて織田信長と対立し、浅井長政らと共に信長と戦うものの最終的には敗北、滅亡の憂き目を見ています。その際、義景が残した辞世にも漢詩があるらしいのです。という訳で、今回はそれを概観。先週に引き続き、大河便乗ネタ&辞世ネタになります。
『朝倉始末記』巻之六などによれば、義景の辞世の句は以下の通りだそうです。
七顚八倒
四十年中
無他無自
四大本空
(『改定 史籍集覽第六册』近藤出版部 111頁)
<超意訳>
のたうち回る苦しみであった、
我が四十年の生涯は。
思えば己も他者も本質的に区別はなく、
この世界の全て、そして我が身はもとより存在の根源などないのだ。
語彙解説は後ほど。やはり辞世だけに、来世を見据えたら仏教的な価値観が漂う言葉が並んでいますね。前回の伝・明智光秀辞世もそうでしたが、偈(げ)の形式を取っています。
偈とは、経典中で詩文の形をとって仏や菩薩を讃える文句の事。禅僧が悟りの境地を表現する漢詩の事も意味します。一句が四文字、五文字、または七文字で、四句からなるのが通常のようです。明智光秀作とされる辞世は五字四句、この義景の句は四字四句。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。韻脚は上平声一東「中、空」。
●○●●
●●○◎
○○○●
●●●◎
以下、語彙解説をば。
・七顚八倒
七転八倒。のたうち回り苦しむ事。
・四大
仏語で、世界の構成要素とされる地、水、火、風を指す。転じて、これらから成る人の肉体を意味する事も。
・空
仏教では、すべての存在は直接・間接の原因によって成立しており、本質となるべきものはないとされる。
やはり仏教、それもおそらく禅宗の存在感が大きかった事、武将だけに頭のどこかで死を意識して生きていたのだろうという事。義景の辞世からも、教養以外にもそうした事が何となく読み取れそうに思えます。
【参考文献】
金子拓『信長家臣明智光秀』平凡社新書
諏訪勝則『明智光秀の生涯』吉川弘文館
水藤真『人物叢書 朝倉義景』吉川弘文館
『改定 史籍集覽第六册』近藤出版部
『角川新字源改訂版』角川書店
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
『大辞泉』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
『大辞林』三省堂
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