一色義龍の辞世を見る
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大河ドラマ『麒麟がくる』、新型コロナの影響による撮影中断のため、いったん放送休止となりました。無念。とはいえ今月末から撮影再開との話もあり、その点は喜ばしい限り。放映が再開できる時が、一日も早く来て欲しいものです。
関連サイト:
「NHK」(https://www.nhk.or.jp)より
「大河ドラマ「麒麟がくる」収録再開のお知らせ」(https://www.nhk.or.jp/kirin/news/news_200609.html)
さて、以前に何度か、『麒麟がくる』や『太平記』に登場する人物を含めた人々の辞世の偈をご紹介してきました。具体的には、本記事末尾にある「関連記事」をご覧ください。
さて今回は、斎藤道三の後継者である一色義龍の辞世をご紹介しようかと。『麒麟がくる』では、伊藤英明さんが演じておられましたね。
関連サイト:
「NHK」(https://www.nhk.or.jp)より
「斎藤高政/伊藤英明 登場人物 麒麟がくる」(https://www.nhk.or.jp/kirin/cast/03.html)
ご存知の通り、義龍は父・道三と対立した末に父を討ち果たし、美濃の国守となった人物です。国内行政の形を整え、朝廷や将軍家と関係を通じて家の格式を上げ、周辺の敵国にも調略で揺さぶりをかける。かくして、在位中は美濃支配を安定させた傑物というべき人物と言えましょう。ただし、病弱なのもあって、在位は短期間に終わりました。とはいえ義龍が築いた体制は、彼の死後もしばらく美濃を織田信長ら周辺勢力から守るという実績を挙げています。
義龍の辞世として、手元の伝記は『美濃国諸旧記』や「土岐斎藤軍記」などから
三十余年
守護人天
刹那一句
仏想不伝
(木下聡『斎藤氏四代 人天を守護し、仏想を伝えず』ミネルヴァ書房 205頁)
という偈を記しています。
〈超意訳〉
三十数年の間、
人間界と天上界をお守りしてきた。
だが今、世を去ろうとする刹那の一句には、
仏を想い感得するといった内容を伝えはしない。
といった感じの意味でしょうか?
関連サイト:
「戦国ちょっといい話・悪い話まとめ」(http://iiwarui.blog90.fc2.com)より
「斎藤義龍の死」(http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-12520.html)
こちらによれば、義龍の辞世は文献によって異同があるようですね。
平仄及び押韻は下記の通り。○が平声、●が仄声、◎は韻脚になります。平仄を始めとする漢詩の規則については、こちらをご参照ください。
○●○◎
●●○◎
●○●●
●●●◎
韻脚は「年、天、伝」の「下平声一先」。割ときれいに韻を踏んでいるあたり、複数ある伝承の中ではご紹介した分が一番それらしい雰囲気はありますね。義龍の辞世が正しくはどうだったのかは、もはや知る術はないのでしょうけど。
以下、語句解説を少しだけ。
・人天 人間界と天上界。
・想 仏語。対象の姿を心に思い浮かべる作用を意味する。
【参考文献】
木下聡『斎藤氏四代 人天を守護し、仏想を伝えず』ミネルヴァ書房
『角川新字源改訂版』角川書店
菅原武『漢詩詩語辞典』幻冬社ルネッサンス
『大辞泉』小学館
『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ロゴヴィスタ
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