ソーシャルディスタンスと「一足一刀」の間合い〜新型コロナ関係なく、対人距離は2mが理想かも〜
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新型コロナ対策の一環として、「ソーシャルディスタンス」という事が盛んに言われるようになりました。適切な身体的距離を取る事を意味するようで、厚生労働省は2mを推奨しています。
関連サイト:
「厚生労働省」(https://www.mhlw.go.jp/index.html)より
「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け) 令和2年5月22日時点版」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html)
飛沫感染のリスクを低める一応の目安がこの距離、という事のようですね。
関連サイト:
「毎日新聞」(https://mainichi.jp/)
「「社会的距離2m」は感染防ぐ金科玉条なのか 新型コロナ、予防するには」(https://mainichi.jp/articles/20200416/k00/00m/040/022000c)
一方で、この距離については。マスク前提ならもっと短くて良い、という意見も出たりするなど、まだまだ議論は尽きないようです。
関連サイト:
「東京中日スポーツ」(https://www.chunichi.co.jp/chuspo/)より
「ウイルス研究者の京大・宮沢孝幸准教授が唱えるソーシャルディスタンスの新秩序が大反響「マスクをしていれば2メートルは必要ない」」(https://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2020052402100104.html)
もっとも、これとても今後も従来同様にマスク装着がなされるのが前提でしょうし、その辺りも考えるとソーシャルディスタンスは依然重要とみなされる公算が高いかな、と個人的には思っています。周囲を見回す限り、人通りは回復した一方でマスク装着率は一時よりは低くなってる印象ありますし。おそらくこれ、弛れたとか油断とかいった単純な話でなく、気候が暑くなってきたのでマスク装着したまま社会生活を維持するのが困難になってきた人がおいおい出てきた、という切実な側面もありそう。話聞いてる限りでは、呼吸もままならない、とか頭が回らない、とかいう人もありますし。
その辺りも考慮しますと、2mをきっちり守れるかはともかく、三密を避けてソーシャルディスタンスを取る事は、新型コロナ対策として今後とも心する必要がありそう。残念ながら。少し油断すると、感染者数はすぐぶり返してくる印象ありますし。
あと、他にも。新型コロナウイルス対策だけでなく、人同士の適切な距離感、という意味でもソーシャルディスタンスは再評価する余地がありそうに思います。無闇に距離感を縮め過ぎると、色々な対人トラブルが生じるのは皆さんご存知の通りかと。この頃は、ブッダが言ったとされる
およそ苦しみが生じるのは、すべて接触に縁って起るのである
しかしながら接触が残りなく離れ消滅するならば、苦しみの生ずることがない
(ともに中村元訳『ブッダのことば-スッタニパータ』岩波文庫より)
といった言葉が連想させられる事もままあります。まあ、とはいいながら、実際問題として人間は社会の中で互いに生かし生かされる存在です。ですから、生存するためには相互に接触しない訳には参りません。しかしながら。接触が「苦しみ」や危険の元になり得る事、距離を取るのは有益たり得る事。これらは認識しておいて、損はないかと存じます。
まず、心理的距離感に関して申しますと。インターネット上で様々な対立やら悲劇やらが起きる話を見聞しますが、これも距離感が極めて近くなったように錯覚するのも一因ではありますまいか。根拠のない戯言ではありますが。
そして心理的な話だけでなく、肉体的にも。社会に出ると色々ありますから、対面する相手によっては、身の危険に晒されるリスクを考慮しない訳にはいかないケースもあったりなかったり。甚だ遺憾な事ではありますが。という訳で、今回はソーシャルディスタンス、といいますか「間合い」の話を。
間合いとは、剣術・剣道における自分と相手との距離の事。中でも、互いの剣先がわずかに触れ合う距離を「一足一刀」と呼びます。一歩踏み込めば相手を打ち込め、一歩退くと相手の打ち込みをかわせる。そういった絶妙な距離だそうです。それより近いと「近間」、遠いと「遠間」と呼ぶとか。
この「一足一刀」、具体的にはどのくらいなのか。実際には自分や相手の背筋力とか身長、脚長とかいった要素によって個人差はあるようですが、それぞれの太刀の長さを三尺とし、二本分なので六尺とするケースが多いようです。北辰一刀流とか山岡鉄舟とか関連の文献を見てる限り。因みに、六尺とは概ね1.8mほど。あと、参照した論文によると、条件によっては最長打突距離は2m30㎝以上になったりもするようです。
以上から。剣術・剣道の観点からすれば、相手の攻撃から身を守る間合いとしても、対人距離2mというのは一つの目安になりうるようです。事実、兵庫県警による護身術講座においても2mが推奨されています。
関連サイト:
「兵庫県警察」(http://www.police.pref.hyogo.lg.jp)より
「女性のための護身術〜間合い・離脱技〜」 (https://www.police.pref.hyogo.lg.jp/seikatu/gosin/data/manual.pdf)
それによれば、人間が逃げようと思ってから行動に移せるまで0.4秒、相手が0.1秒に進める距離は40cmとして、最低限1.6m、余裕を取って2mという計算のようです。
実際問題として、対人距離2mを常に確保できるかと言えば、難しいでしょう。しかしながら、新型コロナウイルス対策だけでなく人から受けうる危険への対策という意味からも、ソーシャルディスタンスは十分有用と考える事はできそうです。実現可能かはともかく、互いに安全を確保するには2mが最善。この事は常に頭の片隅に置いた方が良いかもしれないな、なんて思ったりするこの頃です。
【参考文献】
中村元訳『ブッダのことば-スッタニパータ』岩波文庫
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
山岡鉄舟『剣禅話』徳間書店
渡辺一郎『史料明治武道史』新人物往来社
Kimio Sone『MasterSwordsman』e-Bookland
『武道学研究』20巻2号 日本武道学会より小関康・塩入宏行「剣道における一足一刀の間合いと足の位置関係」
剣豪最強考察委員会『もし闘わば…史上最強の剣豪』Intelfin Inc.
『大辞泉』小学館
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